| ひろさちやさん帰幽 ある本に曰く「たいていの人が、お正月は神事で、お盆は仏事だと思っていますが、それはまちがいです。両者ともに神事なんです。」と。 (14253) |
- 日時：2022年04月13日 (水) 10時25分
名前：下総の野人
合掌ありがとうございます
一般向け仏教書を中心に約600冊もの書を世に出された、ひろさちやサンの訃報に接しました。
『読売新聞』オンライン「仏教をやさしい言葉で説く、宗教評論家のひろさちやさんが死去…８５歳」より。https://www.yomiuri.co.jp/culture/20220412-OYT1T50220/
小生も何冊か手に取ったことがあります。学恩に感謝申し上げます。まずは安らかに穏やかにと合掌。
さて氏の著作の一つに、
『やまと教―日本の民族宗教』（新潮選書、2008）があります。
宣伝文の書かれた帯には次のようにあります。
《日本人は無宗教ではない。「やまと教」があるじゃないか！ 日本古来の信仰と思想、再発見のすすめ》
ずっと以前に同書の一部で興味のある所を紹介した雑文を書いたことがあり以下に掲出させていただきます。
【「やまと教」とは聞きなれない言葉ですが、ひろ氏の造語で、副題にもあるように「民族宗教」すなわち「神道」のことを指しています。ことさらに別の言葉を造って論じているのは、いわゆる「神道」には「国家神道」など国家主義的、政治的な面があるのを嫌ってのことのようです。氏としては、国家ではなくて、民衆の「神道」を重んじて、区別する、あるいは切り離す為に新たな言葉で論じているのです。つまり私からすると「左」から斜めに見ているわけで、実際とうてい承服しかねる記述も多く、したがいまして特に人様に読む事を勧める本ではありません。ただ、まったく役立たないというわけではなく、ここでは少し興味を覚えたところを取り上げてみます。
ちなみに「やまと教」の「やまと」は日本の雅称であるとともに、次のような意味も込めているそうです。
や…やさしさ（人間はまちがってばかりいる。だから他人を赦し、自分も赦す。）
ま…まこと（一緒に生きている仲間に対する忠誠、まごころ。）
と…とも生き（弱いもの、不幸なもの同士助け合い、権力者を出し抜く智恵を持つ。）
さてこれからご紹介しようと思うのは、いうなれば「お正月は神事、お盆は仏事と思っているかもしれないが、実は両方とも神事です」といったお話です。
人は死ぬと→ホトケ（荒御魂・あらみたま）→カミ（和御魂・にぎみたま）→神となってゆく。
「ホトケ」というのは、仏教の「仏」ではなく、やまと教の「ホトケ」すなわち「祖霊」のことなので区別してカタカナ表記になっています。「ホトケ」はいまだ荒々しいので鎮めるため、鎮魂儀礼が必要。それを江戸時代以降、「仏教」の「僧侶」が執り行うことになりました。よく知られているように幕府の政策的要請のしからしむるところで、キリシタン禁制対策の檀家制度です。で、二年（三回忌）もすると「カミ」になる。だいぶ和らいできた御魂です。「カミ」となると「産土神」（うぶすながみ）として「鎮守の社」にまつられます。（→ここの理解は、神道界では一般的だろうか？）
そんなわけで「ホトケ」も「カミ」も同じ「祖霊」で、その「祖霊」が年に二回家に帰ってくるのがお正月とお盆です。「やまと教」の二大年中行事。だから両方とも「神事」というわけ。もっとあれこれたくさん説明がなされていますが、ここの部分（第四章）の結びは以下のように書かれています。
≪以上でお分かりになったと思います。学者は日本の宗教を「神仏習合」と呼びますが、庶民に関するかぎり、日本人の宗教はやまと教であって、そのやまと教にほんの少し仏教が影響を及ぼしているのです、いや、仏教そのものがやまと教化されてしまった、そう見たほうがいいと思います。わたしは仏教を専門に学んでいますから、そのわたしにすればこのように結論するのはとても残念なことです。残念ではありますが、やはりそう言わざるを得ません。あきらめることにします。≫
これは私の実感としてもまったくその通りですね。】
再拝
【追記】
そういえば昔々読んだ、ひろさちやさんと神道神学の上田賢治先生の対談本も思い出しました。https://www.amazon.co.jp/%E3%81%B2%E3%82%8D%E3%81%95%E3%81%A1%E3%82%84%E3%81%8C%E8%81%9E%E3%81%8F%E7%A5%9E%E9%81%93%E3%81%AE%E8%81%96%E5%85%B8-%E4%B8%96%E7%95%8C%E3%81%AE%E8%81%96%E5%85%B8-%E3%81%B2%E3%82%8D-%E3%81%95%E3%81%A1%E3%82%84/dp/4790290271
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