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- 日時:2017年08月01日 (火) 12時02分
名前:童子
ことの起こりは現地PKO部隊の司令部 (CRF)が、日報開示要求に対して渋ったことから始まります。
その理由は緊張状況の現地で、日報開示にその都度応じていれば隊員の安全が保障できないからだと思われます。 その判断が陸幕に了承されたために削除しました。
ところが、報告書にこのかんじんの削除した理由について言及がありません。
こここそがキモのはずなのですが、なぜか省かれているために 「どうして現地部隊は日報の開示に消極的だったのか?」 ということが分からなくなってしまっています。
このような日報は、後に戦史を編む上でもきわめて貴重な1次資料ですので、安易に現場判断で削除されてはならないものです。
ただし、このような隊員の安全に関わる軍事情報が、無条件に一般開示されることもまた問題です。
このかねあいを判断するのが、統幕のはずだと思います。
三木由希子氏はWeb論座(2017年3月20日)でこう述べています。http://webronza.asahi.com/politics/articles/2017022100006.html
「文書管理法は、文書の保存期間を、文書の種類や内容に応じて1年未満、1年、3年、5年、10年、30年とするとしている。 このうち、1年以上の保存期間となる行政文書は、「行政文書ファイル管理簿」 に記録されて公表されるとともに、廃棄した場合もこの管理簿に記録される仕組みになっている。 また、1年以上の場合は、廃棄にあたり内閣総理大臣の同意が必要であり、実際には内閣府公文書管理課が審査を行っている。
1年以上の保存期間文書は、明確な管理の対象となる一方で、1年未満の保存文書はそうなっていない。 管理簿に記録されることもないので、廃棄されたか否かを客観的に確認する方法がない。
そのため、1年未満の保存期間と規則上され、情報公開請求を受けて探した範囲が特に不当とは言えず、行政機関の説明に矛盾がなければ、存否を争ってもまず請求者側は勝てない。 不存在という行政機関の判断が通ってしまうのが現状だ。 PKO日報のように重要であると言えそうな文書であっても、「重要だ」 ということだけでは存在することの証明にはならないからだ」
今回の日報は 「重要だというだけでは保存の対象にならない」 と判断されていたわけです。
まぁおそらくは、私が当初から言っていたように、現地の小競り合いていどで日本だけが引き上げるわけにもいかない苦衷があったのでしょうし、それは自衛隊としては文字化できないものだからです。
元々現実にそぐわないPKO5原則などを押しつけておきながら、「戦闘」 という二文字に過剰に反応する、そしてその責任をすべて自衛隊に持ってくる ・・・、たまらない日本の政治のあり方ですね。
それはさておき、この 「削除されていたはずの日報」 が、一躍脚光を浴びたから大騒ぎになりました。
しかも陸自の共有フォルダに 「なかった」 はずの日報ファイルが、いくつも残っていたわけです。 後にCRF自身のPCにも残っていることがわかります。
「PKO日報は、陸上自衛隊の 「指揮システム」 にある掲示板にアップロードされて、掲示板へのアクセス権限があれば誰でもダウンロードできるものだったことがわかっている。 ここから日報の電子データを統合幕僚監部がダウンロードしており、今回見つかったのはこの統幕で保管していた日報だ」 (同上)
これは情報管理としてはきわめて杜撰で、仮に日報が防衛秘密としての指定を受けていないにせよ情報管理がいかに穴だらけだったかわかります。 陸自には猛省を望みたいところです。
そして一回 「なかった」 と言ってしまったために、その 「うそ」 をその後も繰り返してしまうことになります。
ここで、河野太郎氏がいる自民党行革本部が日報管理の改善に乗り出して、日報の有無を調査します。 1日違いで稲田大臣も再調査を命じます。
逃げ場がなくなった陸幕は、「あれは個人データであって公開に耐える行政文書ではない」 という理由で 「再調査したら実はあった」 と報告します。
実にまずい言い訳です、官僚的保身といわれても致し方ないでしょう。
たしかに個人PC内部の機密指定ではない文書は 「個人データ」 かもしませんが (グレーゾーンですが)、それが今、防衛省を上げて大騒ぎして捜している当該日報なら行政文書もクソもありません。
すいませんありましたと、率直に謝罪し、その経緯を明らかにすべきだったのです。
それをあーでもないこーでもないと官僚的こねくり回したあげく、最悪の事態に防衛省を追い込んでしまいました。
稲田氏は 「再調査したらあった」 と国会答弁して、袋叩きに合います。
しかもその答弁の前に、河野氏が個人的にSNSで情報を拡散させてしまいました。
河野氏は共同のフェークニュースで直ちに的確な反論をしているのですが、当該大臣の公表の前に出すなよと言いたいですね。
つまり、加計における前川文書(牧野メモ)と同じで、なかった、いやあったと信号機よろしく点滅させてしまったわけで、このような言辞は誰からも信用されません。
ましてや初めから隠蔽疑惑を稲田氏にかけたくてしかたがないメディアは、待ってましたとばかりに一気加勢に責めたてることになります。
これは稲田氏が、安倍内閣の弱い下腹だと思われていたからです(そのとおりですが)。
つまり、稲田大臣が隠蔽を命じたか、あるいはそれを了承したという想像が入り込む余地を自ら与えてしまったことで、内閣全体を窮地に陥れることになったわけです。
今回の稲田「隠蔽」疑惑と加計事件に共通することは、官僚が独自の利害をもっており、独自の論理で動く階層であるという事実です。
この「官僚の壁」の盟主であった守屋事務次官を敵に見立てて大立ち回りをやった防衛大臣が、かの小池百合子氏でした。
彼女は仕事らしい仕事はしませんでしたが、官僚の壁に引っかき傷を与えました。都知事になってからもこの成功イメージから抜け出せず、都官僚を叩くのが都知事の仕事だと勘違いしているようです。
一方稲田氏は、おそらく、会議でも 「再調査するように」 ていどの毒にも薬にもならないことしか言わず、官僚の報告を黙って聞いていたのでしょう。
それがある人たちには、「了承」 ととられたのかもしれません。
今回の事件は不毛そのものでしたが、日本の 「主権」 を誰が握っているのかが段々と明らかになってきたことはたしかです。
といっても、官僚覆面対談などをやらせて、大臣の大臣のマスカラがどーした、辻本に泣かされたからこーした、といった週刊文春のようなメディアにはどうでもよいことなのでしょうが。
稲田事件の後に霞が関の「覆面官僚」たちにしゃべらせるという神経自体が狂っていますが、伊藤惇夫氏もツケマツゲがどうのと、したり顔でしゃべっていたようです。
マティス長官が来日した時にリボンの服はないだろう、ということまでは国際儀礼ですからいえます。
しかし、どんな化粧をしようと言われる筋合いではありません。
このようなジェンダーを絡ませた女性政治家バッシングをすると、NTタイムズにこのように書かれることになりますからご注意ください。 https://www.nytimes.com/2017/07/28/world/asia/japan-women-politics-inada-murata.html
”Both women stepped down for reasons that had little to do with gender. Yet in a country that scores abysmally in global measures of gender equality and has experienced false hopes of change in the past, these women’s departures are seen as a setback.”
「どちらの女性もジェンダーとは関係のない理由で辞任した。 しかし、世界的なジェンダー平等尺度で評価されると、過去に偽の変化への希望を経験した国では、これらの女性への逸脱(した攻撃)は後退とみなされる」
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog ・・・・・・

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