| [9207] 蛍 |
- 緑竜くろの - 2007年03月18日 (日) 23時05分
この世界に入った時点で、光は得られない。
そう、分かっていた筈なのに。
緑竜は光の射さない路地を歩いていた。
今は丁度正午の筈なのに、この路地だけは宵闇に包まれていた。
「……どうしようもない、な……」
緑竜が頭を抑えた。
「…アレだけ言っておいて、我輩も同じなんじゃないか」
ついさっきまで、緑竜は路地の奥の廃墟にいた。
「…貴様はこの世界に入り込んだ時点で、光を得られない事を覚悟していたのではないか? いや、光を求めた結果がこれか…」
緑竜は右腕で、すぐ近くにいる男の腹を突き刺していた。
影は使うことが出来ないので、右腕を竜と化している。
「おおかた我輩を殺しにかかってきたのだろうが。臆病者にこの仕事は務まらん」
カラン。と男の手からナイフが滑り落ちた。
「お、俺…は…死ぬの…か」
「死ぬだろうな。内臓を貫通されて生きれるほどの生命力は無いだろう?血液も足りぬだろうしな」
残酷にも緑竜は真実を告げた。
今ここで『生きれる』と言ってもただの無駄だとわかっていたから。
「そう、か…」
男の声が切れ切れになってきている。
「もう、すこ、し…長く、生き…たかった…な… もう、一、度……光、を…浴び…たかっ…た…」
そう言って、男は息絶えた。
緑竜は右腕を男の腹から引き抜き、付着した血を拭った。
(光を求めているのは、我輩も同じ…。 あの男と、なんら変わりない臆病者だ…)
覚悟はしていた。
闇に入った以上、光に戻る事は叶わぬ。と。
わかっていたから、何の躊躇もなく昔は人を殺せた。
現に、今未練が無かったならば自分は男の心臓を突き刺していただろう。
彼の光を求める心境がよくわかったから、躊躇した。
兄弟を守りたいと思う心と、
彼等の優しさにより、光を求めたくなっていた。
時折、へいげんや涼司が羨ましくなった。
使い方次第で守る力となる光となる能力を持ちえている彼等を。
どう扱っても闇にしかならない自分の能力を呪ってもいた。
それに、自分が光を求めている事は能力の変化からもよくわかっていた。
以前は光など無くても影を扱えたはずなのに、
今では光が無ければ絶対に扱う事は出来なくなっている。
「暗闇で 照らす 足 跡 照らす者に集う …ち い さ く 求め 合 い …」
緑竜はふと思い出した歌を口ずさんでいた。
曲名は忘れたが、歌詞にとても感銘したのを覚えている。
「今も 変わらず 今も─…。増えて 消 え て 光っている ─…」
(そういえば…蛍…だったな。この曲の名は)
まるで我輩だな…。と彼は自嘲した。
自分は、男の光を奪ったも同じ。
光を求めている者を殺めた自分に嫌気が差した。
「…自分は、どうしたらいいんですか?父上…」
弱い自分を繕う為の口調がすべて剥がれ落ちている。
「父上だったら、どうするんですか…?」
緑竜は考えた。
自分は何をするべきなのかを。
何のために生きるべきなのかを。
「……決めた」
いつ消えるかわからないが、
光を求めることが叶わぬのならば、
光を与える立場になろう。
闇に消えるとしてもそれもまた運命。
ならば、精一杯、闇を照らそう。
蛍のように。
「クライブ殿ー。申し訳ありません」
「…なんですか?」
絶対零度の微笑みでこちらを見つめているクライブ。
絶対考えが読まれている。絶対に白状してもしなくても撃ち殺される。
「……壁ぶっ壊しちまいましt」
「バカなんですか貴方は!!何度目ですか?!」
グシャバチン。
ストレートと平手打ちが飛んできた。
冗談抜きで痛いんだがどうしようもない。
自分に非があるから。これは。
「三度目です」
「少しは反省しなさい!!」
ドドス。
針が二本額に飛んできた。
「あう」
ばたり。と自分は倒れた。
「緑竜───ッ?!し、白目剥いてるよクライブー?!」
「大丈夫です。そのうち元に戻りますから」
「泡吹いてるって!!大丈夫じゃないよクライブ!!」
あの時から、自分は人を殺そうとしていない。
人を守るという決意は、今でも忘れていない。
ひとつだけ問題はある。
光を与えるはずが、いつの間にやら光を与えられていた。
まあいいか。
こうして、肉親以外でも自分に心を開いて接してくれる人がいるし。
蛍 【終】
ということで、緑竜メインの話はいかがでしたか? 大体前半は緑竜が15ぐらいの時で、後半は平凡な日常達になってますね。
緑竜はこんな感じの人です。 くろの一族っつーと結構敵対する一族がいるんですよね。 肉親以外の人が信じれなくなって、人殺しに身を落としたと。
ちなみにキャラそれぞれ書く予定ですのでー。いつになるかは知らんが。(待)
レス返し。 >A・Yさん。 読まれた!!>クライブが蛹の歌詞引用 ギャグとしてもおぞましいですか。首回転。ギャグ日で270度首が回るネタはあったなぁ。 ザトーの性格は決まってた。お調子者キャラが他にいないからなー。 針に毒塗りこみは一応戦闘補助用のですからね。この銃。麻痺薬とかも塗ってある。>針に
涼司はどこで出していただいても結構ですし、ノリとかでOKですw
>宙さん。 どっちが元の性格なのかは知らんけど、サディスター部分は継承するようです。 小賢しいが口癖はなんとなく似合ってると自分でも思った。 いい具合に明るいキャラもいなかった気がするなー。ザトー以外に。
どうやって戻ったかはチャットにてお話しましたねw 人格に対する詳細は個別話で。 わかりましたか。>いつ見たか
そんなに?!>ストレートの威力 長女を出すネタはかたまったのでそのうちー。 そういう発想大好きなんですか。グロいけど使えそうな能力ですよね。
レス返し終わりー。
そいではー。

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