| [9142] Ultimate Recycling Chapter4 No.28 |
- シベリア - 2007年03月12日 (月) 20時41分
マルコは部屋で軽く怪我の処置をしていた。 二人はそれを心配そうに眺めている。 そんな二人の視線が気になったのか、マルコはふっと笑ってみせた。 「そんなに心配しなくてもいいんですよ。少し殴られただけです」 「少し殴られただけって・・・・」 「この程度の痛みを伴う事は覚悟していましたし。これよりも酷い痛みを伴うことがこれからあるかもしれない」 「・・・」 二人の会話にフローラは付いて行けていない。 「あの、この程度の痛みを伴う事って・・・・もしかして、ジョエルという人を止めようとしているんですか?」 フローラがこういうと、二人は同時に彼女に視線を向けた。 あまりよくない事を聞いてしまったかと思い、フローラは慌てて訂正を入れた。 「い、いえ・・・何でもないです!すいません、変な事を聞いてしまって・・・」 ジェーンは首を横に振った。 「係わらない方がいいと思うわ。――ろくなことがないもの」 「まあ、彼女もほとんど係わってしまっている様なものなんですけどね」 絆創膏を手に張りながら、マルコが呟く。 うまく絆創膏が張れなかったらしく、一度絆創膏を剥がし、付け直した。 「それで・・・フィウスと言う女性は一体どんな方で?」 「フィウスさんは多分、大人の方です。背がマルコさんと同じくらいで、髪が長くて・・・ 服はよく覚えていませんけど、白色っぽかった様な気がします」 「背がマルコと一緒ねぇ・・・けっこう高いじゃない」 「再生術と思しき物を使った形跡は?」 この問いに、フローラは少し記憶を戻して考えた。 が、首を横に振った。 「全然・・・・・・何か変わったものが目に付くようなこともありませんでしたし・・・」 「ふむ・・・何処で話しかけられたんですか?」 「子ども区域内・・・・・」 「ありゃ?見張りがいたんじゃないの?」 フローラはこの問いにも首を振った。 「いえ。あの日は久し振りに町から金平糖が支給されて・・・」 「・・・金平糖?」 「成る程。見張りも全員金平糖に夢中だったと・・・・子どもらしく、可愛らしいミスですね」 あまりにマヌケな失態に、ジェーンは少し拍子抜けした。 他に話すことはないかとフローラは記憶を掘り返していく。 が、これと言って会った日にできた出来事で話すようなことはなかった。 でも、彼女が一つ気になっていたことがあった。 「えーと、関係ないのかもしれないんですけど・・・」 「ん?」 「フィウスさんの事を、私以外の人間が誰も見ていないんです」 「・・・・誰も?」 「はい。誰一人」 「金平糖に夢中だったんじゃないの?」 「それはそうですけど、一度も見ていないって言うのも・・・・」 「変、ですね?」 マルコがジェーンを見て言う。 「・・・かしら?」 自分の中で断定できず、曖昧な返事をした。
その日、フローラは遅くまで宿にいた。 子ども区域に帰るのは少し気が引けたのだ。 少しずつ、彼女の中である決心がついてきたのだ。 屋上で空を眺めていた。 今は止んでいるが、明日もきっと雨だ。雲が多い。 一人で屋上にいるフローラを見つけて、ジェーンがそろりそろりと忍び足で近づいた。 1m後ろ――まだ気づいていない。 ドンと背中を押して「ワッ」と声をあげた。 声には出さなかったがフローラは相当驚いていた。 「ジェーンさん!」 「アハハ!びっくりした?」 「すごく・・・」 フゥと胸を撫で下ろし、フローラは再び空を見始めた。 ジェーンも何かあるのかと空を見上げたが、これと言って目を引くようなものは見当たらない。 「何かあるの?」 「え?えーと、雲と、月と、星と・・・」 「そんなの見てて楽しい?」 「楽しさを追求している訳じゃありませんから・・・楽しくなくていいんです」 「・・・・・・小難しい事言うわねぇ」 感心するように呟いた。 何も言わずに二人は空を眺めていた。 その内、フローラがこう切り出した。 「明日、ここを出発するんですよね?」 「んー。そうらしいよ。あんまり悠長できないってさ」 「何処へ向かうんです?」 「さあね・・・・・行き先はマルコが決めてるから・・・」 「そうですか・・・・・それで、その件なんですが」 「ん?」 「私はも連れて行って欲しいんです」 「・・・あんたも?」 ジェーンはキョトンとしてフローラを見つめた。 彼女の目を見た。とても冗談に見えない。 しかし、簡単にokする訳にもいかない。 「え・・・えっと、私はよく分からないんだけど・・・・マルコに言って。ね?」 「分かりました。マルコさん何処におられます?」 「分かんない。どこかへ出かけちゃったみたいで。――私が伝えておくから、今日はバッドシティに帰りなよ。 明日、返事をしに行くからさ。待ってて」 「・・・・・そうします。では、マルコさんにお伝え下さい」 「は、はい。承りました」 思わずジェーンも敬語が出てしまった。
部屋に戻ってから数分後、マルコが宿へ帰ってきた。 「遅いわねぇ。何処へ行ってたのよ」 「別に・・・特に変わったところへ行った訳ではありませんよ」 「ふーん・・・・怪しいわね」 「いえいえ。あなたの妄想が行き過ぎているだけですよ」 「まあ、いいわ。フローラから伝言預かってるわ」 「?フローラから」 ジェーンは少し間を置いて言った。 「フローラも私たちに付いて来たいって」 「ほう、フローラも。そうですか」 あまりに飾り気の無い返事に、ジェーンは少し気が抜けてしまった。 「そ、そうですかって・・・・何か冷たいわね」 「来たいと言っているなら来て頂きたいですね。仲間は多い方が有利ですから」 「まだ子どもよ?こんなのに付いて来させちゃ・・・」 「確かに危ないですけど、彼女が行きたいと言っているのですから・・・止める必要はないのでは?」 「んー・・・何か釈然としないものが」 「それに、あの子はしっかりしていますから――軽はずみな判断をしないと思いません?」 「・・・そうね。大丈夫・・・・・・・ね。多分」
夜が明けて、二人は明朝から子ども区域に向かった。 フローラは既に入り口で二人を待っていた。 ジェーンは手を振った。 「いいってフローラ!来てもいいって!」 「そうですか。ありがとうございます」 「一応言っておきますが、痛いですよ?」 「分かってます。でも、ここまで係わってしまったのなら、がんばります」 「・・・・・本当にいい子ですね」 マルコは密かに感心していた。
フローラは子ども区域の子どもたちに挨拶をした。 「えっと、少しこの街を空けますが、本当にありがとうございました」 「べ、別に帰って来れない訳じゃないんだろ?待ってるから、さっさと帰って来いよ」 トニーが少し照れながら言う。 フローラは深々と頭を下げ、「ありがとう」と囁いた。 二人の下に歩いていくフローラに子どもたちは歓声を上げた。 「風邪引いちゃダメよ!」 「間違って変なもの食べちゃダメだよ!」 「怪我しないように気をつけて!」 「(怪我しないようにかぁ・・・・絶対無理そうだなぁ)」 いろんな事をフローラに向かって叫んでいる。 フローラは振り返って、笑って手を振った。
二人の前に来て、フローラはまた頭を下げた。 「フローラ・ヴェアルリッチです。改めて、よろしく御願いします」 「ど、どうも・・・ジェーン・バレッツです・・・よろしく御願いします・・・」 「マルコ・イレインです。どうぞよろしく。・・・あれ?ジェーン、どうしてそんなに敬語なんです」 「何でだろう・・・・何か釣られたみたい」 「そうですね。もっとフローラを見習いなさい」 「うるさいな!」 ああだこうだと言いながら、三人は汽車に乗った。 _next_ ++++++++++ [フローラが仲間に加わった!] 何かこんな話作らなくてもどうせこうなるという事は予想できましたよね・・・ 仲間にする気マンマンだったから、今までの話に出てきてしまった気がする。 と言うか、最初から仲間っぽい空気だったもんなぁ。orz
>>宙さん 主人公勢は絶対正義で、ライバル勢は絶対悪と言う状況を作りたくないんです。この章は特に。 だから、主人公勢のキャラクターにも何かしらの欠点的なものを持たせたかった。 マルコさんもダメな部分があるという事を感じていただければと。 片方は僅かな可能性を信じた側。もう片方は僅かな可能性だから見放した側。 きっと個々の人物の可能性の重要性の違いがこういう結果を齎したんです。 ブレームもマルコも相手を本気で殺しに掛かって、結局マルコが勝って、 死ぬ寸前に「さっさと殺されろ」的なノリで情報を渡すと言う展開も考えたけど、嫌になって止めた。 そんな打ち切り寸前みたいな展開はしたくない。 何かすごい詞がきた。かっこいい。
>>A・Yさん はいはい、ごめんごめんみたいな台詞は本当に言わせようかと思った。 結局言わせなかったけど、言ってたら本気でブレームはマルコを殺しそう。 マルコは本当に意地っ張りですね。自分の考えを簡単に曲げない。 あまりに曲げないので周囲から反感を買っているんですけどね。 傷口舐めるのは・・・・・本当に書いたらやばいですね。 他人はおろか、自分のも嫌です。 漫画とCDが売れてれば何でもいい。そういう点でブックオフは神。安いし。 服やら帽子やら全く買わない。自費で買った事が一度もない。 いいんですよ。出身は田舎ですから。 乳酸菌摂ってる?という台詞は画像で見てからアニメで見たから、少し吹きました。 ああ、これかって言う。 余談ですが、第一期のどこかで水銀燈の指が六本あったシーンがあって驚いた。

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