| [9648] Pathetic courtship 33 |
- A・Y - 2008年03月30日 (日) 16時58分
コンフェ「さて、リアルの用事も終わったので続きを」 夢幻「この後急いで書き溜めるのね」 コンフェ「仮眠しながらやるんでしょうね」 夢幻「そしてまたぐっすり行くと」
response to 宙さん ぐでぐででした。主にA・Yのせいで。 うんまあ元は善良な(?)キモオタでしょうね。バーバロウスが手を加えたからこうなったと。 眷属でいいんじゃないんでしょうか。 カタアリ界隈の霧碕家みたいなものです。当人は猫被ってるつもりないんだけどな。 つまり、タイラストが向かう先=菊が居る=(+デストロイが向かう先=コンフェ陣営も近く) ってことになります。ガイは酒は飲めたようです。 ノイズのあるってことでー。>ブレイクの勘違い。
夢幻「また一気に五話くらい書けそうな雰囲気だよね」 コンフェ「意外なくらい、単純な人ですからねぇ。じゃ、ENTERでーす」
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――――ジェダ様……。
懐かしい声が耳に響いた。 それで、ジェダの意識は覚醒する。
弾かれたように上半身を起こす。 鎧の中に残る湿りで、巨大な津波に押し込まれ、流されたところまでは、思い出した。 気絶してしまったのか、ということまでは理解した。
辺りには何もなかった。闇だけがあった。 いや、よく目を凝らしてみると、花があった。 赤い花々が、自分を囲うように咲いていた。 ヒガンバナ系が中心らしい。菊之丞と付き合っていると花に詳しくなっしまう。 其の中には、ジェダの好きな花もあった。
ふと、顔を上げると、人が居た。 10代半場の少女か。穏やかな笑顔を称えていた。 緑色の服。足首から手首まで覆うタイプのワンピースで、襟首だけが白い。 短い黒髪。薄くも無く濃くも無い健康な肌。平坦な顔に、けど緑の双眸に穢れがない。
ジェダは凄く、懐かしい感じがした。 いつも愛でる、中央が濃紫をした赤い花が、思い浮かんだ。 けれど。 「…………………………誰だい?」 投げた言葉がそれだった。
火が轟々と唸るように、燃え盛っていた。 焼き殺す為でなく、暖めて救う事に使用するなんて珍しいかな。と黒猫は思った。 「あったけー……ス」 「光闇……もう、大丈夫そうね」 なのこが心底安心していた。けれど、心懸かりなことがまだある顔もしていた。
黒猫、光闇、なのこの女性陣は揃っていた。 逸れない様尽力を使ったのは黒猫だった。 火のエレメンツの能力を展翅し、押し潰そうとしてくる水に抵抗した。 相性上本当に微力だった。だが、精霊の翅で空中に逃げることが出来た。 他の三人は既に津波に飲まれて、見えなくなった。 偶々、あの瞬間寄添うように居た二人の手を握ることで、精一杯だった。
光闇が、自分の目を擦って、両手で頬を強くパンパンと叩いてから、目を開いた。 薪にて充分温まり、体力が回復したようだ。黒猫からみても、大丈夫だろう。 立ち上がって、意識を研ぎ覚ました黒の瞳で、言った。 「……行くッス」
しばらくしてからだろうか。 自分達のように当てもなく徘徊する人を見つけた。 安堵なことは、知り合いを発見できたこと。 残念なことは、さっきまで同行していた内の者じゃなかったこと。 意外だったのは、彼が一人であったこと。
「ランバダっス!」
光闇が叫んだ。 だが、様子がおかしいことに皆が気付く。 まず、こちらが幾ら声をかけても、ランバダが見向きもしないこと。 次にランバダの目だ。開いてはいるが、瞳孔にほとんど光が点ってない。顔は穏やか過ぎるくらいの笑顔だ。 そして足取り、はっきりしているようで、千鳥足のような曖昧な歩き方。 統括して言うと……まるで、夢遊病者である。
「徒事じゃあないわね。敵の罠にでも嵌められたのかしら?」
黒猫の意見に一理ある。 光闇、なのこは頷いてランバダの下に行こうとした。 だが、彼女らの間に隔たりがあった。 大きな川である。幅は10人横に並べるくらいだろうか。こんな時でないと惚けるくらい広大である。 これだけ広いなら向こう岸に渡る橋もありそうだが、見える範囲には無かった。
「また水浴びしなきゃならないっスか……」 「飛ぶ?泳ぐより遅いけど」
黒猫が手を差し伸べた。 光闇はこれ以上の贅沢はないと、甘えることにした。 なのこも彼女の申し出を受け取る。 二人が自分の体にしっかり捕まったことを確認して、黒猫は展翅した。
油断した。……で、済ませるべきじゃない状況に、彼は放り出された。 とりあえずは落ち着いた水流から這い上がり、口に入った水を幾らか吐き出して、陸地を探す。 泳いでそう経たずに、腕ほどの高さがある足場が見つかった。 手を伸ばして、上がる。 見渡す限りの仄かな緑。鬱葱と繁る森の中だ。 自分は少し深い川まで流されてしまったらしい。 はぐれた仲間達もこっちに来てないのは幸いかそうじゃないか。おそらく後者だろう。
コンフェは、全身に滴る水を拭いもせず、歩いた。 歩きながら、考えた。
(あの幻覚の攻撃が実在化した。考えられるのは…………やはり、バーバロウスか)
何度も言うが、リメンスの再生するものに殺傷性はない。 その場に留まる記憶を現実へ忠実に再生させる。それだけの代物。 例え当時が戦争真っ只中でも、現在に居る者達には殆ど害が無い。
対して、バーバロウスの再生対象は憎悪を始めとする負の感情。 場所は問わない、使用する本人の記憶を媒介とした能力だから、リメンス程のリアルさはない。 その代わり、バーバロウスの記憶した感情が強ければ強い程、威力が増す。
矛盾するようで、『記憶』と『想い』を利用するという特殊な性質を持った二つの能力。 混ぜ合わせることは、可能だった。
リメンスはバーバロウスがその力を分けて創った『娘』だ。ので眷属間より深い同調率を持っている。 三つ子の狩人と同じで、能力を交え重ねても支障は生じずに、合成術として発動するのだ。
(リメンスの術の後に、バーバロウスの力を加えた……筋は通るな……)
納得はしたが、厄介さが確実になった。 なら早くリメンスを発見して、術を解く。これしか今の状況を打破する手はないだろう。 だが、バーバロウスが今回の核であるリメンスを無防備にして置くのも有り得ない。 なんらかの防衛策も施してるだろう。このノイズも含めて。
(彼らは……無事だろうか……)
逸れてしまった面々を思い浮かべる。なんだが急に遠い存在になってしまったような気がした。 死んでるとは思ってないけれど。どうでもいいとは思ってないけど。酷く冷めている。水に浸かったせいじゃなくて。 一人になってしまったのに、この冷静さはなんだろうとコンフェは自分へ、憤りを感じた。 けれどその苛立ちも無意味だと、冷静な自分が告げた。その通りだとあっさり納得した。
そして、自分は何処に向っているんだろう? リメンスか。菊之丞か。……どちらもどうでもいいような気がしてきた。 それは駄目だ。とコンフェは思った。目的を忘れてしまいそうだった。 彼は、まだ生きてるかな。と呟こうとした。
しばらく歩いて、時々走って、やがて木々以外の何かを見つけた。 水色の髪の毛が見えて、またか、とコンフェは思った。 其処には、ヴァニティが居た。蹲っていた。 なんだか、泣いているようだった。
「ぼくは……原罪なんて認めない……」
最初に、滲み出した言葉。自分を含めた者達を否定する宣言。
「こんな下らないことで、存在しなきゃならないのなら……どうしてぼくらは此処に居なきゃならないんだ……」
心からの苦痛により、ポツリ、ポツリ、と漏れていく。
「全てが消えてしまうなんて望んでない。ぼくが、ぼくたちが消えなきゃならないんだよ……本当はそれを分かってる癖に……」
水道の蛇口のように。滴っていく水のように。
「あいつらは、ただ消えたくないだけ。ただ存在したいだけ。最初から外れてる癖に。世界から必要とされてない癖に」
一度緩んだ栓は、それまで溜まっていた水をその場に放出する。
「ディサスト!神に成りたいなら成ればいい!災厄は一切受け付けない!! デストロイ!どうせ貴様は暴虐しか満たされない奴だ、勝手に壊し壊されていろ!! ……コンフュジョン…!――――あなたは、正しいと信じていた、信じ続けていた……けど」
前々から嫌悪していた。彼らの兄を次々に否定し、侮蔑し、決別する言葉。 三番目の兄に対してだけ、躊躇いがあった。……けれど、それは、最も憎むべき対象への、溜めらいでもあった。
「何が『旦那さま』だ!全てを木偶に変えてまで捧げて相手の目すら見ずに散っていく姿勢が、本当に愛なのか!?」
とうとう出した。出してしまった最大級の罵り。 一度出した水流を、一気に押し出すように流すようにして、弟は尚更に容赦なく続けた。
「そういえば死んでから次に男が生きていた時があったか!?無い筈だ!それで新しい男を見つけて、 あっさりと旦那さまにして。生きた温もりが欲しかったんだろう?孤独を紛らわしたかっただけだろう? 自分を貪られたかったんだろう?男なら誰でも良かったんだろう?なあコンフュジョオオオォォォォオオォォン!!?」
腹の底に沈殿したものまで吐き出すように叫んだ。叫んでくれた。 そうして全てを出し切ったヴァニティ……の影は、消失していった。
…………。 そんな風に思っていたの? まず、一言目の感想はそれだった。
衝撃だった。そして真実だった。 ディサストは傲慢過ぎるところがあった。孤高を気取るのは勝手だからいいが、 一々周りにそれを求めようとするところが、おこがましくて、大嫌いだ。 デストロイは手に焼け過ぎる。素直だが我が侭ですぐ暴力に訴えるし、 ちょっと体を貸せばすぐ大人しくなって何でも言うこと聞く簡単な奴だが。敬ったり愛情を感じたりしたことなんてない。
ヴァニティは、居ても居なくてもいい奴だと思ってた。 何の感慨も無い。どんな理不尽な目に当たらせても、文句一つ言わない。本当に何も感じない奴だと、思ってた。 だから意外だった。彼が実を持ってて、ちゃんと不満を抱えていたなんて。
――――けれど、『旦那さま』をあんな風に解釈することないじゃないか。 ――――違ってないけど。 いいえ、違います。違います。『旦那さま』を馬鹿にするなんてヴァニティ、許せない。 馬鹿にされたのは『旦那さま』を作るオレのことじゃないの?なら、間違ってない。 違います!私は『旦那さま』を愛しております。最初から最近までの『旦那さま』全てを。 違わないよ。愛は、感じてない。きっと最初から……。 違います!違います!誰でも良いとは思ってない。『旦那さま』は私が心から望んで選んでます。 ああ違わないな。ただの愚鈍や屑は選んだ覚えはない。粋の良い、手頃な、支配してくれる手を…。 違います!違います!違います!違います!違います!違います!違います!違います! 違わない。違わない。違わない。違わない。違わない。違わない。違わない。違わない。
反発しあう自分の中で。 足だけはまだ動いてた。何処に行くのかもう分からないけど。 十歩くらい歩いたかなぁ、とぼんやりと目を配ると。 クルクルと目を回しそうになる景色があった。 実際それは廻ってた。
くるくる、クルクル、狂々廻るよ。 運命の回転木馬が。
あとがき 迷路陣営がまた分断させます。尺の都合上夢幻さんだけ次々になりました。 ヴァニティの攻(口)撃。前回と打って変わっての饒舌っぷり。コンフェはその部分も含めて動揺します。私も動揺した。(えー!?)

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