| [9640] Pathetic courtship 30 |
- A・Y - 2008年03月28日 (金) 11時23分
コンフェ「さて。なんとか朝に来れましたね」 夢幻「12時近いけどね」 コンフェ「まあいいでしょう。この後どれくらい眠れるのかが問題です」
response to 宙さん 明らかに嫌な展開がこの後待ってますよねー。 誰が上手いことを言えと、いや、本当に・・・ora ランバダよお前もか。こっちの方が予想外でしたかね? そうなのよね。愛と憎しみ並に一体してるわなぁと。 とりあえず持ってくれよ私の精神的スタミナと。
夢幻「無理はしてないんだよね?」 コンフェ「本人がそう言ってるんだから。もう無視しましょうよ。じゃ、ENTER」
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(リメンス。よくやりました。貴女の力、役割は大いに舞台を彩ってくれています)
バーバロウスはほくそ笑んでいた。 後は、彼の台詞なき脚本が完成するのに必要なのは、自らの手練そのものである。
(筋立てが最終段階に入るまで、…………後二、三匙は、必要ですね)
光が差さない箇所にて、影が溢れていた。 影は形を取って、色を付けて、散らばっていく。 過ぎ去りし想いに取り付いたのは。 怒り、畏怖、敵意、そして憎悪。
閉鎖される時間の閉鎖された空間の遊園地。 更に一般から係員までまず来ないだろう位置に、一匹の赤い猫が高いところを求める為選んだ。 太く長く伸ばして、曲がってそびえ立つレール。 本来なら、そこは鳥も立たない場所。ジェット級に走る箱車が通るのだから。
「ふーん。結構、派手にやってるねぇ」 到着したばかりでの、ラークリの一言だ。
彼の視線には赤く煌めく塊が轟々と燃え盛っていた。 カジノハウス。という施設があった場所だ。 其処から複数の気配。其の中でも強大な波動を感じられた。
「……ん?」
目線は少し横に逸れる。 近くはないがさほど遠くもないところから、絵の具を薄く延ばしたような波動がしてきたからだ。 それも、目に見える波で。 仄かな光が遊園地全体を覆って、娯楽施設や人口道路を木々に埋もれさせていった。 ラークリは展翅させて空へと光から退避する。 それまで立っていたジェットコースターのレールも、仄かな光に当たって曲がった巨木になった。鉄線が見る影もない。
変貌にやや唖然とする傍らで別の光が揺らめいた。 立体映像が現れる。ファンナだ。
「今、この地域一帯の時空間が歪曲したわ。簡単に言えば約百年前に遡っている。というところ。 データによると百年前は豊かな大自然として当時は憩いの場所と保護されてたようよ」 「オペレートどうも」
ラークリは目を合わせず礼を述べる。 ファンナはふてぶてしい笑みを浮かべながら続けた。
「ちなみに。付近に巨大なエネルギーが観測されてるわ。冗談抜きで原罪四部クラスが潜んでいるわよ」 「それぐらい、分かってるって。大方、目の前の火の海でしょ」 「正解ね。今から移動を始めるみたいよ」
炎と巨大と複数の一団。 これらだけで大方の想像が付いてしまう。 遇ってしまって良いか悪いか。まあその時に判断しよう。
「他に、伝えることは?」 「……そうね……。……悪意が感じられるから。気をつけること」 「機械の癖に漠然だな」 「精霊人形。ですので」
ファンナがお辞儀を振る舞い、また消失した。 ラークリは鼻で息を吐き捨て、赤い翅を広げて、落ちるように下降した。
――――ねぇ、おとうさん、コレ買ってよ。ダメだよ。ええ!?買ってもくれても駄目だよ。
胸元を擽る。どちらかと言えば不愉快な声が藤宮人の耳に響いた。 「……え?」
「何をやってる!?」 「藤宮人様、疲れましたか?」 急に足を止めた藤宮人に対してコンバットが怒鳴り、浜木綿が手を伸ばす。
「いや、あの、今変な声が……」
――――おかぁさぁあん……。
「ほらまた……」 「……!?」
藤宮人に続き浜木綿が辺りを見回す。三節棍を構えながら。 浜木綿以外も、耳にしたらしく、警戒しながらあちこちを見回した。
――――おかぁさぁん……ううっ……ひっく……何処に行っちゃったのぉ……うえぇ……。 ――――買って買って買って!駄目だよ駄目だよ。ダメなものはダメだよ。
それは、強請りつつも買って貰えない子供の声とその親の会話だった。 それは、母親とはぐれて迷子になってしまった子供の泣き声だった。
――――全く。世の中が平和になってから自然を破壊しおって……。 ――――止めてください!此処の自然は残すべきなんです! ――――今や世界森林の大方は回復の目途が立ってる。なぁに丸ごとじゃない。少し切り取るだけさ。 ――――金になるんだから、さっさと立ち退けよ。住んでもない癖に正義翳してなんになるんだぁ?
それは、醜い利益と保護の争いだった。 それは、安っぽい正義感だった。 それは、偽善への侮蔑だった。 それは、悲しい憤怒だった。
切り取られる木々の悲鳴。 逃げ惑う、鳥や小動物達の怯え。 大地に次々と打ち込まれる、冷たい鉄の欲望。
そして現在、広がっている人口の建物。 最初に戻る、親子の口喧嘩と迷子の泣き声。人々の争い。森の悲鳴。 繰り返して混ざり変わっていく。嘆きと衝突と敵愾心。
「……うっ」
藤宮人が口を抑えながらも、膝を付いた。 余りの不愉快な感情の渦に、胃が焼かれる。気持ちが悪い。頭が痛くなりそうだ。 浜木綿が支え起こそうとしたが、先に手をやる者が居た。 ヴィルヘルムだった。
「怨怨(おんえん)か?……いや、違うな」
負の感情としてなら当て嵌まるが。なんと質の低い想い出だと、ヴィルヘルムは思った。 たかが迷子のピーピー声。我侭坊やのキーキー声。この森を巡る小さな諍い。 もっと大規模な反対運動が起こっていれば、考えられたのだけれど。
ヴィルヘルムは兜の中で溜め息を吐いて、振り被った。 「眩しいぞ。目を伏せていろ」 そう皆に忠告して、両手を上に掲げた。掌に蒼き光が集まる。 ヴィルヘルムの胸元で揺れる鎖長きペンダント、大きなダイヤ型のサファイアのような石が煌めいた。
「……消えよ」
蒼い光がこの瞬間、ショッピングモール中に広がった。 包まれるように掻き消されるあらゆる嘆き。 泣き続ける子供。地団駄を踏む子供。侮蔑の眼を向ける大人。 全てが青白き輝きに取り除かれる。
そして、この場にある負の感情は彼の宣告通り、跡形もなくなった。
藤宮人は、それで胸焼けを消すことにもなった。 「なんだったんでしょう……」 「くだらない想いの再現だ。無垢で無防備な精神を、蝕む程度のな」 ヴィルヘルムが彼の肩をポンと叩いて、何事もなかったかのように述べるのだった。
しかし、本当に怨怨級の憎悪や憤怒がこの地に眠っていれば、大事になるだろうとヴィルヘルムは懸念した。
「――――!?ティネート!隠れて!」
レムは真っ先に悪寒を感じた。 タイラストが現れた時よりはっきりしている不気味さ、危険さ、そして……不愉快さ。 ティネートを前に出したくないと思った。何処かに隠れてやり過ごせないかとも考えた。 だが、やってくるものとの接触は、避けられないようだ。 レムは今幽霊なのに汗を掻いてると思い込み、対象を睨みつける。 タイラストというと、両足を広げて立っていた。そして言った。
「……想い出に刃を塗ると、そんな感じになるのね。……だから私、あの人を見るのが、悲しくなってくるわ」
言葉に出す通り、顔には素直な悲しさを表していた。 観覧車の反対側。入り口側だろうか。……闇の奥から、無数の唸り声が聞こえていた。
あとがき 何が言いたいかって言うと藤宮人くんは感受性豊かは良いとしてお坊っちゃん育ちだからなぁ。 ああゆう抑えているというか低次元な負の感情でも参っちゃうんだよね。レムとビュティも敏感ではなかろうか。

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