| [9639] 断片集 {Sterminio} |
- 宙 - 2008年03月28日 (金) 02時38分
<目覚め>
目を覚ますと傍らには、馴染み深い男がいた。
「・・・こー、や?」 「やれやれ、ようやくお目覚めですか」 「まだ、寝惚けてるけどね。頭がうまくまわらない・・・」 「そうですか」 「・・・自然に上に乗るな。というかなんで僕何も着てないの?」 「怪我の具合を見るために、莉久が。・・・問題ありませんでした」 「そう。今体力も気力も充分にないから。もっと休ませるか・・・何か・・・食べ・・・」
そのまま再びこてん、と横になる。 今度は眠っているだけ。
<居場所>
「ふぁああぁ〜」 「あら?まだ本調子じゃないの?」 「莉久」
ふ、と表情が緩んだ。 ごく自然に。普通に。のびのびとした滅多に見られない表情。 心底から安心しているような。 気を置けない間柄だからできる表情。 ――決して今の仲間の前では見せない表情。
「んー、久々に更夜と一緒だから・・・かなぁ。あとどっと疲れが出た・・・」 「ゆっくり休みなさい。・・・調子取り戻したら、戻るんでしょう?」
沈黙。
「『今』の場所だから・・・」 「でも、此処にも貴女の居場所はあるから。いつでも帰ってきなさいね」 「うん・・・」
ふと空を見上げたら、綺麗な青空。 白い雲が流れていた。
<のんびりしてるだけじゃなかったり>
「・・・うへぇ。終わった;」 「一気に溜めてやるから。しかもそれを実行するからだ」
溜息混じりに呆れた声で更夜。 ベッドにダイブした相棒に浴びせた。
「いーじゃん。ちゃんと片付けたんだから・・・・・・」 「コツコツやろうとはしないんですか。学習してないな」 「そういうの性に合わないんだよ・・・」 「明日、喉痛めるんじゃ?」 「多少は。でも普段から慣れてるし」 「あそこまで長時間はないでしょう。仮眠も軽食も挟んだとはいえ」
だんまりを決め込んだ。 溜まってる仕事を全て片付けた。ついでにそれ以上の事もやった。 充実しているがその分疲れた。 ・・・休息はどうした。
「リハビリも一応やってる。あー、けど今日は無理だ。というわけでお休み」 「食べて歯磨きしたからってそのままバッタリ・・・着替えずに」
はぁ、と溜息。 けれど目元は穏やかだった。
<限度を知れ>
そろそろ戻ろうか。そう思っていた矢先。
「・・・いつになったらその激しい消耗を改める気で?」
鋭すぎる更夜の一言。 ズギャン、と抉る。
「い、いやあの、寝れば大体治ってるし」 「ほぅ。今回の事を筆頭にどう説明する気で?」 「それはたまに・・・・・・」 「たまに?たまに“仮状態”になると?体力気力を酷使して著しく消耗して」 「これでもまだマシな方・・・・・・」 「マシ?無茶するな。『汝自身を知れ』。もとの意味はわかるだろう?」 「・・・『身の程を知れ』」 「何度目だか覚えてます?こうなるたびに言ってますけど」 「・・・・・・覚えてマセン」 「早く対策立てなさい。・・・続けるようであれば」 「といってもどうすりゃ・・・・・・」 「改める気はないようですね」 「あえ?」
反転。暗転。
<待ち時間>
宙と珠姫が何処かへワープしてから。 彼方は今しがた存在を認識した青年に声をかけた。
「・・・お前は?」 「ん?ああ、貴方が例の・・・・・・私のことはなんでもいいでしょう」 「ただの一般人はこんな所に来ない。それに・・・得体が知れない」
正直に彼方は第一印象を本人の前で述べた。 ただのカンでしかない。 そして、はっきりとこの男が言わない事もわかった。 今度は質問の矛先を変える。 ・・・本当に、気になったから。
「・・・それ、なんだ?」
それ、と言ったのは青年の手にある小さな黒い球体。 ビーダマに見えた。 だが見覚えがあるような気もする。
「まぁ・・・通信機でもあり、テレビのようなものでもある。 なんと言えばよいのか。うまくいえませんね」
男は苦笑した。 それは本当にそうだと見えた。
<帰り道>
今現在、烏丸姉弟は透が出した雷虎の上にいる。 彼方が歩けないためだ。 感電の恐れはないらしい。
ところで透の機嫌は目に見えて悪かった。 それはもう『触れたら火傷する』ぐらい。 冗談じゃない。本当に火傷するだろう・・・電気で。 いや・・・火傷だけで済んだらラッキーかもしれない。 『触らぬ神に祟り無し』ならぬ『触らぬ神威に祟り無し』の状況。 触れたくとも触れてはならない。あの更夜という男について。 好奇心がないといえば嘘になる。が、自分の身の方が断然優先される。
気まずい沈黙が雷虎の上を支配していた。
<いつの間にか戻ってきました>
先延ばしにしていた気になっていた事。 彼方は思い切って戻ってきた宙に聞いてみた。
「更夜って・・・どんな奴だ?」 「猫被らないと好かれない奴かなぁ。大体の奴から」 「・・・お前にとって、奴って、なんだ?」 「・・・・・・大切で特別な奴だよ」
そう言って色んな感情を含んだ笑みを此方へ向けた。 ――強いて言うなら、プラスがやや多かった。
<あの芸当何>
「お前、不身なわけ?」 「えー、違うよ僕は普通の呪術師だよー。妖の血が混じってるけど」 「その時点で普通じゃねぇよ」 「あれにはタネやシカケがあってだね。詳しくは説明しないが妖術だよ」 「・・・・・・は?」 「簡単に言っちゃえば魂をこの身体から別の器に一時的に移し替えたのさ」 「はぁ!?」 「今は戻ってるけど。長時間か頻繁にやると本当にんじゃうから。稀にやるのさ」 「・・・・・・」(声が出ない) 「最終手段だし。バラされたら身体自体が戻るのに時間かかるし。やるたびに凄い消耗するし」 「・・・・・・呪術ですらねぇのかよ」 「・・・まー、妖術って言った方が的確なんだよ。呪術の分類にいれようと思えばできるけど」
<私のかわいい人形>
呪術には代償が必要。 体力・気力だけが代償ならばまだいいが、高度な術になるとそれ以外も要する。 支払えば支払うほど強力になるのもある。 が、極々一部の例外を除き、身代わりを使う事が出来る。 保険として使う以外にも身代わりはいるのだ。
「・・・お前、呪術たくさん使ってるけど身代わりどうしてたんだ?」 「ふっふっふ・・・・・・」 「・・・・・・?;」(冷や汗が垂れる) 「特別にお見せしよう・・・・・・ついといで!」
ラグナロク本拠地の何処か。 ちなみにアイマスクとヘッドホン着用させられました。 ・・・そんな事しなくてもそれ以外のせいで覚えちゃいねぇよ(泣)、とは彼方談。
取り外して辺りを見ると、
「うわあああぁぁっ!?」 「いい反応をありがとうw」
なんか、いっぱい、おる。
「な・・・なななななななんだこいつらはっ!?」 「私のかわいい人形です」 「『にんぎょう』か!?『ヒトガタ』か!?」 「どっちでもいいよ。大丈夫だよ」 「目がんでるぞ!?んだ魚の方がまだマシな目ェしてるぞ!?」 「いざというときにも煌かないぞ☆」 「煌いたら逆に怖いわ!!それと“☆”って言うな!!」
形容し難いものがありました。 これ自体が呪いに使うといってもおかしくない外見。
「名前は森さんといいます」 「名前あったの!?」 「一括して森さんです」 「種族じゃねえんだから!!」 「材料は不要な物と私の一部だったものならなんでもいいから超エコだよv」 「えー!?」 「役目を果たしたら割れてよい肥料になる事が多いよv(元が元だし生ゴミが多い)」 「なー!?」 「材料を用意してちょっと力をこめればこうなります」 「はー!?」 「ちなみに私の一部だったものは役目果たしたら消えます」 「・・・まさか、一度に複数割れる時もあるのか?」 「ん。だから作るのタイヘンな時期もあるんだよね。ま、製作自体には苦労しないからいいけど」
自分の眼を指して宙は言った。
終
************************************************************ 予告通り。こんなに遅くに何やってるんだろう自分(本当に) 頑張って自粛しました。ある意味で(爆) 森さん、手はありません。こけしみたいな感じです。フォルムは。 書き足りなかったらまた断片集で書くかもしれません。 今の所はありませんが。これに関しては。
*A・Yさん なんかもうめんどくさかったので名前はさっくりと(オイ) ご名答。蜂の巣ほど用意しております(^^;>今回参照 普段は猫被ってるんですけどねー>更夜 珠姫の場合は嫉妬の方が大きいかな。 うーん、わざと間違えるのだとすれば、後者ですかね。

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