| [9621] Pathetic courtship 23 |
- A・Y - 2008年03月22日 (土) 19時29分
コンフェ「時間を置いて四本目です」 夢幻「……本当に一日ちょっとで書いたの?」 コンフェ「はい。インスピレーションが働きまくったそうで」
response to 宙さん 歌王は正解だけど彼の王国じゃないんですよね。 お菊さんは愛されてるんです。うちの嫁(婿)の一人だしーw(オイ) グギャっているのが逆に安心なのよねぇ。もうかなりピンチですがまあなんとか(なんとかって)
コンフェ「それでは四本目ー!」 夢幻「ENTER」
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夜にぼんやりと浮かぶ巨大な車輪。 用途は、輪の先に着く台に乗って、このテーマパークやそれ以上先にある景色を眺めること。 乗客の安全の為に台は箱型で、中への扉もある。窓から吊り下げる鎖も頑丈だ。 少なくとも上に登っていく代物ではない。 ましてや羽をばら撒いたり斧を振り回したりなどして暴れる所じゃない。 ……何も見えない闇を眺めても、また最初から展望する気のない者達には関係ない話だった。
観覧車にて小さな影が二つが、幾度も交差する。 交差は衝突と同義で、距離を取っている場合も互いの得物から飛び道具を弾き出した。
「なんか微妙な気分よねぇ!」 「…………」 「無理にやらされてるようだから、調子が良くないわぁ?」 「……気持ちは分かる」
ティネートの足が台車の一つに留まった時のこと。頂点から四つか五つ辺りだ。 最初から飛べる翼を備えるエイロネイアは問題ない。闇夜に佇んでいる。 互いに攻撃の手を休めた。どちらとでもないぐらいのなんとなく。敢えていうならエイロネイアから。 但し、翼も斧も下げてない。
「どうした?休憩か?」
エイロネイアより上から声がかけられた。 観覧車の天辺を陣取ってる輩だ。そしてティネートとエイロネイアが此処で続戦する原因になった男。 確か、ヴィーヴィーと呼ばれている。
「あなた、ワタシを仕留めるつもりだと思いきや、無理やりあの子を連れて来て、放り投げるなんて、 続投させるにしては、ちょーとばっかり傲慢過ぎない?」 「流させるように戦ってたけど。考えれば、必要ない気もするし……」
少し、微妙な空気の沈黙があった。 やがて彼は口を開いた。特に怒気はない様子で。
「……オレはご主人様の命令に従っただけだぜ。継続させる上で邪魔も入らせないってお心遣いでな」 「……余計なお世話って」 「お世話はともかく余計の度合いなんて分からないだろうな。そもそも余計という言葉なんて無いかも」 「あなたのご主人様の辞書にぃ?」 「……………………」
ティネートには漠然的な皮肉を返したが、続いたエイロネイアの質問には、答えなかった。 また妙に長い沈黙。暗くてよく見えないが、きっと複雑な表情をしている。
「とりあえず適当なところで切っとけばいいんじゃねーか。ほら見てるし。ワクワクしてるし。今のところはやる気出しとけ」
視線の方角は分かった。きっと本物の野次馬である彼の主なんだろう。 彼自身がやる気の無い声で続投を勧められても、幼女達はやる気を取り戻さなかった。 渋々と仕切りなおす。
苦労してるんだな…。とティネートは思った。
よく見たら、此処は舞台の上だった。 余りに広い空間だったので……大体、プロ野球場くらいだろう、だから気付かなかった。 久耶子の出した火の玉人形が照らしてくれたおかげで、階段状に設けられた客席もあった。
「スタジオドームってわけか」 「ほんと、こんなところに来ていたなんて」 「誘導されたってレベルじゃねぇな。ワープだこれ」
ランバダとライスが愚痴を交し合う。 こんな呟きは出るのなら、余裕も出来てるようだ。 二人は顔を合わせ、頷く。 ライスが彼女に向って声を張り上げた。
「久耶子さーん!」
久耶子はまだあの黒電球と打ち合っていた。 頑丈過ぎるのか。ゴブリン人形の攻撃力が低いのか。……前者であって欲しい。これでも接近戦の威力が高い仕様なのだ。 もう一種を出すことも考えたが。あちらのもう一体のカタアリも未だ正体が掴めないのが気掛かりだった。 火の玉で影を追いかけたが、のらりくらりと逃がしてしまう。 その上隙あらば久耶子に襲い掛かろうとするのだ。火の玉が久耶子当人から離れ過ぎた場合のみ。 其処はランバダがフォローしてくれたから大事にはならなかったが。 「根暗な野郎だ」「よっぽど暗いところが好きみたいだね」との吐き捨て通り、暗いところが好みらしい。
自分が狙われた時に、影の欠片は見えた。 小さかった。爪らしきものも見えた。……おそらく、獣型だと思うが、もしかしたら……。
「久耶子さん!久耶子さんってば!」
恥ずかしいことに、自分の悪い癖が出てしまったようだ。 集中し過ぎると、周りが聴こえなく。……ライスの声は当人がすぐ隣まで来てやっと意識に入ってきた。 ほぼ同時に腕を掴まれる。
「上がりましょう!外に出る方を優先して下さい!」 「あ……分かりました。ただ引っ張らないで、操縦が」 「俺達も居るだろ。一人だけで戦ってると思い込むな!」
ランバダに怒鳴られて、少し落ち込んでしまう。 だが気落ちしている暇もない。三人で客席の階段へと走った。
タフなカタアリに構ってないで、出口に向った方がいい。 こんなところで時間食ってる場合じゃないのが本音だから。
ビュティはやや途方に暮れていた。 謎の乱入者によってティネートは浚われ、レムも気絶してしまった。 レムは『飛翔』をして追いかけたのかもしれないけど。 しばらく待った。大凡十分くらい。 けれど、レムが目を覚ます気配がまるでない。
「……ビュティ」 田楽マンが心配そうにレムとビュティの顔を交互に見る。 自分でも気付いている。とても心細く、同時に自分の無力さに対して腹立たしく思っていることに。
………………いいや。 出来ることは、ちゃんとある。
「ビュティ?」 「田ちゃん。一旦此処を離れよう」 「え?」
唖然とする田楽マンに、ビュティは真摯な顔で説明した。
「遊園地から出るの。大丈夫、あくまで入り口付近だから。こんなところに居たらまた襲われるかもしれないし。 カタアリ以外が居ないなら、寧ろ遊園地から離れた方が安全よ」 「うむ。とりあえずそれが正解だな」
肯定する返事をくれたのは、田楽マンではなかった。 ビュティは振り返ると、三人の人間が居る事に気付く。
「また会ったな」
幸いにも、内一人は以前見知ったことのある人物だった。 確か、厳島祝子。 「魔道の協会のものです」 水色のタイツ・タキシードに黄色いリボンの黒帽子を被る、赤毛の青年が目線を合わせながら接してきた。
「彼女は?見たところ外傷はないようですが」 「大丈夫です。気絶しているだけです」 「そうですか。良かった」
人の良い柔らかい笑顔で安著の息を吐く。 見ず知らずの人を我が事のように心配する人の目だ。信用出来る者だとビュティは悟り、受け入れる。
「ウーノ。その子達の守護を任せる」 「ヴィルヘルム様。しかし……」
ウーノという青年と、ヴィルヘルムというおそらくは少年。 立場は彼の方が上で、実力もあちらが高いようだ。 勿論、祝子含めこの三名の力量なんて非戦闘員のビュティには全く分からないが。
「案じてろ。引き際は弁えている」
顔は羊を模したらしい可笑しな兜で隠していて、色や具合が分からない。 けれど目は覗いていた。彼もまた信頼に値する光沢があった。 だからだろうか。
「――――あの!」
ビュティが声を張り上げた。 ヴィルヘルムは、兜の半分だけをこちらに振り返らせてくれた。
「……仲間達のことを、よろしく、お願いします」 「……うむ」
あとがき ティネートvsエイロネイア。ランバダ・ライス・久耶子の戦い。 そういや火を使う奴多いなこの章の戦ってる人達。 ヴィーヴィーはデザインのインスピレーションがシーカーに取ってかれ(ry ところでウーノさんはヴィルヘルムに対し執務上が関わる場合は敬称。それ以外は愛称のヴィルで通してます。

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