| [9611] Sterminio Y |
- 宙 - 2008年03月20日 (木) 14時04分
ワタリガラスの名を冠する青年。 もう1つの、自分が名付けたもの。 レイヴン―――彼方は宙の姿を見て僅かに動じた。 が、それもほんの一瞬で、一気に間合いを詰める。
キィン
彼方を一撃を、宙は氷の武器で受け止める。 氷に亀裂が入る。それを見て彼方がもう一撃を亀裂にこめる。 割れた音。顔を顰めたのは彼方。視線の先。手に突き刺さっている細い氷。 間合いが取られた。宙が引いた。頬を文字通り冷たい氷が走る。置き土産にできた傷。 頬を伝う液体。ペロリと舐めた。鋭い目付き。すぐさま跳びかかる。 力を込めた一突き。何本か髪がはらはらと落ちた。頬の傷だけで済ませた。 宙は無表情のまま柄を持つ手首を掴んで体全体を使って捩じ上げる。 させまいと刀を持ち替える。その前に放し蹴り飛ばした。 吹っ飛ばされる身体。勢いと故意が半々。 乱暴に頬を流れる血を拭う。冷ややかな目付きのまま。
「なんで・・・・・・」
ポツリと呟かれた言葉。 それはようやく勢いが止んだ身体の方から。
「なんで生きてんだよ、てめぇ・・・・・・?」 当惑の色が若干見える。 その呟きに宙は答えようとしなかった。 「・・・・・・ありえねぇ。お前は何だ?」 「・・・人間、かな」 「白々しいんだよ!!」 予備動作なしで投げられたナイフを、宙はひょいとかわした。 激昂してる相手だ。行動自体を予測したのだろう。 今度は彼方自身が跳びかかり、胸倉を掴んだ。
「・・・今回ので更に疑ったぜ。お前の種族をな!! あんな状態で!バラバラ死体から!生き返ったとでも言うのか!?そんな芸当できたのか!? それとも何か?不死身か何かか!?あぁ!?」 襟首を絞め、喉に刀を当てる。 そのような状態でもやや顔を顰めるだけで、平然としている。 ――その様子が更に気に食わない。
「大体お前は・・・お前はいつもいつも勝手な事ばかりしやがって・・・・・・ 人の気も知らないで突拍子もなく身を危険に晒しやがって・・・・・・ それに・・・・・・っつぅ!!」 途端に手を放した。突き飛ばした。 たたらを踏んだものの、こけはしない。 彼方は頭を押さえていた。顔を思いっきり引きつらせながら。
激しい痛みに苦しむ彼方を、宙はどのように見ているのか。 残念ながら彼方にはそんな余裕はなかった。 「・・・心配、したワケ?」 「あっ・・・っつっっっ・・・・・・かも・・・なぁっ・・・・・・!!」 「ふぅん・・・・・・」 「がっ・・・・・・あ・・・あああぁぁぁあああぁぁぁああああぁぁぁぁぁぁあぁぁ!!!」 喉が潰れそうな大声で咆え、凄まじい速さで突進してくる。 対する宙はただ――――跳んだ。
トッ
着地したのは丁度刀の切っ先。 唯呆然と固まる彼方。再び跳躍する宙。 とび蹴り。再び飛ばされる。だが追撃が襲う。刀が別の場所へ飛ばされる。 踏み留まる。態勢を立て直す。 しかし動けるのはそこまで。
「[フリーズ・ツェペシェ]」
地表から生い茂る樹氷。 容赦なく足を貫き、これ以上の歩みを止める。 いや、下だけではない。横からも。 壁からも樹氷は育ち、腕を幾本もの枝が貫いた。 完全に身動きが取れない。
ゆっくり、ゆっくりと歩いてくる。 痛みは感じる。だがそれよりも恐怖が勝る。 来るな、と言いたかった。しかし声も出ない。 そういえばいつの間にこんなに寒くなっていたのだろう。全く気付かなかった。 樹氷が現れる前から、冷気は満ちていた。
目すら瞑れない。 震えているのは寒さからだけではない。 此処で出会ってからそのまま変わらない薄氷色の瞳が徐々に大きく見えてくる。 いやだ。来るな。近づくな。頼むから。おねがいだから――――
ス、と手が上がる。 爪が長い。――――透明な爪がある。 ああ、氷でつけたんだ。そう思った。 どこか諦めにも似た感情があった。
グサリ
刺さったのは、耳の中にある、何か。 それを出して宙はニヤリと笑う。 距離をとった。これで終わりなのか?拍子抜け。
「珠姫」 「此処に」 気付くと宙は1人の女を召喚していた。 人でない事は知識としてわかる。それだけでなくとも気配が違うが。 まぁ、慣れてないとわからない程度。
視界が少々ぼやける。しかし幸か不幸かブラックアウトはしそうにない。 珠姫が何か唱えている。普段とはガラリと変わって真剣味を帯びた声色、表情。 妖魔の本質、ともいえるのだろうか。 空気が変わる。2人の足元に陣が見える。正確には珠姫の方から。 カッと一気に陣が大きくなったかと思えば、消えた。 ―――移動、したのか。
ふと視線をずらすと、ずっと気付かなかった存在にようやく気付く。 黒い小さな球体を手に持っている、見知らぬ男の存在に。
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*A・Yさん 昴が戦ってるの・・・えぇ、全然ですからね。ああ、そうかも。片手で足りる・・・(苦笑) あの蜘蛛型機械にはいくつかの移動タイプがあります。 そのうちの1つが統率して駒として動かすもの。 テケトーに動いてるの仕留めるベルセルクモードもありますが。 多分、ただのジャックでいいと思います。 まぁ相手が何なのかは次回・・・ですかね。 んー・・・土曜になるかなぁ、と思います。

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