| [9604] Pathetic courtship 18 |
- A・Y - 2008年03月18日 (火) 16時23分
コンフェ「うー……;;」 夢幻「どしたの、また無理してる?(続きを書く意味で)」 コンフェ「いえ、ヘッドホンを付け続けると体に悪いなぁと」 夢幻「……耳痛くならない?;;」
response to 宙さん 本当のことです。徹夜して振り絞ればなんとかなるかもしれません。 まあ冗談として置いといて。フラグは最初からあったんだと思えば納得行くかと>例のお嬢さん はい。カタアリ編つうか風が荒れるのはこの暴走が原因ですね。 ですよねー^^>他の編見ても分からん。 こういうのを結果先取りというのでしょうなぁ。今はもう時間軸<フラグ成立な思考ですから。 矛盾を出さないことだけ気をつけますよっと。
コンフェ「激しい曲だと頭がガンガンしてくるし、落ち着いた曲でも心臓に悪くなってくる」 夢幻「耳は大丈夫なんだね。まあゲーセンで慣れてるからか」 コンフェ「それでも時間がある限りストックを作り続けないとね」 夢幻「程ほどにしてるけどね……じゃ、ENTER」
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一人の青年が夜の荒野を駆けていた。 黒い外套に包まれている。 その中には一振りの日本刀を携えていた。 彼は赤い唇をやや引き攣らせた。ちなみに息は全く乱れていないし、汗は一つも掻いてない。
「……少し遅かったですね。けど、まだ間に合います」 「いいえ。間に合いませんよ。極卒の御方」
極卒という青年が目を見開いた。姿こそ現してない相手を睨むように。そして走ることは止めない。
「――――これはまた奇遇で」 「はい。そのまま走り続けることは正解ですね」 「暇潰しに来たのなら、斬りますよ。急いでるので」 「おや、あなたにしてはらしくない。下拵え無しで戦場に赴く姿勢といい、何が気を短くさせるのです?」 「知らない振りは御自身の破滅を呼ぶだけですよ」 「……うん。本気で急いでいらっしゃる。あなたが傍観に着かない心は本物ですね」 「キミも戦力に連れて行きたいのが本音ですが、無理でしょうね」 「無理でしょう。ところで、闇の更に宵闇への道は私の方が得意ですが」
今度は眉を潜めた。こんな彼は珍しいものだ。 それを踏まえて戯言から本題への匙具合を調節するのだから、本当に小憎らしい男だ。
「……望む引き換えはありますか?」 「いえいえ、極卒さまに頂けるようなものなんて、こころある形で充分です」 「………………分かりました。一つあなたの気に入りそうな人形を見繕ってきましょう」
ニヤリ、と顔が半分だけハッキリした男が笑んだ。
夜の闇より昏い暗闇が、一瞬の内に一塊となって極卒の前に現れる。 闇の形は変わり、塊は道となって別の闇の空間、そして光の道標を作った。 「感謝します」 礼を残し、脚に拍車をかけて極卒は光の先へ行った。
見送ってから、姿を星明りに晒す。 黒いタキシードに白のワイシャツ。黒のシルクハットにマント。 最も印象に残るのはキッカリ割った半分だけ顔を晒す仮面。 その下も緑色の肌の端整な形と相まって、奇妙で妖しい。 ジズという名の、半仮面の怪人は、戦場に向い行く友人へ向けて片腕を胸に付いての礼儀を行った。
「行ってらっしゃいませ」
見方によっては不気味にも妖艶でもある笑みを浮かべたまま。
カジノはいつも通り五月蝿いくらい賑やかで、目に毒な程度に煌びやかだというのに。 今晩は全くといって本来の用途は使われなかった。 賭けているものがあるとすれば、彼らの命とソレらの存在意思だろう。
スロットマシーンは狂うように目を回して、コインを吐き出す。 ディーラーのないカードは勝手に踊り散らばる。 ミニチュア競馬場の馬達は爆走を何時までも続けていた。 ミラーボールすらいつもより早く激しく回転している気がする。 光の乱反射がこの室内の領域全てを虹色に照らしていた。
「ウジャウジャウジャウジャ沸いてきやがって!」 破天荒が怒鳴りながら、群がるカタアリを蹴散らす。
「彷徨(さまよい)級か?よくこんな場所に寄せ集められたものだ」 緑竜が淡々と分析しながら、近寄るカタアリを薙ぎ払った。
「戦局は変わらないだろう。量はともかく質に変化もなければ」 ソフトンが冷静を欠かさず、素早く各個を無に返した。
「てゆーか!ただの、足止めじゃないかこれは!?」 平原が無闇に喚き暴れて、大雑把に一掃する。
「……そうだろうな」 ボーボボはただ一言呟くように返して、カタアリを葬った。
敵はカタアリで違いないだろう。 それも魔力のない人間にも分かるくらい視えて。触れると壊れ、吹けば消える程度の幽かさ。 思考は無くただ生きている者を襲う。だから統率も無いし動向も単調だ。 しかし、本当に考えなしで我先に飛び掛るもの故に性質が悪い。自分が消える恐怖も無いのだから。 そして輪郭が殆ど人の子供の形をして、顔はないが、目の部分に何かを求愛している光の気配があるのが、 慣れないものには辛い。慣れているものにも歯痒いだろう。
激しい拒絶によって彷徨は消える。文字通り影も形も無くなる。 勢い余ってスロットマシーン等に衝突して消滅するのもあるが、硬質な金銭遊戯の道具は傷一つ付かない。 金も入れないでこの客達は何しに来たのやら、と呆れているかもしれない。
ただ、カジノの隅っこにて。 見物者が一つ、在った。 この影は、視えない輪郭が、大きな双眸をはっきりと開いて。見定める。
――――先にあの方の生餌を用意しましょう。そう、あの男にしましょう――――
今は黒い緑が散っては風が舞っていた。 吹き付けるのは鎌鼬。形有るものに触れて、切り裂いて、そして治さない。 鎌鼬の他には火の粉や雪が見えている。混じって水と化し幽かに草木を潤していた。 自然の形でないものもあった。その代表が矢だった。
今宵の天気は強風時々火柱たまに粉雪、矢雨。 雲が多く固まっている模様。いつ赤い雨が降り出すか――――。
黒い森の中で駆け回る複数の影。 一方が一方を追う様に見える。あちら側を錯乱させる為に動き回っているようにも受け取れる。
影の一方の形は分かり易い。 丸い塊だった。鉄球が先端の鎖と間違えても大差ない。 重すぎず軽すぎない唸りを上げながら、自分と違う影を追いかける。 しかし、今度も逃してしまう。当たった手応えはまだない。
「クソッ、すばしっこい奴らだ」
光闇が苛立ちを零す。舌打ちを抑えながら、攻撃の手を緩めない。 鉄球らしき影の正体は、彼女が使うバレーボールを能力の影使いで包んだ物だ。 影の源、灯りになったのは黒猫の火だ。
「んー……丸裸にしても、あんまり意味がないねぇ」 「いっそ思いっきり焼いて明るくしたら見えるんじゃない?」 「そこまでしなくてもいいような」 鎌や風や火を揮いあいながら意見を交わすジェダと黒猫に、なのこが混ざる。 控え目なことを言いつつも、こんなところで足止めを食らっている暇も無いのも確か。 だが、足止めというのは少し間違い。彼らは確実に前進しながら戦っていた。 草木を刈り取る形で。
あちら側はやはり不利だった。 迂闊に飛び込めない。隙も見せてない。その上に先手を取られてしまった。 牽制と反撃を入れながら後退するのが精一杯である。
(やっぱり先駆け兵を借りとくべきだったね) (ロウスだからって渋るんじゃなかったか。まああの手練相手に、即席ヒトカタじゃ足止めにもならないけど)
心のみで伝え合う。彼らの間でしか出来ない芸当を駆使しながら、彼らは弦を引く手に間を空けない。 余裕があると言えば嘘になる。けれど窮地でもない。
(……プティが造ったものなら) (まだ早い。筈だ。少なくとも機会が……)
慎重で臆病腰の欠片は切り札らしきものをと勧めるが、勇敢で猪突な部分はまだ強気風を見せるつもり。 こんな時こそ、彼らの中間であり最も冷静かつ客観的な欠片が必要だった。彼らも良く分かっている。 分かっているからこそ、二人だけでこの役割を果たそうと固く誓った。 此処に来れない彼の分を、二人で補い合って鮮やかに狩りを行い、彼の存在を示す。 でなければ。
「またおまえらか」
狙ったように良く知る声が、耳に届いた。 彼らのやり取りを中断させるのに充分な、冷たく、強い響きだった。
コンフェは静かに佇んでいた。 様々なものが吹き荒れる嵐の中で、全くものともしない。 弁一つ落とさず花のようで。
「もう一度、我が行く道を妨げるなら。……使わざるを得ないですね」
黒い布は肩に掛けたままだった。 その代わり、爪先が赤く染まり始めていた。
あとがき ジズ:ポップン8・10・15に登場した。『ダークネス』シリーズ担当キャラ。人形遊びが好きな正体不明の怪人。 半分仮面の下も本当に素顔かどうか分かりません。
各地の交戦模様ですね。膠着していれば前進しているのもあると。 乱入参戦側はまだまだあります。

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