| [9588] Pathetic courtship 16 |
- A・Y - 2008年03月05日 (水) 18時19分
夢幻「二ヶ月も止まってるね」 コンフェ「冬眠に入ったみたいです。それとも春眠?」
――――コンフェ、なんだか気だるいんだ、眠ってしまいそうだよ・・・
コンフェ「しっかりして、寝たら殺すよ」 夢幻「誰と話してるの;;」
response to 宙さん 一応普通の人間ですしね、痛くなると思います。 いやだっもうナイトだなんて書いたこっちが照れますよ// TIPSのフラグ回収です。鳥鍋に勘は働いてましたかな。 五寸釘についてはまたおいおいと、多分次の活躍は彼女らが再会する時と同時かなぁ。 適当に彼に対する主の感情ってこんなんじゃないかなって書いただけですから〜。 作者的には、とりあえず『光』を退治出来そうな可能性があると思っている。 大丈夫そんなにトンデモでもないから。まだ死なない人間ってくらいしか発表してないし〜。
コンフェ「ここで点火しないと何時までも目標が達成出来ないからね」 夢幻「目標あったんだ」 コンフェ「自責だから詳しいこと言わないけど。じゃ、ENTER」
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人はまず通らない道。人はまず進軍しない夜に、一つの影が駆けて行く。 夜を主とする生き物はまず気にしない。本能的に避けているのだろう。 碧の頭をした赤い猫も気に留めない。ちょっかいを出されても返り討ち。 幸い邪魔はなかった。邪魔という程のものではないものなら時々あったが。そんなの空気と一緒に溶かした。正に塵屑だ。
ラークリは猫のような軽快な足取りを止めた。実際に脚は使ってなく、飛んでいるのだけれど。 地上に降りてから、無数の星が瞬く夜空へと振り返る。 そして宝石の一欠けらを放った。 チリリッ、という微かな火花と音が虚空に響いた。
「……で、一応敵じゃないよね?」
背後からの違和感をとうとう拭えなかったようで、応えた。 鬱陶しいと邪魔はやはり同一らしい。 その瞬間から、一人の少女が佇んでいた。 薄い青髪に切れ目のある灰色の目が中心の整った顔。 服は薄茶が中心の地味な色だが、おそらくゴシック系のドレス。 髪を纏めるリボンが何層にも括って結っているのが印象的だ。 登場の仕方は空から飛び降りたというより、地面から浮き上がったと言うのが正しい。 本当に土を盛り上げて出てきた訳でもないが。
「話しかけられるのは初めてかしら」 「それ以前に全く持って知らない顔だよ」 「あら、しっかり記憶してるわよ。あなたの外郭から遺伝子構造まで解析済み」 「お前だよ」
フッ。と彼女は笑んだ。 怒気はあるが敵意はないラークリの視線を余裕で見返している。 不敵な雰囲気を持つこの女の正体は、屋敷の開かずの地下倉庫に眠っていたエレメントドールだ。 根拠はない。なんとなくだ。しかしこれしかないだろう。
「アイツに言われる前から付けてきたのか」 「最も優秀と呼ばれる従者は、主の思惑をさり気なく予知しさり気なく先回りすることですから」 「よく喋るな。50年黙って凍結されていたわけでもなさそうな」 「よく返すこと。察しの通りあの屋敷はほどよく寂れてて、地下は退屈だらけ。 あなたが来てようやく活気付いた。その経緯もちゃんと見守ってたわよ」
この瞬間、ラークリの赤い双眸が鋭利に細くなった。その視線だけで相手を焼き殺せる気で。 「…………デバガメ人形」 「否定しないわ。贅沢な猫さん」 対する相手はなんら慄くことはなく、寧ろ更に鼻に掛ける笑みを返した。
ここまで結構な苛立ちが募ったが、此処で彼女と一悶着しても意味はないだろう。後々が怖いだけだから。 あちらは何処まで見越してるか知らないが、目的を伝えることはしたようだ。
「大丈夫よ。例え私のミスであなたが背中を撃たれても無傷で済むわ。 眩い八光の紋章が与えられたあなたならね」
遠回しで嫌味な言い方でだが。それともラークリの聴き方が味を悪くしているのかも。 その時気付いたが、彼女の胸元には前房を集めた一つの髪留めがあった。 髪留めというよりブローチのようだが。大きさからして、割と目立つ。 形は線星。それも七つの線で描いた光芒星。かの有名な五芒星の点線角を二つ足したものと言えばいいか。
「ふーん……きみは実質上、七光の所有物のままってとこ?」 「当代への忠誠は先代の忠誠の証。それとこの紋章は別ということ。片割れは分からないけどね」
ブローチもといエンブレムを手に取りながら、彼女の笑みは深みを帯びていた。 どうやら誇りに思うものらしい。ラークリからすれば多少なりとも羨ましいものである。
「さあ、与太話はこれくらいになさって。かの目的地へ行きなさい。遅くても夜が明ける前にね」
話をあっさり切りながら颯爽と消えていった。 こちらが黙ったことで即締めに使ったんだろう。言ってやりたいことはまだあったんだが。 ……まあ、次の機会はあるだろうから、今はいい。優先すべきことは忘れてはならない。
それに今のは彼女本人ではないだろう。いや言い方が違う。正しくは本体か。 一目で分かる。昼間なら鈍い奴でも気付いただろう。 奴には質感そのものがなかった。その場に居たのは彼女を映した映像。触れても透ける立体。 超高性能の小型映写機。遠隔操作で音声も全く雑音無しの通信だから大したものだ。 本体はかなり遠いところに居るだろう。ひょっとしたら屋敷に一歩から動いていないのかもしれない。
ちなみにご丁寧にも、付け加えるように名を明かしてくれた。 映写機が流星の如き動きで描いた光芒。 花火より薄く月よりも鮮烈に輝いて消えたその名前。
「ファンナ。か……」
水が呻っていた。 そして波を大きく作っていた。 赤い色は混ざることはない。 方や最初から無い色だから。 方やまだ皮も破られていないから。 中は無く味も無く。有るのは音と形だけ。
弾けて混ざるのは花火の色と音。 赤を中心に爆ぜた橙、黄、瞬いてから黒になる。 花火と衝突して掻き消される影。人の形だったものは何の痕跡も残さず消えていく。 他にも煙や物体の欠片などがあったが、それは混ざることも無く消えて或いは浮かんで沈む。
「……ちょっと不味いな」 「キリが見えませんです」 三節棍を振り直しながら呟く浜木綿。相槌を打つ藤宮人。 弱音は吐いてないつもりだが気持ちはそちらに傾きかけていた。
余裕から徐々に焦りが見え始めたのだ。 戦況そのものは今でもこちらが優勢だろう。けれど相手側の陣営の底が、数が尽きない。 なんだが手応えがあるようでないと感じてしまうのも不気味だ。例えれば相手が霧なのか金太郎飴なのか分からないといったところ。
そこを切り崩したのはコンバット・ブルースだった。 彼は隙は一切見せない動作をして何十個目の薬莢を足す。
「此処を抜け出すか、或いは……」
本体を叩くことだ。 幸いにもコンバットには心当たりがあった。 重火器の銃口をある一点に向ける。
「とっくに目星は付けている。……其処だ!!」
トリガーを引いて火口を切り、炸裂弾を弾けさせた。 ところ構わず迫ってくる形のある影が群がっているので、当てずっぽうにも見える。 ……のだが。
バシャァアン!! 「……おや」
と、水の爆発音にまるで街中で知り合いに声をかけられたと同じ調子の返事が混ざる。 飛び上がった水は一時の雨になり、床に飛び散ったりまた水槽に戻っていった。 そして浮き上がる影があった。 それまで襲い掛かった敵とは明らかに違う気配に、全員が身の毛をよだたせながら注目する。
「――――よくお分かりになりましたね」
暗がりに映る夜と同じ色の男。 コンバットが良く知る、昼間会ったばかりの相貌。 バーバロウスだ。焦げ跡を袖先も付けず、涼やかな微笑を浮かべていた。
「これが貴様の能力だったな」 「どういうことです?コンバット殿」 藤宮人が尋ねたが、コンバットは何故か自分の上司に向けて答えた。 「ハンペン様。もう一度影の正体をよくご覧下さい」
またトリガーを引いて火花を放つ。 影の正体が明るみにされされ、刹那に目を凝らすと、そういえば皆似たような服を着ていた。 制服のようで……もしかしたら。
「………………っ!?バカな!!?あの軍服は……」 「ええ。とっくの『100年も前』に滅んだ国の装備だ」 「奴は、死霊使いとでも言うのか!!?」 「少し違いますね」
驚く彼らのやり取りに少し訂正を加えたのは当人だった。 これらを生み出したのは、確かにバーバロウス。 彼が再生する対象は『憎悪』。又は『殺意』。 とうの昔に消え去った負の感情も、彼に記憶されていれば今の通り、凶器として形に成る。 憎しみか畏れか忌みか、何れにせよ他が他を害する気持ちが強ければ強かった程、その威力が増加する能力。
「思い出す時間はそっちがくれたからな。……かのヒホウ国やオラトリオで複数回、菊之丞を暗殺しようとした影があった」 「暗殺なんて人聞きの悪い。当時の目的はかの神霊を捕縛することですよ」 「どちらも今も変わってないな!」
バーバロウスに向ってコンバットが、ハンペンが怒涛の攻撃を弾かせる。 炸裂弾が撃ち込まれ、更に強大な気の塊を叩き込む。
だが、彼は浮いた。跳躍したにしては静か過ぎて、鈍いくらい。 水に波紋一つを立たせずに。それで易々と攻撃をかわした。水が爆ぜさせたのはあくまでコンバット達だけだ。
バーバロウスを捕らえようと、藤宮人の蔦が無数に襲い掛かった。 だが、彼はまばたきした。軽く目を瞑っただけかもしれない。 蔦は消えた。切り裂かれるというより宵闇に飲み込まれるように。手足に等しいものを突然失った藤宮人は唖然とした。
そしてバーバロウスは中空から地上に戻った。不気味なくらい緩やかに。 トン、という床に着いたらしい音から、水の上じゃないことは分かった。
「……少々、昔話をしてみましょうか」
誰も肯定しなかったが、彼は勝手に語り始めた。
「かつてここは穏やかな場所でした。緑豊かな森に、澄んだ泉から流れる川と、可憐な花々が慎ましくありました――――」
あとがき 残り一人のエレメントドールにバーバロウスの能力紹介。 自分の記憶と残留思念を媒介にした能力なのでかなりエコノミー。 影を使っているようなものなので、緑竜さんの能力に似ているリメンスの上位ものと考えれば。
真面目に今の状態が辛い。 昼夜逆転ならぬ朝夕逆転。これやったらすぐ寝ます。おやすみなさ(バタン

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