| [9587] Sterminio V |
- 宙 - 2008年01月08日 (火) 21時35分
その雑種は何処までも進化した。 どれほどの遺伝子があの中に組み込まれているのか。 そしてどのくらい弄られたというのか。 中身だけではない。 姿形も例外ではない。 更に先程から倒す度に変形していく。 いや、進化というか、変態というか。 異形の姿は更に進歩し、おぞましい物になる。 最早なんなのかわからない。 当然丈夫になるしぶっちゃけ厄介になる。
何回目となっただろうか。 次が最後だと宙は確信した。 が、同時に最悪だと悟った。
「ぐぅ・・・・・・!?」 「千羽矢!?オイ、どうした!?」 突如攻撃も受けてないのに千羽矢に異変が起きた。 息が荒い。顔色が悪い。 只事ではない事はすぐに知れた。 「・・・退がったら、どうだ?」 「いいえ、できません」 きっぱりと断られた。 元々彼方と酷く似ている性格。 更に其処に彼方への忠誠が加えられる。 そんな千羽矢が彼方を残して退却、などという選択肢は選ぶわけがない。 そんなものは最初から除外。そもそも選択肢として存在しない。
「何が、あったんだ・・・・・・?」 「いえなんでも・・・唯・・・何かタチの悪いものが近づいてくるような・・・」 「なんだって・・・・・・?」 「元々この場には我々が嫌う性質の物があるようで、居心地は最初から悪かったのです。 それが増している・・・」 言ってる間にも段々と千羽矢の容態は悪い方に向かっている。
千羽矢の言う通り、確かに影は近づいていた。
防げない猛攻。反撃が通用しない。 (コイツ・・・ある特殊な武器じゃないと倒れないってヤツか・・・・・!!) それでも自力で答えに辿りついただけマシだといえようか。 辿り着いても状況はそう変わらないのだが。 此方の今の所の対抗手段は唯1つ、逃げ回る事。 簡単に言うと宙は劣勢だった。
対抗策は無きにしも非ず、だが今の状態では使えない。 何発かの攻撃が彼女の身体を貫いている。 流れる血液。襲う激痛。しかし休んでいる場合ではない。 そんな事をしたら永久の休息に入ってしまう。 サングラスが壊され露になった瞳の色は紫。 手に握られた銃は攻撃には使わない。あくまで相手の攻撃の軌道をずらすため。 勾玉で防御しながらも、その死角をついて襲ってくる攻撃。 ―――いや、死角は本来できようがない。 それが生まれてるのは、らしくもなく宙の疲労からだった。 疲労による体力と精神力の著しい低下。 それにより、手がぶれる。あらぬ方向に傾く。 これでよく倒れないな、という状態。
にしても、相手はどんな遺伝子を取り込んだのやら。 どう見ても無機物としか思えない武器が見えている。 またそれが火を噴いた。
千羽矢と彼方に近づく影。 射程距離に入ったようだ。
「失せろ!!」
千羽矢が其方へ扇を振るう。 濃度の高い殺気と共に黒い羽も飛ばす。 強い風と鋭い羽。 そのどちらも相手に届く事はなかった。
代わりに小さな飾りのついた矢が飛んできた。 それは千羽矢のすぐ横を掠める。 その瞬間、悪寒が走った。 (何だ・・・・・・?) 思考の時間は与えてくれない。 立て続けに二発此方に――――二発? 一本の軌道が僅かながら彼方へ。 「くぅ・・・・・・!」 其方の軌道をずらす。 しかし、もう一本が手遅れだった。
「ぐっ!」 小さな矢が千羽矢の右肩を貫く。 傷の周囲から異変が起こる。 撤退せざるを得ない状況に追い込まれてしまう。 無念だった。 敵が、奴がいるのに、忠誠を誓った(実際の主ではないが)人間を残すのは。 しかもこれはかなり厄介な――――
「千羽矢ッ!?」 呼ぶも既に聞えてはいない。 生きては・・・いるのか?それすら確かめる術はないが。 矢が飛んできた方向を鋭く睨みつける。 そこにいたのは1人の女だった。
「――――――!!」 遠くからでも宙は察した。 千羽矢がやられた。死んではいないが。 その時の映像で、黒幕が其方にいることも悟った。 つまり今自分はまんまと“囮”の方にいるということだ。 ダミーというには強力すぎる相手だが。
「チィッ」 思わず舌打ち。綺麗に音が出た。やられた左目に痛みが走る。 皮肉にも、これで相手を倒せるようにはなったが。 壁の自分の血で描いた陣に目を向け、叫ぶ。 「七海ィ!!」 平面から出てきた金髪の青年はすぐにその力を展開する。 自らの炎をそのまま敵に向ける―――事はせずにその主人へと向けた。 その炎を受けるのは腕の勾玉。 一瞬その色が朱色に変わった。 呼応するように銃が熱を帯びる。 「!!ぐ・・・・・・」 タメている間に腹に風穴を開けられた。 敵が危機を感じたか?焦っているような気がする。 手当たり次第にエネルギーを発射している。しかも太い。
(――これが最後か!)
七海はすぐに退がらせた。 彼までやられてしまうのは流石に痛い。
すぐ傍まで攻撃が迫っている。 焦りは無意味。怯みは無駄に繋がる。 焦るな怯むな臆するな今やる事は一つだけ――――。
「ッ!!」
トリガーを引いた。
銃口から放たれたのは、大きな朱みを帯びた黄色の太い光線。
独特の軌道を描きながらも行き着く先へは迷いがなかった。
通常では考えられない火力が進む。
命中。
閃光がその場を包む。
轟音。
中々収まらなかったのは原因が1箇所だけでなかったから。
彼方はその女を見た時、頭の中で強く警鐘が鳴り響くのを聞いた。
――いけ好かない それに危険だ
思わず僅かに後ずさった。それに気付いて自分でも驚いた。
――誰かに似てる、けれど全然違う
いやな汗が首筋を伝う。 「お前・・・何者だ?」 辛うじて言えたのはその言葉。
対し女は気に障るような笑みを浮かべる。 「名前なんて名乗る必要あるのかしら?でもそうねぇ・・・ご主人様とでもお嬢様とでも呼べばいいわぁ」 フフッとまた笑った。 鼻にかけたような艶やかな微笑み。 彼方は顔を顰めた。 「は?何言って・・・・・・?」 「・・・・・・あら?決着ついたみたいね」 いつの間にか距離が狭まっていた。 女はス、と指を彼方の額に近づける。 何故だか動けなかった。
触れた瞬間、脳裏に映像が映った。
何処かのフロア。 鮮明ではなかったが、判別出来る程度ではあった。 尋常ではない血液が散乱して流れてこびり付いていた。 その中に人の下半身だけがあった。よくわからない状態になっているが。 後は・・・左手首か? 次に見えたのは内臓・・・がはみ出している残りの部位。 穴の開いた喉。その先にあったのはよく見知った顔。
「そ、宙・・・・・・!?」 無意識に震えた声。 直後自分の内部をつかまれたような感覚。 意識を失った。
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*********************************************************** ご心配なく、相打ちです。 敵の方は形完全に留めていません。 途中で切るにはなんかキリ悪くて。結局そのままいっちゃいました。
*A・Yさん そのうち一人は最初から不調だったり(オイ)。さぁどうでしょうねぇホホ。 両方ともプレイした事はありませんけどね。Wikiで見たくらいしか。 ホント見事ですよねー・・・。 え?消費税ってどういう意味です?

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