| [9578] ESP element 18 |
- A・Y - 2007年12月28日 (金) 16時34分
モルフォン「さて、今年最後の投稿になりますね」 凪「いつも時間ギリギリですね;;」
response to 宙さん その通りですね。>中間者 暗黒時代も関係有りましたからね。 トスを連れる理由は幾つか纏めてます。あとは周りの反応次第です。 やっと話の流れ出したってことですね。蟲守編の。 紅蓮さんの次の出番は……検討しますってことで;;
凪「ちなみに今回私達は出てきません」 モルフォン「続きは来年からになりますね」 凪「それではよいお年を。ENTER」
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「……もう夜なのかぁ……」
如月睦海は森の中、途方に暮れながらぼやいてた。 あさきの家から走って走って数十里。お腹の調子が悪くなったりして休憩も挟みながら。 けれど、目的の人物は影の一欠けらも見えなかった。
(たくっ!神猫さんの馬鹿助平タラシは何処ほっつき歩いてんだか!)
このまま強行軍を続けるか野宿するか本気で考えなければならなくなった頃だ。
……ビュン!
「――――え?」
梢に紛れて、風を切る音がした。 突風等にしては、無機質で、鋭く冷た過ぎる音。 例えればナイフを振るったような音が、耳に、囁く。 また聞こえた。
……ビュン!
「何……何なの……?」 近くに何かが潜んでいる。 野獣だと思うが、なんとなく、ただならない気配がする。 縄張り争いと考えるが、これは、そんな些細な自然現象じゃないと直感する。
睦海は身構えた。手には銃を、いつでも抜けるように触れて。
ビュン! ザッ!ザザッ!
まただ。今度は聞き間違いじゃない。 風と木の枝を切る音、他に梢を不自然に揺らす音が響いた。 睦海の近くで、何かが何かと争っている。 避けられないだろうか。しかし具体的な位置は把握できない。 睦海に出来ることは、息も殺して銃身を確認するくらいだった。
ビュン!
そして、ハッキリとした音は。 睦海の数歩前に立ってあった大木から聞こえた。
ビュンッ! ザアッ!
「……ぎゃ!?」 「ひゃあああ!!?」
悲鳴と共に梢と葉が大量に舞った。 横に倒された木に、睦海は尻餅を付く。間もなく横転して起き上がるが。
木からは、軽く焦げた匂いがした。 火の手かと見たが、切り口だけが焼けていた。 切り口……つまり、幹は切断されて倒れた、ということか。 なら、近くになんらかの強靭な刃物を装備した者が潜んでいる。 睦海は銃の安全装置を外した。
そよ風が、軽く梢を鳴らした。 それに紛れるものは、人が、土を踏む音。
後方からだ。 睦海は、気押されないままに、後一つ呼吸した。 そして、はっきりとした気配に振り向く。 獣ではない何者かに銃口を尽き付けた。 その正体とは……。
「……あらあら」
白い修道服に、癖毛の多い黒髪に黒い帽子を被った女性だった。 ちょっと驚いた子供のような顔を、睦海に与えている。 銃を目の前にして、飴色の目には恐怖の感情が全く無かった。
「こんなところでどうしたの?迷子さん?」 「え……ち、近寄らないで!」
キョトン、という音が出そうな間の抜けた顔が睦海を見る。 それから、彼女はまあるく目を開いて、口元を寄せる。微笑んでる。
「わたし、あなたを怖がらせるつもりは無いんだけど。まあ、こんな状況じゃちょっと誤解しても無理ないかな」
確かに、彼女からは殺気も悪意も感じられなかった。 だからといって、唐突さと不可解さからきた恐怖と、その対抗の為の警戒は簡単に拭えない。 睦海は銃身が震えないように肝に渇を入れることだけで、一杯一杯だった。 女は、少し困った人のような顔を睦海に向けてから、なんてことないように歩み寄る。 手を伸ばそうとしていた。何かしようとしている。 睦海は声を張り上げながら、威嚇射撃しようとした。
「撃つ……てあっ!?」 「クリムゾン、止しなさいよ」 「お前がな」
まるで気付かなかった。 後ろから、男の手が現れて、あっという間に睦海の銃を取り上げた。 更にあっさりと両手を奪われ、強制的に肘を地に付けさせた。 これで抵抗は出来なくなってしまった。
女は、やれやれと言いたげに溜息を吐いた。 それから宵闇の濃い森に向って、一言かける。
「サーチェス」 「此処に」
女が呼んだ森の闇から、ハッキリとした形が現れる。 冷たく静かな雰囲気を纏ったものの姿は、少年だった。 眉睫の形はよいが、細められている灰色の双眸。切り揃えた薄い青髪に、藍色のベレー帽子。 服は濃い緑で、暗いところに溶け込み易い色。軍人と忍者を織り交ぜたような格好だ。 腰に刀が輪状の留め金に掛けて差してある。どうやら武器のようだ。 さっきの木を切ったのが彼ならば……少し、刃渡りが頼りないと思うが。
「……鶏鍋は、もういいわ」
何気ないようで、何かある笑みを浮かべながら、彼女は言った。 視線は、サーチェスより後ろの、深緑の闇の奥へと向けていた。 冷たい機械のような雰囲気の少年から、何かを受け取っている。 暗くてハッキリとは見えなかったが、掌をはみ出る大きさのものだった。
(……釘?)
先端が細く尖っていた、多分金属類。 もう一度確かめようと試みたが、不思議なことに女の手には何も無かった。仕舞ったというより消えた方が正しいかも。 「力も体調も、屋敷に帰れる分までは戻ってきたし。あなたも来なさい。……あなたもね」 あらゆる意味で不思議な女性は、また睦海に振り返った。 睦海は逃げれる状況ではない。さっきからクリムゾンと呼ばれた男と、メイド服の少女に背中を取られ見張られているのだ。 彼女は男に睦海を放すよう、やや咎める口調で促した。 それから、屈んだままの陸海に合わせるように屈んで、彼女は言った。
「もう夜が更けるわよ。女の子一人を野宿させる訳にはいかないわ」 「で、でも……」 「こんなところまで来て。ちゃんとした身なりだけど……何か事情があるんでしょ」
親身になって尋ねている。 睦海に対してやった無礼なことも、丁寧かつ懇請深く詫びた。 そんな彼女から、もう恐怖を始めとした猜疑心は剃れてしまった。 睦海は、諦めて確かにちょっと途方に暮れてしまったこと。自分は人を探していることを、簡潔に話した。
「探し人?なら大丈夫、わたしが見つけて、連れて行かせてあげるわよ」
彼女は、魔法使いだと説明した。 彼女なりの情報網から、探し人を捜索して見つけて、睦海と引き合わせることが出来ると。 一日あれば可能だと自信を持って言い切った。 睦海はなんとなしに承諾した。
こうして、睦海は不思議な女の一行にちょっとだけ付き合うこととなる。 魔方陣が開かれ、あっという間に別の場所、彼女の屋敷に移動し、魔法使いを知って大いに驚いた。 その後開かれた小さな酒宴にて、不思議な女……A・Yから、神猫と会ったこと、彼と妹と再会したこと、 今はもう一人の妹の所へ向っていることを告げられた。 神猫の現状と目的地が分かり、一先ず安心することにし、勧められたワインを飲んで眠る睦海だった。
山と森の闇の中で。 一羽の鳥がようやく荒れていた息を整えていた。
正直、かなり危うい状況だった。 久々に厄介な能力者とぶつかった。 生物特有の気配がなかったから、おそらく人工物……自動人形だろう。 自分と似た、けれど殺傷力も高い能力。 そして察知能力。こちらが幾ら巧妙に隠れ覆っても的確に、迷い無く当ててきた。 密偵から暗殺や奇襲に長けた型だ。また自分と同じ型に対して強力な。 あの熱と電気を帯びた刀が肌に触れようとした感覚。思い出すだけで背筋が凍る。
けれど、あいつはまだマシだった。 彼は一刻も早く離れたかったのだ。 アレの目が届かない場所へ。
「…………つぅ……!」 傷付いた自分の翼を押さえる。 痕は大した風に見えない。小さな穴だ。 けれど、深く貫いた、中から訴えるような痛みか、時刻が経っても消えない。
油断した、というレベルじゃない。 変わり身。発動した瞬間、選んだ物体及び生物と入れ替わる、彼の絶対回避の技。 その変わり身が発動した直後に喰らったことが、尚更に精神的な衝撃を与えていた。
「……あんな追撃なんてアリかよ……冗談じゃない……!!」
所詮、人間だと思った。 人外の域まで行っているだけなら、彼の主の方がずっと畏怖すべきものの筈だった。 しかし、今しがた目の当たりにしたものに、彼の価値観は変わった。 否、決定付けられたと言うべきか。
「アレは……アレは……洒落にならない……」
アレを敵にしてはいけない。アレに関わってはいけない。アレと戦ってはいけない。 結果は死、消滅。もしくはそれを超える苦渋が来るだろう。 逆に勝つという要素が全く持ってして見つからない。
一方で、主には絶対に逆らえない。 というか、よく主もあんな存在と対等に付き合えたものだ。衝突がなかった幸運があったからかもしれない。 元々悪運の強い主だがな。だがしかし、アレと真っ向衝突する事態になれば…………どんな強い運も尽きるだろう。
とりあえず、主に伝えなければならない。 自分が感じたままの、アレについて。 出来れば、金輪際アレと関わって欲しくないのが正直な感想だ。
あとがき 睦海さんを放置する訳にはいかないので、こういう役回りになって貰いました。 もう一人について、また名前出てませんけど。宙ちゃん分かるよね?(苦笑) 思うよりヘタレじゃないって指示を無視してゴメンね〜^^; 見張ろうとした相手が悪過ぎだったってことで。まあその見張る対象を選択したのは私ですが。

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