| [9571] ESP element 17 |
- A・Y - 2007年12月27日 (木) 10時53分
凪「今日のお話は短めですね」 モルフォン「作者がそう心掛けたので。ストックが溜まり易いです」
response to 宙さん もう把握しましたから。そろそろキリを付けたいのでエンガチョしますね。 塔そのものを指して薔薇の間です。 カタアリ編に関わるフラグはこれで一段落なのです。 ここでバラすのもアレなものばかりだから保留ね。 お楽しみです。オリキャラじゃないとだけ言って置きます。
紫「ついでに言いますが私は『むらさき』です。『ゆかり』じゃありませんから」 千凪「光遊の方に出ているのが『ゆかり』です。気をつけて下さい」 祐刃「書いている人はちゃんと打ち分けているよ。コレは読む側にはどうでもよいことだけど」 紫「大事なのは私は『むらさき』と読むこと!」 千凪「それさえ伝えたなら、ENTERしましょう」
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短く毛先が跳ねてある金髪に、薄緑の縁とクリアな緑の鍔のサンバイザー。 緑色の厚手のジャケットコートと灰色の緩く大きいズボン。粘土色のシューズ。 赤いリュックサックを背負って、手には木だけで出来た釣竿。 釣竿の先端の糸には、クリスタルのような、角柱の薄い宝石が括り付けられている。 その石がルアーに見える訳が無いし、きっと見た目通りの引用をする釣竿ではないだろう。 そんな彼は『精霊の釣り人』と言われていた。
「釣り人……なのかぁ……」 「なんだ?他に喩えるものでもあったのか?」 「いいや別に」
不満があるのかないのか微妙な顔で、祐刃達に彼のことを語っていた相手を見やる。
「ジェード・M・グリーバー。ミスティーションって組織で精霊の研究をしている。コイツラとは、一応上司に当たんな」
青を点々に重ねた緑髪を揺らしながら、青年は言った。 稀しくも此処、精霊洞の精霊石の色と同じ配色だったことに笑っていいものやら。彼自身もその洒落を薦めていた。 ジェードはカジカと対照的な人物だったが、それは性格だけでなく服装も指している。 本人曰くツナギ一枚らしい。どことなくライダースーツに似ている。 深緑色で、金具は一切付けていない。のでどんなに寒くても前は閉じれないそうな。
さっきの話題に出た「精霊石を埋め込んだ位置は圧迫出来ない」ことに関係あるらしい。 が、見たところ、彼の大きく見せる胸元には精霊石らしきものはない。余り凝視するのも失礼なのですぐ止めた。 祐刃からの情報によると、室長はエレメンツの中でも特別製らしい。体温も爬虫類系だとか。 詳しいことはまた追々になる。
今回はカジカが話すことがある。 「そう、僕からの特別講義ってことにしよう。その為に連れて来たんでしょう、モルフォン」
穏やかな目で頷くモルフォン。確認するようだった。 そうだったの?とでも言う視線を与えるジェードにも、二人は微笑み返す。 それからコホン、とカジカは一つ咳払いをしてから、話始める。
「まずね、精霊は『霊』と呼ばれてるけど、僕は生き物だと思っているんだ。 妖精とかもね、寿命がなくなった生き物だと、僕は考えている」
この世界の自然が創ったもの。 或いは一箇所に培った想いが生んだもの。 故に、人間のほとんどに視覚化等の認知がされずとも、世界に干渉する現象でもある。 力ある精霊は時に神と崇められ、祀られることもある。 人が信仰や幻想の象徴によく使うのも、その辺りかもしれないね、と彼は説明した。
「精霊自体はとても曖昧なものなんだよ。虚無に未練なく還れない魂から、ニュートラルを想う形でもあるし」
幽霊とは、気の化身と解されることがある。 人間を始めとして生物が死ぬ時、どういった風に此岸から彼岸に向うかで大きく三つ通り別れる。 潔く消滅するか。いじらしく此岸に留まるか。別の形として転生するかである。 消滅と転生には彼岸の先にある霊魂と神々の世界も関わったりする。 だが、未知の部分は敢えて語らなくていい。司教や預言者でもないのだから。 カジカが取り上げる主題は留まる方だ。
生物が死を迎えつつも此岸に留まる形、それもまた細々とあるか、単純に分けて二つ。 「『形だけあるもの』としてカタアリ、『形だけはないもの』として精霊、このどちらかに成り、存在する」
誰かが質問を投げた。死んだハズの人間などを扱ったモノ。つまりゾンビや死霊はどちらなのかと。 「それは死を跳ね返した生物だよ。精神と肉体のどちらかが欠けたものが死。というのが常識らしいけど。 本来は魂が留まったものならば全て生きているものだと僕は考える。 ゾンビは肉体だけが魂を包み。死霊などは精神と記憶だけが魂を包んだものさ。 つまりね、生前の記憶や性格、能力を持つ幽霊はもう一度死を待つ生き物ってこと」
ではカタアリとは何だろうと、問われれば。 「カタチさえアリさえ良い。という由来通りさ。その上生き物に構って欲しい寂しがり屋なの」 と、簡潔に答えるのだった。
ここで話を戻す。
「君達は、何で精霊を自分の身体に宿したんだい?」
その中で、ハッキリと答えたのは祐刃だけだった。 「……生きたいから。生き延びたいから」
紫は頷いた。千凪も続くように。彼女達も似たような理由だったのだろうか。 「分かった。それ以上のことは、聞かない」 微かに綻ばせた頬に、目を穏やかに閉じながらカジカは話を切りつつ述べた。
「精霊と人を繋げること。それは命と命を重ね合わせ、交じらせることだと、僕は思う」
自分はエレメンツではないから。 精霊を埋め込まれていないから、実感で無く推測と想像しかないけど、とカジカは呟く。
「知っているでしょう。君達に埋め込まれたものは、自分以外の命が宿っている。 それは強い未練を持った死に切れない魂かもしれないし、 今生きる君を守ろうとする一生懸命な心の欠片かもしれない。 もしかしたら、一人の人間の人格になったかもしれないものだってある」
皆、神妙な面持ちで聞き受けていた。 その中で特に静かに……カジカの言葉をその胸の精霊石に染み込ませるように、祈るように掌を組み、少しだけ屈む彼が居た。
「覚えていて欲しい。君達が得たモノは力ではないということ。それは命だと云う事を」
其の時だった。 カジカの釣り糸に付けられた水晶が瞬いた。 何事かと驚く一行を横目に、カジカは微笑む。 水晶が、箱のように開いた。 役目を終えた檻を、解体するように。
中から出たのは、 白く儚く、けれど強い瞬きを供えて羽ばたくもの。 それは、カタチは一定で、残さなくても、視えなくても構いやしないもの。 敢えていうなら蜉蝣の姿をしているもの。 精霊だった。
「一日の終わりだね。……それじゃ、僕の講義はここまで」
あとがき これだけじゃ短いけど、ごちゃごちゃ言わず、纏まっている設定だけをカジカさんに説明して貰いました。 質問あるならメールかチャットなどでどうぞ。(さりげにメールアドレス載せました)
カジカさんの台詞には祐刃さんの設定を突いてたりなかったり。

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