| [9558] Pathetic courtship 15 |
- A・Y - 2007年12月14日 (金) 18時42分
コンフェ「気をつけて、これは一応続きだよ」 夢幻「それ以前に久々の連続投稿だね……」 コンフェ「注意して!今回は作者が後ろ斜めの方向にノリノリで書いたから!」 夢幻「斜めっていつもの……後ろ!!?」
response to 宙さん とりあえず菊の現状だけお伝えしました。 あの二人だけでも大丈夫なような気がしますけどね。 変なユメばっかり視りゃやせ我慢もしたくもなるとー。 いやぁ、作者のノリによるけど案外ガチバトルになるんじゃあ。 というか、ガチバトルを想定して分けました。 誰とは言うまでもない。そのツッコミ言うと思ったw コンバットは実際は水上戦苦手だった筈。火薬系技が全部役立たずだったし。
夢幻「後ろって、躁鬱状態で書いたりでもしたのかい」 コンフェ「そんなところです」 夢幻「……覚悟をしてから、ENTERを進めるね」 コンフェ「本当に一部注意です……回避出来るかな…」
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また視ている。 また知りもしないことを知ってしまっている。
最初に聞こえたのは、元より優しい彼の声。 今までとは比べ物にならないくらい慈愛に溢れていた彼の声だった。
――――旦那さま――――
……痒い。 さっきから痒みが収まらない。 傷口からじわりじわりと、熱さでない煩わしさばかりが沸いてくる。
「……!掻いてはいけません!」
黒い蔦が止める。 俺を思って止めたのは分かる。止めなきゃ、掻き毟って傷口を開いて、出血多量となったから。 それでも尚掻き続けるくらい、痛みさえ上回る痒みに、翻弄されてるから。 だから、止めてくれた蔦の元に感謝しなくてはならない。
……だが。
「助かりますよ、助けますよ、旦那さま」
そう言った奴は笑っていやがった。 ケタケタと。忌々しい形相で。
……コレは。
今まで俺だけに誠心誠意で尽くしてきたのだ。 俺の盾になり、夜伽になり、助言者となって守ってくれた。 淫靡な瞳。微かに赤い唇。艶やかで一房の癖もない髪。 白く細くしなやかな体を手の内に納めていることにこれ以上ない満足感を得た。
なにより俺への絶対的な信頼・忠誠心。 竜巻が迫った時も、何万の敵に囲まれた時も、光の津波に押し潰されようとした時も、 如何なる狂気の中でも、アイツは俺を守った。守りきった。 あの一度だけの間違いの直後だけ、……アイツは酷く泣き詫びていた。
……だが全部俺にそう思わせる振りだとしたら? 嘘だとしたら。 考えられる。今までの『旦那さま』と変わらない態度を振り撒き続けていたのだ。
今までの『旦那さま』! なんという良い響き。魔法の単語。つじつま合わせの役割。 コレはずっとそれに縋って生きてきたんだ。 それが無ければ存在を維持できない。 だってコレは人の形をしたモノなんだから。
分かってしまった。 分かってしまったから、心臓から胃まで激しい嫌悪が湧き上がる。嘔吐してしまいそうになる。 俺はこんな化け物を今まで……!!!
「……旦那さま?」
ケタケタと化け物が笑っている。 この微笑に欲望が沸いてたのかと思うと腹が煮えくり返りそうになった。 今や憎悪しか感じられない。
腕を振り上げて。 殴った。 力の限りを揮って。 グシャリと潰した。アイツの顔を。
「……だんなさま……?」
頬骨が折れたまま呆けている。 更に殴った。 眼球を潰した。 三度殴った。 鼻骨をへし折った。
殴って殴って殴って。 頭部を陥没させて、歯を吹っ飛ばして、血達磨にして。 あの美しい顔をこの手で粉々にしてやった。
殴り疲れた頃には、もう、原型を留めてないアイツがピクピクと痙攣していた。
「……大丈夫です。旦那さま……」
背筋が凍った。 アイツが起き上がる。
笑っていやがる。
無造作に耕された顔でアイツは笑ってた。 何処が目か鼻か分からない自分の顔をベチャベチャと触りながら。
次の瞬間。 何をしたか、俺には分からなかった。
「ほら、元通り」
あの美しい顔が、再び現れた。 血は糊か化粧のように剥がれ落ちた。 余りに見事な手品のようで。笑ってしまいそうだった。 実際に笑っていたかもしれない。凍りついたままで。 だって、俺の拳には生々しい感触が残っているのに。
「……私は旦那さまにやってはいけないことをしてしまいました。旦那さまが私を憎むのも道理に適います。 少し壊れても平気です。それで旦那さまの苦しみが和らげるのなら」
ペチャペチャと、顔の血を落としながらアイツは近寄ってくる。 改めて思い知った。
目の前の美しい黒薔薇――クロイバラ――は、化け物だということを。
アイツは腕を捥がれても数日で直した。 表面的な物から、直すのは簡単だと言った。 顔なんて簡単な方なのだ。
そう、『カタ』チだけ『アリ』さえばいいのだから。
在る様で無い命。形だけ在ればいい存在。 肉を持って存在するアイツを殺すには、肉そのものを潰さねばならない。 一番確実なら、全部潰せばいいのだ。 もっと消極的にするには、心臓と脳髄を切り離すとか。
俺はアイツに飛び掛った。 首に手をかけた。 アイツの喉に全体重を乗せて、押し潰す。 手を抑えようとするアイツが、言う。
「旦那さま。旦那さま。首をねじ切るおつもりですか。流石に直すのに時間がかかりますよ」
黙れ黙れ黙れ! 早く息の根を止めろぉ!
両手にあらん限りの力を込めた。 もうどうにもならないことには、冷静な部分が気付いていた。 それでもコイツを殺したくてしょうがなかった。 甘く魅惑的な匂いで誘って、騙して、喰らわせる振りをして喰らおうとする化け物を。
「殺すのですか、私を殺すのでぐはっ……だんなざま…………だんなざま……わ゛だじを゛……すでで…………」
俺の中に俺じゃないものが侵食していく。 コレの花粉か、細胞の一部一部が犯されていく。 化け物の一部が俺に同化していく。 死ぬのか、俺の中から俺が死に、まんまと奴の養分と化して行くのか。 壊れていく、いやいっそ、壊れてしまえ!
ああああああああああああああああああああああああああ!!!!
旦那さま。助けられなくてごめんなさい。 旦那さま。化け物でごめんなさい。 旦那さま。愛していたのにごめんなさい。 旦那さま。愛してくれたのにごめんなさい。 旦那さま。旦那さま。旦那さま。旦那さま。旦那さま。
旦那さま、ごめんなさい。旦那さま、ごめんなさい。旦那さま、ごめんなさい。旦那さま、ごめんなさい。旦那さま、ごめんなさい。旦那さま、ごめんなさい。旦那さま、ごめんなさい。旦那さま、ごめんなさい。旦那さま、ごめんなさい。旦那さま、ごめんなさい。旦那さま、ごめんなさい。旦那さま、ごめんなさい。旦那さま、ごめんなさい。旦那さま、ごめんなさい。旦那さま、ごめんなさい。旦那さま、ごめんなさい。旦那さま。旦那さま。旦那さま。旦那さま。旦那さま。旦那さま。旦那さま。旦那さま。旦那さま。旦那さま。旦那さま。旦那さま。旦那さま。旦那さま。旦那さま。旦那さま。旦那さま。旦那さま。旦那さま。旦那さま。旦那さま。旦那さま。旦那さま。旦那さま。旦那さま。旦那さま。旦那さま。旦那さま。旦那さま。旦那さま。旦那さま。旦那さま。旦那さま。旦那さま。旦那さま。旦那さま。旦那さま。旦那さま。旦那さま。旦那さま。旦那さま。旦那さま。旦那さま。旦那さま。旦那さま。旦那さま。旦那さま。旦那さま。旦那さま。旦那さま。旦那さま。旦那さま。旦那さま。だんなさま。だんなさま。だんなさま。だんなさま。だんなさま。だんなさま。だんなさま。だんなさま。だんなさま。だんなさま。だんなさま。だんなさま。だんなさま。だんなさま。だんなさま。だんなさま。だんなサマ。だんなサマ。だんなサマ。ダンナサマ。ダンナサマ。ダンナサマ。ダンナサマ。ダンナサマ。ダンナサマ。ダンナサマ。ダンナサマ。ダンナサマ。ダンナサマ。ダンナサマ。ダンナサマ。ダンナサマ。ダンナサマ。ダンナサマ。ダンナサマ。ダンナサマ。ダンナサマ。ダンナサマ。ダンナサマ。ダンナサマ。ダンナサマ。ダンナサマ。ダンナサマ。ダンナサマ。ダンナサマ。ダンナサマ。ダンナサマ。ダンナサマ――――。
――――ダンナサマ……ゴメンナサイ……――――
「―――――――……………………………………………………」
何時の間にか、失っていた意識。 確か、此処に付いて、人形の軍団に襲われて、反撃しながら逃げてきて……。 そう、また目眩がしたのだ。 仮眠すら断ってたのに、この様。 やはり移動中にも寝ておくべきだった。 またおかしなモノを見そうでも。 …………結局、また見てしまった。
――――旦那さま
という声が聞こえた。 無意識に身震いしながら振り返ると。
「夢幻さん」
其処に居たのは、コンフェだった。
「大丈夫ですか?」 「あ、ああ……なんとか……」 「…………」
こちらの篭り掛けな口に違和感を取ったのか、少しだけ気まずい沈黙。 それも、コンフェの方からすぐ無かったことにしたが。
「はぐれてしまいました。今、僕らを合わせて光闇さんと、なのこに、ジェダさん、黒猫さんの6人です」 「そうかい……」
人形の軍団も、派手派手しいライトも、全く見当たらなくなった。 漆黒の闇夜だが、上から星明りがある。どうやら施設内ではなく屋外らしい。 慣れた目で他に分かるのは、暗い色に落とされた壁が、対になり平行線に続いている。 先に見たなのこ達の話では曲がり角やT字があるとか。此処は迷路らしい。
「様子を見に行った人達も先行し過ぎません。すぐに戻ってくるでしょう」 「うん」 「それから動きましょう。辛いなら僕が運びますから」 「うん」 「…………」 「……ねぇ、コンフェ」 「なんでしょう」 「……………………いや、なんでもない」
壁に寄りかかるようにして、蹲る夢幻。 コンフェは彼の横に膝を曲げて、様子を見ていた。 病人を心配する目なのか、気になる虫を無視出来ない目なのか、よく分からない。
おかしいと、思った方がいいのだろうか。 さっきの夢で殺した筈のものが、生きている。 別人じゃないんだ。ということは確信できる。
いやいや、別におかしいことじゃない。 普通は有りえないけど。彼は特異だから。 資料でもあったじゃないか。 原罪四部は不死身に近い身体で、何度もこの世に降りては死んで、時間が経てばまた来るって。 前に見たユメでも見たじゃないか。 何度も殺されて、でも、いつかまた生き返って、記憶を抱えたまま、また殺されて。 今に至っているのだから。
彼はコンフェ。 昔は『光』という奴らに殺されたりして、 黒薔薇って呼ばれてて、相手を旦那さまって呼んでた。 旦那さまって、なんだろう。
なんだが、腹の傷口が、痒くなってきたような気がした。
あとがき 驚いた?ゴメンね。 本当はね、もっと焦らしたかったんだ。 でもね、もう我慢できないの。もう留められないの。 だから吐き出したの。これで、少しは楽になれるかしら。
あふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ。

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