| [9552] 光遊純星戯躍 turn7 |
- A・Y - 2007年12月11日 (火) 17時44分
咲夜「早く出せたのね」 魔理沙「今回は濃いぜ。量も多いぜ」 霊夢「変なところに拘って資料探すのに時間費やしちゃってるしね」
response to 宙さん 熱くてカッコイイEXボス妹紅と可愛くてヘタレなラスボス輝夜で魅せてみます。 今回は更にその対比が濃くなりますなぁ。 15歳なら妥当……かなぁ。雲雀さんは年齢不詳なのにね……。 お約束は守りましたよ。苦手っていうかヒルもどき扱いしとけって気持ちです。酷いですね。 雲雀さんが食物連鎖的に食おうとしてたかどうかは置いといて。 咲夜さんはお嬢様達に対してちょっと過保護。レミィはフランに対してかなり過保護な設定です。 年下攻めって美味しいよね(コラ) 緑竜さんて童顔だったような。
魔理沙「東方はとりあえずNORMALのALLクリア安定を目指したいぜ」 咲夜「EASYも安定出来ない癖に」 魔理沙「妖と風はな。紅魔のEASYだったらもう全然へっちゃらだぜ」 咲夜「あら、メイド長止まりはもう卒業したってことね」 霊夢「そういうことじゃない?じゃ、ENTERね」
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リボーンの計らいでミスティアの担当する湖に来た橙星組。 其処で目にした状況は以下の通りである。
「お前、フランを連れ回してたってどういうつもり?返答次第によっては血一リットルじゃ済まさないわよ」 「さっき食事済ませたばっかりだろう。つうかお前が飲めるのってせいぜい紅茶一杯分じゃなかったか?」 「お姉様、骸をいじめないでよ」 「クフフ、妹思いのお姉さんはお怒りのようですね」 「ははっ、骸も髑髏ちゃんが居ながら隅に置けないなぁ」
吸血鬼の少女が青パイナップル頭に爪を向け、それを止めようと宥めようとする妹と友人。 野球少年は空気を読んでないのか爽やか笑顔で突っかかり、メイドは客観するらしく何も言わない。 なんだこの微妙に修羅場。
「あ、10代目……」 「みすちー!」
我関せずの姿勢を取っていた人達が最初に霊夢達に気付いた。
「獄寺君、顔色悪いよ?」 「吸われたの?」 「何を!?」 「血」 「油断しました……今は鉄分欲しいような気分です……」
ちなみに八目鰻はビタミンAが豊富です。
「みすちー大丈夫!?」 「心配したんだよー」 「なんとかねー、巫女に借りが出来ちゃったけど」 「御礼なんて、せいぜい鰻のツケを帳消しにしてくれる程度でいいわ」 「ツケあったの!?」
とまあ、このように騒いでいると青星組や吸血鬼姉妹、骸も橙星組も気付き、話掛けて来た。 各々の言い分を聞き、状況整理する。
「えーと。まず、レミリアちゃんとフランドールちゃんは一緒だったんだけど、はぐれたんだよね」 「脇道に逸れないでって言ったのに、ちょっと目を離した隙に居ないんですもの」 「えー?こっちからすればお姉様が勝手に消えちゃってたんだよ」 「で、レミリアは空腹になって行き倒れになったと」 「ちょっと休んでただけよ。朝食もとい夕食が紅茶だけだったのはやはり辛かったわ」
レミリアの近くに檸檬星組が通ったのは良い意味での運命の導きだったらしい。 フランドールは適当にふら付いていたら、暇そうにしていた骸と出会ったようだ。
「フランお嬢様、何もされませんでしたか?」 「楽しいことはたくさんしたよ、美味しいもの食べたり飲んだり、面白いことして遊んだりー」 「面白いことって何だ?具体的に」 「んー、妖怪でも妖精でもない変な生き物追いかけたりー、弾幕発射する道具を壊したりー」
それって大会の妨害なんじゃ。とツナがツッコミ入れようとしたが霊夢に口を塞がれた。 余談だが、一次通過までの試練の一部には、『事故』として修正・軽減されたマスが幾つかあった。 彼女の悪意無き行動が昼から行われていれば、楽に進めた組も多かっただろう。
「だからつまりね、デートしたんだよ」 「デ……!!」
フランドールが出した単語はレミリアの神経を逆なでしたらしい。 妹想いからなのか、吸血鬼の品格や尊厳という傲慢的な感情からなのか定かではないが。 とにかくさっきの修羅場がまた始まろうとしていた。 さっきよりも強い殺気を、幼い容姿と赤い双眸から放ちながら。 其処に割って入ったのが、咲夜だった。
「つまり、お嬢様達は散歩に飛び出した、ということですね」 水を差すような従者の登場に、レミリアはやや不機嫌な、けれど威厳を損ねない態度で返す。 「何が言いたいの?」 「如何でしたか。外の夜空は」
素っ気無いようで、何気ないことを聞く。 そして何気なく、優しい声で聞いた。
「……限られているとはいえ、久しぶりに幻想郷以外の空の下だったからね……」 「楽しいよ!」 「そうでしたか」
レミリアの曖昧な、フランドールのはっきりした返事に、咲夜は微笑みを手向けた。 それから、何気なく大切なことを口にした。
「此処に居られる時間はとても少ないでしょう。私やお嬢様だけではとても得ることの出来なかった貴重な時間。 どうか、大切に扱ってくださいませ」
胸に手を当てて片足を下げ、頭を垂れた。 レミリアは横目で見遣った従者の姿に、複雑な感情はまだ煮えつつも、自分の憤慨さを抑えることとした。 「…………分かったわ」
「……良い主従関係ですね」 「いいなぁ。あんな感じも」 骸と山本は、このやり取りから理解するもの、微笑ましいものを感じ取った。 獄寺が快調なら余計な一言くらい言ってたかもしれない。その前にツナに止められていたか。
ちなみにここの試練は、橙星組はミスティアを救出した件で免除。檸檬星組は獄寺が既にこなしてくれていた。 後者はちょっと不正があったが、これ以上の乱獲は環境破壊にまで響くので、リグルが見て見ぬふりをしてくれた。
三組が各々に出した数字はどれも一次通過地点にぶつかるものだった。 2以上出れば自然にそうなる仕組みなのだ。 通過地点の会場は選択式で、二つのナビゲートする光球が現われる。 方や斑点の入った、青紫の光が煌めく、月のような黄色い球で、 もう片方は触れると焦げるそうに熱く揺らめく、太陽のような赤い球だった。
「うーん……じゃあ、こっちで」 「それなら私達もこっちにするぜ」 「同じく」 魔理沙に続いて咲夜も霊夢が選んだ月色の玉に触れる。
玉は反応し、光の道標を作った。 三組が全て一方でも問題なかったようだ。
「なんでそっちにしたんだ?」 「巫女の勘は結構アテにできるもんなんだぜ」 「そうね。霊夢の導き出した運命は結果的に良いものが多いわ。私が保証する」 「あと、なるべく多い方が手間が省けるぜ。封印中な私のフォローになるしな」 「自分の面倒は自分で見なさい」 「そういや魔理沙、魔法封じられてるんだっけ。じゃあ私が守ってあげるー」 「おお、とても心強いぜ、フラン」 「クフフ、助力できるか分かりませんが、邪魔にだけはならないつもりですよ」
それ以前に、参加者でないものが付いてきていいのかと、ツナは思った。 A・Yや紫など係員の姿が見えないから大丈夫なんだろう。
既に分かった者は居るだろうが、太陽の球を選べば妹紅が待つ竹林へ案内される。 もしそちらを選んでたら、銀星組との遊戯の度を越した■闘に巻き込まれてしまい、どちらかと言えば散々な目に合っただろう。
そして、月の球を選んだ先には。
「(_゚∀゚)o彡゜えーりん!えーりん!はーやく来てよ!!」
右腕を振り上げて「えー」と、勢いよく下げる瞬間に「りん!」と叫ぶ。 これを天に向かって繰り返す輝夜が居たのだった。 下からの紫星組の攻撃に四苦八苦しながら。
「もー、あー!(T〇T) えーりん!えーりん!助けてえーりん!」
「アイツが第一通過点なのか……」 「……何やってるの、あの人……」 「見ての通り、助けを呼んでるんだぜ。アイツ自身はともかく呼ぼうとする援軍は厄介だな」 「彼女が来る前に、片付けるべきね」 「ええっ!?た、倒しちゃうの……?;;」 「問題ないわよ、殺しても■なないから」 「なら一気に行くっス!……うっ;;あそこまで届くか」 「貧血だしな。咲夜さんのナイフに括り付ければいいんじゃないか?」
夜空に花火の色が加わる。 正体は陰陽球やダイナマイトや投げナイフ。 輝夜は追加された弾幕に更なる窮地に陥ったことを知る。
「――――ウワァァァン!私更に大ピンチ!!もっと強く呼ばないと!(_゚∀゚)o彡゜えーりん!えーりん!」
「なんだか、あんな風に助けを呼んでくるとこっちも真似したくなるね。腕を振り上げるんでしょ」 「しなくていいわフラン。というか鬱陶しいわね」 「マスタースパーク使えればその鬱陶しいのもさっくり消せるんだがな」
「えーりん!……もう間に合わないの!?」
その時、月から一筋の光が瞬いた。 光は人影に、人影は大きくなり、此処に向かってくる。 同時に、輝夜の潤んだ瞳が、一層麗しいほどに輝いた。
「……えーりぃぃん!!!」
赤十字が入った青いナースキャップの下から、縄状の銀髪を夜空に舞わせながら降臨したのは、 上部と下部に赤と青を交差させ、北斗七星やカシオペアなど、星座を縫った看護師の服。 そして、手には古めかしい弓を携えた女性だった。
「八意永琳、参戦して頂きます!……姫様はご無事ですか!」 「(_゚∀゚)o彡゜えーりん!えーりん!」 「あ、元気そうね……」 輝夜にはもうカリスマとか風格が微塵もなかった。
「来ちまったか、厄介だぜ」 「あなた達が揃いに揃うとはね。……多々、変わり混じった面子だけど」
永琳は何故か弓を肩に担がせる。 「遠慮はしないわ」 何処から出したのか両手には二つの薬瓶。中身の液体は赤と青。 それを空に放った。 「始めてみる者へ教えるつもりで、薬にはこんな使い方もあるのよ。――秘術『天文密葬法』!」
「――――『パーフェクト・スクエア』」
爆ぜる薬品。 そこから放たれる無数の直線的な青い弾幕。 これは開始の弾に過ぎず、青い弾が止むと次は幾つもの設置物が現れる。 挑戦者達を包囲するような位置で留まり、永琳から巨大な弾と、設置物から赤と青のバクテリアのような弾が放出される。 ……しかし、其処に居た数は一組だけだった。
「彼女の相手は私一人で充分」
赤と青の弾の雨を、特有の時空間操作が塞き止めているメイドが居た。 咲夜だ。彼女が一部の地域、弾幕と永琳の時間を止めた僅かな合間に、 自分達以外を弾幕檻が完成する前に逃がしたのだ。
「またあなたが、立ちはだかるのね」 「そうなるわ。だけど今夜、私一人ならともかくとんだお荷物が付いてるので……」 「え、それって俺のことなの?咲夜さん?」 ちなみに山本も付いていた。返事はしなかったが。元より連れて行くつもりもなかったかもしれない。
この二人にはなんらかの因縁があるらしい。 咲夜と永琳、僅かに俯いて目元を覗かせない、だが口元をはっきり釣り上げる。 奥が知れない笑みを全く同じ様に、浮かべていた。
「永琳が来れば100人力よぉー!さあ、新難題の『金閣寺の一枚天井』を食らえぇーい!!」 「新難題!?」
金色に煌めかせながら、幾つもの屋根のような平坦なる形をした障害物が降りて行く。 って、何処が一枚天井なのだか。 加えて折々の色彩を放つ無数の弾幕。 これは先の五つの難題より辛い。
「強気に戻りましたね……!」
皮肉を出す余裕もないだろう。 実際、攻撃に回る余裕もない。 天井と呼ばれる部分に注意を傾けていると、無造作に見せかけて狙い済ます為にばら撒かれた弾に当たりそうになる。
「輝夜も調子に乗っちまってる!ったく!!」 「『二重結界』を張るわよ!痛い目会いたくないなら下がってなさい!」 「そんな一次凌ぎで超えられると思って!?」
――――ビシュゥゥン!
弾か天井かどちらかに直撃したらしい激しい轟音。 「やった!当たったわね!」 輝夜はこの瞬間だけ有頂天になった。
「……て、あら?んんん?!」 しかし、実際は、誰も被弾していなかった。
「骸か……」 「一回だけですよ」 「借り作られたな……」 「いえいえ、ただの気紛れですから」 紫星組を助けたのは骸だった。 弾幕を幻術に置き換えた。蓮と悠弥は幻術をかけられて、二人を別の位置に僅かにずらしただけともいう。
後の四人はというと。 迫る弾幕に対し、霊夢が霊力を高める前に、それを上回る力が、前方の弾を全て薙ぎ払った。
紅い閃光が激しく瞬いて、夜には眩し過ぎて、人間の目には痛過ぎた。 最初彼らには何が起こったか分からなかったが、伏せていた視力を戻した時、分かった。 彼女達が力ずくで掻き消したのだと。 二人の紅く幼い少女が、四人に背中を向けながら佇んでいた。
「レミリア……」 「助っ人よ。さっきフランが言ったこと。私も便乗するわ」 「奴みたいな、気紛れか」
獄寺の問いにレミリアは鼻で笑い、答える。
「咲夜が与えた時間。あなたが与えた美味しい血。どちらも無駄にしない。ただそれだけのこと」
白い瘴気がレミリアから漏れ出していた。 吸血鬼がその強大な力を解放する示しを。 とても濃い霧、吸血鬼の霧は二人分だと視界がかなり遮られるようだ。 そう、フランドールもまた、瘴気を噴出させていた。
「存分に遊んであげるわ」 「私も良いよね?レミリア姉様」 「ええ、一緒に遊びましょう、フランドール」
レミリアの背中の蝙蝠羽根が、膨張する。間もなく彼女の倍以上の大きさの翼に。 フランドールの不思議な黒い骨羽根が、それに付いてる七個十四対の水晶を激しく瞬かせる。 象が勢いよく足踏みしたような轟音を立てながら、二人は地上から飛び立った。
「え!?え!!?あんたら参加者じゃ……!!?」 「そんなの関係ないからねー!」 「クッ……なら、『エイジャの赤石』!!!」
もう一つの新難題の繰り広げる。 血のように赤く少し不気味な宝石が輝夜の掌から現れる。 その赤石から、大きな弾と、丸太のような太さの閃光とが弾き出される。 先程の金閣寺の一枚天井よりは密度が低い弾幕だが、打ち出す瞬間が早い。 下手に突っ込めば串刺しか焼き焦げになってしまいだろう。
しかし。 「当たらん!当たらんよ!!」
光速よりも速いかもしれない身軽さで。 紅く小さな体の影が、弾幕を掻い潜ってみせた。
「そんな…………!!!?」 驚愕は瞬く間に恐怖に変わる。 紅い姉妹はもう、輝夜の手の届く位置まで来ていた。 「ちょ……たんまぁ…!!?」 輝夜が悲鳴を上げるが、それで止める訳もなく。
「『スピア・ザ・グングニル』!!!!」「『レーヴァテイン』!!!!」
右方上から紅い槍。左方下から紅い剣が、振り下ろされ、振り上げられる。
永琳vs青星組の方も、傍から見れば芸術のような弾幕合戦を展開していた。 投げナイフと弓矢は、銃弾と違えない速さで、飛び交っている。
「早い!早い!!早い!!!早いぞぉ!!!!」 「二人共なんて早撃ちだぁ!」 「しかも互いに紙一重で避けている!!」 と、実況が入ればこれくらい熱く同調するように皆興奮しているだろう。
「というか誰だお前ら」 「でも、一番凄いのは間に挟まれている彼よね……」 「てゆーかなんで真ん中に居るんだ山本ぉ〜!!?■んじゃうよ!」
飛び交うナイフと矢を避ける山本も、これには■ぬ気でやってるらしく、やや汗をかいていた。 「うわぁ!二人とも、凄いなぁ!!これに、当たったら、負けなんだな!」 でも、やっぱり楽しそうだった。 「多分関係ないよ……」 ツナが呟くが、聞こえていなかった。
「……ふっ」 唐突に嵐のような弾幕が止んだ。 咲夜が、この瞬間までと違う笑みを浮かべたから。
「私達の、勝ちのようね」 「…………!!(――――しまった!)」
永琳はすぐに悟った。月の頭脳と謳われた知力が全ての状況を即座に分析し、瞬く間に結果を浮かばせる。 彼女にとって最大級の失態は、目の前の相手に集中し過ぎてしまったこと。 しかし咎めはしないだろう。そう仕向けるように全力で仕掛けたのは咲夜なのだから。
見上げた夜空は、一部が紅に染められていた。 月の姫君を蹂躙した、吸血鬼二人によって。 「……輝夜ぁ!!!」
「……オイオイ、あれで生きてるのかよ」 「蓬莱人って言ってな。不老不■なんだよ。Gすら比較にならない、本物のな」 「■ぬような痛さってレベルじゃねーだろ」 「確かに。ああしても生きてるならすっぱり■た方がマシって思えるぜ。……アイツラもはしゃぎ過ぎだぜ。特に妹様」 「クフフ、しっかし見事な捌き方ですねぇ。糸を引くようなちょ「やめんかぁ!!しばらく肉食えなくなるだろ!!!;;」「全くだぜ…;;」…おや残念」
目を逸らしていたのは、紫星組も同じだった。 悠弥は僅かだが見てしまったらしく、嘔吐を堪えながら呟いた。 「……とにかく、僕達は勝ったんだよね」 「予想外の形で終わったけど、たぶん……」
「……あれ!?気付いたらオレ達って、何もしてなくない!?」 「楽に通れたからいいじゃない」
竹林には、大きな爪痕が残った。 火炎と氷雪という極端な力がぶつかり合い、大半を枯らせ折らせた。
今、火の手の方は完全に沈黙し、息も凍て付く極寒だけが占めていた。 「……やったか?」 宙が呟く。目の前の、立ったまま髪一本動かない女へ目を離さない。
妹紅は氷像と化していた。 絶対零度。 常人なら、いやそうでなくてもそれを表面でなく体内に受ければ細胞が滅し、二度と機能出来ない状態になる。
今度こそ、■んだ。 だが、信じられない。 根拠は、何度も目の当たりにした事実からだ。 数えるだけでもう15回は殺している。 その度に、彼女は蘇った。 今度もまた…………!?
ジュウウゥ……。
焼肉を焼くような音が聞こえた。しかし此処ではそんな景気の良いものでは決して無い。 それは、絶対零度すら溶かす音だったのだから。
ゴオォオオォ!
幾度目の燃え上がる炎。 赤く染まる竹林。 起き上がるのは、■を跳ね返す妹紅。
蓬莱の人の形。炎を纏う鳳凰の影。 それらこそ不老不■の象徴。 何度でも、何度でも、何度でも、復活<リザレクション>する。
「インペリシャブルシューティング」
焦点のない赤の双眸のままその言葉を唱えた瞬間、炎が消えた。 鳳凰の幻影だけは残して。 炎は表れない。 だが代わりに、妹紅を中心とした円環状の弾幕が浮き現れた。 それが浮き出るように現れては、弾ける時に拙いギザギザ状になってばら撒かれる。
それは弾の華であった。
始めは白い弾の華。 一つ咲き、二つ咲き、三つ咲き。 重なるように、連なるように咲いては、散っていく。 時に沿うように、交差するように、点々と咲いては散っていく。
緑の弾が、木の葉のように舞っていく。 青く強烈な直線を描く弾が、締め括りに添えるように降り注ぐ。 最後に鮮やかな赤い花が咲き誇り、瞬く間に竹林を赤く染め上げていった。
最後の弾幕が完全に止んだ時、竹林は今度こそ、静寂に包まれた。 妹紅は、土に仰向けで横たわっている。 目蓋は閉じず、焦点のない眼は、命を失っているものと感じられるのだが……。 胸が、微かにだが上下している。 とても弱いが、呼吸をしていた。
「勝ったんだね。僕たち……」 「………………」 イヴェールを無視するように、宙は妹紅に歩き寄る。 「……そ、宙ちゃん?」
もう抵抗の気配はない。攻撃してくる様子はない。完全に沈黙している。 宙は銃と形作った指のままだった。
其処へ、十字架の如く一人の女性が立ちはだかる。 青い房の交じった白髪に、奇妙な四角の帽子。白に青を重ねた服。 見知らない女だ。だが妹紅の関係者らしく、強い眼差しが彼女を守る意思を示していた。
「もう、試練は終わりだ。お前達の勝ちだ」 「………………」
宙の指が上がろうとしていた。 角度は乱入してきた女か、その後ろの妹紅か。 それとも、別の意図を起こす為か。
「宙ちゃん」
気付けば、すぐ隣にはA・Yが居た。 A・Yは宥めるような、困ったような顔をしながら、言った。
「ねぇ、あくまでこれはゲームなのよ。ただ、妹紅さんが熱くなり過ぎちゃっただけ」 「…………そだね」
そうして、やっと宙は銃を下ろした。
「にしても、弱ったなぁ。第一通過地点『蓬莱人の弾幕を潜れ!』の試験官が二人共リタイアするとは」
不■身の彼女達なら万が一の事態も無いだろうと組んだ試練だが、やり過ぎてしまったか。 おかげで妹紅は■に過ぎて戦闘不能。輝夜はまだやれるだろうが……拗ねちゃった。 もう一人の蓬莱人である永琳はメディカル係なので選び出せない。妹紅の二の舞になったら元も子もないし。 それに、輝夜の件でかなりご立腹しているし。
「うーん。まだ通ってないのはピンクと、緑に金と黒と赤でしょ。あー、よりによってオリシンが二組とも残ってるじゃない」
オリシン⇒オリジナル・シン⇒原罪。 つまりコンフェとデストロイを指しているのである。 少なくとも彼らにとって歯応えのある通過試練を用意したかったのだが。 ……まあ、コンフェの方は不戦勝でも充分満足するだろう。寧ろ望んでいるかもしれない。
「天女様!僕は使わないの?」 挙手したのはシェルだった。 「駄目。あなたにアイツラは荷が重過ぎるわ。攻撃範囲力も低いし。アンタの話もそんなに進めてないし」 即座に斬られた。 「あう;」
「こうなったら私がやるしかないわねぇ。最後の方と相談しなきゃいけないけど……」 「待ちなさい」
声をかけて、振り返ると其処に居たのは、赤い踊り子。原罪の長兄。
「ディサスト……」 「まだ序盤を超えたばかりでしょう?あなたは締めくくりですもの」 「そうだよ!天女さまはラスボスなんだから!」 「……シェル……。……さりげにネタバレしないでくれない?」
少し迷ったが、他に適任は居なさそうだ。 A・Yはちょっとだけ複雑な思いを抱きつつも、妥協した。
「じゃあ任せた。ただしさっきの反省を踏まえて、ガチバトルは避けるようにしないとね」
と、工夫案も含めて相談した結果が以下になる。
「今から放つワタクシの弾幕を十五秒間、避けて下さいねv」 赤い翼を広げたディサストが、楽しそうに微笑んだ。
先ず直線に描くように、飛ぶ。 同時に赤い米粒程度の弾が現われた。 最初は十数という、眼に自身がなくても避けられるだろう弾の数。 再び直線に飛び、弾を撒き散らす。 それを三度四度と繰り返し、次第に眼で追うことが不可能な速さにまでなるディサスト。 最終的には影と風の跡がハッキリと残る程度だった。 弾も同じく。十数から数十へ、数十から数百へ、そして千へと増える。 時間にすると十も数えていなかった。 ディサストの風と疾走と軌跡が起こし、幾重に降り注がせた雨の弾幕だった。
「あわわわわわ!」 「これはちょっと無理……!バリア張るわよ!」
当たれば即失敗。でもって再挑戦。 美歌が展開した精霊力バリア等の所謂ボム回避は認められる。 ようは避けきりゃいいのだ。時間も僅かだし別に倒す必要もない。 しかしデストロイは確執ある兄相手にボム回避なんて拒否した。
「デストロイさぁん;;もう回避技使っちゃいましょうよぉ;;」 「まーだまーだまだぁ!!!グギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャ!!!」
「負けず嫌いはいいけど。何でいちいち当たりに行くんだろう。コンフェは分かる?」 「避ける脳、ないから」 「……そっか……」
結局、緑組が追いつくまで粘ったそうな。
ちなみに。 この弾幕を見て呆然とする人、じゃない天狗が居た。 彼女は指を震えさせながら言った。 「……あ、あれって、私の『幻想風靡』じゃないですかぁ!!?」
隣で霊夢と魔理沙が感心するように相槌。 「あら本当、立派な耐久弾幕だわ」 「速いぜ、でもって赤いぜ、レミリア色のブン屋だな」
とりあえず、細かいこと気にしちゃいけません。
あとがき 第一通過地点だけの話です。それでもかなり尺取ったなぁ。 次回はせめて五千〜七千字を目安にしないと……てそれでも多すぎ?;;
実は紅魔より永夜の人達が好きです。……なのにこの扱いの差って;; 妹紅や輝夜が好きな人ごめんなさい。特に輝夜。
オマケ 報告と、予想と、未来。 『ホーミーとA・Y』
「銀星、紫星、青星、檸檬星、橙星、ピンク星、金星、赤星、黒星、緑星……以上の順番で全員通過ね」 「これまでの試練での成績の評価も踏まえての順位です。第一からの再開はこの順番で始めます」 「数字なんて飾りだけどね」
「お嬢様。次も予定は如何となりますか?」 「早い方がいいわね。中の人と三次元の都合上が関わってきたし;;」 「左様ですか。では第二通過を短くします」 「そうしてね」 「他に申すことは?」 「ネタバレは自粛するつもり。逆に出すべき人は出すわよ。最初の予定は守らないとね」
『永琳と輝夜』
「あー……全くもう、偉い目にあったわ!」 「あの子等は無邪気で暴力的の良い例えでしたね。貴女が蓬莱人じゃなかったらこれ程おぞましいものは無いわ」 「大体ねぇ、あの悪魔らは参加者じゃなかったでしょ!?どうして注意させなかったのよ!」 「どうやら、姫様が先に私を呼んだから、参加者側の助っ人も認められたそうです」 「う;;そ、それなら、納得出来ないこともない……かも;;」 「……;」
「ところで、妹紅も参加者にもっこもこにされたそうね?」 「体力も気も根も全て使い果たしてしまってましたわ。三日三晩は話すことも出来ないでしょう」 「……莫迦ね。勝てもしない相手にしぶとさを見せ付けたって余計痛い目に合うだけじゃない」 「あの人の不器用さは今に始まったことじゃないですけど。逆に姫様は根性が足りないかしら」 「私に根性?よしてよ。嫌なものは嫌だし、痛いのは嫌なの」 「そうですね。我々は■ぬことはないけれど、痛みは感じ続け、慣れることはない」 「慣れたくもないわよ。痛さを貰うのも、忘れられるのも」
『紫と?????』
「時間は割りと無いほうだと思うわよ。貴方の出番は来るかしら」 「こればっかりは、中の人の力量と根性次第ですね」 「あなた、影だけでも出した方がいいんじゃない?その月の頭脳と対等に競える頭を使って」 「嗾けてくるのは、あなたの退屈凌ぎになるから?」 「質問を質問で返すの?失礼な元人間ね」 「質問じゃなく皮肉です。それに私は今も人間です」
「けれど、娘が此処では凄く朗らかに楽しく過ごしているのです。私はもっと彩りを与えたい」 「……あなたが居ない世界ではあなたの望まない光だけが来るからかしら」 「それは触れるべからず。幻想に生きる者よ」 「そうね、私も此処にいる事に酷いくらいの幸せを感じるわ」
「……せいぜい頑張りなさい。娘の為に」 「妖怪に節介をかけられるほど、落ちぶれては居ませんよ」

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