| [9526] ガンナー |
- 宙 - 2007年10月13日 (土) 22時45分
眼前にあるのはどす暗い揺らめき。 一言で表すなら禍々しい。 「・・・これが、そうなのか?」 「ええ。この中に『咎櫛』が手を入れればそれ相応の呪具が出てくると」 宙は斜め後ろにいる男に尋ねた。 対し男は表情をそのままにして言い放った。
此処は戸隠の敷地内の更に深い場所。咎櫛専用の地。 守人と咎櫛だけが立入りを赦される特殊な場所。 如何なる実力者であれ、条件を満たさなければ絶対に入れない。 そういう場所なのだ、此処は。
眼前にある禍々しいモノ。 揺らめく気体に映る事は何一つない。 今更後戻りは出来ない。 意を決して宙は手を突っ込んだ。
手自体にダメージはない。 だが内部で“何か”が反応するような感覚はあった。 同時に手の先に銃が具現化される。 手首にも黒い輪っかが出現する。 手の甲の側に勾玉があった。
宙が引き出すと銃と勾玉の色形がよく見えた。 まず銃はパールホワイトが基調となり、所々に少し薄めの紫が入っている。 銃口は通常のよりも大きい。玩具に近いような、つまり一見偽物に見える。 弾倉がないのもその1つ。弾は込める事が出来ない。安全装置など論外。 完全に咎櫛の専用道具だろう。 勾玉の色は紫。少し小さめだ。手につけるからか。 宙はしばらくまじまじと見ていた。
一、二発ほど試し撃ちをしてから消した。 どうやら好きな時に具現化できるらしい。 銃と一緒に腕輪も消えるようだった。勾玉も。
「案内どうも、社さん」 「いいえ、どういたしまして」 社と呼ばれた男は笑って見送った。
* * * * * * * * * *
『・・・・・・姉?宙姉?』 気付くとミラからの通信が入っていた。 どうやら感慨に耽っていたようだ。 「あぁ、なんだ?」 『んー、そろそろ来るよ。でも本当にいいの?一人で』 「平気だ。いざっつー時の最終手段だってあるんだから」 カラカラと笑う宙にミラは賛成しかねる唸りを漏らす。 その方法は知ってるが、本気でやるつもりなのか。 昴はそれを気がかりなようだ。 後ろで不安そうな目を向ける彼女を入れつつミラが思考に耽ってると、それに、という声が向こうから聞えた。
「彼方は先の奴のせいで寝込んでる。銀河はこの手に向いてない。夢幻は留守・・・だろ?」
今の状況の確認だ。 必然的に戦闘員は宙とその配下だけになる。
『けど珠姫ちゃん達使わないんでしょー?』 「そうだよ。これは試し撃ちなんだから」
それを最後に通信は切られた。
「・・・・・・お出ましか?」 向こうからやってくる黒い雲。 そう見えるのは敵の軍勢。機械やらよく分からない異形もいる。 全く、この地域の奴等はどんな実験をしていたというのだ。 未だに町の面影を残している中のビルの1つの屋上に宙は1人溜息を吐いた。 嘆く気はない。所詮は他人事。これは仕事のうち。 しかもこの武器のいい実践練習台になりそうだと寧ろ喜んでいたりする。 ふと名前でも付けようかとも思うが、今は時間もない。
黒い腕輪に紫の勾玉。 その先の手にあるのは口の大きな銃。 「・・・ハジマリだ」 ニィ、と知らず知らずに口角を上げ、引き金を引いた。
相手の構造に関わらず、その弾丸はどんなものでも均しく貫いた。 ―――いや、弾丸と呼ぶのは不適切だろう。少なくとも有形物ではない。 熱の塊なのだろうか?少なくともエネルギーの可視物体だという事は確か。 うっすらと、ごくうっすらと紫色をしているそれは銃口から幾重にも重なり放出されていた。 真横から来る雨であり、流星群のような弾幕。 その一つ一つがそれぞれにトドメを刺して粉砕していく。 一撃で倒せないモノには少し大きめに調整して撃ち落とす。 使い分けは何処で行っているのか。それは宙の脳内だとしか言いようがない。 その銃に切替をするレバーは皆無なのだから。 また弾幕は一定方向だけではなかった。 僅かながら向きを変えて相手を襲っている。 追尾機能・・・というか放った後も意志を送れるのだろうか。
相手も防戦一方の筈が無く、攻撃は向かってくる。 撃ち落されるか見事に防がれるかそのまま抜けていく。 勾玉近くに来た攻撃は勾玉から放たれている防御壁に弾かれた。 よく見ると薄紫色の光が見えたりする。 偶に銃を左手に持ち替えてその右手で防御したりともしていた。
サングラスの奥の瞳を紫に瞬かせながら引き金を引いていた。 頻繁には引かずとも多くの弾丸は出る。 途切れる事のない雨。一体この正体は呪力か妖力か別のモノなのか。 最初から変わらぬ顔色からは窺えない。
「・・・・・・かったるい」 疲労の色より飽きた色が濃い。 同じ作業の連続に嫌気がさしたのか。 それとも引き金を引いている指が辛くなったのか。 いや、それよりも同じ体勢を貫いたからだろう。動けばよかったと軽く後悔している。 幸いにも敵は一定方向からしか来ない。 ―――――ならば一気にケリをつける。
銃口の先にエネルギーを集める。 周囲の、というか粉末になった死骸をも巻き込んでその塊は成長する。 銃口・・・いや、それ以上に大きくなった。 色は濃い紫色。レンズ越しの瞳も激しく同じ色に輝きを増す。 今だ、と思った。 躊躇い無く真っ直ぐに両手で引き金を引いた。
ゴォッ!
一瞬、風を切裂いた音。 それだけだった。
軍勢は消え、再びミラに連絡を入れる。
「どうだ?生体反応・・・及びそれに近い反応は?」 『んー、無いと思うよ。にーくんが後始末してるんでしょ?』 「まーね」 ちらりと地上を見ると白い生き物。何に似てるかと言われたら答え辛い。 そいつがしゅごーとなんか色々と吸い込んでいる。 腹は壊さないらしい。
『いざとなったら晴海ちゃんそっちに送るから』 「何それ。新手の地獄絵図?」 『それともお迎えに向かわせようか?』 「やめてくんない?自力でそっちまで行けるからやめてくんない?」
卒倒とかはしないが極力晴海のお迎えは避けて欲しかったり。 強いけど。あらゆる意味で強いけど。
『それでその新しい武器はどうなのー?』 「なかなかいいと思う」 師匠との特訓の日々をちらりと思い出したりもしたが。 よき思い出、とは未だに振り返られない。 まぁあれがあってこその今があるのだが。 「・・・あ、終わったようだからそっち向かうよ」 『了解ー。帰ったらゆっくり休みなよー』 通信が途切れた。
了
************************************************************ 瞳が紫に変化するのはこれ使ってる時だけじゃありません。 そして某キャラの影響なんてそんな(略) 今回出てきた銃はかなり特殊な物。 撃つのはエネルギーのみ。普通の弾丸は込められません。 指だけでも別にいいのですが「あれ地味に痛い」との事。 反動はほぼ皆無。出したいときに出せると言う代物。勾玉はオプション。防御用の。
*A・Yさん 今回もバトル・・・バトルか、これ? 久々でしたんで結構苦労・・・本当いつ振りだろうか(遠い目) 七海の弾幕?ありましたっけ・・・・・・; 七海・・・七海の話ですか。うっすらとなら考え付きましたが。 砂衣の方が先になるかも。しかしこっちかなり苦戦しそうだ。いや執筆というか内容というか勝てるのか?(待) え?ムクティですか?(笑)>片目の紋様 カードもどうでしょうねぇ。便利ツールとしての扱いです。

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