| [9311] 囚われ鏡 |
- 宙 - 2007年04月10日 (火) 21時04分
魔鏡の本家は奥まった所にある いや、魔鏡だけには限らない。四鏡全てに当てはまる 通常の手段では決して辿り着けない 同じ時空間にあるとは思えないほど
これはその、昔話
4歳ほどの小さな少年が薄暗い廊下を歩いていた 薄い金髪で、白い着物を着ている その碧眼も淡く、歩き方は夢遊病者のようだった 虚ろな目をしたまま幽かな光を頼りに足だけは動く 感情だけを殺したように
彼が向かったのは自分の部屋 といっても殺風景で、寝床だけがある様なものだった 布団に辿り着くとガクンと糸が切れたように倒れこみ、そのまま意識を失った もとい、眠りについた
「・・・・・・夢幻。むーげん」 「ん・・・・・・?」 目を開けるとそこにいたのは紺色の髪の子供 年は同じくらい。あちらの方が1つ上だ 「き・・・ら・・・・・・?」 「いつまで眠ってるのさー。もう昼だよー。当主怒ってるよきっとー」 ゆさゆさと揺らされていた 「ああ・・・・・・いつっ!」 「あー、また長々とやられたの?いい加減上手いあしらい方とりなよ。延々と続くらしいし」 鈍い痛みに顔を歪めた夢幻を綺羅はそう言って慰めた 慰めにはなってないか 「綺羅は早かったの・・・・・・?」 「え?大体なんとなくわかるし。それよりあんたは鏡の方もあるじゃないの。能力練習」 「うん・・・・・・イタタ」 「ほらさっさと動くー。もっとこっぴどくやられちゃうよ?」 綺羅に急かされて眠い目を擦りながら起きる
幼い頃、こんな日々がいつもだった のんびりとできる休息の時間は極僅か 『魔鏡』の血を色濃く受け継いだ夢幻はその分当主と密接に関わっていた 現当主、魔鏡荊魔 そのどっちの性別にも見える男は年齢も不詳だった 同じ魔鏡ですら知ってる者はいるのだろうか? いっそのこと人外と言われても納得できるかもしれない その彼は滅多に能力を表には出さない ―――が、一度だけ、見た事があった
夢幻が13歳の頃
いつものように荊魔の部屋に行くと、くすくすと楽しそうに笑っている彼がいた 今宵は特に愉快そうな表情をしている そう思った彼は、ギリギリの所で立ち止まっていた 「そんな所で止まるな、夢幻・・・。面白い物が見れるぞ」 くくっと笑う彼は心底から愉しそうだった
渋々ながら近づく そこにいたのは1人の見知らぬ男だった 手錠と足枷と轡を嵌められ、鎖で繋げられている 抵抗するような眼差し。それを見て夢幻はこう言い放った 「当主、コレは何ですか?」 者扱いはせずに物扱いをした 荊魔はその表情を変える事無く答えた 「コレ?ああ、『記す者』に手を出した不届きな輩。この表情が気に入っててね、殺らずに直々に貰ってきたのさ」 この表情、とは窮地の状況に立たされてもなお抵抗の意を見せているところか それに、と荊魔は付け加えた 「我の技、お前見たことなかろう?丁度良いから見せてやろうとな・・・」 愉快そうに目を細める
ゾクッ!!
その姿に夢幻は寒気を感じた (なんだ・・・・・・!?)
スゥ、と細い指がその男に向けられる かと思うともう一方の指がパチン・・・と鳴った ガシャン!と男を拘束していた物が全て外れた 間髪入れずに荊魔のぞっとするような冷たい声が響く 「――――[球鏡]」 ガッ! 球体の鏡が男を取り囲んだ 夢幻は歪んだ自分の姿をその鏡に見た
金属音も、衣擦れの音すらその静寂ではよく響いた だとすれば通常でも騒がしく聞こえる悲鳴はどうなろうか――――
「――――――――――――――――――――!!!!!!!!」
耳をつんざくような断末魔 それはもはや声ではなく、音だった ノイズではなく、それしかもう聞こえない 酷く高く不安定な音 絶叫と言うには軽すぎる それは越えてはいけない境界線を越えてしまったものだけが出せる音だった
夢幻は思わず後退した いいようのない恐怖感を覚えた あの球体内の空間はどうなっているのかなど、想像も出来ない 内部は凹面鏡を多く寄せ集めたもの その中の歪んだ世界に何が写り、何を見たのか 鏡の中に入って見て、正気だった者は果たしているのだろうか 内部はこの世界ではなく、異界なのだろう 決して踏み込んではいけない領域 そこに踏み込んだ彼が無事だとは到底思えない
しばらくするとその断末魔も聞こえなくなった 「終わりか?夢幻、お前も見るか?」 夢幻は首を横に振った 好奇心は微塵も起こらなかった 髪は脱色し、やつれ果てているだろうとは思ったが、それまでだった もう壊れているだろう 「フフ・・・・・・顔色が悪いな。よかろう。今日は特別にこのまま戻ってもよい」 荊魔は矢張り愉快そうだった
次の日に彼の部屋に行くと、球体の鏡と中身は既に失せていた
Fin
******************************************* 予習と妄念のジレンマ。 それに悩まされておりどっちもトロトロとなってます。最悪のパターンですね!(自嘲) 綺羅の事も書きたかったけど除外しました。タイミングなくて。 幼い頃の夢幻。てか、荊魔の技。 球体の他には合わせ鏡かなぁ。魔鏡当主だけが扱える技。 そして[球鏡]には元ネタがあります。テヘ。
*A・Yさん 超絶なスパルタです。一部記憶を失ってます。 弾幕の嵐ですねー。ちなみにたまにゴム弾を当てられました。 北斗は応戦できると思います。宙はデジャヴに襲われそうですが。 諸にそれ向きでしょうけど出さないんですよねーw>北斗 ええ、風真との話はこの時代に入りますよ。 もうログも下書きも残してないんですよね。大まかなことしか覚えてない(オイ)

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