| [9224] 鏡族の正体 |
- 宙 - 2007年03月21日 (水) 19時44分
コツ コツ コツ・・・・・・
ある黄昏時、1人の男が歩いてきた 紺色のスーツにほぼ同色のマント 蝶ネクタイを身につけ、ステッキを振る スラッとしているその茶色のステッキは時に地に着かれ 黒のシルクハットから少しだけ見える髪の色は薄茶色 同じ色の髭を生やした彼は、笑みを浮かべていた 穏やかな微笑みだった。不気味ともとれる微笑みだった その男を一つの形容詞で表すならば、『胡散臭い』
やがて、他の人影が複数見え始めた
「Bonsoir ―――」
シルクハットを上げ、丁寧なお辞儀を男はした
「ご機嫌よう、真の『鏡族』よ。『歴史』はどうかね?」 男が口を開いた 「集まりました。生をめぐる話も」 「死をめぐる話も。沢山あります」 一番先に答えたのは双児の姉妹 人形のような顔立ちをしている薄桃色の長い髪の娘達 目の色も同じ色 唯一違うのが服の色 山吹色の服が紅鏡ケレス コバルト色の服が紅鏡セレス
彼女達は歴史を記した書物を男に渡した 男はそれを受け取った
次に出たのは魔鏡朔魔 「所謂『天国』『地獄』と形容される状況の話です。卓魅は今も集めている最中です」 「そうか・・・・・・前は彼が来たからな・・・・・・」
「近頃あった戦闘の記録です」 「内面は碧(みどり)に任せました。しかし、大体は動きを見てもよくわかりました」 一番客観的とも言われる記録 それを書き留めるのは聖鏡東(あづま)と春 しっかりとおしとやかな印象のする東が男にその書物を渡した 若干幼さの残る春はそれを静かに見ていた
「先程春が述べたように私は戦闘者の内面を描きました」 「私の方は些細な事で、それでも気に入った物を書いておりますわ」 碧と呼ばれた男は、その名通りの碧眼を例の紳士へと向けた もう1人の藍鏡はス・・・と手帳を渡した しかも2冊 「これはこれは・・・またよく集めてきたね、翠(みどり)」 翠と呼ばれた老女はふわりと微笑んだ
紳士はまた微笑み、やがて口を開いた
「さて諸君、他に何か引っかかった事はないかね?」 そう言われ四鏡達がしばらく考えるように黙り込んだ その前から既に静かだったが
それを破ったのは朔魔だった 「拓魅が・・・・・・また『未来』のビジョンを見たそうです」 「ほほう?話されたかね?」 「はい・・・・・・」 彼女の視線は碧に向かった その視線を受け止め、コクリと頷いた 彼は紙にサラサラと何かを描き始めた そしてそれを紳士と、同じ『鏡族』に見せた
「ふぅん・・・・・・」 「春はどうだい?視えたかい?」 碧が春に尋ねた 「『未来』はまだだな・・・・・・過去は視た」 「わかった。描いてみよう」 再び何かを描き始める 先程描かれたのは全く違う物 相手が見てきた事をそのまま読み取って写し取るかのように彼は描いた
「出来たよ。これでどう?」 「それであってる。これだけだ」 「ご苦労、諸君・・・・・・」 フッと笑みを強くした そして続けて紳士は言った
「本日は此処までとしよう もし困って対処しきれない面倒事が起きたなら、すぐに私か当主へ言いなさい・・・・・・ 後は『暇人』に回しなさい。心配する事はない、躊躇する事はない 全て代えがいて、その為だけに彼らは存在するのだから・・・・・・」
そう言って彼はマントを翻し、立ち去っていった
四鏡にはその名の通り4種類の血脈がある 聖鏡・魔鏡・紅鏡・藍鏡 それぞれ能力もばらばらであるが、“歴史を記す者”が2名ずつ存在する ――四鏡の存在意義とは彼らの役割 “歴史を記す”行為こそが彼らの役目であり目的 それ以外はどうでもいい副産物 “記す者”を守るためだけに二次的に生まれた能力 本来はどうしようもなくどうでもいい 代替品はいくらでもいる 四鏡は犠牲になる為の消耗品なのだ
四鏡の元になったある1つの家系 姓は加々見といった ある時から能力が著しく分かれ、家を分ける事にした ちょうど4つあった 元は『加々見』も残ってたが、ある時に断絶してしまった 故に今残っているのは四鏡のみだ “記す者”はどうも満遍なく生まれるらしい なのでそのまま維持している
忘れられた『廃墟』 『現』を『想』いながら極端な場所を求め 存在の『有無』を探りながら 『鏡』はただ黙ってそれを映し 『調べ』を紡ぐのは誰の唇?
ある暁時、1人の紳士が歩いていた 紺色のスーツにほぼ同色のマント 蝶ネクタイを身につけ、ステッキを振る スラッとしているその茶色のステッキは時に地へ突かれ 黒のシルクハットから少しだけ見える髪の色は薄茶色 胡散臭い印象を与えるその男 通称名を、加々見クロルといった
Fin
************************************* まとめちゃえば四鏡ってのは“歴史を記す者”さえ生き残ればよく、後は使い捨ての兵士ってことです。 それは当主も例外ではありません>代替品・消耗品 だから別に野垂れ死のうが一切関与しないんですよねぇ>四鏡 加々見クロルは通称、というわけで本名は不詳・・・という事に。
*レナ サンホラネタは『Roman』以外にもあったりする。 第五の地平線はまだマシな方。 小ネタ集ですからはっちゃけましたw 答えについてはYeah!と返しておきます(なんじゃそりゃ)

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