| [9156] ESP element 3 |
- A・Y - 2007年03月14日 (水) 21時02分
凪「出ずっぱりと言いつつも今回の私の出番は……」 モルフォン「ないですねぇ……」 凪「……まあ、まだ始まったばかりですから……準備みたいなものですよね」 モルフォン「そうですよ」
response to 宙さん ちゃっかりお茶目風に書きましたっ☆(うざ そうですね。この話では風真さんは重要な位置に居ますので。是非。 ええ、時間軸がややズレますが、なんとか修正して。 ヒント:『いつも被っている山高帽子』 そうなんです。凪さんは持っているハズのない力なんですよね。
凪「他のキャラさんへのスポットをなるべく当てなければいけませんよね」 モルフォン「うん、作者としてね。今回はなるたけそういうの優先しないと」 凪「はい。分かりました。……では、ENTERです」
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静かな空間だった。 のんびり出来ることは素晴らしい。 縁側から濃い自然を眺めながら、男は思った。 その男は、黒のざんばら髪をそのまま下ろしている。目は蒼と碧のオッドアイだ。 鼠色の長いコートを着ていた。 その下はだらしないワイシャツ。同じくだらしない長ズボン。使い古した感じがよくする革靴。 けれど、その服装がほぼこの男の雰囲気によく合っていた。 男は一服吸おうと思った。 コートのポケットから取り出したのは、煙草。 ライターはない。彼には必要ない。自前で出来るから。
「ア、シンビョウサン、煙草ハ止メテ下サイ」
やけにカタコトな旋律の、女の声がかかる。 シンビョウ……と読んで神猫という男は、振り返った。 「硬いこと言うなよ、壱サン」 軽い調子で、声の人物に言い返す。
その女性は、一目して人間ではなかった。 人肌には程遠い硬い身体。カタカタ鳴る口。 目蓋も瞳孔もない赤い目。間接部分に見える節々が細すぎる。 それは、どうみても人形だった。人形が、黒い着物を着て正座している。 雨人形・壱ノ妙。それが彼女の名前だ。 壱サンとは神猫からの愛称である。
「喫煙スルナラ、セメテ外デオ願イシマス」 「ここ、外だよ?」 「縁側デモ、家ノ中デス。つみガ嫌ガルノデ……」 「しょうがないなぁ……」 男は革靴を土に踏ませた。ここから離れる。
外には、白い蝶々に纏われている少女が居た。 「よぅ、お月」 振り返ったのは、黒髪以外は白い少女。 目元がほぼ見えない顔で、ふんわりと微笑む。 物静かな子だが、愛想は良い子だ。 この子なら、煙草に対しての文句はないし。 神猫は早速吸った。 穏やかな時間と緑深い空間に、一つの煙が漂う。
「あ……」 白い蝶が一匹、お月から離れた。 目をくれると、その先から一人の人物が現れる。
黒目黒髪に黒い軍服。白いのは肌、唇は赤い青年。 「極卒か」 「おや神猫さん。こんにちわ」 「なのこはどうした?一緒かと思ったんだが」 「そうですねぇ。お友達に付き合っている。というところです」 「お友達……?」 はて、と首を傾げる。 「なのこはああ見えても、友達はちゃんと居ますよ」 極卒はいつもの笑顔で言う。やや気味悪いが、これが彼なりの愛想たっぷりの笑顔。 このまま極卒と雑談しながら喫煙にしゃれ込もうかなと、神猫は思った。
けれど、風が吹いた。 同時に、蝶々が、ざわめいた。 「……また、呼んでいる……誰かの声で、同じ声……」 お月がそう言った。
「……そうだねぇ。俺にもちょーっとばかし聞こえるね」
精霊の声。正確にはそれを間接的に使った、女の声。 神猫の気が変わったのもこの瞬間。
「行って見るか、美人の助けを求める声なら駆けつけないと。 それに、もしかしたら同じように呼び寄せられた妹達に、会えるかもしれないし……」 煙を一つ吐いたら、煙草を捨てた。勿論火は念入りに踏み消して。
神猫は『あさき』から去っていった。 いってらっしゃい。またどうぞ。という声を背に受けながら。
「神猫さああぁぁぁアアアアああああぁぁぁぁぁああぁぁぁんっっ!!!!」
けたたましい声を上げながらやってきたのは。 先がはねた茶髪の少女。黄緑色の瞳をしている。 どこぞの制服のようなスーツとスカートで、全力で走ってきた。 「おや、あれは如月睦海さん」 「ムツミサン、デスネ」
「ゼェゼェゼェ……あの、此処に、神猫さんは居ませんか」 「残念ながら、たった今出発しましたよ」 ガクーッと縁側の板に項垂れる、陸海という少女。 「あのヤロオォ……」 凄く、悔しそうに、握り拳を作った。 そこに壱ノ妙が、お茶を差し出す。喉が乾いてるだろうと、気を使って既に冷ましたのを。 「コレドウゾ」 「あ、すみません……」 ゴクゴクと飲み干した。 「ああ……生き返る」 「本当にたった今でしたから、すぐに追い着けるかもしれませんよ」 「そうですか!ではっ」 極卒の助言にパッと切り替える表情。 体力もあっさりと回復したようだ。即行に駆け出した。 「太平洋に沈めてやるうぅぅぅぅ!!!」……という叫びと共に、嵐は去っていった。
「……飲ミ物ヲ一気ニ飲ンデ、マタ走ッタラ、オ腹壊スンジャ……」 「もう行っちゃいましたよ」 やれやれ、という風に茶を啜る極卒。
「ア――――――――ヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャアハァハァハァハァ〜!!コポッ」
「一嵐去ってまた一嵐ですか……」 これには一瞬だけだが、目くじらを立てた極卒であった。
「あれれぇ?釣れないこと言わないで下さいよ〜。極卒の旦那ぁ」 面白いネタ拾って来ちゃったんだからさwと囁く。 「ほぅ?ではその面白い噂とは?」 「へへへ……実は……」
鬼−BEは先日起こった闘争を話した。 デストロイを中心に一京や六、D、その場に居合わせていたユオンのことも欠かさずに。 やや誇張的な表現が多かったが、大体真実である。
「……なっ!面白いだろっ……てあらら?どうしたんですかい旦那、そんな険しい顔して」 「いや。少し心配になってきました。思ったよりデストロイのコンフュジョンへの執着心は強いようだと分かって」 「それがなんで心配に繋がるんだよ?コンフュジョンか?」 「兄弟の問題はその人達で解決するものです。 けれど、そこになのこが巻き込まれる可能性があると話は別…」 「ええ!?なのこって……」 「コンフュジョンに付いている」 「マジで!?」 「これは僕ものんびりと構えているということを、撤回しなければなりませんね」
極卒は縁側から腰を上げて、家の奥へと行った。 いつもは必要がないものを、今回使うかもしれないものを取り出す為に。 「私モ……」 「壱ノ妙。お前は一京が来るまで待ってなさい。 鬼−BEの話を聞いただろう、彼もお前を迎えに来て、同じ戦地へ向かう筈だ」 「アアー、そういえばそうするっぽいこと言ってたなぁ。壱ノ妙へ、今度の戦いは長丁場になりそうってさ」 「ソウデスカ……ソウデスネ」
「極卒、帰ってもう行くのか」 光がほとんどないところから、男の声がかけられた。 全身に喪服で、部屋の中なのに目深帽子を被る男。 「ええ、なのこが心配ですからね」 「そうか。せめてこの子が起きるまで居て欲しかった」 男の膝近くで、一人の黒髪の少女がすやすやと眠っていた。 「ツミや、お月のことは任せますよ」 「……分かった」
「では、行って参ります」
極卒は目的地へと足を向く。 帽子に黒い外套を羽織って。その手元には、一振りの刀を携えて。
あとがき 神猫さん達の登場が主軸ですが。 はっきり言ってあさき家の面子を出したかったの。

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