| [9155] Ultimate Recycling Chapter4 No.29 |
- シベリア - 2007年03月14日 (水) 20時55分
汽車が出発した。 マルコは酔い安いらしく、窓際に座る。 フローラは慣れない環境に緊張し、殆ど動いていない。 唯一元気なのはジェーンだけ。 「二人とも元気ないね・・・どうしたの」 「行きも行ったでしょう。酔いやすいんです」 「人様に迷惑をかけるなと両親が・・・」 「ん〜・・・マルコはともかく、フローラまで・・・」 「何ですか、ともかくって」 「ジェーンさん、そっち詰めた方がいいんじゃないでしょうか?他のお客さん達も座れるように・・・ 空席に鞄置いちゃ人が座れないですから、それは膝の上に乗せるなり、床に置くなりしないと・・・」 「・・・・・うん。ごめん・・・」 「・・・・・・本当に少しフローラを見習ったらど・・・・・・うっ・・・・・あ、あんまり喋りたくないです・・・」 マルコは顔色を悪くしながらメモ帳を取り出した。 「ソシエム発ルソナ行き普通汽車・・・乗り心地最悪・・・と」 「メモしてどうするの?それ」 「さあ・・・・どんな些細な情報も売れれば金になりますから。それにメモだけなら情報はただ・・・・うぇ・・・・ す・・すい、すいません・・・やっぱ無理っぽい・・・・」 「ふー・・・・フローラ、あんまり緊張しなくていいのよ。あんたも客なんだから」 「は、はいっ!」 「・・・・あーもう!つまんないっ!」 ジェーンはうーんと伸びて言った。 そんな彼女の様子をマルコは吐き気に襲われながらも眺めていた。 まるで前の狂いっぷりが嘘のようだ。 だいぶ、落ち着きを取り戻しつつある。 これが彼女の性格なのか。それとも、悲しみを隠す為に作っている性格なのか。 いずれにしろ、少し安心していた。 また前の様に狂い出さないかどうか。平常心を保てるか。 それが心配だったのだ。 この状態が続けばとりあえず大丈夫だ。続けば、の話だが。 「どしたのマルコ?何か顔についてる?」 「・・・・・・・・いいえ」 「ふーん・・・・あ、恋に落ちた!?」 「落ちませ・・・・・・・・・・・ごめん、話掛けないでください」
マルコが得たジョエルの大まかな居場所、ルソナに到着した。 が、やはり元気がいいのはジェーンだけ。 「・・・まさか二人とも酔うとは」 「すい・・・・・ません・・・・・・・くそっ、ライターたる者、乗り物には慣れなければならんのに・・・」 「ごめんなさい・・・・あんまり・・・・・汽車には乗ったことなくて・・・・迂闊でした・・・」 「今ジョエル勢に襲われたらどうすんのさ」 「任せましたよ、ジェーン・・・」 「がんばって、ジェーンさん・・・」 同時に言われた。 「・・・・・」 周囲を見回した。すると、見るからに安そうな宿を発見した。 どうせ宿には泊まらなければならないのだ。ジェーンは二人にそこに泊まろうと提案してみた。 二人とも答えるのが面倒で、いいよいいよと適当に返事をする。 酔ってしまった二人を軽く励ましながら、ジェーンはその宿に向かって歩いて行った。
夜が明けた。 すっかり酔いが醒め、先に目を開けたのはマルコ。 だが、目を開けた途端、絶句した。 「な・・・・・なな・・・・何ですか!?」 周囲を見回した。 となりではフローラが横たわっていた。 拘束されたりはしていない。マルコはフローラを揺り起こした。 「フローラ!フローラッ!」 「ん・・・・は、はい?何でしょう、マルコさ・・・・・・!?」 フローラもマルコと同じような反応をした。 「えぇ!?な・・・・・何・・・・・」 小さな毛布を握り締めた。 「ここは!?ジェーンさん!ジェーンさん!?何処ですか!?」 二人はかなり怪しげな部屋にいた。しかも、二人とも同じ部屋に。 ドタドタと音が立って、ボロいドアが開いた。 「どうしたの!?二人とも!」 すごいスピードでジェーンが入ってきた。 「どこですかここは!?自分らは捕まったんですか!?」 「ここはどこです!?捕らえられちゃったんですか!?」 「・・・・はぁ?」 ジェーンは拍子抜けした返事をした。 心配そうな表情で二人に歩み寄った。 「二人ともどうしちゃったの?変なクスリでも飲んだの?」 「え?」 「ここは宿ですよ〜。一泊が最高に安い宿ですよ〜」 「・・・宿」 フローラとマルコが顔を見合わせた。 部屋の四隅には蜘蛛の巣。蹴ればフローラでも壊せそうなドア。 ガムテープで補強された窓ガラス。ホコリまみれの棚。 無に等しい灯り。墓場の見える最悪な風景――― これが『宿』?信じられない。 「や・・・・宿・・・・ですか?はは・・・」 「うん。え?一体何だと思ったのさ?」 二人は顔を赤くして俯いてしまった。
「なるほど・・・・・乗り物酔いで意識が殆どなかったから・・・」 「うん。でもすごい安かったよ。ほら」 払った金額の書かれた紙をマルコに差し出した。 「・・・安い。ソシエムの時より安いじゃないですか。三人泊まっているのに」 「うん。でも、宿主さんいい人よ。二人を昨晩看てくれたのよ」 「そうだったんですか・・・・お礼言わないと・・・」 三人は下へ降りて行った。 この宿の宿主はせっせと掃除をしていた。 三人気づくと、にっこり笑った。 「あら、お二人さん!もうお体は大丈夫ですか?」 「ええ・・・おかげさまで」 「ありがとうございました」 三人は頭を下げた。 「いえいえ、いいのよ。こんなボロっちい宿に泊まって下さるなんて・・・・」 「そ、そんな事ないですよ・・・はは・・・・」 「そうですよ!・・・・何て言うか・・・・その・・風情・・・?風情が・・・」 二人の必死な擁護にジェーンは笑ってしまいそうになったが、堪えた。 「彼方、お名前は?」 「クラック・ペリオンです。ようこそ、我が民宿へっ」 「(民宿・・・・やっぱり宿なんですか)」 どうにも信じるのが難しい。本当にこんな所が宿なのか。 宿と言うより、廃墟に泊まれる環境を作った程度だと感じてしまう。 宿主は改めて嬉しそうな表情をした。 「いやいや、こんな所に泊まってくださるとは。本当に嬉しいです。久し振りのお客様です」 「そうなんですかー・・・大変ですね」 フフッと笑った。掃除をしながら、宿主は話を続ける。 「最近は新式の宿が多くて・・・どうもこういう古い型の宿は周囲に勝てないんですよ」 「新しく建て直せたりは・・・・・?」 「できるかもしれまんけど、したくないんです。意地ですかね」 「へぇー・・・・・大変なんですね」 「ははは・・・・いちいち苦労する道を進むというのも、変な感じです」 ますます暗い話題に発展していく。 あんまりこういう話が好きじゃないのか、マルコが話を切った。 「そうだ。ちょっとこれからの予定とかあるんで・・・・・皆さん、部屋に戻りましょう」 「あ、うん。では、失礼します」 「がんばってくださいね」 「はい。ありがとうございます」 三人は階段を登って行った。
宿主はまだ笑っていた。 「フフフ・・・・フフフフッ・・・・ハハハハ・・・」 階段の上のほうを睨みつけて呟いた。 「全く・・・・『いちいち苦労する道を進む』なんて・・・何がしたいんだい?あの三人は・・・・ 何も言わずジョエルに従えばいいものを――本当に愚かしい。少数派がかっこいいとでも? さあ、眠るといい・・・・眠ったが最後―――目覚める事はないだろうネ・・・」
_next_ ++++++++++ 乗り物酔いは輝く。 場の雰囲気を悪くする反面、 こういう場面では雰囲気を和やかにしてくれる。 最近、ピリピリした雰囲気が多かったりしたので少し和んでみたいと思います。
>>A・Yさん フィウスは凄まじいとんでも再生術師です。 ちゃんと設定を考えていた筈なんですが、最近になってある欠点が見つかりまして。 凄く頑張って辻褄を合わせたんですが――果たして。orz ここまでやっておいて仲間になりません、何ていうのは流石に・・・ それに以前出ていたキャラクターの子孫ですしね。 こうなってしまうのは必然だと思います。 画像掲示板の怖い画像スレに張られていて・・・ アニメ見たときに意識してたら本当に見つけてしまった。思わず笑ってしまいました。
>>宙さん フィウスは大人っぽい女性だと思っていただければ大丈夫です。 再生術はすごい出し惜しみしているので・・・すごく最後の方になってしまうと思います。 お楽しみに。(そんなにすごいものでもないのかもしれないですけど) 敵勢が絶対に悪い事をしているのなら仕方がないのかもしれないんですけど。 今回は見方を変えれば敵勢(ジョエルさんら)が正義になってしまったり、しまわなかったり。 そういう面でも、主人公勢絶対正義と敵勢絶対悪はしちゃいかんなーと。 果たしてそういう状況が作れているかはよく分かりませんけど。 今日、さっそく漫画を買いに行きました。 苺ましまろ面白かった。

|
|