| [9152] 紡がれし調べ page.68 |
- 宙 - 2007年03月14日 (水) 15時36分
服はその機能こそ果たしているが、もうボロボロになっている 立っているのはおろか、此処にいるだけでも辛い 自分がこれだけ決定打を被っていないのは、キリストのお蔭 彼がいなければ自分は―――もう此処にはいない しかしその彼もかなり疲弊していた 相手はXANXUS ヴァリアーのボス。ゼリス上層部の1人
秋とキリストの息は荒い 刀を構えながら立っているが、構えているのではなくそれを支えにしているのかもしれない 桁違いの攻勢からだけではない XANXUSが発する炎が周囲の酸素を奪う 酸素欠乏症に陥っている XANXUSは余裕でいる その炎を出すフォームに入る ゴォッ 此方に向かう
思わず秋は目を瞑った けれど思っていたような感覚はなかった それどころか何かに守られているような おそるおそる目を開けると、そこには新たな人物 明るい金髪の青年だった 秋とキリストと彼の周囲には青緑色の炎が纏う XANXUSは予期せぬ乱入者に目を大きく見開いた 「・・・・・・貴様?」 「間に合った・・・みたいだね」 XANXUSの呟きには応えず、青年は秋達に話し掛ける 「はい。大丈夫です」 「おかげさまで。・・・・・・貴方は?」 キリストの問いかけには素直に答えた 「七海(ななみ)。とりあえず炎の攻撃は防げるから」
XANXUSが再び炎を放つ 「無駄だよ」 七海はポツリと呟いた その言葉通り猛火は青緑色の炎で遮られる 「如何なる炎であれこの炎には通用しない・・・・・・君のその『憤怒の炎』とて例外ではないさ」 憤怒の炎 XANXUSが司る『憤怒』がそのまま実体をもったもの 怒りの強さなのか、何に向けられた物なのか、その強さは半端ではない それをもいとも簡単に防ぐこの炎 一体何なのか XANXUSがハッと笑って取り出したのは二丁拳銃 「まさかテメーらのような奴にこれを使うとは思わなかったがな・・・・・・」 そう言って銃口を彼らへと向け、撃った
「!!」
その轟音と威力は桁違いのもの 「ぐっ・・・・・・」 炎はまだいいが、その銃弾は青緑色の炎を突き抜けた 「普通の銃弾なら防げるけど・・・・・・そうはいかない、か」 「あ、危なかった・・・・・・」 秋とキリストは無事だ 七海は彼らに声をかける 「いつまで保てるかわからない!一気に攻めに転じる!・・・・・・ええと」 「私は秋です。此方はキリスト」 「秋、キリスト。オレが来る前に奴に攻撃は通用したかい?」 「・・・・・・いいえ」 「悔しいですが、無理みたいです」 「・・・そっか。じゃあ、悪いけど少しの間だけ彼を陽動しててくれ。オレがやる」 「はい。わかりました」 ヒソヒソと耳打ちする そして秋とキリストは刀でXANXUSに向かった その間に七海は―――
「・・・・・・ふぅ」 心を落ち着ける どんな波紋も起こさないように 自然と目を瞑る そしてキッと目を見開いた 彼の足元に陣が現れる 八卦
おおおおおん
オオオオオン
何かの音がする 唸りか、それとも
ボッ ゆらり ふわり
周囲に青白い火の玉が現れる 七海を中心にそれらは廻りだす 狂ったように激しく踊るその中心に、何かが凝縮する
近場で感じたキリストは一目でその正体を看破した (――――妖力!) ということは、彼は、人間ではない あれは―――妖魔
足元から色とりどりの炎が揺らめき、中心にまとわりつく それは今まで抑えられたわめられていたものが一気に噴出したかのようでもあった 人型から全く違う物へと変化する
そこにいたのは1匹の巨大な化け狐 尾は7本 黒い模様がそれぞれについている 金色の狐はギラリとXANXUSを見据える 尾に妖力を一気に溜める そこからエネルギーを放った
秋達が次に目にしたのは、銃弾に打ち抜かれている一匹の化け狐 凶悪な男の笑顔 「ぶわーっはっは!たかだか妖魔ごときがオレを倒せると思い上がるなよ!」 1人、大笑いした 秋とキリストは思わず後退する XANXUSが睨む 途端に動かなくなってしまった (え!?) (しまった!ただでさえ彼の眼力は鋭いのに・・・・・・!) 今はもう炎から守ってくれる青緑の炎―――狐火もない そして彼は今度こそ葬り去ろうとしている 『憤怒』も先程より上がっているだろう 銃口が此方に向いた――――と思った
急に出てきた影がなければ
不意に飛び出した男の手には黒い剣 周囲に飛び散った液体はまるで葡萄酒のよう 剣をXANXUSに刺しながら、赤黒い花が奇妙な所へと投げられた 「Bonsoir」 その言葉と共に手向けの花は、ある所に刺さった 「ムギャア!」 そこにいたのは小さな人、マーモン そのままボテッと落下した 動かない 抜きながら男は呟いた 「Au revoir」
葡萄酒はさらにその量を増し、XANXUSは崩れ落ちた 男はクスリと秋達に笑いかけた それはとても場違いな物 いつの間にか黒い剣は消えていた パチンと男が指を鳴らすと、強い風が吹いた その強さに2人が目を瞑っている間に男は消えた
「一体何が・・・・・・?」 呆然としている秋 キリストは倒れたマーモンの傍に行く そして投げられた赤黒い花、薔薇を見た 「先端に即効性の毒が塗られてたみたいですね・・・・・・。かなり強い致死性のものです」 「あ、あれ?七海さんがいない・・・」 「え?」 秋の声に反応してキリストが見ると、確かにそこには七海の姿もなかった 此処には彼ら2人しかいない 「・・・・・・そろそろ、出ない?」 秋の提案にキリストは頷いた 彼女を抱きかかえ、外へと向かう
* * *
鋼治はルッスーリアと交戦していた ムエタイを扱う彼に、しかし動じる事はなかった オネエ言葉でも余り怯まない
「うふふvなかなかやるわねえアナタ」 「そりゃどうも。・・・・・・ん?」 「どうしたの?」 「いや別に」 そう言って金棒をスイングした 避けるルッスーリアをそのまま追う 得物の重さに耐えられない、事は決してない そんなものであれば得物にはしないから がむしゃらに振り回しているように見えて、鋼治はある所を狙っていた そしてそこに当たった
バキィッ! メキッ
「ギャアァァァァァァァ!?」 両足膝に思いっきりぶち当たった金棒 ニィッと笑みを漏らしたのはその持ち主 相手の武器であり、そして人の体を支える部分でもあるそこ 横に振っていた金棒を今度は縦に振り下ろした
「金子のヤツは大丈夫かなー」 そう心配する『兄』の傍らには既に原型を留めてないモノがあった
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************************ XANXUS戦と七海の正体。 男の正体はちょっと待ってて下さいねー。 そして『腕』が元ネタです。ボスのトドメのシーンは。 台詞は意味は簡単なものです。わざわざ綴りは調べましたが。 ルッス、扱いこれですまんね。
*A・Yさん 最初漠然とひまわりでしたが、蔓がある方がいいと思って朝顔に。 それにそんなに凝る必要もありませんし・・・。 スクアーロは片腕が義手です。ギミックがありました。 そうなんですか?じゃあ先にやってよかった(オイ)>絶対零度

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