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[1630] イナズマイレブンヒートの小さな物語 曾羅儀 - 2014/04/02(水) 13:28 -

思えばアイツは――・・・
遠い存在になっていた――・・・
ずっと遠い存在に・・・

―プロローグ―
鏡も青く晴れた空、同じお日さま園の子供たちの声が聞こえてくる。
一緒に遊びたい――・・・
だけど・・・俺はこのベッドの上から動けない・・・俺の体は病弱で外にも出られない、
辛かった。でも、アイツが声をかけてくれて毎日が楽しくなった!

―第一章― 出会い
今日も、同じ天井を見つめる。外からは、サッカーをする子供たちの声が聞こえる。
俺も外に出て遊びたい。そんな時だった
「何してんだ?お前」
「!!」
ビックリした、窓からひょっこり顔を出していたのはバーンだ。
「お前、確かヒートだろ?毎日毎日寝てつまんなくないのか?」
「・・・そりゃ・・・つまんないよ・・・でも、寝てなきゃ・・・」
「・・・じゃあさ!秘密で、こっそり抜け出そうぜ!!」
そう言うと、バーンは窓を乗り越えて病室に入ってきた。
驚いた・・・普通ならすぐに皆、去ってしまうのに・・・
「ほら!行こうぜ!」
バーンは、俺の手を掴んだ。
「だっ・・・駄目だって行ってるだろ!?はなしてくれよ!」
「あっ・・・ごっごめん・・・」
これで、バーンも立ち去るだろう・・・俺は一人が似合っているんだ・・・
「じゃあ・・・・・・俺、毎日遊びに来るよ!な!いいだろ?」
「う・・・うん・・・」
予想と違う反応に驚き勢いで返事をしてしまった・・・
「じゃあ約束な!ヒート!」
そう言うと、バーンは小指を立てて手を俺の方に向けた。
俺も、小指を立ててバーンの小指に絡ませた。
「うん・・・約束・・・な?」
その日から、俺は毎日が楽しくなった。毎日、バーンが俺の病室に来てくれる。
練習をして、疲れているはずなのに毎日だ。少し申し訳ないと思ったが、
バーンの方は特に気にしていなかったみたいだ。
「んでさーグランとガゼルがよー」
サッカーのことを話をしている、バーンはすごくキラキラしていた。
たまに、愚痴も言っていた。どうしても、新ワザができないらしい。
なんか今にも暴れだしそうだったから俺の見舞い品のバナナをあげた、
そしたらすぐに機嫌を直した・・・そしてまた、サッカーの話をした。
ある日、バーンがこんなことを言ってきた
「ヒートさ!最近調子いいよな!!」
「あ・・・分かる・・・?お医者さんも奇跡だって・・・」
「ヘェ――・・・じゃっサッカーおしえようか!?」
「え・・・いっいいの?」
「ああ!まず、これがドリブルだ!」
そう言うと、バーンは持っていたボールでドリブルを始めた。
他にも、いろんなことを教えてくれた。看護婦さんに見つかってないか、
少し怖かったけど楽しかった。
「でっこれがシュート!!」
「わわっ駄目だよバーンッッ!!」
遅かった・・・バーンの蹴ったボールは、病室の壁にあたりとても大きな音が出た。
「こら!なにをしているの!!」
「やっやべ――・・・」
一緒に怒られた、でも楽しかった起こられている最中にこっそりバーンに言った
「また、教えてね」
バーンはクスッと笑うと
「ああ!もちろんな!!」
「こら!何話してるの!?」
また怒られた。こんな日が毎日続けばいいと思ってた。

―第二章― 距離
俺は、十四才になった。体も強くなった。これもきっとバーンのおかげだ!
今日は、プロミネンスのメンバーと紅白戦をすることになった。俺はWFだ。
相手のチームにグレンドがいったため、こっちのGKはバクレーだ。
俺が練習にくわわるのは、今日が初めてだ。
(初めてだけど、バーンと一緒だから大丈夫だよな・・・あっ)
バーンだ。俺は走って行った
「あの・・・バーン様・・・!」
「ああ?」
「!!」
声がかけづらい・・・こんな表情のバーンは見たことない。
俺はどうしていいか分からず、言葉を失ってしまった
「用がないなら話しかけるな!」
「あ・・・はい・・・すみません・・・」
やっぱり上下関係だからか・・・?俺が敬語を使わないといけないように、
バーンも俺みたいな奴と話すヒマなんてないのか・・・?
だけど・・・親友なら・・・「がんばろう」の一言ぐらい、
言ってくれてもいいんじゃないのかな・・・?それとも・・・・・・・・・
親友と思ってるのは・・・俺だけなのか・・・・?
あいつから・・・バーンから見れば・・・俺はただのチームメイト・・・
いや・・・それ以下なのかもしれない・・・
「ヒート!なにしてんの?始まるよ!」
「あ、うん。ごめん、レアン」
ピ―――――・・・
試合開始のホイッスルが鳴っても、俺はずっと考えていた。
「ヒート!」
ネッパーから、ボールがわたってきた。
「おっと・・・」
危なくミスするとこだった・・・ドリブルはしているが
今の俺はどんな奴にだってボールをとられてしまいそうな気がする・・・
集中しないといけないのに・・・
「イグナイトスティール!!」
「うわぁ!」
・・・・・・あれ・・・足がいうこときかない・・・!?駄目だ!!
こんなにすぐにゲームから抜けるなんて・・・!!でも・・・
「ヒート!?」
俺が足を抱えて倒れると、皆が集まってきた。
「大丈夫か!?ヒート!!」
「あ・・・ああ・・・大丈夫だ・・・俺の不注意だ・・・」
俺にイグナイトスティールをしかけたボンバが心配そうに見る。
一時中断のホイッスルが鳴る。どうしよう・・・・・・
そんなに大事にしたくないのに・・・
「・・・・・・プレイは続行できそうか?」
冷たいバーンの声にハッとする・・・このまま続ければ・・・
多分皆に迷惑がかかる・・・
「・・・すみません・・・・・・出来ないです・・・」
右足を引きずりながらベンチの方に行く、後ろから足音が聞こえてきた
「大丈夫?・・・じゃないわよね。その足」
「・・・レアン・・・・・・どうして・・・」
「いっいいじゃん、別に・・・」
顔を赤くしながら、肩をかしてくれた・・・
「いっつ・・・」
「えっごっごめん!!」
消毒が痛かった、レアンは必死に、痛くないように優しく消毒してくれた。
「妙に優しいね。今日のレアン」
後ろからサトスが声をかける
「うっ・・・・うるさい!」
顔を真っ赤にしてサトスの方を振り向く、
俺には何のことを言っているのかよく分からなかった。
「初めて練習に参加したから心配なのよ!」
「・・・!」
そんな風に思っててくれたんだ・・・
「ありがとう・・・レアン・・・」
ついポロッと言葉が出てしまった。その言葉にレアンはまた、顔を赤くした。
レアンが氷水をもらいに出て行ったあと、サトスがこっそり教えてくれた
「レアンさ、お前が怪我してたとき真っ先にに、お前の方に行ったんだぜ
それにすぐバーン様の方に言ったんだぜ?手当てをしても良いかって」
「・・・そうなんだ」
「・・・つまりさ!レアンはお前のこと特別に思ってるらしいぜ!」
「・・・とくべつ・・・?」
どういう意味だろ、とくべつ・・・
「・・・フゥ――天然すぎるとキケンだぜ?」
「て・・・天然・・・?」
その話の間にレアンが入ってきた
「サトス・・・変なこと・・・教えてないよね・・・?」
「おしえてねーぜ?ただお前がヒートのこと特別に思ってることぐらいしか」
「それが変なことでしょ――――!!!」
「あはははは!」
サトスは、笑いながら逃げて行った
「ヒート!サトスの言ったこと全部・・・う・・・うそだから・・・・・・本気にしないでよね!!」
「あ・・・うん・・・・・・あ・・・ねぇ!練習は・・・」
「中止だってよ、たくさんの人抜けて練習にならなかったからね」
ボニトナが、レアンの後ろから顔を覗かせる。
俺の脚の怪我を、まじまじと見つめて指でつついた。俺は痛さに耐え切れず
「痛っ・・・・・・」
と、声をあげてしまった。すると、ボニトナは・・・
「あ――・・・ダメね、傷が深いわ。完全に治るのに・・・多分、一ヶ月はかかるんじゃない?」
「いっ・・・一ヶ月!?」
・・・丁度よかった・・・今は気持ちを整理したかったから・・・
そう考えると丁度いいじかんなのかもしれない・・・

―第三章― ずっと・・・
俺は今、山奥の病院にいる。
ここなら、誰の目にもつかずのびのびとリハビリができる。
ボニトナの言ってた通り、傷が深く、一ヶ月かかるそうだ。
毎日レアンが見舞いに来てくれた。リハビリの手伝いもしてくれた。
そのおかげで大分よくなった。
「・・・フゥ・・・」
病院から、少し離れた草原に寝転がって空を見る。
それが、毎日の日課だ。青い空を見て、気持ちを整理する。
考えすぎて時々涙が出るころもあるけど、泣いてる所を誰かに見られたくないから必死に我慢する。バーンのことを考えた
「・・・また・・・お前に逢いたいよ・・・・・・」
鼻がツンと痛くなった。本気になって泣けてきた
「え・・・ヒート?」
懐かしい声を聞いて飛び起きる、バーンが立っていた
「バっバーン・・・」
バーンの方へ走って行こうとするけど、足がそれを許さなかった。
激しい痛みに耐え切れずしゃがみこんだ
「おい!?ヒート!?」
バーンが走ってくる、心配そうな顔で体を見ている
「大丈夫か!?」
・・・やさしい声・・・練習に参加したときの声とはまるで違う・・・
「・・・大丈夫です・・・バーン様・・・俺なんかより・・・皆のところに行って下さい」
「なっ・・・・・・」
バーンの戸惑った声・・・少しあせる表情・・・
本当は・・・こんなこと言いたくなかった・・・だけど・・・
「・・・・・・いいだろ別に、俺が居たいんだからさ」
そう言うと、バーンは俺の隣に寝転がった
「お前も寝れば?」
「う・・・うん・・・」
言われるがままに、俺も寝転がった
「・・・どうしてココにいるのが分かったんですか・・・?」
「レアンから聞いたよ。病院にいない時はココに居るって」
「ああ・・・そうですか・・・」
沈黙が続いた、何を話していいか分からず黙ってしまう。
昔は・・・あの頃は言い争うように沢山しゃべったのに・・・
「・・・・・・・・・・・・こうしてると・・・思い出すよな」
「え・・・?」
「昔さ、よく病室抜け出そうとして看護婦に見つかって怒られたよな」
「・・・うん」
「ゲームの話もしたよな」
「うん・・・」
声が震えてきた、なんでそんな話を持ち出すんだよ・・・
お前はもう・・・手のとどかない存在なのに・・・・・・
「本当にゴメンな」
「え・・・」
「俺さ・・・最近サッカーの事しか考えてなかった。お前さ、結構悩んでたらしいじゃん?」
声が震えてる・・・
「バーン・・・様・・・?」
「・・・どうしたんだよ・・・」
「・・・!」
バーンの顔から、涙がこぼれていた。俺もつられるように涙が溢れた
「本当にゴメン・・・俺っ・・・お前のこと・・・全然考えてなかった・・・親友なのに・・・」
親友なのにのあたりからバーンは激しく泣き始めた
「バっバーン様っあの・・・泣かないで下さい!!」
泣いてる俺が言っても説得力がない・・・バーンはずっとブツブツ言ってる。
ゴメン、ゴメンなヒート・・・と・・・・・・
「お前は・・・もう俺のこと・・・親友って思ってないかも知れないけど・・・・・・ごめん・・・」
「・・・それはこっちのセリフだよ・・・」
やばい・・・言葉を一つ一つ言うたびに・・・涙が溢れてくる・・・
「俺・・・バーンにさ・・・声をかけた時、すげー冷たく返されて・・・もう・・・バーンは・・・お前は・・・俺のこと親友と思ってくれないって思ってた」
「・・・・・・・・・」
「でもさ今、お前の言葉を聞いてホッとしたよ・・・親友って思っててくれたことにさ・・・」
「お前っ・・・・・・許してくれるのか!?」
「当たり前だろ?親友なんだからさ」
「こんな・・・こんなにお前にひどくしたのにか!?」
バーンの目からは涙が溢れ出している、俺の目からも涙が出ている、止まらないほど沢山・・・
バーンは俺に抱き付いて泣きじゃくった、俺もバーンの様に泣いた
「・・・俺っ・・・泣くの・・・久しぶりだから・・・泣き方・・・わかんねえぞ・・・?」
「なんでそんなこと聞くんだろ・・・そんなの別に気にしないのに・・・」
「・・・うん・・・わかった、下手でもいいよ。スッキリするまで思いっきり泣こう?」
「う・・・・うああああああ・・・」
「・・・うっ・・・ひっく・・・うあぁ・・・」
俺もバーンも思いっきり泣いた。昼だったはずなのに、いつの間にか夕方になっていた・・・
一体・・・どれだけの涙を流したのだろう・・・病院に帰る気力もない
「・・・どうする?バーン・・・もう夕方だよ・・・?」
「・・・帰っても看護婦に怒られるだけだろうな・・・」
「・・・・また・・・一緒に怒られる・・・?」
「・・・そうだな、俺も一緒に怒られてやるよ!」
「やるよっ・・・て・・・」
バーンはすっと立ち上がると、俺に肩をかしてくれた。
もう一人で歩けたけど、少し甘えて借りることにした
「ヒート・・・俺ら・・・親友だよな?」
「うん・・・親友だよ」
「これからも・・・ずっとだよな?」
「うん・・・ずっと・・・」
病院の明かりが見えた。入り口で、レアンが手を振っている
「バーン様!!ヒート!!」
レアンが駆け寄って来た、そして肩をかしてくれた。
俺は・・・こんなに幸せ者だって・・・初めて知った・・・
大切な親友もいる。俺のことを、気にかけてくれる人もいる・・・どうしよう・・・
また涙が出てきたけど、必死にこらえた
「俺さーヒートと永遠の約束したんだぜ!」
「えーずるいですー!私もヒートと永遠の約束したいなー」
「うん、じゃあ何がいい?永遠の約束」
「えっと・・・・じゃあ―――・・・」
レアンは顔を赤くした
「ずっとそばに居させて?」
「うん、いいよ永遠の約束ね?」
バーンは顔を真っ赤にして俺とレアンを見ている
「ちょっ・・・ヒート・・・どういう意味か分かってるのか!?」
バーンが耳元でしゃべった
「・・・・・・・・・うん分かってる分かってる上でだよ?」
「プッ罪な男だな!」
「フフフッ」
「あっ何笑ってるんですかー!?」
「なっなんでもないよレアン」
幸せな時間だった、そろって看護婦さんに怒られたけど三人でいる時間は楽しかった。
この時が永遠に続くといいとずっと思った。

ずっと・・・ずーっと・・・いつまでも・・・・・・。


END

[1631] 日常の「200円」 時雨 - 2014/04/05(土) 19:38 -

「なのなのー!せんとー行こうよ!」
「へ?」
夕飯の片付けをしていたら、はかせが台所に飛び込んできた。
「せんとー行ったらきっと楽しいよ!」
妙にはかせが張り切ってる。お鼻からムフーって息出してる。
でも。
「はかせ、銭湯、ってどんなところか知ってます?」
「知ってるよ!牛乳飲むところ!」
「違います」
「え!?」
「お風呂ですよ。大っきいお風呂」
「大っきい・・・・・・?」
「ええ、大っきいんです」
「泳げる!?」
「えーと・・・・・・泳いじゃダメですけど、泳げるぐらい大っきいですよ、たぶん」
「泳ごう!」
「だから、泳いじゃダメなんですってば、たしか」
「むー・・・・・・」
むくれるはかせ。ぐずり出すと、後が大変だ。
「一緒におっきなお風呂入りましょう。気持ちいいですよ、きっと」
たぶん、とか、たしか、とか、きっと、と言うのは、なのだって銭湯には行ったことないから。だってロボだもの。
「うん!」
どうにか、にっこりしてくれた。
「じゃあ坂本ー!せんとーにしゅっぱーつ!」
嬉々として黒猫の坂本さんを引っ掴んで、飛び出していくはかせ。
「あ」
なのは、止め損ねた。
「お嬢ちゃん、猫は駄目だよ」
「えー!?」 
銭湯の番台で、目が開いてるのか開いてないのかやっぱり開いてなさそうな、店番のおばあちゃんに、引き留められた。やっぱり。
「何で駄目なのー!?坂本もお風呂入りたいよねー!?」
「猫が風呂に入りたがらるわけないだろ・・・・・・」
はかせに抱えられた坂本さんは、ため息。
「そんなことないよね!ね、なの!?」
「ええっ!?」
そんな、猫の話を当の本人(本猫?)の前で私に振られても・・・・・・!
動揺を隠せない、なの。けれども、はかせはそれに気づかず、同意を求めるあつーいまなざしを注いでくる。
助けを求めて、はかせに抱え上げられている坂本さんの方にそーっと動かすと・・・・・・
――否定しろよ馬鹿!
こちらもあつーい視線を向けてきていた。
そう、たった一言、猫はお風呂嫌いなんですよ、と言えばそれで。それで終わるはずなんだ。
それでははかせが聞き分けてくれるかどうかは、分からないが。
――ってそれじゃ問題解決してませんー!
そうなのだ。はかせが納得しない可能性だって、ある。すっごい、ある。めちゃくちゃ、ある。
この前聞いた北陸の方言だと・・・まんで、ある。・・・北陸の言葉、かわってる。とにかく。はかせが納得するとは限らない。
――さ、坂本さん、私は何と答えたらー!?
――普通に答えろよ!普通に!
視線だけでなのと、坂本さんはやりとりする。
――でもでも、はかせが納得してくれなかったらどーするんですか!
――そこを何とかするのが、お前の仕事だろうが!
――でも駄目だったらお風呂ですよ!あっつーいお風呂ですよ!
――それが嫌だからお前が何とかしろっつーとるんだろうが!
――私に全振りしないでください!坂本さんも頑張って!
――人に頼るなー!
――それは、坂本さんですー!
――お前と俺じゃ立場が違うだろ!俺が嫌だって言っても猫のわがままで終わっちまうだろうが!
――そんなこと無いです!一蓮托生です!
――ってお前は風呂に入りたいだけだろ!俺は嫌だー!!
――わ、分かりました!何とか頑張ってみます!
――おうっ!
そんなやり取りがあって、なのはゴクリと唾を飲んでから、はかせになるべく優しく、語りかけた。
「あ、あのですね、猫はお風呂がきら・・・」
「坂本は猫じゃないよ、家族だよ?」
――キラキラした目でとんでもないこと言いやがったー!?
――どうしましょう、感動したらいいんですか、感動したらいいんでしょうか、ねぇっ!?
――ウチの子供がこんなに優しく育ちましたよってか!?冗談じゃねェ!ちょっといい話じゃないですか視聴者の皆さーん、的な流れで風呂に入れられてたまるか!
――でも、はかせがこんな優しい子に!こんなに優しいんですよ!
――猫を熱いお風呂に入れるのは虐待だー!
――で、でも熱いお風呂は気持ちいいんですよ!
――人間と猫じゃ感覚違うわい!
――でも、足を伸ばすと気持ちいいんですよ!しかも銭湯は広いらしいんですよ!
――お前も人の話を聞いてねえなっ!!
――坂本さんもお風呂で足を伸ばしてみたらいいんですよ!
――その前に溺れちゃうだろ!
――大丈夫です!支えてあげます!
――いらねえよ!つーかお前はどっちの見方だ!?
――え、えーと・・・お風呂?
――それじゃ駄目だろーっ!!
――いいじゃないですか、お風呂!
――猫は風呂に入らねーし入れーって言ってんだよ!
――そうでした!番台のおばあちゃんにそう言われたんでした!
――ええい、お前は頼りにならん!もういい!俺が言う!
そんなやり取りを目線だけで交わして、坂本さんは自分を抱きかかえてるはかせに叫んだ。
「いいかガキ、よーっく聞け!猫は風呂に入らねえ!その上、入れねえんだよ!今そこのヨボヨボのばあさんに・・・!」
叫んだけれど、それをはかせがさえぎった。
「おばあちゃん。おばあちゃんだよ、婆さんなんて呼んじゃ、いけないんだよ」
「くそう、このガキまたちょっといいこと言いやがった!」
ピクピクとひげを震わせて、坂本さんは歯をギリギリした。猫の骨格や歯の構造で歯ぎしりは難しような気がするが・・・歯ぎしりした。歯ぎしりっぽいのをした。
「ばあさんって言う方が婆さんなんだからねっ」!
「そりゃ、『バカって言う方がバカ』だよ!違ェよガキ!!」
「はかせ違ってないもん!ばあさんって言う方が婆さんなんだもん!むふー!」
「得意げに胸張っていき荒くすんなよっ!違うっつーんだよ!」違ってなんかないもん!ねー、おばちゃんー?」
――このガキ他人に助けを求めやがったー!
「おやおやこまったねぇ」
――しかも全然困ってねーだろばーさんっ!?嬉しそうな顔するんじゃねえよ!
「でも、猫は駄目なんだよお嬢ちゃん」と、番台のおばあちゃんは、しわくちゃの顔えにっこりと笑って言った。するとはかせは。
「そっかーじゃあ仕方ないねー」
「って、なんでそこであっさり納得するんだよっ!?」
「え、坂本、お風呂入りかった?」
「俺は最初っから入らねえって言ってるだろ!
 つーか、さっきの『なんでだめなのー』は何だったんだよっ!あっさり引き下がりすぎだろ!お前に根性ないのか!?」
「じゃあ、お風呂入る?」
「遠慮するっ!!」
というわけで、坂本さんは番台で待つことになった。
「じゃあ、おばあさん、お金払いますね」
「はいよ」
「じゃあ、はかせは子供料金ですね。私は、大人りょ・・・」と、料金の書いてある看板を見て、なのは。ぴたり、と止まった。

大人 400円 

小人 200円 

ねじ 200円

そして、叫んだ。
「ねねね、ねじって何ですかーっ!?」
はっきり、そう、書いてある。 ねじがお風呂に入るのか?確かに疑問ではある。 だが、書いてあるってことは、ねじが入りに来るのだ。

たとえば、なののように。
「ああ、ねじのお客さんも久しぶりだねぇ・・・・」
「わ、わわわわたしはねじじゃないですよー!?」
「おや、でも背中」
「これは、ファッションですーっ!ナウなヤングにバカウケのファッションなんですーっ!お風呂入る時に服と一緒に取りますからーっ!」
「はいはい。じゃあ、400円ね」

小人+ねし=200円+200円=400円

かしゃかしゃ、ちーん!
「だからねじじゃありませんってばあああああ!」
半泣きのなの。
そこに、はかせが、胸を張って。
「なのは、ロボットなんだよ!だから、ねじ!」
断言した。 言い切った。
きっぱりはっきり口にした。
「じゃ、400円ね」
「ねじじゃないんですってば〜・・・」


・・・・でも、400円払って入ったけれど。


               END




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