アリババと私は偶然出逢った。
約束なんかしていない。
本当に偶然なのだ。
彼と私が出逢ったのは、彼が12歳、私が9歳の時だった。
私は人を遥かに超越した戦闘能力を持っている故に、奴隷にされることはなかった。
だから、“最強最弱”の私には、生きる意味なんてないと思っていた。
そんな時、私は彼に出逢ったのだ。
『…もう…私には…生きる意味なんて、ない……放っておいてくださ、い…』
「…!それなら俺と一緒に行こうぜ!生きる意味がない人間なんていないんだ!ないと思うんなら、生きる意味を見つければいいさ!」
生きることを諦め掛けていた私を、彼は救ってくれた。手を差し伸べてくれた。
天真爛漫な笑顔が魅力的で、まるで太陽のような男の子(ひと)だと、私はその時に思った。
同時に、私は彼に恋をした。
だから、時折悲しい顔をする彼を見て胸を痛めていた。
この想いに気付かれたくなくて、私は彼の前から姿を消した。
―5年後―…
あれから5年。
幼かった私は、あの頃の彼より年上の14歳になっていた。
以前、私が彼と出逢った裏路地が、酷く懐かしく感じた。
『アリババが此処にいてくれたら良いのに…』
もし彼が此処にいるのならば、今すぐ謝りに行くのに。否、謝りたい。
そう思っていると、私より小さい男の子が近寄ってきた。太陽のような無邪気な笑顔を向けて。
「やあ、初めまして!僕はアラジン!旅人さ!」
『…そうか。私はマリナ。君と同じ旅人だ。』
「そっかぁ…お姉さん、物凄く美人さんだね!」
『そ、そう…?ありがとう……それより………アラジンは今、一人なのか?』
「ううん!友達がいるよ!」
『そうか…その友達は何人?』
「二人いるよ!アリババ君とモルさん!」
『(モルさん…?)……………え?』
「…どうしたんだい?」
『………今…アリババって言った、か?』
「うん!僕の大切な友達さ!」
『………』
「…お姉さん…?」
まさか此処で彼の名前を聞くことになるとは…。
「お姉さ「おーい!アラジン!もう此処を出るぞー!!早くしろー!!」、分かったー!!」
『………』
遠くから聞こえる男の人の声。
声変わりしているけど、聞いたことのある、懐かしい声…。
目の前には駆け出していくアラジン…。
『…待って!アラジン!』
「…何だい…?」
『ちょっと、ね…』
――――――――――――――――――
続く…