アニメ投稿小説掲示板
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登場人物アスナ・エーテル 19歳女性:魔法剣士 帝都アストラルに住む王女。世界の危機を救うため修行と込めて旅に出る。妹がおり、代わりに王女としての仕事を押し付けて旅をしてしまう。レミラ・ラーニャ 18歳女性:魔術師、治癒術士帝都アストラルで騎士団の仕事をしている。いつも単独行動で、常に周りには警戒をしている。アステラ・ルミナ 17歳男性:剣士別世界の人間。迷い込み港街―アスコラルで独り暮らしをしている青年。刀は日本刀を使う主流。
外は雨が降っていた。燃え広がる炎を優しく包む雷雨。街は襲撃された。愚かにも生存者は誰一人としていない。―彼女以外は。アスナ・エーテル当時6歳まだ、両親の温もりをよく知らない女の子。それから13年。同じく酷い雷と雨が降っていた。「……今日は命日だ。」私は、一人で慰霊碑に迎い、線香を立てる。だが、ひどい雷雨で上手く火が付かない。「……ファイヤーボール!」極小の小さな球を術技で出す。それに線香の先端の部分を合わせ、火をつける。「父さん、母さん、あれから13年が経ちました。私は未だ仇を討つために修行を続けています。当時もこんな雷雨でしたが、今日はそれ以前に冷え込むようです……。」独りで呟く。それを両親が聞いていないのは分かる。でも、慰霊碑にこうして毎日報告を続けている―いわば日課みたいなものだった。「―さて、朝ごはん作らないと!」急いで家に走るアスナ。そして、家に着いた後、また急いで支度をする。「いただきます!」レイルという村があり、当時はそこで暮らしていたが、今は帝都アストラルで独り暮らしを強いられている状態だった。それでも何とか暮らしていける状態で、苦しくない生活とは言えそうになかった。―ピンポーン突如インターホンがなる。「はーい。」と、声を上げながら、玄関に向かう。「お隣のカルラです〜これお裾分け!」「いつもどうもで〜す!」笑顔でお皿を受け取り、玄関を閉める。「近所に優しい人がいて良かった!―ん?あっ、チキンロースだっ!パクっ!美味い!」一つつまみ食いして笑顔で冷蔵庫にしまう。「さて、次はどうしようかな〜?修行でもしようかな!」アスナは、木刀をしっかりと手に持ち、雨の中素振りを始めようと玄関を出ようとしていた。
世界は広い。そう信じていた。いつか世界を旅すると修行を続けた。雨の日、嵐、雷の日だったとしても……。これまで辛い経験をしてきた。だからこそそれをバネにしてここまで来た。冷たい雷雨に打たれるアスナ。私は知ってしまったんだ。この街が終わる瞬間を―隣に住んでいるおばさんが亡くなっていた。それは唐突で急な出来事だった。「……ねぇ、これ以上、私から何も奪わないでよ―グスッ…うぅ……神様がいるならこんな出来事を止めてよ、そして楽しかった日々を返してよ。」不意に涙が毀れる。分からない。雨のせいで涙は頬を全面と濡らし、そしで吹くまでもが濡れる。さっきまで元気だったんだ。だからこんな唐突に死ぬなんて絶対ないんだ。私は自分に言い聞かせた。木刀を強く握った私の手は、ブルブルと震えていた。その震える手を左手で抑える。(私は信じないよ。おばさん。あなたに何があったのかを突き止めるまでは……)私は涙を拭いた。冷血にもその状況を受け止めてしまったのだ。受け止め、力と成す。それが私―アスナ・エーテル。天空の―という意味を持つ私の真名はこの世界を羽ばたく一羽の伝説の鳥を創造させると新書で見た。私はこの名前で真実を切り拓く。頑なにそう誓った。家に入り、おばさんから貰ったチキンロースを涙で染めながら、独り孤独な部屋で電機も付けずに食べていた。(必ず……真実を突き止めるから……)それだけをずっと呟きながら……。翌日になって、昨日までと違い、よく晴れた空。いつものように支度をし、ゴミを捨て、出掛ける。でも、おばさんはいつも挨拶してくれた日常はもうない。外に出ると、いつものあの笑顔で挨拶してくれそうで、仕方なかった。「それにしても。」目を疑った。ポストを見ると、そこにはアスナ宛てのおばさんからの手紙が入っていた。そこには、一枚の封筒と真刀が入っていた。手紙に綴られていた内容はこうだった。―アスナさんへこの手紙を読む頃は私はもうこの世にいないでしょう。あなたの成長をこの目で見ていられなくて本当に残念だと思うわ。同封されていた刀をあなたに授けます。これは私が使っていた刀―あなたはきっと私の突然の死を受け止められず、迷ったはずだわ。だけど、この刀にはそれを知る力がある。知りたいのなら、後戻りはできない。まずは、サルドという街に行きなさい。少しはそこで何かが分かるから―と描かれていた。下に、恐らく無理矢理"印"を付けられたのだろう。滲んだ血が指の指紋を示していたからだった。この手紙を見て、アスナは少しかつ明確に事を把握した。(つまり、おばさんが死んだわけが知れるということ―従うしかない!戻れなくてもいい。何も知らないのは死んでいるのと同じだ!)頑なに私はそう思った。なのに、少し悲しい気もしていた。離れるという別れの際の気持ちを知ったのだ。そして、ここは私の帰るべき故郷となる。―私の旅は始まった。
忘れていけないのは、慰霊碑への挨拶だった。外に出て、真っ先に慰霊碑へ向かう。私はこれを一日も忘れることはなかった。でも、これからはもうお線香すら挙げられないかもしれない。―覚悟はしていた。最期に有りっ丈の想いを込めて、慰霊碑に手を合わせた。―いってきます。風に流れるように呟いたその言葉が彼らに届いていることを願って。一度、家に戻り、荷物の再確認をするアスナ。あまり、大きな荷物を控え、数ある程度の荷物を揃えた。そして、おばさんが最期に送ったこの刀を握り、力が溢れることを感じた。「よし、行こう!」私は独り、外を気合を入れて出て行った。私には独りだけ家族がいた。妹だ。彼女に任せた王妃の役割。元々は私が王妃だった。それを勝手な願いで阻止させてもらった。帝都アストラルには全く顔を出していない。でも、最後くらいは顔を出そう。二度と会えなくなるかもしれないし。此処から南に10qに位置するアストラルへ私は足を進めた。ちょうど、サルドに行くには南を通らなければならなかったから、あまり手間にはならなかった。少しの希望と不安を胸に抱いたアスナ。南へ少しずつ歩いていると、森の陰から魔物が姿を現した。「うわっ…初めて見たけど、これが魔物なの?」あまり外に出たことの私は魔物の存在を知らなかった。だが、剣の扱いには慣れている。実践だが、私は思い切り刀を持って降りかかった。「魔物だし、鞘付きで十分ね!―鞘刀っ!」腕を大きく振りかぶり、魔物の頭にぶつける。その後、私はすぐ体勢を立て直し、少し魔物から距離を置いた。そこへ、案の定予測はしていたが、魔物が突進してきた。「はぁあああ!―抜刀!」横一閃を鞘を抜きながら、その瞬間のタイミングで魔物を攻撃した。ちょうど、刀を抜く瞬間に魔物はそこへ突進し、魔物は二つに分かれる。「ふぅ!初めての戦闘にしてはまずまずね!」『………ふっ!』不意に後ろに気配を感じたが、振り向くことはできない。「!?これは!」私にはよく分からないがこれは"威圧"というものだ。立派な剣技の業。「威圧か!貴様、何者だ!」『俺はギルド・ブレイアッツの者だと今はそれだけ応えておこう―いつか俺の威圧を抜けられたら名を教えてやろう!』即座に気配が消え、硬直していた身体が軽くなった。膝を落とし、少しの間足のしびれを感じたが、すぐに回復した。「何だったんだろう?」私は不思議に想った。だが、只の人ではないという感じは確かだった。いくつもの剣道の大会で優勝していた私だが、威圧だけでこんなにも気圧されるのは今までなかった。少し休んだところで再びアスナは足を進めることにした。
帝都アストラルに辿り着いたアスナ。国民に歓迎されるまま私は、最上層の王妃の城に向かうことにした。私が此処に来るのは約7年程ぶりだろう。すっかり町並みが変わっている。懐かしさというより新しいものを見たという感情の方が大きかった。「おかえり!」そう遠くで声がしたので、私は声の方に身体を向けた。15歳くらいだろうか。赤髪を揺らした少女がこちらに走ってきた。「ランネ、元気だった?」私は7年ぶりの再会でそれしか言えなかった。「元気だよ。王妃は大変だけど、民がいろいろ手伝ってくれるから今は何とか大丈夫!」妹は次々言葉を掛けてくる。そんな妹を見ていて私は思わずふっと笑う。「どうしたの?」「いや。こういうのは久しぶりだな〜って!やっぱりランネに会いに来て良かった。ありがとう。これで前に進める気がする!」照れ臭そうに言ったのだが、それを妹は素直に受け入れた。「アスナ姉ちゃんに何があったか分からないけど、うちら家族だから力になるからね。」それはすごい支えの言葉だった。思わず涙が毀れる。「…うぅ…。」姉の泣くその姿にランネは驚愕する。「お姉ちゃん、何で泣いてるの?まるで最後の別れみたいじゃん?グスッ…もしかして、うぅ…本当にお別れなの?」妹も泣いてしまう。「ごめん。今はまだ別れとか分からない。けれど、もしかしたら……。ごめんね。」頬に付いた妹の涙を手で拭う。「あなたまで泣かないの!全く!!」頬に付いた涙とは裏腹に飛びっきりの笑顔を見せた。「私はもう行くね!王妃という大変な役割を押し付けて悪いと思ってる―でも、今あなたしか守れない民がいるから、支えてもらってね!」背を向け、私は走った。こんなに泣いたのは久しぶりだった。最近は泣いてばっかりかな。こんなんじゃ、奴にも勝てない。『そうですよ。そんな弱い決意じゃ私に勝てません!』まただ。身体が硬直する感じ。空気がピリピリする感じを私は覚えた。「一体何なんだ!貴様はっ!」『だから教えらんねぇ、って言ってんだよ!』フードを被った少年が私の首元にナイフを突きつけていた。「!?」気付かない速さ。私は恐怖で足が竦んだ。『こんな弱ぇ奴に教える名前があるのか?あぁ?女にしちゃいい動きだが、俺にしてはのろま以下だ!』「くっ!」目を瞑り、歯を食いしばる。首元から滴る血の滴が分かる。もう駄目だ、と思った。『……価値もない!お前、もう少し強くなれる気がする。何かを失えば、だけどな。』そう言うとまたもや気配が消える。首元の血を抑え、バンソーコを付ける。「私がまだ弱い?そうかもしれない……。だけどいつかは貴様を超える!でも、もう何かを失うのは御免だ!」少し時間が掛かってしまったが、アストラル抜け、西に3q、東に2qの地点に位置するサルドを目指した。
「……ここがサルド、か!」遠目に見えてきた田舎町を見て、指を刺した。といっても、隣に誰かいるわけでもない。私は独りで旅をしている。そして、私に纏わりつくあの少年。ユウナにとって、あの少年の存在は気になるどころではない。むしろあの人間とは思えない瞬速、攻撃力、防御力、すべてが完璧に少年。あの少年を超えることができないとこの旅は続かない。そんな気がしていた。無論、負けつもりはなかった。「―ナーバスになりかけてはダメだっ。」そう自分に言い聞かせるユウナ。サムドに来たのは修行の理由もあった。ここにはおばさんの知り合いが剣術の稽古をしており、道場を開いているナワバという中年の男性がいる。そこで私は瞬動術と居合術を学ぶつもりだった。「さっそく行かないと!」約束の時間を確認し、道場の門を開く。中は意外にあっさりとした様子だった。人はいない。入って、声を響かせる。「すいませ〜ん。」道場内に響く声を察知したのか、奥から声がする。「ナワバさん。」私の顔に久しぶりの笑顔が浮かぶ。いつぶりだろう。この感じは。「ああ、いつぶりだろうな。お前さんが5つの時くらいか?初めて稽古をつけたのは。あれからお前も強くなったが私と戦ったことはないな!稽古を兼ねて修行をするか!」臨むところだった。この数年間私が少しでも時間をとって身に付けた抜刀術を身に纏う姿を見せるのに抜群の場。「後悔しないで下さいよ!」強気だった。「それじゃ、いきますよ!」
『瞬動2連!―Wブレイク!』瞬動2連からのブレイク攻撃。ユウナは刀を使ってはじくのがやっとの状態。見えない速度に手間を取らされる。やっとのことでほんの少し動きにはついて行ける。だが、それには身体の全神経を集中させ、心を無心にさせないと無理であった。「…………」緊迫した空気に中、私はただ黙っていた。一度だけでいい何か業をぶつけよう。今まで攻撃を当てられなかったことが多々あった私だが、この12年間の修行は無駄ではないだろう。「―全神経を集中させる。―一撃だけでいい。跳びっきりの一発を。―衝破っ!」刀を抜く。―抜刀。それは憚れた。避ける。攻撃する。避けられる。攻撃されるの繰り返しを実に何時間ほどしただろう。だが、私はナワバの一瞬の乱れを見逃さなかった。(―いける!轟破!)刀を鞘にしまいそのまま振る。腹部に減り込んだ鈍い音の後、身体全体に衝撃波が流れる感じを彼は感じていた。
「……負けたよ。」そう呟いたのはナワバの方だった。数時間の剣戟の末、先に膝を付いたナワバだったが、アスナの方も体力面では息遣いも荒く、これより長い時間剣戟を続けていたら、負けていたのはアスナの方だったのかもしれなかった。「はぁ…はぁ…私もかなり疲れましたが、勝てて良かったです。」息を切らしながら言うアスナの姿を見て彼はすっ、と立ち上がり言葉を発した。「こんなじじいとの剣戟でそのザマとは珍しいな。体力面に自信はないのか?」「……はい。にしても、ナワバさんはどうしてそこまで体力があるのでしょうか?」疑問に思うアスナははっきりとその質問を促した。「昔から運動に力を入れたからな。体力というより持久力に自信がある。"鋭招来"や"獣招来"と言った術義もあるからな。それらを上手く利用して戦いに使う者もいる。どうだ?お前に教えようか?」「はい。お願いします。私はまだまだ強くなりたいですから。」こうしてナワバとの話を進め、まずは体力面を補う術義を教わることにした。そんな中でも奴との差が私はどうしても気になりだしていた。
年齢を考えれば若いのはアスナの方だった。だが、ナワバは年齢に関係なく体力が多いというより体力の温存ができている。そういうことだとナワバ本人からの説明があった。それでも、半ば半信半疑で信じられない自分がいたのだった。先程の戦闘を踏まえて、分かったことは2つ。1つは体力の温存で勝負の行方が変わること。2つは年齢に関係なく術や魔法を利用することで体力は限界を超えて使うことができ、それを利用して戦いは有利になるということだった。「ナワバさん。教えてください。私はもっと強くなりたいんです。」強く今よりももっと遥かに強くなりたい。そう願いを込めた一言だった。ぎゅっと力強く握った右手の拳をナワバは見て、それから言葉を次に発した。「落ち着きなさい。この業は要は気を高く持たせる戦闘用長期戦術―つまりお前の使い方、用い方次第でどうにでも変わるのだ。だが、この業には一つ欠点がある。それは―」その次の言葉はドタドタと表を騒ぐ足音、声に遮断されナワバは慌しくふためき行動し始めた。「!?まさか、奴らか!」急に顔色を血相変えて変えだしたナワバは腰に掛けていた剣を即座に抜いた。ビュっとあまりにも早いせいで音が空気に流れて鈍いものが聞こえてきた。「……ナワバさん?あの修行は?」「この非常時だ―追々説明しよう!準備はいいか、まず気を高めろ。そして鋭招来は完成する。」言葉の意味はよく分からなかった。言われるがままにその通りにしてみた。すると身体に纏わり付くように気に包まれていった。「―これが、鋭招来?」みるみる身体に力が溢れてくる―そんな気がした。(……身体が軽い!?)さっきと打って変わって身体が妙に軽いことに気が付いていた。「それが鋭招来だ。ついに我が物にしたてあげたか?そうやって昔から覚えるのは早かったからな!」つい思い出話に感傷を浸ってしまう。だが、仕方のないこと。それほどアスナは成長し、ナワバは代わりに歳を実感していたのだった。「そのまま気をしっかりと保ちながら、行くぞ、この戦いを終わらせる。」「―はい。」儚くも力強く答えるアスナをナワバはふっと笑って見せた。
現在起きた出来事の事態がよく分からなかった。ナワバとの修行中、突然声を挙げて廊下に疾る姿を無我夢中で追いかけてきた私は、後に知らされるこの出来事の真実を聞いて驚いていた。「お前は知らぬだろうが、最近騎士団を名乗るフェリアという奴が出入りしていてな―街を襲撃されているんだよ。……確かフードを被った男だって言う噂だったが。」フードを被った男には見覚えがあった。最近、私の周りをうろつくある男の服装を思い返すと、フード付きの男というのが最大の印象だったのだ。「私もその男には見覚えがあるんです。」俯くように答えた私は、ナワバの驚いたような表情に続いて言葉を発した。「実は、そのフード付きの男に付け狙われていて、最近たまに襲われたりしてた。妙な威圧感で剣道の大会で優勝をしていた私でも歯が立たないようなそんな感じがしていた。」私は自分の非力さを恨むように彼―ナワバに説明していた。目に浮かぶ液体を必に堪えながら、それでも自然に液体が滴り落ちてくる。気づけば、私は涙を流していた。「……お前は強くなれる。今流した涙を忘れてはいけない。それをバネにお前は強くなることができるはずだ!それはおまえ自身の意志でどうにでも変わる。」はっきりとその言葉を胸に焼き付けた。私はまだまだ強くなれる。まだ弱い自分を認めているからこそ私は今よりもずっと強くなることを望む。「……いや、絶対に強くなる!」少しずつ状況を理解し、気持ち的にも落ち着いて来たころ、私はナワバと共に走っていた。ついにフード付きの男を見つけたということで逃がさぬ様追いかけていた。「くっ…」軽く失笑を浮かべ、その目も見て取れないが口で表情が確認された。笑っている。楽しそうに。さぞ嬉しそうに。「―ファイヤー・シフト!」私は走りながら、詠唱をし、魔法陣から出る球体をフードの男目掛けて放った。それの幾つかは避けられたが、一発は辛うじて腹部を軽く擦ったような感じだった。熱さで転げ落ちるように体制を崩した男に私は急いで駆けつけ、刀を抜き、地に刺した。その男の顔のギリギリに刺された刀は、さぞどんな男でもという恐怖で驚くだろう。その男も顔が汗で滲んでいた。というより、嬉しがっていたのだろうか。「腕を挙げたな!」そう呟いて立ち上がる。地に刺さっている刀を男が抜き、それを彼女に渡す。「いい刀だ―人を斬るのには相応しい!」そう言って刀を褒めて、私に寄越す。「てめぇ!その刀は―!」「御託はいい!論理的に刀を交えて俺はお前と勝負がしたい!あの時から何が変わったか、気になるよ!」男はそう言って、フードを外した。それほど長くはない赤みが掛かった髪を上げている髪型に少々、ファッションに拘っている部分があると思われる。「さあ、来いよ!―俺の実力でお前とそこのじじいもろとも葬ってやるぜ!」
言われるがままに刀を構える。フードを後首に掛け、その素顔を見せる。それほど長くはない髪を整えるように触り、目にかかっている前髪をそっとずらす。人を見るには眼付きのするどい赤茶色の目だった。「……闘う前に名を聞いておこう!」一時、刀を右横に下げ、ふぅ、と息を吸い込む。「……私はアスナ―お前は!」名を名乗った後、瞬時に相手に質問を返す。すっ、と刀を元の体型に戻すと、「俺の名は、アスバル!鮮血騎士団の小隊長を務める!」と、急速にこちらに突進してくるように、刀を縦に振った。それを刀を用いて、交じると剣戟を起こした。(…重いっ!)その刹那、振り下ろされた刀を受け止めると、一気に体勢を崩されるような中腰で抑えた。「この振りをとめたのはお前が始めてだ!いつもならこれで瞬殺なんだがな―何者なのか……。」ふっと私は俯く彼のその瞬間を見逃さなかった。「はぁ!」横に斬りかかる私の刀を彼は腰に掛かった鞘をすっと放し、それで刀を止める。(……こいつ、できるっ!)正直言ってこの瞬間を堪能できると私は感じた。刀を用いて交じり、一時の瞬間でもいい、強い奴と闘いたいと願う。できるなら長い時間こうして闘っていたい。何が楽しいのだろう。私は自分でもこの感情を理解できなかった。だが、顔は笑いながら、一時の瞬間―隙を見逃さず、鮮明にかつ正確に刀を振り、避け、刀を交えていた。「これほど強い奴との闘いは初めてだ!俺も本気を出せるぜ!―光桜刀!」突如、光に包まれる刀がまるで桜吹雪のように降りかかる無数の剣戟。これでは刀を飛ばされる。と思った私は瞬時刀をすっと、地に刺しとある魔術の詠唱を始める。「スゥ・ロゥ・トゥェ!―シャイニング!」古代語を並べ、言霊を唱えるように優しく唱えると、突如そこは光に包まれる。これは、光系魔術の≪フォトン≫の応用術。凄まじい光がアスバルを襲う。同時に激しい光から降りかかる八方の光の槍が襲う。「ぐぁっ!」そう叫び声が聞こえた瞬間、私は刀を握った。「―そこだ!双牙刃!」そこにいたナワバの刀を借りると、私は二刀流というスタイルで刀を振った。双方に同時に斬った刀からは衝撃破が流され、それがアスバルに走り掛かる。「!?」大きな叫びと光に包まれたアスバルを私は惜しむように眺めていた。この業はどんなに強くても致命的に残るとナワバと別の師匠から教わった言わば≪奥義≫と呼ばれるもの。剣について初心者な私にとって唯一、使える≪奥義≫はこれだけだった。「……。」光が収まったことにより、次の風景が鮮明になることを私は恐れていた。きっと無事ではない。四つん這いになり、倒れそうな体勢を取ってはいたが、ギリギリというべきかそれはいくつかの怪我で済んでいた。「なんで……!?」私は始めて驚愕という言葉の意味を今、明確に知った。今までこの業を使うことのなかったことだったが、この業で無事に済む、人間はいないということだった。「その業、格好、構え、かつてのツバハギ様を思い出す!俺との戦闘に負けた奴を超えたと思ったのに、な!」不恰好に倒れるアスバルを黙ってみることしかできなかった。ツバハギ様を知っている。彼によってんだ?私の脳内にはそれが入り混じってどうにかなりそうだった。そうしてぐちゃぐちゃになった脳内を整理することも出来ず、その場に倒れこむ。そばでナワバが駆け寄り、声を掛けているが、まるで反応することもなく、聞こえもしない。―何を、言って、いるの?―聞こえ……ない、よ……意識が消え去るのを私は感じながら、目を閉じ、そこから私の身体は眠りを告げた。
気持ちを整理させるためにベッドに横たわる。次にアスナが目を覚ましたら、何を説明しよう?曖昧な説明はできない。きちんとした言葉を添え、説明をしなくてはならない。しかし、アスナは19歳という大人に近づいてくる年齢、そろそろ真実を話してもいいだろう。それとも、大体のことは大方向こうも察しが付いているだろう、と考えられた。すぐ近くで見ていたナワバは、眉間にしわを寄せ、今にも「怖い夢を見た」と恐ろしげな表情で目を覚ましそうな姿を見て、少しからだが強張っているのを感じていた。「……ん?……」次に目を開けた時、すぐに私の目に入ったのは、表情が強張っているナワバの姿だった。私は俯きながらも、真実を知りたい一心で聞いた。「……ツバハギさんを知っているなんて、あいつは何者なの?」「あいつはアスバルと言ってな。ツバハギ様を殺めた本人だ―あいつはツバハギ様を超えた器だった。黙っていたが、奴には絶対に勝てない。―ツバハギ様に倒せなかった奴をお前は倒せるのか?」ここで旅を終えろ!と言っている様なものだった。つまりカルラのとも何か関係があるようだと私は悟った。そのことを知って私は首を縦には振れなかった。「それなら尚更、私はあいつを超える自信がある。ツバハギさんに超えられなかった者を越えると私自身も強くなる気がする。これは私が超えなくてはならない道のような気がする」私は心を新たにした―決意のほうが正しいと思うだろう。「ここからは私が独りで―」それを遮るようにナワバは言った。「ダメだ!こいつを連れて行け!私の弟子だ!―来い!」呼ばれてすぐに黒い影がそこから現れた。髪は黒髪、鎧姿に身を潜めた彼は、大きな緑の瞳で私をただ見ていた。
「あなたは?」私は、おぼろげに口を開いた。いや、やっとのことで口を開いたのだ。「俺は、アステラという。こことは関係のない別世界にいたが、こちら側に移されて7年が経つ。そこでナワバさんの世話になってきた。剣豪としてはお前よりはかなり強いと自負している!」オーラがあった。言葉だけで分かる。負ける、と。威圧感が私の胸の所をスゥーっと抜ける。「……こいつは昔からそうだ!まあ、そうおどおどするな!」「よろしく頼む!」アステラはそう言って挨拶を交わした。「…よろしく!」あまり気ののらない私だが、一応礼儀として挨拶はした。私は少し考え事をしていた。旅の再開は明日から。そんなことより、アステラの存在だった。あの威圧感。私を一気に不安にさせたあの感じ。恐怖を感じたとまで言ってもいい。(ほんと……何者なんだろう?)そんな考えだけが頭を過ぎっていた。そこへドアをゆっくりと開けて誰かが入ってくる気配を感じた。「俺だよ。―さっきはすまない!何かびっくりさせちゃってごめんな!異世界から来たから変な感じするだろうけどナワバさんはそれを受け入れてくれた。君も―アスナさんもどうか普通に接してほしいと思っている!」それだけを言い捨て、部屋を出て行った。(……思ったほど、悪い人じゃないのかな?)そう思うと、誤解していた自分が恥かしいと思ってくる。私は明日のこともあると考え、早くアステラにも慣れるようにしなきゃと思いながら、眠りに落ちていったのだった。