プロローグ
世界<スピリット>では武術を極めた<ノウス国>と<ウェスト帝国>、大きな政治権力を持った<サウス帝国>と<イースト帝国>があり、四つの帝国が世界樹から生み出された四分の一ずつマナを収めていた。
しかし、サウス帝国とウェスト帝国がお互いが持っているマナを巡って、様々な所で戦争を勃発していた。それを見かねた<イースト帝国>の王様が
『国を治めなければならない王が何を理由に争いを起こし、無駄な犠牲者を出している。ならば、此から一つの大会を行おうではないか。それに有り余っている力をぶつければいい。……そう、その名はイグドラシル大会…。その大会では、強き者たちだけが勝ち残り、そして、最後まで勝ち残った者にはどんな願いでも叶えると言われている<世界樹の実り>を与えよう。そう…大昔に行われていた大会を世界樹にある空中都市<ユートピア>でー』
という意見を出し、それに賛同する者が多く、他の三つの帝国や小さな国々も<イグドラシル条約>に加盟していった。
その国々で体力、剣技や腕力などに自信のある男たちがやる気に満ち、世界中の誰もがその者たちで繰り広げられる白熱の試合を望んでいた。
だが、突如現れた一人の華奢な体躯の少女によって、その熱気に包まれた大会は驚愕的な物へと変わっていく。最初は、その少女を蔑んだ目で見ていた巨漢たちも少女の持っていた剣の一振りにより次々と倒されていき、その異常なまでの強さに恐怖を感じた巨漢たちが次々と大会を辞退していき、少女が優勝を果たす。
……それから十二年。
彼女と同じような力を持った者が多く現れ、幾度も行われてきたイグドラシル大会でその以上なまでの力で優勝してきた。その桁外れなパワーやスピードを持ち合わせているために人々からは<異能者>と呼ばれるようになる。
だが、その年に行われたイグドラシル大会のある<異能者>とある一人の巨漢の試合の時に
「おい…無能者、降参しろよ。お前の負けはもう決まっている。惨めな思いをしたくないならな」
この<異能者>の蔑んだ言葉により、様々な<無能者>たちに怒りを覚えさせ、前から<異能者>たちを良く思っていなかった者たちと一緒に<異能者狩り>を始めるようになる。
それに激怒した<異能者>たちも彼らのことを<無能者>と呼び始め、蔑んだ目で見るようになるようになり、<異能者>と<無能者>の間に一生治ることのない亀裂が生じる。
だが、八年の月日が経った今、ある一人の無能者の少年により、世界が変わり始めようとしていた。