アニメ投稿小説掲示板
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いよいよ今回から最終章突入です! 準レギュラーキャラや意外なあのキャラまでも登場し、物語は更にヒートアップ!ゲストキャラクターゲイル イメージCV:渡辺明乃 STORY11『プログラムの命』に登場したゲストキャラ。 若くして世界で初めて人工的に作られたポケモン、ポリゴンのプログラムの研究・製作を行っている、SE(システムエンジニア)の女性。 性格は明るく陽気で、自画自賛する所もあるが、根は真面目でポリゴンシリーズの研究に情熱を燃やしている。開発したポリゴンは、ツバイ(ポリゴン)、ドライ(ポリゴン2)、フィーア(ポリゴンZ)の3体で、『ポリゴン三兄弟』と呼ばれる。 口癖は「グッジョブだね!!」。
トバリシティ郊外にある、新生ギンガ団の秘密基地。 今ここの地下に、『神殿』ができあがろうとしていた。 地下室にしては高すぎる天井。太陽光が一切入らない部屋は暗く、ランタン程度の僅かな明かりがほのかに部屋を照らしている。 その中心には3本の長い柱が立っており、床には柱を頂点とする三角形が描かれている。その中心には、何やら2つの球のようなものを設置するらしいスタンドが置かれている。 それはまさに、古の儀式を行うための、古代の神殿だった。「これで、こちらの準備は整った……!」 できあがった神殿の姿を見ているのは、新生ギンガ団の指令、アース。そしてその隣には、彼の協力者、スズの姿もアブソルと共にある。 そう、この神殿は、ギンガ団の目的を成し遂げる『儀式』のために作り上げた、『鑓の柱』の神殿の再現だ。以前の失敗によって『鑓の柱』へ向かうための鍵となる『鑓の鍵』が失われてしまったために、建造したものだ。『湖の三匹』がいないなど、『儀式』を行うには不完全な部分こそあるが、それでも大きな問題にはならない。今の新生ギンガ団には湖の三匹を確実に捕獲できる戦力はなかったが、三匹は『儀式』を実行するには必ずしも必要なものではないからだ。最低限必要なものさえあれば、『儀式』を実行する事はできる。 その1つは、既にアースの手の中にある。あとは、もう1つを揃えるだけ。「あとは『珠』だけですね」「ああ、それさえ揃えば、ここで新世界を創る事ができる……!」 悲願達成を間近にしたからか、アースは少しばかり高揚しているようだった。そんな彼の姿を、スズは冷たい視線で見つめていた。「さて、スズ。お前にこれから、カンナギタウンの歴史研究所へ珠の奪取に向かってもらう。サポートの戦力もつけさせる。もうわかっているだろうが、あえて言おう。この作戦には、我々の命運がかかっている。切り札としてお前の力量に期待する」「はい。必ず成功させてみせます。この星の自然のためにも、必ず……!」 スズはうなずいた。その赤い瞳には、言葉に違わない強い意志が宿っていた。 そして、スズはアブソルと共にその場を去ろうとした時。「そこまでだ」 この場に似合わない幼い声が、神殿に響き渡った。「!?」 2人は驚いて、声がした方向を見る。 神殿の入り口。 そこに、この場にはあまりにも不釣合いな、白い法衣を着た少女の姿があった。その赤い瞳は、子供でありながら大人も退けんとするほどの強い気迫が宿っていた。 アルセウスの化身、イザナミである。「子供?」 スズは、現れた人物が子供である事に驚いていた。だが一方で、アースの方はほう、と感心したようにつぶやいて、前に出る。「こんな時に観客が来るとは思っていなかったよ。歓迎してやりたい所だが、人の施設に土足で踏み入ったって事は、敵だと思われても文句は言えないぞ?」「そなたの冗談を聞きに来た訳ではない、新生ギンガ団指令アース。お前達人間に、この世界を勝手に創り直す権利はない。今すぐその愚かな考えを止めるのだ。それでも創り直すと言うのならば、私はお前達に裁きを下すまでだ」 イザナミは外見通りの少女としての声のまま、創造神アルセウスとしての言葉で、アースに警告する。 だがそれでも、アースはふん、と鼻で笑い、「そうか、我々に世界を創り直して欲しくないという事か。自分が創った世界を余所者が勝手に壊して創り直すのは嫌だという訳だ。そうなのだろう、アルセウス?」 堂々と、少女の正体を言い当てた。「!?」 イザナミは驚いたが、それはスズも同じだった。そうぞうポケモンと神話で描かれるアルセウスが、少女の姿となってここにいるのだから。「どういう事なのです!? あの少女がアルセウスだなんて……」「そう驚く事ではないぞ、スズ。世界が危機に瀕した時、神は人間の姿を借りて地上に降り立つと、どこぞの神話にはあった。単にそれが、現実になっただけだ」 スズの問いに答えてから、アースは改めてイザナミをにらむ。「残念だが、我々はお前にそんな事を言われようと止めるつもりはない。お前はこの世界の王を気取っているのだろうが、これはそんな王への不満に対する反乱だ。お前が作った理不尽な世界を作り変えるためのな。今は民衆の意見が世界に反映される時代だ。1人の支配者が世界の全てを決める時代は、もう終わったのだよ」 イザナミは苛立ったのか、眉を寄せる。「ならば戦うというのか、ここで私と」「ああ。この目的のためならば、お前との対決は避けられない事だ。ここで戦い、私が勝って見せよう」 アースは自信ありげに、高らかに勝利宣言をした。 それで全ての枷は解き放たれたのか。「よくぞ言った人間!! ならばその慢心を打ち砕き、お前がどれほど愚かな事をしようとしているのか、思い知らせてやろう!!」 イザナミは全身から光を放ちながら、宣戦布告の言葉を叫んだ。 光に包まれたイザナミの姿は、どんどん巨大化していく。そしてそのシルエットも、人間とは異なるものへと変貌していく。イザナミが、本来の姿を現そうとしているのだ。 だが。「慢心しているのはお前だ、アルセウス」 アースは動じずに、今まで下ろしていた右手を突き出した。 右手にはめられていた手袋には、赤い水晶が埋め込まれていた。 途端、変化は現れ始めた。 本来の姿を現そうとしたアルセウスの周囲に、複数の赤い水晶が浮かび上がり、アルセウスへと吸い込まれる。「おおおおおおおおっ!?」 途端。 アルセウスが苦痛の声を上げ始める。同時に、本来の姿に戻ろうとしていた体が、先程の映像を巻き戻しにするかのように縮小していく。「う、く……!」 そして遂には、先程の少女イザナミの姿へと戻ってしまっていた。だが先程との違いは、赤い水晶が鎖となって、イザナミの体を拘束していた事だった。縛られたイザナミは、力を失ったようにその場にしゃがみこむ。「こ、これは、まさか……!?」「そうだ。確実な勝機なしにあのような事を言うと思ったかアルセウス。どうだ、“自分自身の力”に拘束される味は?」 赤い鎖。 かつてディアルガとパルキアを強制的に拘束し、操るために使用されたもの。アースは既に復元が完了した赤い鎖を使用し、イザナミを拘束したのである。創造の神の力を宿した赤い鎖には、たとえ神と呼ばれるポケモンであっても抗う事はできない。そう、それはアルセウス自身でさえも例外ではなかったのだ。 アースは勝ち誇るように、身動きの取れないイザナミの目の前へと歩み寄る。「お前が度々ここに潜入していた事はわかっていた。いずれは捕らえるべき相手だったが、そちらから来てくれて手間が省けたよ」「最初から、私を捕らえるつもりだったのね……!! 何が、目的で……!!」 拘束の影響だからか、イザナミの口調は元の少女のものに戻ってしまっている。 そうだ、とアースは答えてから、イザナミの小さなあごを掴み強引に持ち上げる。簡単にあごを持ち上げられてしまうイザナミの姿には、もはや創造の神としての威厳はなく、ただの人質にされた哀れな少女に過ぎないものだった。「さて、では渡してもらおうか。お前が持つ世界の設計図、『アカシックレコード』を」SECTION01 再会は決戦の始まり! 気が付けば、あたしは1人で森の中を歩いていた。 少しでも正体がばれないようにするために、前にママからもらったコートを着ているのに、吹いてくる風はなぜか冷たく感じる。 もう一体、どこをどう通ってきたのか、自分でもわからない。そもそもあたしはどこへ向かおうとしているのかさえ、わからない。 いや、最初からあたしに目的なんてない。 あたしは単に、戦いが嫌になって逃げ出したいだけなんだから―― そう、あたしは逃げ出した。 みんなが寝ている間に、こっそりと1人で逃げ出した。持ち出したのは自分の鞄だけ。ポケモン達はモンスターボールも含めてみんな置いてきた。 もうあたしには戦う資格はない。なら、戦っている意味なんてもうない。そして、ポケモントレーナーでいるのも嫌になった。あたしがポケモン達にあんな重労働をさせていた、とんでもない人間だって気付いたから。 だから、逃げるしかなかった。だって、それしかもうなかった。 謝りながら、みんなの所を離れて、あたしは今に至る。今のあたしは、もうポケモントレーナーでも何でもない。とにかく、普通の人に戻りたかった。「はあ、はあ、はあ……」 足が悲鳴を上げている。そして、体も重くなってきた。 だけど、歩みを止めたくはなかった。早く離れないと、みんなが追ってきて連れ戻されるんじゃないかって思っているのかもしれない。 あたしは最低の人間だった。だから、みんなと一緒にいる資格なんてない。だから追ってこないで。ごめんなさい、こんな事しかできなくて。だけど、みんなにして上げられるいい事って言ったら、あたしがいなくなって自由になれる事くらいでしょ……?「はあ、はあ……」 足がふらつく。 これだけ重くなるほど歩いたなんて初めてだ。旅の中でも、こんなに長く歩いた事って、「はあ……」 あったっけ……? そうして、倒れた。 気が付けば、息がとても苦しかった。立ち上がれるほどの力も残っていない。 苦しいなあ、と他人事のように思いながら、あたしの意識は休息に落ちていった―― * * *「……う」 眩しい朝日が目に差し込んできて、目が覚めた。 視界に入ったのは、見慣れない天井。それで、あたしは仰向けに寝ていた事に気付いた。「あれ……?」 体をゆっくりと起こしながら周囲の景色を確かめて、驚いた。 あたしが寝ていたのは、自動車の中だった。ワゴン車のようで、意外と寝ているスペースは広い。ちょうど助手席側の席が全部倒されてきれいに1人分が寝られるだけのスペースができていた。窓の外からは、公園が見える。どこかの町の中にいるみたい。「どうして、あたし……」 こんな知らない自動車の中で寝ていたんだろう。旅は基本歩きだったから、自動車の中で寝た事なんてほとんどなかったんだけどな……? 確か、あたしは―― 前の事を思い出そうとした、その瞬間。「クエッ!!」 いきなり窓から、何かが顔を出した。赤と青の丸でできた、子供が描いたイラストみたいな顔が。「うわああああああっ!!」 突然の出来事だったから、思わず声を上げて叫んじゃった。反射的に、奥にある運転席側の席のドアにまで下がる。 あたしの反応がよっぽど意外だったのか、目を見開いて呆然としたままあたしを窓越しに見ている顔。 ……って、ちょっと待った。 赤と青の楕円を、鳥をイメージしたように組み立ててできている、まるでCGのように人工的な顔。いや、CGにしか見えない顔。よく見たらこの顔、前に見た事がある。あんな特徴的な顔をしたポケモンなんて、1種類しかいない。「ポリゴン……2?」 そう、バーチャルポケモン・ポリゴン2。世界で初めて人工的に作られたポケモン、ポリゴンのバージョンアップ版、もとい進化系。あたしは一度、旅の中で会った事がある。だけどこんなポケモンが、どうしてここに? あれってまだ、開発中だったんじゃ――? そんな事を考えていると、ポリゴン2の横からまた何かが顔を出した。 それは、2つの新たな顔。片方は、一昔前のCGのようにカクカクした顔。もう片方は、目とアンテナみたいなのが生えている事以外はポリゴン2とそれほど変わらない顔。どっちもカラーリングが似ていて、CGにしか見えないという共通点がある。それはどう見ても、ポリゴン2の進化前のポリゴンと、ポリゴン2の進化後のポリゴンZにしか見えなかった。 ……え、ちょっと待って。ポリゴン、ポリゴン2、ポリゴンZ。この組み合わせ、前にどこかで見たような――? そんな事を思っていると、目の前のスライドドアがいきなり開かれて、別の顔があたしの前に現れた。「あ、やっと起きたんだ!」 久しぶりに会う友達のように挨拶をしたのは、青いショートヘアーの女の人だった。白いシャツにジーパンだけの、随分とシンプルな服装をしている、快活そうな印象の人だった。「え……ゲイル!?」「そうだよ。久しぶりだね、ヒカリ!」 目の前の女の人――ゲイルは明るくウインクしてみせた。 ゲイルは、ポリゴンのプログラムを研究しているSE(システムエンジニア)で、旅の中で前に一度会った事がある。という事は――「じゃあもしかして、ツバイにドライにフィーア!?」 ここにいるポリゴン達は、ポリゴンのツバイ、ポリゴン2のドライ、ポリゴンZのフィーアの『ポリゴン三兄弟』という事になる。 名前を言われて喜んだドライが、あたしの胸元に嬉しそうに飛び込んできた。ドライは前にゲイルと出会うきっかけを作ったポケモンで、あたしとは特に仲が良かった。だからドライの突然の行動には少し驚いたけど、あたしは自然と笑ってドライの無機質な頭を撫でて、再会の挨拶をした。この状況でも表情を一切変えないツバイと、再会の喜びで笑みを浮かべているフィーア。ポリゴン三兄弟はあの時と、全く変わっていなかった。「ほんと、驚いたよ。ヒカリが1人で道端に倒れていたのを見た時は」 そんなゲイルの言葉を聞いて、はっと我に返った。 今までの記憶が逆流する。 新生ギンガ団との戦いが嫌になって、あたしはポケモン達を置いてこっそり逃げ出したんだ。それで、どれくらいか歩いた所で倒れて―― そう、今は再会の喜びを味わうよりも、聞かなきゃならない大事な事があったじゃない……!「ねえゲイル、ここはどこなの? あたしは一体どうしちゃったの?」 ドライを少しだけどけて、あたしはゲイルに聞いた。「ああ、ここはカンナギタウン。ちょっとした用事があってね、三兄弟達を連れて車でここに来たんだけど、道端で誰かが倒れてるって思ったらそれがヒカリで驚いたの。これはすぐに助けなきゃ、って思ってすぐに拾ってあげたって事。さすがあたし、グッジョブだね!」 えへん、と得意げに胸を張って口癖の言葉を言うゲイル。 そっか、あたしはいつの間にかカンナギタウンにまで来ちゃったんだ。そこで倒れた所を、たまたま通りかかったゲイルに助けられた、っていう事か。 でも、疑問がわく。 あたしは世間にとって、**(確認後掲載)者も同然。そんな人を、どうしてゲイルは――?「つかぬ事を聞くけど、一体何があったの?」「え?」 ゲイルの質問に、あたしは我に返った。それがあまりにも、普通すぎる質問だったから。「だから、一緒にいたサトシ達はどうしたのって聞いてるの。今まで一緒に旅をしていたのに、どうしちゃった訳? もしかしてはぐれちゃったの? だったらあたしが送り届けてあげるけど……」「え……それ、は……」 言葉に詰まる。 あたしが自分からサトシ達の所から逃げ出したなんて、とても言いにくい。そもそもそれを説明するには、新生ギンガ団と戦っている所から説明しないといけない。だけど、そんな事を今のあたしが言っても信じてもらえるかどうか……「あれ……? まさか……ケンカでもして別れちゃった、とか?」 あたしの様子がおかしい事に気付いているのか、ゲイルの問いかけが慎重になる。 そこで、あたしは気付いた。 ゲイルの態度は自然すぎる。それが**(確認後掲載)者を庇っているような様子には見えない。もしかしてゲイルは、あたし達があの事件を起こした事を知らないんじゃ――?「ゲイル……今のあたしがどんな人か、知ってる?」「へ?」 試しに聞いてみると、ゲイルは質問の意味が理解できていないのか、一瞬声を裏返した。「どんな人って、それはトップコーディネーターを目指している女の子、でしょ?」 それがどうしたの、ってゲイルの疑いを一切持たない瞳が問いかけてくる。 やっぱり、ゲイルは気付いていないんだ。あたしがあんな事件を起こして逮捕されて、逃げ出したって事を――「今のあたしは、ポケモンコーディネーターじゃない」「え?」「今のあたしは、**(確認後掲載)者なの……新生ギンガ団に捕まったサルビア王女を助けようとして戦ったけど、それが事件を最悪の展開にしてしまったって罪に問われて警察に捕まって、それでも逃げ出して……自分の判断だけで行動してとんでもない事をしちゃった、警察に追われてる**(確認後掲載)者なのよ……」 その告白は自然と、言葉が懺悔するもののようになっていた。「……」 ゲイルもポリゴン三兄弟も黙り込んでいる。それはそうか、こんな事をいきなり話されたら、そりゃすぐに警察に通報するはず。でも、警察に捕まる事になっても構わない。だってあたしは、ポケモン達にもとんでもない事をしちゃったから、警察に裁かれるのは――「あっはははははははは!!」 ……え!? ゲイルが今、笑っている……!?「何真剣な顔で変な冗談言っちゃってるのよ、ヒカリは!! 自分が逃亡中の**(確認後掲載)者だ、なんてヒカリにしては凄い冗談じゃない!! さては何か、変なサスペンスドラマでも見たなー?」 ゲイルはそう言いながら、笑っている。どうやらあたしの話を本当だって思っていないみたい。「じょ、冗談なんかじゃない!! あたしは本当に――」「はいはい、わかってるよヒカリ。1人になった理由は知られたくないって事なんでしょ? だから冗談を言ってごまかした。でもさっきのは冗談にしては現実感がありすぎだったから、もう少しうまく冗談を言う方法を勉強した方がいいかもねー」 あーあ、完全に信用してくれていない。 それはそれで嬉しいんだけど、それでもこのまま一緒にいたらゲイルが逃亡者を匿っているように見えて濡れ衣を着せられかねない。とにかく、これ以上関わっている訳にはいかない。「と、とにかくあたしはすぐに出るから! 早くサトシ達を探さないといけないし……」 とっさに思いついた言い訳を言いながら、後ろのドアを開けてすぐにゲイルとお別れしようとした。 だけど。「まあ待ちなさいって」 そんなゲイルの言葉が魔法だったみたいに、あたしの体が硬直する。誰かにどこかを掴まれて引っ張られている訳じゃないけど、どこも掴まれていないのに引っ張られるこの感覚。まさか、“サイコキネシス”!? 重い首をゆっくりと曲げて振り向くと、そこには目を怪しく光らせるドライの姿が。やっぱりあたしの予想は当たっていた。「ヒカリがどんな事で1人になったのかは知らないけど、せっかくここで会えたんだし、気分転換でもしに行かない? そうすればまた、気楽にみんなと合流できるでしょ?」 ……うぐ。どうやらゲイルはあたしをすぐに返してくれないみたいだ。 仕方がない、か。ここはゲイルが満足するまで付き合うしかないみたい……まあ、あたしがフタバタウンのヒカリだって事を何とか周りにわからないようにすれば、何とかなるかもしれないし。 * * * かくして、あたしはゲイルと一緒にカンナギタウンを歩く事になった。 すぐに回りの人にばれるんじゃないかって気が気じゃなくて、顔を伏せつつも周りを気にしていたけど、コートを着てきたお陰か、あたしの事に気付いて騒ぐ人はいない。町の人達はあたしには目もくれずに通り過ぎていき、どこの町にもあるごく普通の光景を作り出している。 それで安心してしまったのか、あたしは自分が警察に追われている立場だって事も忘れて、歩きながらドライ達の相手をしたり、ゲイルが買ってくれたジュースを飲んだりした。 それは、今までの戦いで忘れかけていた、旅の中の日常だった。 だけど。 それは、目的地に着いた瞬間に終わってしまった。 今までのは寄り道に過ぎない。目の前に建つ、長い歴史を刻んできたような古い建物が、ゲイルの目的地だった。「こ、ここって……」「そう、歴史研究所」 歴史研究所。 そこは、あたし達がヒルコに頼まれて目的地としていた場所。ここにある『金剛珠』と『白珠』を破壊して、新生ギンガ団の行動を止めるために。ここに来ちゃった事で、あたしが忘れかけていた事が、全部蘇ってしまった。「ここには博物館もあるでしょ? 大昔から続いているポケモンと人との歴史を知って、三兄弟達をもっとポケモンらしくできるきっかけが見つかればいいなあって思って」 遠足に行く子供のように、心底楽しみそうに言うゲイル。 そういえばゲイルは、ポリゴンを作った理由を、人の役に立てるためって言っていた。ならゲイルは、ポリゴン達の事を、一体何だと思って見ているんだろうか。「……ねえゲイル」「ん、何?」「ゲイルって、ポリゴン三兄弟の事、どんな風に見ているの?」 自然と、そんな事を聞いていた。ゲイルはそんなあたしの質問が意外だったのか、不思議そうに目を丸くする。「なんでそんな事聞くのさ?」「いいから答えて」 ゲイルの質問を跳ね除けて答えを催促すると、ゲイルはんー、とあごに手を当てて考え始めた。「そりゃあたしは、三兄弟の産みの親みたいなものだね。三兄弟がいずれ人を助ける力になれるように、一生懸命研究して、育てているよ」 ……やっぱりそうだった。そんな感情は、表向きのものでしかないというのに。「そんなものは、嘘よ」「え?」 ゲイルが声を裏返した。「じゃあ聞くけど、もし三兄弟が人の力になる事を嫌がったら、ゲイルはどうする?」「え……そんなまさか。三兄弟はその事を嫌ってなんか……」「だから、もしもの話。もしそうなったら、ゲイルは三兄弟をどうするの?」「え……あ、それ、は……」 ゲイルは言葉を詰まらせる。そして少し悩んだ末、ゲイルは口にするのは抵抗がありそうに答えた。「それだと失敗作になっちゃうから、その……処分をして開発をやり直すと思う、けど……」「やっぱりゲイルも、ポケモンを目的を果たすための道具にしか見ていなかったんだ」 あたしは顔をうつむける。「ちょ、ちょっと! 道具なんてそんなおかしな……」「あたしね、旅に会った人にこんな事を言われたの。ポケモントレーナーが謳うポケモンへの愛情や絆は、『ポケモンを自らの手駒にしたい』という感情の延長線上にしかない、上辺だけのものだって。ポケモントレーナーはみんな、ポケモンを目的を成し遂げるためのおもちゃにしか見ていないんだって。ひどいよね、あたし達、何も自覚しないままそんな事をしていたなんて……」「ヒカリ……何だか様子がおかしいよ? 大丈夫? 心が病気なんじゃないの?」 ゲイルは心配そうにあたしの顔を覗き込む。それにも構わずに言葉を続ける。「それに……ゲイルは知らないだろうけど、ポケモンがわざを使う事っていうのは、凄く大変な事なの。ポケモンは一見軽々しくわざを使うけど、その時体を駆け巡るエネルギーは、人がやったら死に掛けるくらい激しいものなの。そんな事を、あたし達はポケモンにやらせていたのよ? ポケモンバトルだとか、ポケモンコンテストだとか、あたし達自身が楽しむために! そんなのひどいって思わない……?」 なぜか、目が熱い。自分がこんな事をする嫌な人だった事が、それほど悔しかったのかもしれない。「あたしは、ポケモントレーナーになんて、なるんじゃなかった……! あたしがしたかったのは、ポケモンを苦しめる事じゃなかった……のに……どうして、そんな事に気付かないまま……!!」 ポケモンとの暮らしを楽しんでいたつもりになっていたのか。 気が付くとあたしは、その場にうずくまって、ああああああああ、と泣き出していた。この後悔を、あふれる涙と一緒に流したかったけど、全然効果はない。それでも、あたしは泣くしかなかった。 そして、どれくらい泣いた頃か。「ヒカリちゃん!? どうしてここに!?」 聞き慣れた声が耳に入って、あたしは我に返った。 はっと顔を見上げる。そこには、見慣れた顔が2つあった。 片方は、白いロングヘアーに赤い瞳が特徴的な、きれいで落ち着いた印象の顔の大人の女の人。服装はワインレッドのブラウスに、青のズボン。 もう片方は、対照的に黒いロングヘアーで、ノースリーブの水色の服に赤いミニスカート、そして白い帽子を被った若い女の人。その足元にはしんせつポケモン・グレイシアがいる。 どっちもあたしより年上の人で、あたしが旅の中で何度も会ってきた人だった。「ルビー、さん……!? それに、ミライさんも……!?」 そう、『一撃必殺の鬼』の異名を持つトップコーディネーターのルビーさんと、サトシのいとこでこおりタイプのポケモンを使う自称『氷の魔女』ミライさんだった。どっちも懐かしい顔だけど、今は顔を合わせたくなかった。だって――「……そう。ようやくお縄になる気になったのね、ヒカリちゃん」 ミライさんは今まであたしに見せなかった、冷たい視線を送ってくる。それは、隣にいるルビーさんも同じだった。「え? この人達、ヒカリの知り合い?」 2人を見たゲイルは、目を丸くしてあたしに聞いてくる。 だけどあたしが答える前に。「捕まえてカイロス!!」 そんなルビーさんの声が聞こえたと思うと。 目の前に大きな影が立ちはだかって、一瞬で軽々とあたしを何かで挟んで持ち上げた。「!!」 それは、ルビーさんの一番手、くわがたポケモン・カイロスだった。あたしはカイロスの大あごに、いつの間にか捕まってしまっていた。TO BE CONTINUED……
どうも、フリッカーです。 突然ですが、ヒカストの更新を無期限に中止させていただきます。 理由は、ポケモンの世界観に自分の価値観を押し付けてしまった事と、あまりにも重すぎる展開にしてしまった事です。 トレーナーは直接手を出さずにポケモンを戦わせるという“自らの手を汚さない”スタイルを自らの手で書くのが納得できなくなり、トレーナーのスタイルを否定する文とトレーナーが自ら戦うという展開を書いてしまいましたが、“自らの手を汚さない”スタイルがまかり通る世界観でこれを書くのは、インド人に牛肉を食えと要求するような異文化の否定と同じだと気付き、知らずポケモンのスタイルを侮辱してしまいました。 そして、最近のヒカストはハードかつシリアスな展開で進めてきましたが、10歳児を主人公にする物語にはあまりにも重すぎる展開だという事に気付きました。僕は完全に等身大の10歳児を書く事ができずに、10代後半と同じ感覚で書いていました。本当はこの後再起する展開を書く予定だったのですが、どう考えても説得力のある再起展開が思いつかなくなってしまったのです。 自分の未熟さ故に、人気のあったこの作品を“アニメに縛られたくない”という理由で自らの手で歪め、中止せざるを得なくなってしまい、本当に申し訳ありませんでした。そして今まで読んでくださった皆さん、本当にありがとうございました。