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遂に新作HG/SSが発売されましたね。 さて、それを記念して(?)、今回のヒカストをお届けします。・ゲストキャラクターミホ イメージCV:こやまきみこ ヒカリのトレーナーズスクール時代の友人であり、旅に出たまま行方不明になっていたと思われていた少女。 底抜けに陽気で、いつも元気いっぱいな子供っぽい性格で、誰とでもすぐに親しくなれる。しかし友達思いであり、ヒカリの事を『ヒカリン』と呼び、ヒカリを『ピカリ』と呼んだ者に怒るなど、その仲の良さは近所でも評判だった。「ハイテンション」という言葉をよく使い、現れる時は「今日もあたしはハイテンショーン!!」が口癖になっている。気に入ったポケモンに「惚れちゃう」と言うほど結構なポケモン好きだが、手持ちポケモンは持っておらず、故にポケモントレーナーではない。主な特技はポフィン作りだが、他にもいろいろな事を起用にこなせ、本人曰く「苦手な事はない」らしい。 その底抜けな明るさとは裏腹に、旅の目的が曖昧、人の口には合わないはずのポケモンフーズやポフィンを普通に食べておいしいと言う、ポケモンと会話できる能力を持つなど、多くの謎を持つ。 その正体は、ミホの姿と記憶をコピーして生活しているへんしんポケモン・メタモン(色違い)。長い間人間の姿で生活していたため、人間の姿でいる方が楽しいと思っており、自分がメタモン本来の姿に戻る事は不安になるという理由で嫌がる。
あたし、ヒカリ! 出身はフタバタウン。夢は、ママみたいな立派なトップコーディネーターになる事! パートナーはポッチャマ。プライドが高くて意地っ張りだけど、それだからとてもがんばりやさんのポケモンなの。そして、シンオウリーグ出場を目指すサトシと、ポケモンブリーダーを目指すタケシと一緒に、今日もあたし達の旅は続く。 これは、そんなあたしが旅の途中に経験した、ある日のお話……SECTION01 ミホ! 偽りの再会! シンオウ地方を象徴する湖の1つ、シンジ湖。その側に、あたしの町――フタバタウンがある。これといって大きな町じゃないし、何か名物がある訳でもないけど、のどかでいい場所なの。田舎町には田舎町らしい、いい所があるって事。「遂に帰ってきちゃったなあ〜! あたしの町に」 フタバタウンの街並みを見たあたしは、思いっきり背伸びをした。フタバタウンの空気を吸うのは久しぶり。毎年恒例のフタバ祭りのためにここに帰ってきたけど、ちょっと遅くなっちゃったからか、もう終わっちゃったみたい。だけどこうやって故郷の町を見ていると、お祭りがなくても何だかハイテンションになってきた!「帰ってきて、今日もあたしはハイテンショーン!! じゃ、家に帰ろっか!!」 あたしはハイテンションな気持ちを抑えられなくなって、フタバタウンの街並みへと走って行った。 見慣れたあたしの家の前に、あたしは遂にやって来た。何の変哲もないごく普通の家だけど、あたしにとって、帰ってくると安心する場所。昔はここでよく、ヒカリンと一緒に遊んだっけ。あたしはますますハイテンションになって、玄関に入ろうとした。その時、庭に誰かがいる事に気付いた。2人の人が、庭に何か作業をしている。2人共見慣れた顔。パパとママだ!「パパーッ! ママーッ! ただいまーっ!」 あたしはすぐにパパとママの所に向かっていく。すると、パパとママがあたしに気付いて、驚いたような表情を見せた。「ミ、ミホ!?」「ミホ、どうしてここに……!?」「何言ってるのパパ、ママ、あたしはただ帰って来ただけよ!」 あたしがパパとママに近づこうとすると、パパとママはなぜかあたしから距離を取るように恐る恐る後ずさりする。「ほ、本当に、ミホなのかい……?」「そうよ! 自分の子供の事くらい、わかるでしょ? あたしはあたしよ!」 パパとママは、どうしてだか知らないけど、あたしの事を疑っているように見える。いつもだったらパパとママは温かく迎えてくれるはずなのに、どうしちゃったのかな? 久しぶりに顔を見て、忘れたはずはないと思うし……「パパ、ママ、どうしたの? 何だか変よ?」 そう言いながら、あたしはパパとママにゆっくりと歩み寄る。だけどその時。「その子から離れてください!!」 突然、聞き覚えのある声が聞こえてきたと思うと、何かがこっちに飛びかかって来た。あたしは素早くかわす。見てみると飛びかかって来た奴の正体は、ねこかぶりポケモン・ニャルマー。そのニャルマーは、見覚えのあるものだった。そのニャルマーの側に、1人の女の人が姿を現した。「アヤコさん……」 ママが、そう言った。そう、この人はヒカリンのママ。髪型ですぐにわかる。一体何のつもりだったの? 事故?「ヒカリンのママ……ずいぶん荒っぽくなってない……?」「この姿に惑わされちゃダメです。あの子は、ミホじゃありません」 ヒカリンのママは、パパとママにそう言うと、あたしを強くにらみつけた。あたしを敵として見ているみたいに。あたしがあたしじゃないって、どういう事? 「あなたは、私達の知っているミホじゃない……正体を見せなさい!! ニャルマー、“でんこうせっか”!!」 ヒカリンのママは、そう言っていきなりニャルマーに指示を出した。ニャルマーはいきなりあたしにタックルをお見舞いした! あたしの体が、たちまち弾き飛ばされた。「“シャドーボール”!!」 あたしの体が地面に倒れても、ヒカリンのママは指示をした。ニャルマーはあたしに向けて容赦なく“シャドーボール”を発射! よけられない! あたしはとっさに、体を溶かした。そのまま地面にへばりつく。そこに“シャドーボール”が当たるけど、痛くもかゆくもない。そして距離を取ってから、体を起こす。相手がやる気なら、こっちもやるしかない……そう思って、あたしが“へんしん”しようと思った時。「やっぱりそうだったのね……メタモン」 メタモン。そう言われて、あたしははっとした。見ると、パパとママがあたしを見て、驚いた表情を見せている。体を見てみて気付いた。いけない、あたしは今『すっぴん』になってる!「死んだ人間が生き返るはずがない……このメタモンが、ミホに成り済ましていたのよ!」 ヒカリンのママは、あたしを指差してそう言った。『すっぴん』でいる事が恥ずかしいあたしは、すぐに体を元に戻して、主張する。「違うよ!! あたしはミホよ!! 本物のミホよ!!」「そういう事だったのね……!!」「娘に成り済ますとは、どんでもない化け物め……!!」 だけど、パパとママの表情はヒカリンのママと同じように、鋭いものに変わっていた。そしてその手には、モンスターボールが握られていた。パパとママも、ポケモントレーナーだった。だからあたしは、ポケモントレーナーになろうと思ったんだけど……「オーダイル!!」「バクフーン!!」 パパとママがモンスターボールを投げると、その中から2匹のポケモンが現れた片方はパパのポケモンのおおあごポケモン・オーダイル、もう片方はママのポケモンのかざんポケモン・バクフーン。どっちもあたしが見慣れているポケモンだけど、2匹も同じように、こっちを鋭い目付きでにらんでいる。「“ハイドロポンプ”!!」「“ふんか”!!」 パパとママは何のためらいもなく、指示を出した。オーダイルとバクフーンは、容赦なくあたしに水と炎を撃った! あたしは、パパとママがあたしを攻撃できるなんて思っていなかった。だから、その攻撃をよける事ができなかった。「きゃあああああっ!!」 あたしは一瞬で家のベランダの前に弾き飛ばされた。地面に体が強く叩きつけられた。それが痛いって思う以上に、パパとママが平気であたしを攻撃できた事が、凄くショックだった。だけどあたしは、さらにショックを味わう事になった。 ベランダから家の中が見えるけど、そこに何かがある。気になってあたしは顔を向けると、そこには信じられないものがあった。 あたしの顔写真が真ん中に置いてあるそれは、どう見ても仏壇だった。あたしは衝撃を受けた。という事は、あたしはもう、死んだ事になっている!? そうだ、思い出した。あの時の事を。あたしはあの時、偶然あたしを捕まえようとしたニンゲンを倒して、その体を借りた。それからあたしは、ミホって名前のニンゲンとして生きていく事にしたんだった。前にヒカリンがこの事を知った時も、ヒカリンと騒動になった事を覚えている。あたしはニンゲンじゃない。ニンゲンの姿を借りているだけ。今まであたし、その事をすっかり忘れていた。「オーダイル!!」「バクフーン!!」 パパとママがさらに指示を出した。オーダイルとバクフーンが、容赦なく襲いかかってくる。このままだと、やられる! “へんしん”して応戦しないと! あたしはとっさにポケモンのチップを取り出した。そこに書かれていたのは、ドラゴンポケモン・ボーマンダの絵が描いてあった。選んでいる暇なんてないから、このポケモンに!「“へんしん”!!」 あたしは目の前で腕を交差させて、そう叫ぶ。あたしの体が『すっぴん』になって、オーダイルとバクフーンの攻撃をかわした。そのまま2匹の後ろに回り込んで、体をボーマンダに作り変える。「本性を現したわね……! ニャルマー、“スピードスター”!!」 ヒカリンのママがニャルマーに指示を出した。ニャルマーが“スピードスター”をこっちに撃ってくるけど、あたしは飛び上がってそれをかわす。ボーマンダになったから、空も自由に飛べちゃう! すぐに反撃。“かえんほうしゃ”をニャルマーに放つ。命中! ニャルマーが炎に包まれた。「オーダイル、“ハイドロポンプ”!!」「バクフーン、“ふんか”!!」 オーダイルとバクフーンが、こっちに攻撃してきた。すぐにかわす。飛んでいるから、この程度の攻撃をかわすのは簡単。パパとママのポケモンは、結構強い。そんな相手には、このわざで! 口を開けてエネルギーを溜めてから放つと、いくつもの光弾がオーダイルとバクフーンに降り注いだ! これこそ、“りゅうせいぐん”! “りゅうせいぐん”はたちまち、オーダイルとバクフーンを飲み込んで、いくつもの爆発を起こした。凄い威力。これならオーダイルとバクフーンも、ただじゃ済まないはず。 その攻撃に怯んだ隙に、あたしは飛んで逃げる。今の攻撃は、全部逃げるためのもの。パパとママと直接対決するなんて、あたしは嫌だったから。せっかく帰ろうと思っていた家から逃げる事になっちゃうけど、仕方がない。 ある程度飛んでから、人目のつかない所に降りて、元の姿に戻った。 息が荒くなっている。膝ががっくりと地面に着いた。あたしは自分の両手を見てみる。ニンゲンの手の平。それが、震えているのがわかった。 ――あなたは、私達の知っているミホじゃない…… ――娘に成り済ますとは、どんでもない化け物め……!! 自分は、ヒカリンのママや、パパとママが知っているミホじゃない……ミホに成り済ましている化け物……あたしがニンゲンじゃないのはわかっているけど……「違う……!! そんなの違う……!! あたしはミホよ……本物のミホよ……ニセモノなんかじゃない……っ!!」 あたしは頭を抱えて、その場にうずくまった。どうしてもあたしは、自分がニセモノだと認める事ができなかった。だってあたしは、パパやママ、そしてヒカリンと一緒に楽しく過ごした事を、ちゃんと覚えているんだもん。 これからどうしよう……? あたしは考えた。そうだ、ヒカリンにお願いすれば、助けてもらえるはず。ヒカリンが説得してくれれば、きっと…… * * * あたしの故郷、フタバタウンにやってきたあたし達。その目的は、このフタバタウンで毎年恒例のフタバ祭りが開かれるから。たまたま近くにいた時にこの時期になったから、帰ってきた訳。フタバ祭りはいつものように大賑わい。ママが祭りの役員に選ばれたから、いろいろ手伝いもしたけど、フタバ祭りそのものもしっかり楽しんできた。こうしてフタバ祭りは、大賑わいの内に無事に終わった。 フタバ祭りが終わった次の日、あたしはある人の所を訪ねていた。その人は、ポケモン研究の第1人者、『ポケモン川柳の人』……いや違った、オーキド博士の所。オーキド博士は、フタバ祭りのオープニングを兼ねた講演会に出るために、フタバタウンにやってきた。その時はそっくりに化けたニセモノが出てきたけど、それを暴いて、講演会は無事に行われた。オーキド博士はその後も、特別ゲストとしてフタバ祭りを楽しんでもらった。祭りが終わって帰っちゃうから、その前に話したい事があって、あたしはオーキド博士に会いに行っていた。「何じゃと!? 人間に変身したメタモン!?」 オーキド博士はあたしの言葉に、驚いた表情を見せた。「そうなんです。あたし達は実際に、そんなメタモンに会ったんです」 あたしが今言っているのは、ミホの事。メタモンは、いろいろなものに変身できるっていうポケモンだけど、まさか人間に変身できるメタモンがいたなんて、聞いた事がなかった。だからオーキド博士に会った時、この事を話してみようって思った訳。「そんなメタモンと、一体どうやって会ったんじゃ?」「あたしの友達が、メタモンに入れ替わっていたんです」「メタモンに入れ替わっていた?」 オーキド博士が声を裏返した。こういう事は、さすがのポケモン研究の第1人者のオーキド博士も聞いた事がないみたい。「あたしの友達のミホっていう女の子が、メタモンに入れ替わっていたんです。普段はミホの姿をしているけど、いざとなったらポケモンのチップを見て他のポケモンに“へんしん”して、戦うんです」「なるほど……メタモンはたいてい何かに変身して暮らしておるから、本来の姿でいる事はほとんどなく、発見する事も困難なんじゃ。メタモンは細胞そのものを組み替えて変身するから、変身した後に体を調べてもメタモンだと見破る事は不可能じゃ。そして定かではないが、コピーした対象の記憶もコピーできるから、怪しまれる事なく変身したものに紛れ込んで暮らせる、といわれておる。だから今まで、メタモンの事はほとんど調べる事ができず、解明されていない所が多いんじゃ」 オーキド博士が説明した。その説明に、サトシとタケシもうなずいていた。メタモンって、結構謎が多いポケモンだったのね……「だから、その謎が解明されれば、大きな発見になるぞ。是非一度でいいからそのミホという子と、話してみたいもんじゃが……」 オーキド博士は、ミホの事に興味津々のようだった。研究者の性分ってものなのね。もっとも、調べられるミホの方はどう言うかわからないけど。「ミホは今、フタバタウンには来てないんです」「そうか……それは残念じゃな……」 あたしが説明すると、オーキド博士は残念そうな表情を浮かべた。するとオーキド博士は、はっとひらめいたように目を見開いた。「うむ、ここで一句浮かんだぞ。『その素顔 何者なのか メタモンよ』」「凄ーい! こんな時に思い浮かぶなんて、さすが川柳の人ー!」 オーキド博士は、こんな時に川柳を詠んでくれた。あたしは思わず声を上げちゃった。あたしはずっと前からオーキド博士のポケモン川柳が好きだった。だからオーキド博士の事を、あたしはどうしても『ポケモン川柳の人』って言っちゃう。でも、まさかこんな時に詠んでくれるとは思っていなかった。オーキド博士はいやいや、と少し照れた表情を見せたけど、タケシにまた川柳の人って言ってるぞ、って突っ込まれちゃった。そんな時だった。「おーい!! 大変だーっ!!」 そんな叫び声が聞こえたと思うと、誰かが猛スピードでこっちに走ってくる。その人はこっちに一直線に突っ込んできたと思うと、ちょうどその先にいたサトシに正面から思いっきりぶつかる形になっちゃった。「いてててて……」「何だよ何だよ、何だってんだよーっ!! こんな時にぶつかるなんて、罰金だぞ!!」 サトシの目の前に倒れていたのは、黄色い髪の男の子だった。それは間違いなく、ジュンだった。あたしと同じ、フタバタウン出身のポケモントレーナー。ジュンのパパは、バトルフロンティアのタワータイクーン、クロツグさん。その影響か、最強のポケモントレーナーになろうと思って旅をしている。でも、かなりせっかちな性格で、何かにつけて罰金ってばかり言う、ちょっとうるさい人。そういえば、あたし達がジュンに会う時、毎回サトシとぶつかっているような……?「ジュン!!」 サトシがジュンの姿に気付いて、声を上げた。するとジュンはすぐに何かを思い出したように、立ち上がった。「そうだ!! こんな事してる場合じゃない!! 大変なんだサトシ!!」「大変って、何だよ?」「いるんだよ!!」「いるって、何が?」「人間に化けているメタモンが、この町のどこかに隠れてるんだよ!!」「人間に化けるメタモン!?」 あたし達は声を揃えた。あたしはまさか、それがミホなんじゃないかって気がした。「それって、本当なの!?」 あたしはサトシ達を押し退けて、真っ先にジュンに聞いた。ジュンはあたしに聞かれるのに驚いたのか、少し戸惑ったけどすぐに答えた。「あ、ああ、今町のみんなで大騒ぎになってるんだよ!!」 ジュンの言葉を聞いて、あたしは確信した。ミホが、間違いなくここにいる。どうして町で騒ぎになっているのか知らないけど、何かトラブルに巻き込まれたのかもしれない。「そのメタモン、一体何をしたの?」「いや……そこまでは聞いてないけど……とにかく、捕まえようとしている事しか……」 あたしがジュンにそうやって聞き続けていた時、遠くから聞き覚えのある声が聞こえてきた。「ヒカリーン!」 声がした方向をみると、そこにはこっちに向かってくるミホの姿があった。今話題になっていたミホが、あたしの目の前にいる。ちょうどいいタイミングだった。「ミホ!」 あたしのその声に、みんなが反応した。「ミホ!?」と、と驚いた声を出すオーキド博士。「ミホ……あいつ、確か……」とつぶやくジュン。「ヒカリン、あたし、探してたのよ!」 ミホはあたしの側に来るや否や、息を切らせながらそう言った。「探してたって、一体どうしたの?」「ヒカリン、あたし、ちょっと大変な目に遭っちゃって……ヒカリンの力を貸してよ!」 いきなりそう言われたって、どうしたらいいのかはわからない。だけど少なくとも、何か嫌な事があった事は間違いない。「おいお前、ミホだよな?」「あ、ジュンじゃない! 久しぶりだね!」 その時、ジュンがミホに聞いた。それに気付いたミホも、ジュンに何事もなかったように明るく挨拶する。ジュンは、ミホの事を知っているみたい。そしてミホも、ジュンの事を知っているみたい。だけどこれって、ちょっとまずい事になるかも……「お前確か、旅に出たまま行方不明になってたとか聞いたけど……」「そ、そんなのは嘘っぱちよ! ミホはこうやって、無事でいるんだから!」 あたしは慌ててミホの代わりに、ジュンに答える。こんな所でミホがメタモンだってわかったら、ジュンは間違いなくミホを捕まえようとするはず。だからあたしは、ミホの正体を隠そうと必死になっていた。「ミホって事は、その子が人間に変身したメタモンなのかい?」 だけど、そのオーキド博士の質問で、あたしの努力が全て無駄になっちゃった。オーキド博士のその質問が、ジュンにミホの正体をばらす事になっちゃったから。ジュンは目を丸くして、ミホに目を向けた。あたしは何とかして、その質問をごまかそうとした。だけどその時。「ヒカリ、その子から離れて!!」 突然、聞き慣れた声が聞こえてきたと思うと、どこからかニャルマーが飛び出してきて、ミホに向かって“シャドーボール”を撃った! あれって、ママのニャルマー!?「きゃあっ!!」 ニャルマーの“シャドーボール”は、ミホを直撃した。たちまちミホは跳ね飛ばされた。「ミホ!!」「近づいちゃダメよ、ヒカリ!!」 あたしはミホに駆け寄ろうとしたけど、その声に呼び止められた。振り向くとそこに立っていたのは、紛れもなくママだった。やっぱりあのニャルマーは、ママのニャルマーだったんだ。その横には何人かの町の人達がいる。だけど、どうしてミホを……?「その子は、ヒカリの知っているミホじゃないわ。ミホに成り済ましている、メタモンよ」 ママは、あたしにそう言った。その表情は、いつもより真剣なものになっている。そんなママの前で、ミホは見つかっちゃった、とつぶやいて立ち上がった。やっぱり、騒ぎになっていたメタモンは、ミホの事だったんだ……!「って事は、こいつが人間に変身しているメタモンなのか!? なら、早速……!」「やめろジュン!! ミホは何もしていない!!」 ジュンがミホに向かおうとしたけど、サトシがそれを止めた。「ヒカリン……」 ミホが、怖がっているようにあたしの背中にそっと隠れる。ミホが力を貸して欲しいって言っていたのは、この事だったのね。あたしは確信した。「ママ、ミホが一体何をしたの? 何かしたなら、あたしが代わりに……」「そういう事じゃないのよ、ヒカリ。そのミホは、本物じゃないのよ。それは、ミホに成り済ましたメタモンなのよ。ヒカリの友達だった、ミホじゃないのよ」 ママは、あたしに真っ直ぐ目を向けてそう言った。ママはひょっとして、ミホがメタモンだから懲らしめようとしているの? 違う、ミホはそんな事をされる人じゃない!「あたし知っているわ、その事」 あたしが言うと、ママ達は驚いた声を出した。「だけど、ミホはニセモノなんかじゃない。メタモンになっても、紛れもなく本物のミホなのよ!」「ミホは悪いポケモンなんかじゃありません! 何も悪い事なんてしていないし、俺達とだって、普通に仲良くできたんです!」「ヒカリちゃん、騙されちゃダメよ。そのミホは紛れもなくニセモノなのよ!」 サトシも入ってママを説得するけど、そんな事を言って前に出てきたのは、ミホのパパとママだった。あたしもミホと遊んでいた時は、何度もお世話になった事がある。でも、今のこの2人は、ミホを子供とは見ていない目付きを送っている。「違う!! ミホは本物よ!! 確かに、ミホは死んじゃったけど……」「それなら、なんで本物だって言えるんだ!! 本物のミホが死んだのなら、偽物以外に何だって言うんだ!!」 あたしは説明しようとしたけど、ミホのパパに遮られちゃった。サトシが違います、って説得し続けるけど、2人共話を聞いてくれない。どうして……?「ヒカリ、それにサトシ君にとっても、これはあなたにとって残酷な事なのはわかっているわ。受け入れられないのはわかっているけど、これが現実なのよ……ヒカリの友達だったミホは、もういないのよ。目を覚まして!」「違う!! そんな事は残酷な事じゃない!! ママ達が勘違いしているだけよ!! あたしは目が覚めてるわ!!」 あたしは、今ほどママとあたしの間に距離を感じた事はなかった。自分の考えを、ママはなぜか認めてくれない。そんな事なんて、今まで一度もなかったはずなのに。親の心子知らずなんて言うけど、これじゃ子の心親知らずって言いたくなる。あたしはそんなママを初めて、嫌だと思った。「ママ、どうしてもミホを懲らしめるって言うなら……あたしがママを止める!!」「え!?」 あたしがママに向かってそう言うと、隣にいたサトシが、驚いた声を上げた。そしてママ達は驚いて、その場が凍りついたように沈黙した。ママだって、あたしが戦うなんて言ったら、驚くのは当然だと思う。だけどあたしはミホを守るためなら、そんな事なる事をためらわなかった。ママは強い。ここに帰ってきた時、あたしは旅で強くなった自分を見てもらうために、ママにコンテストバトルを挑んだ。ちゃんと作戦を立てて挑んだけど、やっぱりあたしは勝てなかった。そんなママが相手でも、ミホを守るためなら……!「あー!! もう何だってんだよ!! いつまでも話してばっかりで、こっちが待ちきれなくなるじゃないかあっ!! エンペルト、お前の力を見せてやれっ!!」 その時、ジュンがいきなりそう叫んで飛び出すと、モンスターボールを取り出した。サトシとタケシが止めようとしたけど、ジュンの行動があまりにもいきなりなものだったから、止められなかった。あたしも、そんなジュンに気付いたのは、ポッチャマの最終進化形、こうていポケモン・エンペルトがミホに一直線に向かっていた時だった。「あの人に化けたメタモンをやるんだ!! “はがねのつばさ”!!」 ジュンの指示を受けたエンペルトは、ミホに向かって一直線に突っ込んでいった。ポッチャマよりも鋭くなった羽で、ミホを思い切り切り裂く。「きゃあああっ!!」 ミホはたちまち、あたしの背中から弾き飛ばされる。倒れたミホの体が溶けて、その真の姿――青い色違いのメタモンになった。「正体を現したな!! エンペルト、“はかいこうせん”!!」 それでもジュンは容赦しない。エンペルトはメタモンに戻ったミホに向けて、“はかいこうせん”を放った! いけない!「ポッチャマ、“がまん”で受け止めて!!」 とっさにあたしは指示した。ポッチャマは飛んでいく“はかいこうせん”の前に立ちはだかる。そして“はかいこうせん”を生身で受け止めた。その光景に、ジュンは当然驚いた。“はかいこうせん”を耐え抜いたポッチャマは、そのまま“はかいこうせん”のエネルギーを倍返し! 倍になったエネルギーを返されたエンペルトは、簡単に弾き飛ばされた。「おい、何するんだよヒカリ!!」「さっきまでの話、聞いてなかったの!! ミホは悪くないって!!」「あーもう、何だよ何だよ、何だってんだよーっ!! 何だか話がよくわかんねえよ!!」 あたしが言っても、ジュンはそう叫ぶだけ。ジュンってとてもせっかちだから、人の話を聞かない事が結構あるんだよね……ジュンを説得するには、まずは落ち着かせなきゃならない。それも大変かもしれないけど。「ジュン、とにかく落ち着け!! 俺達の話を聞いてくれ!!」 その事は、サトシもわかっていた。サトシがジュンにそう呼びかけた、その時だった。 突然、空から何かが雨のように降ってきたそれが地面に落ちると、周りで次々と爆発が起こった。地面が大きく揺れる。「な、何、いきなり!?」 煙に遮られて周りは見えないけど、ママ達も困惑しているのが声でわかる。という事は、攻撃したのはママ達じゃない。じゃあ、一体誰が……!?TO BE CONTINUED……
突然、空から何かが雨のように降ってきたそれが地面に落ちると、周りで次々と爆発が起こった。地面が大きく揺れる。「な、何、いきなり!?」 煙に遮られて周りは見えないけど、ママ達も困惑しているのが声でわかる。という事は、攻撃したのはママ達じゃない。じゃあ、一体誰が……!?「わーっはっはっは!!」 すると、空から高らかな笑い声が聞こえてくる。聞き慣れた笑い声。まさかと思って見てみると、そこにはニャースの頭を象った気球が浮かんでいた。そのゴンドラの上には、見慣れた人影がある。「い、一体なんじゃ!?」 今まで状況を見守っていただけだったオーキド博士が、そうつぶやいた。「『い、一体なんじゃ!?』の声を聞き!!」「光の速さでやって来た!!」「風よ!!」「大地よ!!」「大空よ!!」「天使か悪魔か、その名を呼べば!!」「誰もが震える、魅惑の響き!!」「ムサシ!!」「コジロウ!!」「ニャースでニャース!!」「時代の主役は、あたし達!!」「我ら無敵の!!」「ロケット団!!」「ソーナンス!!」「マネネ!!」 いつものように、息の合った自己紹介するあいつら――間違いなくロケット団だった。しばらく顔を出して来ないとおもっていたら……まさか、ロケット団もミホを狙って……!?「なんだ、またお前達かよ……ソケット団」「ソケット団じゃなーい!! ロケット団よ、ロ・ケ・ッ・ト・だ・ん!!」「名前くらい、ちゃんと覚えろーっ!!」 それを見たジュンが呆れたようにつぶやくと、ムサシとコジロウはすぐに怒鳴り声を上げた。「ロケット団、一体何のつもりだ!!」 サトシが叫ぶ。「決まってるじゃない? そこにいる、人に化けたメタモンをゲットしに来たのよ!!」 ムサシが、堂々と指差しながら叫んだ。指差した先にいるのは、紛れもなくミホだった。それを見たミホが少し怯えた表情を見せた。「人に化けるメタモンなんて、これほど珍しいポケモンはいないからな!」「そのメタモンをボスにプレゼントすれば……!」「シンオウ征服、スピード出世でいい感じーっ!!」 コジロウ、ニャースの順番につぶやいた後、3人は声を揃えて嬉しそうに叫んだ。相変わらず息はピッタリな3人。「という訳で、メタモンゲット作戦開始なのニャ!!」 ニャースが叫ぶと、何やら1個のリモコンを取り出した。そのスイッチを押すと、ゴンドラの下がパカッと開いて、そこからいくつものボールが落ちてきた! それが地面に落ちると、周りで次々と爆発が起こった!SECTION02 人になりたい! ミホの願い!「わあああああっ!!」 あたし達は思わず頭を抱えてその場にしゃがみ込むしかない。下手に顔を上げられない。「くそっ!! ピカチュウ、“10まんボルト”だ!!」 サトシがピカチュウに指示を出す。ピカチュウはすぐにロケット団の気球を狙って“10まんボルト”を放とうとするけど、周りの爆発に吹き飛ばされて、それができない。「ニャハハハハ!! これこそ、絨毯爆撃作戦なのニャ!!」「どうだ! 爆弾の雨で、反撃できまい!!」 ニャースとコジロウが、高らかに叫んだ。このまま反撃できなかったら、ロケット団の思うままになるだけ。何とかしないと……!「ヒカリン!! 何とかできないの!?」「そんな事言われたって……! ミホこそ、何とかできないの!?」「全然無理!! こんな時に“へんしん”したくないよ!!」 ミホの言葉にも、そう答えるしかない。同じ質問をミホに返しても、ミホは首を横に振るだけ。 ミホは、戦う気がないみたいだった。ミホのパパとママが目の前にいる状況で、ミホは戦おうとはしなかった。今でもその気になれば“へんしん”して戦う事もできると思うけど、ミホは“へんしん”したくないんだ。そうしたら、ミホのパパとママを刺激する事になるかもしれない。そう思っているかもしれない事は、簡単に想像できた。「ニャース、そろそろいいんじゃない?」「よし、マジックハンド発射ニャ!!」 ムサシの言葉に答えて、ニャースがリモコンのスイッチを押す。すると、爆撃が止んだと思った瞬間、ゴンドラからマジックハンドが飛び出して、ミホに真っ直ぐ向かっていった!「ポッチャマ!!」 あたしはすぐにポッチャマに指示した。ポッチャマはすぐに飛び出して行って、伸びていくマジックハンドに向けて、“バブルこうせん”を発射! マジックハンドに見事命中して、マジックハンドを弾き返した! マジックハンドはまた伸びようとするけど、ポッチャマがまた“バブルこうせん”を使って応戦する。マジックハンドは、なかなかミホに向けて伸ばせない状態になった。「ちょっとニャース、何やってるのよ!」「ポッチャマがうるさくて伸ばせないのニャ!」「よし、なら追っ払うだけだな!! 任せろ!! 行け、マスキッパ!!」 コジロウが取り出したモンスターボールから、マスキッパが繰り出された。でも、マスキッパはすぐに反転してコジロウの所へ戻ってくると、すぐにコジロウの頭に噛みついた。「いてーっ!! 違う、やるのはあっちだーっ!!」 そのままもがき苦しむ(?)コジロウ。またマスキッパのいつもの癖。コジロウが好きだから噛みついているみたいだけど、それをやられる方のコジロウは、たまったものじゃない事は簡単に想像できる。「マスキッパ、“タネマシンガン”!!」 コジロウの指示で、マスキッパはようやくコジロウの頭から離れ、ポッチャマに向けて“タネマシンガン”を発射! 気付くのが遅れたポッチャマは、それをもろに受けちゃった! 効果は抜群! 何とか持ちこたえたポッチャマの前に、マスキッパが降り立つ。「“つるのムチ”だ!!」 さらに、マスキッパは口から伸ばす“つるのムチ”で、ポッチャマを攻撃し続ける。何とかよけ続けるポッチャマだけど、完全に防戦一方。「メガヤンマ、あんたも行くのよ!!」 そこに、さらにムサシが繰り出したメガヤンマまで現れる。えっ、って思った時にはメガヤンマは指示を受けていた。「メガヤンマ、“ソニックブーム”!!」 メガヤンマはポッチャマに向けて“ソニックブーム”を発射! 不意を突かれたポッチャマは、その直撃をもろに受けちゃう事になっちゃった!「2対1なんて卑怯だぞ!! ピカチュウ、“でんこうせっか”だ!!」 すぐにサトシがフォローに入ってくれた。ピカチュウが“でんこうせっか”でメガヤンマに突っ込む。その一撃に跳ね飛ばされるメガヤンマ。「オホホホホ!! 何言ってるの? 数で有利に戦いを進める事は、戦術の理にかなった方法じゃない?」 サトシの言葉に、ムサシは笑って答える。やっぱりあいつらには、何を言っても無駄みたい。そう判断したあたしは、サトシに目で合図を送った。一緒に戦うって事を。サトシはすぐにうなずいてくれた。「メガヤンマ、“はがねのつばさ”!!」「マスキッパ、“つるのムチ”だ!!」 メガヤンマとマスキッパが、同時攻撃を仕掛けてきた。まずマスキッパが“つるのムチ”を伸ばして、ピカチュウを捕まえた。そこに、“はがねのつばさ”でメガヤンマが向かってくる! 捕まえて確実にわざを当てる作戦ね!「ポッチャマ、メガヤンマに“つつく”よ!!」 でも、そうはさせない! あたしが指示すると、ポッチャマはピカチュウに襲いかかろうとしていたメガヤンマの前に飛び出して、“つつく”で攻撃! 効果は抜群! メガヤンマは何とか体勢を立て直して、離脱する。「マスキッパ、捕まえたピカチュウをポッチャマにぶつけるんだ!!」 すると、マスキッパは“つるのムチ”で捕まえたピカチュウをそのままポッチャマに向けて振り回した! ポッチャマは、ピカチュウに横から思い切りぶつけられて、跳ね飛ばされる。「ピカチュウ、“10まんボルト”だ!!」 サトシの指示で、振り回されるピカチュウは捕まった状態のまま、“10まんボルト”を発射! 電撃は“つるのムチ”を通じて、マスキッパに直接流れる結果になった。効果は今ひとつだけど、マスキッパを驚かせてピカチュウを離させるのには充分だった。ピカチュウはやっと自由の身となって、立ち上がったポッチャマの横に並ぶ。「行けるわよ!! コジロウ、もう1回あの攻撃を……」 ムサシがそう言いかけた時、マスキッパの体が急に崩れ落ちた。戦闘不能になった訳じゃないけど、マスキッパの体には火花が走っていて、マスキッパがそれに苦しんでいる。『まひ』している!「『まひ』しているのかマスキッパ!? いつの間に……!?」 そんなマスキッパの姿を見たコジロウが、驚いて声を上げた。 そういえば、ピカチュウのとくせいは『せいでんき』。触れた相手を『まひ』させる事があるとくせい。マスキッパは“つるのムチ”でピカチュウに触れたから、この『せいでんき』の影響を受けて『まひ』したんだ。相手が思うように動けないとなれば、こっちに有利!「ええい、こうなったらメガヤンマ、“げんしのちから”よ!!」 ムサシはヤケになったのか、力任せに指示を出す。メガヤンマが、ピカチュウとポッチャマに向けて“げんしのちから”を発射!「かわせ!!」「かわして!!」 あたしとサトシの声が揃った。それに合わせて、ピカチュウとポッチャマは飛んできた“げんしのちから”をかわしてみせた。これで安心……かと思ったら、“げんしのちから”が飛んでいく先には、ママ達の姿が! それに気付いたママ達は慌てて逃げるけど、ミホのパパとママが逃げ遅れている。このままじゃ、当たっちゃう!「危ない!!」 あたしは、そう叫ぶしかなかった。そしてミホのパパとママが気付いた時には、“げんしのちから”がもう目の前にまで迫ってきていた!「きゃあああああっ!!」 だけど、それは急に表れた別の何かに遮られた。ミホのパパとママの目の前で、爆発する“げんしのちから”。その爆発が消えるとそこには、仁王立ちしているミホがいた。あたしは当然驚いた。ミホが、パパとママをかばって“げんしのちから”を……!?「ミ、ミホ……!?」 ミホのママが、驚いてミホを見つめる。するとミホは、ゆっくりと振り向いた。「パパ……ママ……よかった……」 ミホはボロボロになっていたけど、それでも笑顔を見せている。無理に作っている事が見ているだけでわかる。「一体、どういうつもりなの!? あんたは、私達と何も関係は……」「あるよ……だって、あたしのパパと、ママなんだもん……」 言い返そうとしたミホのママに、ミホが答えると、ミホはそのままゆっくりと倒れた。そして、ミホの体は溶けて、青いメタモンの姿に戻った。その姿に、ミホのパパとママは、唖然としていた。「ニャース、メタモンが倒れたわよ!! これは見逃せないチャンスよ!!」「もちろん、ニャーだって見逃してないニャ!!」 ニャースはすぐにリモコンのスイッチを押す。すると、マジックハンドが倒れて動かなくなったミホに真っ直ぐ伸びていった! ミホが捕まっちゃう!「ポッチャマ、マジックハンドを止めて!!」「ピカチュウ、お前も行くんだ!!」 あたしはすぐにポッチャマに指示した。サトシもそれに続く。ポッチャマとピカチュウは、ミホに向かって伸びるマジックハンドを止めようと向かっていく。だけどそれは、マスキッパとメガヤンマの攻撃によって止められちゃった。これじゃ、マジックハンドを止められない! とうとうマジックハンドは、メタモンの姿のミホを容赦なく鷲掴みにした。そのままロケット団の気球へとマジックハンドは縮んでいく。「ニャハハハ!! これでメタモンゲットなのニャ!!」 ニャースが高らかに笑った。「ロケット団!! ミホを返しなさい!!」「へへーんだ!! そんな事言ってあたし達が返すとでも思っている訳〜?」 あたしが叫んでも、ムサシはあたしをからかうように答えるだけ。「よし、そうとなったら変な事される前に撤収するぞ!」「了解ニャ!!」 コジロウの言葉に答えて、ニャースがリモコンのスイッチを押す。すると、ゴンドラの横から大きなジェットエンジンが現れて、甲高い金属音と共に点火された。「待てロケット団!! 逃げる気か!!」「逃げて何が悪い!! これは戦略的撤収なのだ!!」「止められるものなら止めてみなさーい!! メタモンがどうなってもいいのならね!!」 サトシが叫ぶと、ムサシとコジロウにそう言い返されて、サトシは唇を噛むしかなかった。そのまま気球は加速を始めて、あたし達の前を遠ざかっていく。「今日は何だか、とってもいい感じーっ!!」 ロケット団は声を揃えて嬉しそうに叫ぶと、ロケット団の気球はとうとう見えなくなっていっちゃった。「くそっ、ロケット団め……!!」 サトシが唇を噛む。それは、あたしも同じだった、ミホが自分のパパとママをかばった事が原因だとは言っても、そこに付け込んで、ミホを奪っていったロケット団が許せない。ミホは絶対に、助けないと!「追いかけましょう!」「ああ!」 サトシにそう言うと、サトシはすぐにうなずいて、気球の後を追いかけて行った。オーキド博士やタケシがちょっと、待て、と止めようとしたけど、そんな事を耳にも留めないで。あたしも、そんなサトシに続けてロケット団を追いかけに行こうとしたけど、あたしは誰かの声で足を止められた。「どうしてあのメタモンを助けるの、ヒカリ?」 それは、あたしのママだった。「あのメタモンを助ける必要なんてないわ。あのロケット団とか言う奴らはどういう人達かは知らないけど、放っておけばいいわ。メタモンを捕まえてくれて、逆に好都合だったから」「ママ……!?」 あたしはその言葉に、もの凄い残酷さを覚えた。ロケット団がミホを奪っていった事を、好都合だったなんて言って見逃すなんて。それが悲しくもあったけど、それよりも許せない心の方が強かった。あたしの両手がわなわなとふるえる。あたしはママにこんな思いを抱いた事は、初めてだった。「ママ……何も知らないんだ……ミホの事なんて……!」 あたしは顔をうつむけて、そうつぶやいた。「ヒカリ……?」 ママがあたしの顔を覗き込もうとした。そんなママの顔を、あたしは右手で思い切りぶった。パチンと音が響く。ママの顔が、衝撃で横に向いた。あたしがママをぶつなんて、生まれて初めてだった。とにかくそれくらい、あたしは怒っていた。「ミホがニセモノだからって決めつけて、懲らしめようとするなんて、あたしは許さない!!」 あたしは心の中にある思いを全部解き放つように、はっきりとそう叫んだ。「ヒカリ、あなた一体……!!」 ママはぶたれた事を怒っているのか、あたしにそう言う。でもあたしは、怯まなかった。「ミホの心はまだ、あのメタモンの中で生きているのよ!!」 そう叫んだ途端、ママは静かになった。あたしは続ける。「確かに本物のミホは、旅の中で死んじゃったわ……だけど、死ぬ前にその心は、あのメタモンに移ったから、今はあのメタモンがミホなのよ……! 体がメタモンになっても、ミホはミホなのよ……! 人間じゃなくたって、あたしの大切な友達に変わりないのよ!!」 あたしの主張に、ママは目を丸くしたまま、何も答えない。あたしは続けた。「……だから、それでもニセモノだって言って、ミホを懲らしめようとするママを、あたしは許さない!! あたしは絶対に、ミホを助ける……もしママ達が邪魔するなら、わかってもらえるまで……!!」 あたしはそう言って、ママの目の前を走って後にした。当然、ミホを助けるために。ママ達がミホを懲らしめようとしたとしても、あたしはミホの友達として、ミホを助ける。そんな決意が、あたしの心にあった。そして、ママ達に、あたしが思っている事を理解して欲しい。そんな思いもあった。 オーキド博士が、ママ達に何か話していたけど、そんな事は気に留めなかった。ミホを助ける事の方が先だから。 * * * 気が付くと、あたしがいたのは透明なカプセルの中だった。外は森の中だった。ガラスの向こう側にはあたしを狙っていたあの、ロケット団の3人が、何やら食べ物を食べてにぎわっている。体が『すっぴん』に戻っていたから、あたしは体を元に戻す。カプセルの中は、あたしの体が入るほど充分なスペースはあった。「おい、メタモンが起きたみたいだぞ!」 すると、ロケット団の1人、コジロウがあたしの姿に気付いて、声を上げた。すると、ムサシとニャースも、あたしの姿に気付いた。「やっと目覚めたのね、メタモンちゃ〜ん……って、人に戻ってるじゃないの」「これじゃ、何だか人さらいみたいになっちまうな……俺達はあくまで、ポケモンを奪うロケット団だからな」「じゃああんた、そんな女の子の姿してないで、元のメタモンに戻りなさいよ!」 ムサシがいきなり、あたしにそう指図した。でも、そんな指図なんて、聞ける訳ない。あたしは『すっぴん』のままでいるのは嫌だし、それに何よりも……「嫌よ!! あたしは『すっぴん』になるとローテンションになっちゃうんだもん!!」「何よ!! あたしの命令が聞けないって言うのーっ!!」 あたしはきっぱりと断ると、ムサシはいきなりキレて、目の前で怒鳴り声を上げた。そしてカプセルのガラスを叩きまくるけど、コジロウとニャースにやめろ、と止められた。あたしは言いたかった事をもう1つ、言った。「それに、あたしはメタモンじゃないよ……ミホって名前がちゃんとあるのよ……!!」「何言ってるのよ!! あんたはメタモンなんだからメタモン以外の何者でもないわよ!!」「違う!! あたしはニンゲンよ……ニンゲンのミホよ……!! メタモンなんかじゃない……!!」 あたしはそう主張したけど、急に無力感に襲われて、膝が地面についた。 ――そのミホは、本物じゃないのよ。それは、ミホに成り済ましたメタモンなのよ。ヒカリの友達だった、ミホじゃないのよ。 ――そのミホは紛れもなくニセモノなのよ! ――本物のミホが死んだのなら、偽物以外に何だって言うんだ!! ヒカリンのママ、そしてあたしのパパとママの言葉を思い出す。あたしがどれだけ本物だって言っても、パパとママは認めてくれない。だって、あたしはメタモンだから。あたしがニンゲンだって言っても、その事実は変わらない。でも、あたしはミホなのよ……1人のニンゲンなのよ……!「あたしはニンゲンよ……ニンゲンよ、ニンゲンよ、ニンゲンよ……っ!」 気がつくとあたしは、思い切り泣きながら呪文のようにつぶやき続けていた。そんな事で、心が落ち着く訳じゃないけど、とにかくそう言っていないとあたしの心が変になりそうだった。完全に、あたしはローテンションになっていた。「ちょ、ちょっと……いきなり泣かれても困るんだけど……」 ムサシが戸惑った様子でつぶやいていた。そんなあたしの前に、ニャースが現れた。「そうだったのかニャ……おミャーはニンゲンになりたかったのかニャ?」 ニャースがいきなり、そんな事をあたしに聞いた。見ると、ニャースの目はあたしを憐れんでいるような目になっていた。さっきまで敵だったのが、まるでウソみたいに。あたしはゆっくりとうなずいた。「その気持ち、ニャーにはわかるニャ。ニャーだって、そうやってニンゲンになろうとしたんだからニャ」「え?」 あたしはニャースの言葉に驚いた。このニャースも、ニンゲンになろうとしていた? 確かにこのニャースがニンゲンの言葉をしゃべっていた事には驚いたけど……「それは、ニャーがまだ都会に住んでいた頃の話ニャ。ニャーが好きになった女の子のマドンニャちゃんに、『ニンゲンだったら好きになる』って言われたニャーは、必死でニンゲンになろうとして、2本の足で立つ練習と、ニンゲンの言葉の勉強を1人でしたのニャ。それは、とても辛い事だったニャ。でもニャーは長い長ーい時間をかけて、ようやくそれをモノにできたのニャ。そしてニャーは、胸を張ってマドンニャちゃんに告白したニャ。だけど現実は残酷だったニャ。ニャーの姿を見たマドンニャちゃんは『立ったり喋ったりするポケモンは気持ち悪い』って言って、ニャーはふられてしまったのニャ。ニャーはニンゲンになろうとしたために力を使い果たして、進化も新しいわざの習得もできなくなっていたニャ。そのままニャーは、ロケット団に入団してこうして……」 目を閉じながらそう語ったニャースは、いつの間にか話してる途中で少しだけど泣き始めていた。その泣き方で、語っていた事がどれだけ辛い事だったかが、ひしひしと伝わってきた。「そんな事があったのね……」 あたしの口から自然と、そんな言葉がこぼれた。ニャースはしばらく黙っていたけど、少しすると顔を上げて、ムサシとコジロウに言った。「ムサシ、コジロウ、ミホを解放してやるのニャ」「ええっ!?」 ニャースの突然の提案に、ムサシとコジロウは揃って驚いた声を出した。あたしも当然、驚いたけど。「どういう事だよ、ニャース!?」「このメタモンをボスにプレゼントして、スピード出世するんじゃなかったの!?」「ニャーも最初は、そう思っていたニャ。だけど、ミホの苦しみを知ったら、そんな事できなくなったニャ。ミホがボスにプレゼントされたら、ミホはニャーと同じように暗い道を通ってしまう事になるニャ……そんなニャーと同じ思いを、ニャーはミホに味わって欲しくないのニャ」 その言葉を聞いた瞬間、あたしはニャースはいい奴なんだって思った。どんな悪人も、根っからの悪人はいないって誰かが言っていたような気がするけど、それは本当だったんだね。「本当なの、ニャース!?」「ニャーは本気ニャ。ニャーはニャースだから、ニンゲンにはなれなかったニャ。けど、おミャーはメタモンニャ。どんなものにでも変身できるポケモンニャ。そんなメタモンが、本当のニンゲンになれないはずがないニャ」「ニャース……あんた本当にいい奴なのねーっ!!」 あたしは思わずニャースを抱き締めたい気持ちになったけど、カプセルがあるからそれはできない。だからあたしはカプセルのガラス越しに、ニャースに寄りかかるしかなかった。ありがとう、って言いながら、あたしは泣いていた。「おミャーは、ニャーと同じ道を辿ってはならないニャ。日の当たる場所で、明るく暮らすべきだニャ。辛い事はあるかもしれニャいが、その事を忘れないで……」 ニャースがそこまで言いかけた時、ニャースがいきなり乱暴に持ち上げられた。「ちょっと!! 何勝手に盛り上がってんのよ!! まだあたし達はニャースの考えを認めるなんて、言ってないじゃない!!」 それは、ムサシだった。「そうだそうだ!! 俺達ロケット団の志向を、ニャース1人で勝手に決めるな!!」 コジロウも続けて怒鳴る。「離すニャ!! ニャーはミホをボスにプレゼントしたくないのニャ!!」「じゃあ、スピード出世や役員就任の夢はどうなるのよ!! それを見ず見ず自分から捨てるなんて、おかしいんじゃないの!?」 ムサシとコジロウの主張に、おミャーら、とどんどん苛立ちの表情を見せていくニャース。するとニャースは、とうとうキレたのか、ニャースはムサシの手を振り解いて、両手のツメを鋭く伸ばした。「おミャーらがそんなに言うなら、ニャーにだって手はあるニャ!! “みだれひっかき”ニャ!!」 ニャースはいきなり“みだれひっかき”でムサシとコジロウの顔を引っ掻いた。ムサシとコジロウの顔に、引っ掻いた傷が浮かび上がる。痛みで声を上げるムサシとコジロウの前で、ニャースは背中を向けた。そして何も言わないまま、森の中へと消えていっちゃった。「あーあ、ニャース行っちゃったわよ……」「まあ、少し放っておけ。どうせまた寂しくなって、戻ってくるさ」 ムサシの言葉に、コジロウが答えた。 ニャースが何をしようとしているのかは、あたしにはわからない。だけど、あたしを助けるために動いた事は間違いない。あたしは、ニャースを信じたくなった。どんな奴なのかはあたしにはわからないけど、あたしはニャースが必ずやってくれると信じる。それにヒカリンだって…… * * *「くそっ、ロケット団の奴、どこに逃げたんだ……?」 森の中を歩きながら、サトシがつぶやいた。ミホを助けるためにロケット団を探し始めて、結構経ったけど、まだロケット団は見つからない。ムクホークやグライオンの偵察も、成果がない。一体どうしたらいいの、ってあたしも途方に暮れていた。「おーい!」 その時、森の奥から聞き慣れた声が聞こえてきた。だけど当然、ミホのものじゃない。声がした方を見ると、そこには森の草むらから突き出ている。白い旗が見えた。誰、とあたしは思ったけど、その旗が動いて草むらから出ると、その旗の持ち主が姿を現した。「ジャリボーイ、ジャリガール、協力して欲しいのニャ!」「ニャ、ニャース!?」 そこにいたのは、白旗を振るロケット団のニャースだった。協力して欲しいって、どういう風の吹き回し!? それとも、何か企んでいるの!?NEXT:FINAL SECTION
「くそっ、ロケット団の奴、どこに逃げたんだ……?」 森の中を歩きながら、サトシがつぶやいた。ミホを助けるためにロケット団を探し始めて、結構経ったけど、まだロケット団は見つからない。ムクホークやグライオンの偵察も、成果がない。気球で逃げたはずだから、すぐに見つかると思ったのに、こんなに手こずるなんて思っていなかった。あいつら、逃げる事はうまいんだから……一体どうしたらいいの、ってあたしも途方に暮れていた。「おーい!」 その時、森の奥から聞き慣れた声が聞こえてきた。だけど当然、ミホのものじゃない。声がした方を見ると、そこには森の草むらから突き出ている。白い旗が見えた。誰、とあたしは思ったけど、その旗が動いて草むらから出ると、その旗の持ち主が姿を現した。「ジャリボーイ、ジャリガール、協力して欲しいのニャ!」「ニャ、ニャース!?」 そこにいたのは、白旗を振るロケット団のニャースだった。協力して欲しいって、どういう風の吹き回し!? それとも、何か企んでいるの!?「なんでお前がここにいるんだよ!」「さては、何か企んでいるわね!」 サトシが真っ先に、ニャースに突っかかった。あたしもいきなりニャースが目の前に出てくるなんて、何か企みがあるのかもしれないと思って、ニャースを疑って聞いてみた。ピカチュウとポッチャマも、同じようにニャースに問い詰めている。「ま、待つのニャ! この旗が見えないかニャ!」 するとニャースは強調するようにあたし達の目の前で白旗を振る。「今のニャーは、おミャーらと争う気はないニャ! おミャーらは、ミホを助けに来たんニャら、ニャーが力を貸すニャ!」「ミホを、助ける気なの……!?」 あたしは驚いてニャースに聞くと、ニャースはうなずいた。「とか言って、俺達を騙すつもりじゃないだろうな?」「そんな事ないニャ! ニャーはミホのニンゲンになりたいって気持ちに共感できたのニャ。だからニャーは、こんな事をした自分に罪悪感を持ってミホを解放しようとしたんニャけど、ムサシとコジロウに反対されて……」「ニャース……」 少しうつむいて喋るニャースの目付きは、演技や嘘をついているようには見えなかった。ミホの気持ちに共感して、ミホを助けようとしている事は、間違いなくニャースの本心だと、あたしは確信した。「という訳ニャ、ジャリボーイ、ジャリガール、ここは一時休戦しておミャーらに力を貸すニャ!」 ニャースは目の前で土下座までして、そう言った。「……わかったわ」 あたしはニャースの言葉を受け入れる事にした。サトシの言う通り、あたし達を騙そうとしているかもしれないけど、それがわかったらその時はその時。今はニャースを信じなきゃ。あたしは思った。「そこまで言うなら、俺もお前を信じるよ」 サトシも、ニャースを信じてくれたみたい。サトシだけニャースの事を信用しなかったらどうしようって思っていたけど。「ありがとニャ!」 ニャースは顔を上げて、顔を上げて嬉しそうな顔を浮かべた。そして立ち上がると、早速話し始めた。「ニャー達が隠れていた場所まで、ニャーが案内するニャ」 ニャースは早速歩き始めた。あたし達も、その後をついて行った。FINAL SECTION ミホ救出大作戦! ニャースについて行く形で、あたし達は森の中を歩いて行く。道路なんてないから、どこをどんな法則で歩いているのかは、あたしにはわからない。ポケモンにしかわからない道っていうのもあるのかもしれない。「なあニャース、本当にこの道で合ってるのか?」 サトシがそんな疑問を口にする。ニャースが案内する場所になかなか着かないから、それが気になっているのかもしれない。「心配無用ニャ! ニャーの言葉を信じるニャ!」 ニャースは自信満々に胸を張る。「まさか、俺達を騙して変な場所へ連れて行こうとしてるんじゃないだろうな?」「ニャ!? 何言ってるのニャ!! ニャーはそんな事しないニャ!! 男に二言はないのニャ!!」「……冗談だよ」 サトシが変な質問をしてニャースを脅かすと、サトシは少し笑って言った。ニャースは変な事言うんじゃないニャ、とほっと胸をなで下ろした。あたしも一瞬、サトシはニャースの事信用したんじゃなかったの、って思っちゃったけど。 少し歩くと、森の中に誰かの影が見えた。ニャースが人差し指を口の前に立ててしっ、と言って足を止めた。あたし達も近くにあった木の陰に隠れて、様子を見てみる。そこにいたのは、間違いなくムサシとコジロウだった。その近くには大きなカプセルがあって、そこにミホがうずくまって座っている。「ロケット団……!」 サトシがつぶやいた。2人は何か話をしている。あたし達はその言葉に耳をそば立てて聞いてみた。「なあ、こいつをデリバード便で送るのはいいけど、このままだったら大きすぎてデリバードじゃ運べないんじゃないのか?」「……うーん、考えてみたらそうね。こいつはメタモンに戻る事は嫌がってるし……この際、モンスターボールに入れて送っちゃう?」「そうだな! そうすれば運びやすくなるし、何より我らロケット団のポケモンになる事が確実なものになる!」「よし、こうなったら早速……!」 2人は早速行動を始めた。ミホをモンスターボールに入れる!? そんな事したら、ミホはロケット団のポケモンに本当になっちゃう!「なんて様ニャ……ミホを助けるためには、すぐにでも2人を止めなきゃならないニャ」 ニャースがつぶやいた。「で、どうするつもりなんだ、ニャース?」「もちろん、作戦は考えているニャ。まずはおミャーらが正面から2人に向かって行って、2人とポケモンバトルをするのニャ。それで2人の気を逸らしている隙に、ニャーがカプセルに近づいて、ミホを助けるのニャ」「あたし達は、あの2人の気を逸らせばいいのね」 さすがは毎回いろいろな手を使ってあたし達に仕掛けてくるロケット団のニャースだけあって、こういう作戦を立てる事はうまいのね。こういう人がいつも味方にいれば、心強い事間違いなしなんだけどなあ。あたしはそう考えずにはいられなかった。「よし、じゃあ早速作戦開始だな」 サトシの言葉に、あたし達はうなずいて、行動を開始した。あたしとサトシは真っ先に、ムサシとコジロウの所に飛び出した。「さあてメタモンちゃん、おとなしくモンスターボールに入ってもらうわよ……」 その時ムサシはミホが閉じ込められたカプセル越しに、ミホにそう呼び掛けていた。ミホは怯えた表情で、あんたなんかには捕まりたくない、って言ってるけど、それはただの悪あがきにしかならない。「待て、ロケット団!!」 サトシが叫んだ。それに気付いたムサシとコジロウがこっちを向いた。「ジャ、ジャリンコ!!」「どうしてここがわかったんだ!?」「ヒカリン……!!」 驚くムサシとコジロウ。そしてあたしを見て嬉しそうな表情を見せるミホ。「ミホは返してもらうわよ!!」「へんっ!! ここまで来たのに今更返す訳、ないじゃないの!!」 あたしが言っても、ムサシはやっぱりそう答えて断る。「悔しかったら、力ずくで取り返してみろ!!」 コジロウがあたし達を挑発してきた。まさか向こうから仕掛けて欲しいって言ってくるなんて、思わなかった。だけどあたし達にとっては、逆にそれが好都合なんだけどね。「それなら、望み通りにやってやるぜ!! ヒカリ!!」「ええ!!」 サトシの言葉に答えて、あたしはモンスターボールを取り出した。そして、一斉に投げた。「グライオン、君に決めた!!」「パチリス、お願い!!」 サトシが繰り出したのは、グライオン。対してあたしが繰り出したのは、パチリス。「こっちも行くわよ!! ハブネーク!!」「マスキッパ、お前もだ!!」 ムサシとコジロウもモンスターボールを投げて、ポケモンを繰り出した。ムサシが繰り出したのは、ハブネーク。コジロウはマスキッパだけど、やっぱり……「いてーっ!! 違う、あっちだ、あっちだってーっ!!」 マスキッパはすぐに反転してコジロウの所へ戻ってくると、すぐにコジロウの頭に噛みついた。そのままもがき苦しむ(?)コジロウ。またマスキッパのいつもの癖。「ヒカリ、俺達の目的は時間を稼ぐ事だ。なるべく倒さないようにして、俺達に注意を引き続かせるぞ」「オッケー!」 あたしはサトシとそうやり取りをした後、パチリスに指示を出した。「パチリス、“ほうでん”!!」 あたしが指示すると、パチリスは一気に電撃を周りに放つ。飛んで行った電撃は、ハブネークとマスキッパに命中。マスキッパには効果は今ひとつたっけど、それでもいい。相手を倒す事が、目的じゃないから。グライオンにも攻撃は当たって、グライオンは一瞬驚いたけど、グライオンはじめんタイプだから、でんきわざは効かないから安心。「グライオン、“すなかけ”だ!!」 今度はサトシが指示すると、グライオンは地面すれすれを飛びながら、ハブネークとマスキッパに地面の土をかける。ハブネークとマスキッパの周りが、土煙で目をくらまされて、2匹は戸惑う。「ええいハブネーク、“ポイズンテール”よ!!」「マスキッパ、“つるのムチ”だ!!」 ハブネークとマスキッパが反撃する。ハブネークは“ポイズンテール”で、マスキッパは“つるのムチ”で攻撃してきた。「飛び上がってかわせ!!」「走ってかわして!!」 あたしとサトシが指示すると、グライオンは大きく上昇して向かってきたハブネークの“ポイズンテール”をかわす。そしてパチリスも、足の速さを活かして、マスキッパの“つるのムチ”をかわしてみせた。飛び上がったグライオンにはハブネークはどうする事もできない。そしてマスキッパは、チョコマカ動き回るパチリスのスピードに“つるのムチ”がついて行けない状態に。ピカチュウも手こずったほどの足の速さは、こういうかく乱戦法じゃやっぱり心強い。「ねえ、何だかジャリンコ達、いつもとやり方が違うような気がしない?」「ああ、いつもだと力押しで来るのに、今回は何だか……」 ムサシとコジロウが、そんなやり取りをしていた。あたし達の戦法がいつもと違う事に、2人も薄々気付いているみたい。「いつもと違ったっていいでしょ! パチリス、“てんしのキッス”!!」 あたしは2人のやり取りに答えてから、パチリスに指示した。パチリスはハブネークとマスキッパに投げキッスをする。すると、ハブネークとマスキッパは、途端にそれに目を奪われて、『こんらん』状態になった。そのまま2匹は、訳もわからないままお互いに攻撃し合うようになっていた。「ちょ、ちょっとハブネーク、何やってるのよ!!」「マスキッパ、そんな事してる場合じゃないだろ!! 敵はあっちだぞ!!」 ムサシとコジロウが何度も呼びかけるけど、ハブネークとマスキッパの『こんらん』状態は、治まる気配がない、そのままお互いに攻撃を続けるばっかり。これで2人も、焦っているはず。これなら、時間稼ぎにはもってこい。後は、ニャースがうまくやってくれれば……! * * * あたしは、ヒカリンとサトシのロケット団とのバトルを、固唾を飲んで見守っていた。 2人はなぜか、ロケット団に対して積極的に攻撃していない。むしろ、かく乱戦法を中心に、相手を困惑させる戦法を取っている。ヒカリン達のいつもの戦法じゃない。それでチャンスを見て一気に攻撃するつもりなのかな? とにかく、あたしとしては、あの2人をさっさと片付けて助けに来て欲しかった。「あーもう、ヒカリン達何やってるのよ……! 早く助けに来ないと、あたしローテンションになっちゃう……!」 あたしの口から自然と、そんな言葉がこぼれた。 その時、コンコンとカプセルのガラスを軽く叩く音が聞こえた。比較的足元の方から聞こえてくる。見るとそこには、あの時出て行ったきりだったニャースの姿があった。「ニャース……」 あたしがそう言おうとした時、ニャースは人差し指を口の前に立ててしっ、と言った。するとニャースは、カプセルのスイッチを器用な手付きで押して行く。すると、カプセルが開いた。「やった! ありがとうニャース! これであたしもハイテンショーン!」 あたしはニャースにお礼を言うと、思わず声を上げちゃった。ニャースが静かにするニャ、って言ったけど、そんな事は構わなかった。「あっ!! メタモンが逃げてる!!」「ってニャース!! お前が逃がしたのか!?」 すると、ポケモンバトルをしていたムサシとコジロウが、あたしに気付いて声を上げた。「ミホ! カプセルから出られたのね!」「作戦は成功だな!!」 ヒカリンとサトシも、嬉しそうな声を上げた。「へへーんだ! あんた達の思い通りになんか、行かないんだからね! ね、ニャース?」「その通りだニャ。これでムサシとコジロウも、あきらめがついたんじゃニャか?」 あたしとニャースが言うと、ニャースも得意気にムサシとコジロウに言い放った。だけどニャースの言う通りにはならなかった。「くーっ!! こうなったら力ずくでも、メタモンを取り返してやるんだから!! ハブネーク!!」「ニャースめ、謀ったな!! 三味線にしてやるから覚悟しろ!! マスキッパ!!」 ムサシとコジロウは、逆にカンカンに怒って、ハブネークとマスキッパに指示した。さっきまでパチリスの“てんしのキッス”でなっていた『こんらん』が治っていて、こっちに真っ直ぐ向かってきた!「逃げるのニャ、ミホ!!」「うん!!」 ニャースにそう言われたあたしは、すぐにその場を飛び出した。こっちに向かってくるハブネークとマスキッパをうまくかわして、ヒカリンとサトシの所に行った。だけど、ハブネークとマスキッパはすぐに反転して、あたしを追いかけてきた! やばい! このままじゃ……!「グライオン、“シザークロス”!!」「パチリス、“スパーク”よ!!」 目の前にいるヒカリンが指示を出した。すぐにグライオンは“シザークロス”を、パチリスは“スパーク”を使って、追いかけてきたハブネークとマスキッパを迎え撃った! 命中! そのまま弾き飛ばされるハブネークとマスキッパ。「ヒカリン!!」「ミホ!!」 あたしはヒカリンに飛び込んで、思わず抱き付いた。そんなあたしを、ヒカリンは優しく受け止めてくれた。「よかった……もうダイジョウブだから……ママ達があんな事を言っても、あたしは最後までミホの味方だから……!」「うん……ありがとう、ヒカリン……!」 ヒカリンの言葉が嬉しかった。あたしはもう嬉しくて嬉しくて、泣き出しそうになった。だけど、今はそんな事をしている場合じゃなかった。「ハブネーク、“ポイズンテール”!!」「マスキッパ、“かみつく”攻撃だ!!」 ムサシとコジロウの指示を受けたハブネークとマスキッパが、あたしを狙って攻撃を仕掛けてきた!「来たっ!!」「任せてミホ!! パチリス!!」「グライオン!!」 ヒカリンとサトシが、指示を出そうとする。パチリスとグライオンも、いつでも指示を受けられるように身構えた。 その時。 あたし達の後ろから、いきなり炎と水流が飛んできた。それは、ハブネークとマスキッパの目の前に降り注いだ。それに驚いたハブネークとマスキッパは、突撃を止めて下がった。あの攻撃が、2匹を止めた。という事は、味方?「誰!?」 ヒカリンが振り向くとそこには、信じられない人だった。 そこにいたのは、今まであたし達をニセモノだって言っていた、あたしのパパとママ、そしてヒカリンのママがいたんだから! そして、ジュンやオーキド博士の姿もある。さっきの攻撃は、パパとママのオーダイルとバクフーン……!?「パパ!? ママ!?」 あたしが驚いて声を上げるのを尻目に、あたしのパパとママはオーダイルとバクフーンを連れて、ロケット団の前に出る。そして言った。「あんた達、私達の娘に何かするつもりなら、許さないよ!!」「そのつもりなら、俺達が相手になるぞ!!」 その言葉は、さっきまでとは違った。あたしの事を、娘だって言ってる……!?「パパ、ママ……!?」 すると、パパとママがこっちに顔を向けた。それは、あたしの知ってる、優しい顔だった。「ミホ、ごめんなさい。あなたがメタモンだからって言って、あんな事言っちゃって」「ヒカリちゃんにあんな事を言われて、はっとしたよ。ミホは今でも生きているんだと」「パパ……ママ……うわああああっ!!」 あたしの事を、受け入れてくれた。そんな優しい言葉を言われた事が、嬉しくて嬉しくて、思わず泣き叫びながら、あたしはパパとママに飛び込んだ。そんなあたしを、優しく受け止めたパパとママ。「すまない、ミホ……あんなひどい事を言ってしまった事を、許してくれ……」「いいよ……あたし全部許すよ……」 パパが謝るけど、あたしはすぐに許した。こうなったのなら、その事を謝らなくたって、あたしは許すつもりでいたから……「ヒカリ、ごめんなさい。あなたにあんな事言われて、私も目を覚ましたわ」「ママ」 そしてヒカリンの前には、ヒカリンのママがいた。「それに、オーキド博士にも言われたからね。『あのメタモンはすっかり人間になってる』って」「メタモンはさっきも言った通り、コピーした対象の記憶もコピーするといわれておる。それが正しければ、あのメタモン……もといミホは、あまりにミホとしての生活が長かったために、ミホの人格がメタモン本来の人格と融合してしまったんじゃないかと思ったんじゃ。だから、ミホは正真正銘の人間じゃとわしは思ったんじゃよ」 ヒカリンのママの隣にいるオーキド博士が、そう説明した。あたしはどんな事を言っているのかはわからなかったけど。そんな事言われちゃ、俺も納得されたよと、ジュンも言葉を続けた。「くーっ!! さっきまで対立してた奴らが仲直りするなんて……」「こうなったら破れかぶれだ!! 力ずくでそのメタモンをゲットするぞ!!」 そんなムサシとコジロウの叫び声で、あたしは現実に戻された。見ると、マスキッパとハブネークが、いつでも攻撃できる体勢になっている。 あたしはパパとママと、目を合わせた。そして、何も言わないでうなずいた。言わなくたってわかる。一緒にロケット団をやっつけるって。「なら、私達が相手をするわ!」 ママが言うと、オーダイルとバクフーンが前に出た。鋭い視線でにらむ2匹。その剣幕に、ハブネークとマスキッパは怯んで少し後ずさりする。「こうなったら、こっちもフル動員よ!! メガヤンマ!! ソーナンス!!」「マネネ、お前も行ってくれ!!」 ムサシとコジロウが言うと、メガヤンマとソーナンス、そしてマネネが目の前に出た。ハブネーク、マスキッパも含めて、合計5匹。「さあ、あたしもやっちゃうよーっ!!」 あたしはそう言って、1枚のコインを取り出した。そのコインに描かれているポケモンは、とうみんポケモン・リングマ。その絵を見てから、あたしは腕を目の前でクロスさせて、叫んだ。「“へんしん”!!」 そう叫んで、両腕を下ろすと、あたしの体が一瞬『すっぴん』に戻って、リングマの体に作り変えられる。体の色は緑色だけどね。そしてそのまま、右手を突き出して軽く手招きしながら、あたしは言った。〈ふふん、どっからでも来なさい!〉 あたしが言うと、ソーナンスが真っ先に怒って、やけくそになったようにこっちに飛び出してきた。あたしはそんなソーナンスの頭を、腕で受け止めてやる。そのままソーナンスは前に進めないまま、腕をジタバタさせる。そしてそのまま、あたしは左手で“シャドークロー”を作り出した。「ソーナンス、何やってるの!! “カウンター”よ!!」 ムサシが指示するけど、ソーナンスは腕をジタバタさせるだけで、何もしない。当たり前よ、だってあたしさっき、“ちょうはつ”を使ったんだもん!〈はあっ!!〉 そのままあたしは、“シャドークロー”を叩き込んだ! 効果は抜群! 勢いよく弾き飛ばされたソーナンスは、地面に叩きつけられてノックアウト。まずは1匹!「オーダイル、“ハイドロポンプ”!!」「バクフーン、“ふんか”!!」 オーダイルとバクフーンが、“ハイドロポンプ”と“ふんか”を発射! 2匹の攻撃は、ハブネークとマネネを容赦なく呑み込んだ。そのままハブネークとマネネは、一撃でノックアウト。「つ、強い!?」「そんなあ!! 俺のマネネが!!」 動揺するムサシと、ノックアウトされたマネネを見て、叫ぶコジロウ。〈次はこっちよ!!〉 あたしは残ったマスキッパとメガヤンマに狙いを定めて、真っ直ぐ走って行った。「ええいメガヤンマ、“ぎんいろのかぜ”よ!!」「マスキッパ、“タネマシンガン”!!」 ムサシとコジロウの指示で、メガヤンマとマスキッパがこっちに“ぎんいろのかぜ”と“タネマシンガン”で攻撃してきた。それがあたしに容赦なく当たったけど、あたしは平気。腕を前で組んで攻撃を防ぐ。そのまま怯まずに突っ込み続ける。そして、両手にパワーを込めると、腕に炎が着いた。そう、これが“ほのおのパンチ”!〈うおりゃああああああっ!!〉 あたしは腕を広げてメガヤンマとマスキッパに同時にパンチを浴びせた! 効果抜群! 2匹は簡単にボールのように弾き飛ばされて、簡単にノックアウト。「そ、そんな……!?」「これてもしかして……!」 ムサシとコジロウは完全に、動揺を隠せない状態だった。そんな奴らに、最後の攻撃!〈さあ、やっちゃうよーっ!!〉 あたしは口を開けて、全身のパワーを集中させる。それが、口にどんどん溜まっていく。そう、リングマが最大奥義、“はかいこうせん”!〈はあああああああっ!!〉 溜めたエネルギーを一気に解き放して、光線にして発射! その光線は、容赦なくロケット団を飲み込んだ! そして大爆発! そしてロケット団は、空に向かって吹き飛ばされる。「あーもうっ!! あと少しって所まではうまく行ったのにーっ!!」「それもこれもニャース、お前のせいだぞ!!」「これでよかったのニャ……ミホはこれで、自由の身ニャ……」「もうっ、やな感じーっ!!」 そんな言葉を最後に残して、ロケット団は空の彼方へと消えていった。「やったぜ!!」 サトシが声を上げた。〈やったあ〜!! 勝ったあ〜っ!!〉 あたしも思わず、飛び跳ねて喜ぶ。パパとママがあたしを認めてくれて、一緒に戦って得た勝利は、やっぱり特別だね。 * * * こうして、ミホは無事にみんなから本当のミホだって認められた。一時はどうなるかと思っていたけど、よかったよかった。 あたしがスイレンタウンへの出発準備のために家で支度していると、突然ミホが家にやってきた。こんな時に一体何があったんだろうって思ったけど、玄関で迎えた時のミホの言葉には驚かされた。「ヒカリン。あたし、旅に出るから!」「ええっ!?」 旅に出るって言っても、ミホはポケモントレーナじゃないから、もう旅をする理由なんてないはず。少なくともあたしは、そう思っていた。「だってあたし、パパとママの本当の子供じゃないし。だから、本当のニンゲンになるために、旅に出ようって思うの」 ミホはまだ、自分が人間じゃない事を気にしているの? さっきのごたごたで、全部解決したって思っていたのに。「いいの? これからは家にいられたのに……」「いいのいいの。それに、ニンゲンの姿での旅っていうのも面白いからね。だから、家の閉じこもっているのももったいないって思ったの」 サトシの質問に、ミホはいつものノリで答える。「もしかして……まだ、気にしてるの? 自分がポケモンだって事……?」 あたしは気に障る言葉になるんじゃないかと思いながらも、素直に聞いてみた。だけどミホはその質問を聞いて、笑みを返した。「それは仕方ない事よ。あたしがニンゲンじゃない事は事実なんだから。その事はもう気にしなくていいよ、ヒカリン」「そう……よかった」 あたしはとりあえず、ほっとした。ミホはもう、自分が人間じゃないって事に、自分なりの決着をつけているんだ。それならきっと、ダイジョウブ。「それなら、俺達ともまた会えるかもしれないって事だな」「うん! タケシの手料理も、今度会ったら食べさせてね! じゃ、またねヒカリン!」 タケシの言葉にそう返すと、ミホは手をあげてあたし達に背中を向けた。「じゃあなー!」「気を付けて行けよー!」「変な奴らに捕まらないようにねー!」 あたし達も手を振りながらそう言うと、ミホも手を振って返してくれた。そして、ミホの姿はどんどん小さくなって、見えなくなった。「よーし、ミホだって目標見つかったんだから、あたしも負けてられないわね! ポッチャマ、スイレンタウンのコンテストに向けて、あたし達もがんばりましょ!」「ポチャマ!」 あたしがポッチャマにそう言うと、ポッチャマもはっきりと答えてくれた。 ミホだってがんばってるんだから。あたしもがんばらないとね! あと1つのリボンをゲットするために! あたしは改めて気合を入れた。 こうして、あたし達の旅は、まだまだ続く。続くったら、続く……STORY35:THE END