タイトル:コードギアス 追憶のエミリオ pastmission 陳情 |
SF |
一年半前。
サンクトペテルブルグ。
コープランド伯爵家。
ソファに深々と腰掛けながら、ゆったりとした調子でくつろいでいる二人の青年。
「…とまあ、それがソフィアから聞いた話だが。どう思う。従兄貴?」
「噂のバーンスタイン家の暗殺令嬢か。とんでもない大物が転がり込んできたな。さてさて。これが果たして…」
「吉と出るか凶と出るかかい?」
「まあ。それにしても意外だったね」
「何がだよ」
「君が妹君の頼みを僕に取り次ぐなんてね」
「おいおい。誤解しないでくれ。アイツとその御袋を嫌ってたのは死んだ俺の御袋だ。俺じゃない。まあ御袋の毛嫌いぶりは俺が見ても普通じゃなかったからな。だからその反発でアイツが俺も一緒に毛嫌ったところでしょうがない」
「叔母上か。懐かしいな」
「ああ。従兄貴も憶えてるだろ。まあ御袋にとっちゃアイツら母子だけじゃない。この家に嫁いだのも、俺みたいなガサツ息子を産んだのも何もかも気にいらなかったからな。まあ御袋だったら、たとえ皇后や皇帝、あるいは神になっても満足なんてしなかっただろうがよ」
「そこまで言うかね。生みの親だろ」
「本当だからしょうがねえじゃねえか。あれじゃ親父が他の女に逃げるのも普通だぜ。それにしても…」
「しても?」
「いや。アイツの御袋も知ってるが。どこからどう見ても大人しくて御袋とは正反対の女だったぜ。まあそこが親父の気に入ったとこだったんだろうが。そこからどこでどうしてあんな気の強い跳ねっ返りが生まれたんだか。まるで…」
「同じ腹から生まれた本当の妹?」
「まあその通りだ。もし本当だったらもっと派手にやり合ったかもな」
「彼女が帰る気になったのは、やはり君の母君が亡くなったからかね」
「かもな。それでもやはり直接の切っ掛けは、あの御令嬢に会ったからだろうぜ」
「同じ庶腹というのもあるかな」
「あるいはな」
「それにしても…」
「言いたい事は分かる。どうして俺がそこまでアイツにしてやるかだってんだろ」
「まあね」
「言いたい事は分かるぜ。この世界の人間として俺が甘くて脇が甘いってんだろ」
「…」
「そんな事は知ってるよ。でもな。従兄貴。俺は夜は気持ち良く寝たい人間なんだ。ビクビクして生きるくらいなら寝首を掻かれた方がマシだ。それについて後悔は無いぜ。今のとこはな」
「今のとこはか」
「ああ。実はあと一つ理由がある」
「なんだい」
「俺の興味はむしろ従兄貴だ。知ってるぜ。オルシンガムと最近よく会ってるのは」
「ほう」
「とぼけるなよ。大公家のインナー連中が従兄貴を次のヴェランス大公に推してるのも知ってる」
「…」
「従兄貴としてはやりやすいように今までいろいろと放置してたんだろうが。そろそろ潮だと思うぜ」
「…」
「だからあの御令嬢を紹介する気にもなったんだ。従兄貴なら、ああいう危険なタマをどう使うのかってな。それはあの御令嬢だけじゃない。俺についてもだ」
「…分かった。で、彼女たちについてはどうしているかね?」
「いま郊外の空き家で身支度をさせてる。まさかあの格好のままで来させるわけにもいくまい」
「いま空いていて、自分の裁量で世話出来そうなのはスモーリヌイだ。あそこはどうかね」
「おいおい。シャレがキツイぜ。従兄貴。殺し屋と娼婦の更生には修道院がお似合いってか?」
「ふふふ。まあそうなるかな」
「それにあそこは不法占拠の連中が…なるほど、まずそこで試そうってのか。従兄貴」
「自分の『領地』を治める事が出来るかどうか。それこそが『貴族』の第一歩であり第一条件だ。違うかね。ローランス?」
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JIN 2019年06月29日 (土) 17時25分(83) |
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