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タイトル:コードギアス 追憶のエミリオ  PROLOGUE 血の聖夜 [ SF

慌てて大広間に再び飛び込んでくる騎士。


「!!」


その眼前に広がる光景。


夥しい血を流し、床の絨毯を汚しながら、無残に転がっている多くの貴族。


ある者は食事用のナイフで頚動脈を切り、ある者同士はフォークで互いの脳天を貫き合い、ある者は千切ったカーテンで首を吊っている。


そして主催のバ−ンスタイン侯爵は…語りたくもない。


一瞬大きく驚いた顔をしつつ、次の瞬間、大きく溜め息を付く騎士。

正面に立つ皇帝に近づく。


「おい。一体どうした? 『従え』させるんじゃなかったのか?」


それに対し、大きく肩を大きく怒らせながら、異様な興奮状態でようやく答える皇帝。


「…こいつらは…」


「ん?」


「こいつらは…ナナリーを…ナナリーを侮辱したんだ!」


肩を竦めて見せる、傍らのフードの女。


改めて突く溜め息。そうだ。こういう奴だったなという感じで。


その態度に苛立つ皇帝。


「なんだ。言いたい事があるなら言え!」


「別に。とにかく『こうなった』からには、これをむしろ生かす戦略もあるんだろうな。何十通りも」


「当然だ! ジェレミアを呼べ! こいつらの家屋敷を片っ端から押さえさせるんだ!」


「家族もか?」


「当然だ! ああそうだ。『あの女』はどうした!?」


「逃げられた」


「ほお?」


逃がしたんじゃないのかとばかりの、探るような目。


「…」


好きに考えろとばかりに、返される目。


しばしの対峙の後、それに対して初めて口を挟むフードの女。

いや。今はフードを上げて長い髪を靡かせている。


「で。もう一人の令嬢の方はどうする? アレから『聞き出し』たんだろ。今夜の事は?」


「まだペンドラゴンにいないのを祈る事だな」


それ以上は知らんとばかりの皇帝。


改めて肩を竦める女。


そんな二人に背を向け、剣を抜き放つ騎士。

まだ呻き続けている貴族たちの急所に向けて次々と突き立て、静かにさせていく。


「何をしている?」


振り返る事無く、作業を続ける騎士。


「『こういうの』を楽しむ趣味でもあるのか?」


「・・・!」


勝手にしろとばかりに出て行く皇帝。後に続く女。


それを顧みることなく、剣先を突き立て続けていく騎士。





(…これが様々に世に言う「血の聖夜」事件の真相だ。結局。俺は彼女とギアスの事をルルーシュに言わなかった。言ったところで変に意固地になって事がより面倒になるとしか思えなかったからだ。一応、俺なりに調べても見たが、彼女の事について詳しく知っていたのは侯爵だけらしく、死んでしまったからにはそれ以上追う事が出来なかった。二人の話を聞くに、ギアスの事を侯爵は知らなかったようだが、それだけに謎は一層に深まる。C.C.の様子から見ても、彼女が関わっている可能性は低い。こうなってくると嚮団を一切合財に消してくれた事も大きく痛い。その後の俺とルルーシュの物語は周知の通り。彼女の件は影響が無かったように見えるが、本当のところは分からない。彼女の行方についてもしばらくは分からなかったが、ようやくあの夜から二年後に知る事になる。あの極寒の大地で…)

JIN 2018年08月10日 (金) 23時07分(8)
 


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