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タイトル:コードギアス 追憶のエミリオ  pastmission  略奪 SF

一年半前。


北ユーラシア某市。


とある街外れの一角の建物。


その中の一室。


柄の悪い男たちが多くひしめき、二人の少女を取り囲んでいる。

いかにも好色な表情で嘗め回すかのような視線の数々。


「今度の獲物はこいつらか」

「ええ。港から歩いてくるのを捕まえました。密航者っぽいですねえ」

「なかなかに品が良さそうじゃないか」

「最近は多いからな。新大陸から流れ込んでくる没落貴族とか」

「前から来てる連中もな。ソフィアみたいに自棄で自分からこっちに飛び込んでくるのもいるし。まったく今は上玉に不足しない最高の時期だぜ」


やがてそっと突き出される手。

それが正面の金髪の少女の髪に触れる。


その時、その手を思い切り弾く、もう一人の手。

「ちょっとー! ミンのエミリー様に触んないでよー! 汚い手でー!」


「なんだと! このアマ!!」

「おいおい。乱暴するな。大事な商売物だぞ」

「それになかなかに可愛い声じゃねえか」

「突っ込んでやったらどんな声すんだろうな」

「くー。たまんねえ」

「マニアな奴等が喜ぶんだよなあ。こういうの」

「じゃ。おまえらは先にそっちをやれ。俺はこっちの愛想の無いので我慢してやる」

「ひでえや。ボス。上玉は自分かよ」

「まあ待ってろ。次は回してやる。おまえらは先にそっちのマニア向けのを…」

話しながら、改めて差し出される片手。

その指先が胸元に届こうとする、その次の瞬間!

その相手から突き出された、鋭い指がいきなり喉に食い込む!

「ぐわー!?」


相手の悲鳴と同時に、すかさず天井に向かって飛ぶ、金髪の少女!

バック転で天井の照明を蹴り砕き、辺りを暗闇にする!


「ああ!?」

その中で轟く銃声。

響く悲鳴。

高まる歓声。

「やれー! エミリーさまー! やっちゃえ! やっちゃえー!!」




数十分後。


完全に静寂と流血が支配する建物。

その一室でカチャカチャと響く音。


「えーと。こーしてこーして。こーやって。ああ開いた開いた。開きましたよ。エミリーさまー」

返り血にベッタリと塗れているくせに、そんなことお構いなしに楽しげな声を発する少女。

「へっへえー。やーぱ貯め込んでんですよねー。こーゆー連中ー」

金庫の中身の現金とか宝石とかを鷲掴んで、次々と可愛らしいアップリケの付いたリュックの中に放り込む。

「これでサンクトペテルブルクまで行けそーですねー。ちゃーんと身支度も整えてー」

顔にまで掛かっている血にも一切頓着することなく、楽しげに鼻歌まで歌いながら、中身をギッシリ詰め込み続ける。

「こっがねむしーはー♪ 金持ちだー♪ エッミリーさまもー♪ 金持ちだー♪」


それをあくまで無言で見下ろし見つめる、もう一人の少女。

「…」

やがて背後の気配を感じて振り返る。


扉の向こうから恐る恐るといった感じで覗き込む、複数の女性。

その格好から明らかに娼婦と分かる。


「あ、あなた方は…一体…?」

いかにも恐る恐るといった表情。


それに対し、よいしょとリュックをしょった上で、進み出る饒舌の少女。

「えー。おっほん! あー。ここにおわす御方をどなたと心得る! 恐れ多くも神聖ブリタニア帝国の超名門バーンスタイン侯爵家の御令嬢! エミリア様なるぞ! 控えおろうー!」


ザワッとなる一同。

「バ、バーンスタイン家って!?」

「あ、あの悪逆皇帝暗殺未遂の!?」


その中から進み出る一人の女性。

やはり娼婦風だが、群を抜いた気品の良さがある。

そして二人の目の前で着く両膝。


「ソフィアねえさん?」

驚き訝しむ周囲。


その周囲の視線を受けつつ、やがて決然として上げられる顔。

「サンクトペテルスブルクとおっしゃられましたね。お願いします。私たちも…私たちもどうか一緒に…お連れください!」


「エミリー様?」

どうしますといったばかりの表情。


「…」

しばしの思案。

やがてコクリと下げられる顔。

あくまで。無表情に。

JIN 2019年06月09日 (日) 12時19分(79)
 


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