タイトル:コードギアス 追憶のエミリオ intermission 格付 |
SF |
超合衆国連合。香港特別行政区。
某投資信託会社。
多くのトレーダーたちが今日も激しく動き回っている。
「おい。スイスのルーディーズが日本国債のランクをまた一段階引き下げたぞ!」
「またか!」
「やっぱりな!」
「売りだ! 売りだ! 持ってるポジションを全部処分しろ!」
「理由はなんだ!」
「決まってるだろ! こないだの元名誉ブリタニア人への大規模な総括リンチ事件だ! 治安状況に改善の兆しが無いってな!」
「日本政府はまた抗議を出したらしいぞ!」
「ほっとけ! 格付が政治的圧力で決まるとか思ってる連中なんか!」
「これでまた下がるぞ! 次は投機ランクだ!」
「ジャンク! ジャンクの準備をしろー!」
取引終了後。
「やれやれ。今日も酷かったな」
「ああ。あそこで治安がまともに保たれてるのは、はっきりいってもはやフジだけだ」
「日本中の元名誉ブリタニア人たちが保護を求めて殺到しているそうだな」
「ああ。しかし如何にフジとはいえ、もうすぐ収容限界を超える。百万人のな」
「皮肉な数字だな。それは」
「ブリタニアへの移住希望者は?」
「蓬莱島に一時的に移し、そこから空路で輸送するのを検討中らしいが」
「それも皮肉な話だな」
「どこぞの連中が島ごと吹っ飛ばすんじゃないのか」
「あの国の中で大勢に抵抗しているのは、もはや首相の扇だけだ。他の連中は既に報復主義者どもに屈服したと言っていい」
「家族の身も危ないとなればやむをえないか」
「扇の身の安全は大丈夫なのか」
「いかに狂気じみた報復主義者どもといえ、扇は超合集国にもつながる重要なパイプだ。そう簡単に殺すわけにもいくまい」
「ただし妻子はフジに逃がしたようだな」
「ああ。護衛にクレナイ騎士団が付いたくらいの物々しいものだったらしいがな」
「もはや日本人は信用できんということか」
「ブリタニアの血を引く妻子だけにな」
「扇自身はどうする気だ」
「どうやら日本と心中を決めているようだな」
「あいつが日本人に殺された時が完全な日本の終わりというわけか」
「皇や桐原は何をしてるんだ?」
「相変わらずだ。あくまでフジから動こうとしない。コンツェルンやネットワークの主力工場や施設も依然としてインドや東南アジアからほとんど戻していない」
「まあ『事業家』として、現在の日本の治安状況を見れば当然の判断だが」
「『政治家』としてはどうかな。そのせいもあって、今ではブリタニアの侵攻前の京都六家体制に対する批判や非難についても最近は大きくなってるらしいが」
「ああ。敗戦責任もな」
「要するに『二足の草鞋』に無理があるんだ」
「まあ。日本はそのくらいにして、とにかく次の焦点は北ユーラシアだ」
「ああ。ここまで体制が安定してくると、次の焦点は当然に『新国家樹立』だろうな」
「さしずめ『ヴェランス王国』とでも言ったところか」
「しかしアレキサンダー一門などの旧大陸系の貴族連中はともかく、アリューシア家のような旧帝国系の連中が大人しくそれに従うかな」
「おいおい。そんな事を言ってられる場合じゃないだろう」
「分かっちゃいないな。そこまでギリギリ拘るからこそ、連中の『権威』には価値が出るんだ。あっさり妥協したりすればそれこそ価値を無くすくらいのな」
「宝石と石コロは紙一重という事か」
「ああ。『全ての権威は幻想』ともいうな」
「フン。それは『金銭』も同じだろうさ」
|
JIN 2019年02月17日 (日) 21時11分(47) |
|