タイトル:コードギアス 追憶のエミリオ intermission 潜行 |
SF |
広大な海原。
その遥か海底近くを航行する巨大な物体。
海の巨大さに比べれば砂粒にもなりはしないが、その大きさは実に一キロを超えているだろう。
(目標深度到達。「レムリア」分離作業開始)
アナウンスと共に、艦内全体に響く轟音。
その巨体の上部から大量の気泡が発生し、やがて巨大な船体の上部が浮き上がり始める。
(スレイ。レイア。さっきも言ったけど。あなたたちの仕事はゼロを守ることよ。余計な事は勝手にしないでちょうだい)
(分かってるよ。エル。ゼロさんは僕に任せて)
(ちょっとスレイ。「僕に」ってどういうことよ。ゼロ様についてはアタシが一番なんだから)
(はいはい。分かったから。頑張って気をつけてちょうだい。二人とも。では気を付けてね。ゼロ)
(…)
(では。分離開始!)
膨大な気泡と共に、本体から分離される上部。
次第に浮上を続け、やがて海面に出現。
(フロート起動。ユクドラシル動力全開)
海面を波立てながら次第に、空中に浮遊を始める小型航行艦。
(レムリア。発進)
方向を変え、一気に飛び立つ!
海上に出ているブイから海底から長く伸びる有線ケーブル。
それを伝って海上の模様が映っている、司令管制室。
それを見つめている二人の女性。
共に同じくらいの若い感じだが、一人は長髪、一人は眼鏡が一際目立つ。
やがて声を発する眼鏡の女性。
「行ったわね」
「ええ」
「今度は何人殺すの?」
思い切った発言に、相手を見返す長髪の女性。
「人聞きの悪い事言うのは止めてよ。ニーナ。こないだの『海賊退治』の事を言ってるなら。お門違い。文句は移民を襲った連中に言ってよ。女子供も見境無く殺したあの連中に」
「だから。そんな連中の女子供も殺して構わないというの?」
「そうよ」
そして相手の反論を遮るように。
「いい。そのくらいしなければあんな連中、これからいくらでも湧いてくるわ。それを望む連中も多くいるしね」
「でも…」
「いい。良し悪しは関係ない。繰り返して言うけど。彼は『百万を見逃して二千万を殺した男』よ。そんな人間に説教できるような資格のある人間が一体どこにいるの? 特に。それに関わった貴方のような人間に?」
返す言葉の無い眼鏡の女性。
「…」
「分かってるでしょ。いくら軍備制限をしても、通常戦力ではブリタニアに勝てないと分かった連中が次に考える事は。それを防ぐにはブリタニアからも貴方の命を狙う可能性がある。だからここに逃げてきたんじゃない」
「…」
「ま。スレイとレイアも含め、ここの連中も大体似たり寄ったりのばかりだけどね」
肩を竦める相手にようやく返す。
「じゃあ貴方はどうしてここに? 確かに貴方はあのアルビオンの開発に関わった一人だけど。私と違って、世間から逃げ隠れするほどの人じゃないはず」
軽く首を傾げて。
「そうねえ。ロイドとセシルにはあちらでいろいろとやってもらいたいことがあったし。それに結局オタクでしかない、あの二人にはここまでの同行は出来ないし。それに何よりも彼自身に興味があったからよ」
「興味?」
「そ。他の誰よりも先に死んで当たり前な立場と境遇のはずの人間が、なぜここまで生きて、こういう活動まで出来てるかって事よ。そしてそれを誰も不思議がらない。考えてみればおかしいじゃない。貴方はどう思うの?」
「そ、それは…」
「まあ。あたしも長く気が付かなかった。だからそれに気付いた時、彼に激しい興味を感じたわ。それこそ何を捨てても惜しくないってくらいにね」
「…」
「ところで…」
席から立ち上がり、相手の首に両腕を回し、正面から相手を抱きすくめる長髪の女性。
そして耳元に囁く小さい声。
「…まだ寝てないの? 彼と」
真っ赤になって必死に返す、眼鏡の女性。
「あ、貴方はどうなのよ?」
「ふふふ。さあて。どうかしら」
実に悪戯っぽい口調。
|
JIN 2019年02月17日 (日) 21時07分(45) |
|