タイトル:コードギアス 追憶のエミリオ MEMORY−3 イルクーツク W |
SF |
ザ・バイカル基地。
KMF検査ブロック。
聳え立つKMF「ファタ・モルガーナ」。
その開いたコクピットに座る一人の女性。
それに対して身を乗り出す一人の男性。
「…以上が新装備『MTブースト』です。バーンスタイン卿の御実力なら操作は可能でしょうが、作動中の急加速はMEブーストの比ではありません。どうかくれぐれにお気を付けください」
「…」
無言で頷く女性。
その時。
「お嬢様ー!! お茶の時間ですよー!!」
ブロック全体に大きく響き渡る快活な声。
何事かと振り返る周囲。
彼らの目に映る、その場に相応しくない可愛らしいメイド姿の少女。
両手にはポットと菓子入りのバスケット。
「ああー!? またー!!」
慌てて駆け寄ると、男性の乗っている脚立を思い切り蹴飛ばすメイド!
「わ、わ、ワー!」
そのショックで上から落っこちる男性。
「イテテテ! なにすんだよ!? ミン!?」
「なにすんだー? 前にも言ったでしょ! ハンスの馬鹿! ミンのエミリー様に近寄るなってー!」
「そんな、これは仕事だって…」
それが聞こえてか聞こえずか、ますます大きな声を張り上げるメイド。
「あんなにも顔を寄せてヤラシー! いいー! エミリー様はハンスなんか足元にも寄れないくらいエラーイご身分なのー! だ・か・らスケベなんてゆるさないんだからー」
荷物を持ったままの両腕をブンブン振り回し、全身でプンスカを表す。
それを眩しく見上げながら、トホホといった表情を浮かべる男性。
(おいおい。ぜんぜん分かってくれないんだなあ。ミン。俺が好きなのは、エミリオ子爵じゃなくて…)
「ははは。相変わらず賑やかだね。ここは」
そこに入ってくる青年。
それを見てまた声を上げるメイド。
「あー。アレキサンダー卿ー」
「なにごとが大声でと思ってみたら。また君かい」
そこに近づいて行って、笑顔を向ける。
「いいかい。ミン。シュライバー君は仕事でやってるんだよ。彼の仕事がちゃんと終わらなきゃ、御主人様のエミリオ子爵が危ないじゃないか」」
「だってー」
赤ちゃんのように親指を銜え、子供のようにむずかって見せるメイド。その仕草の一つ一つが実に可愛らしい。
その頭に向かって手を伸ばす青年。
「やれやれ。君って人は、ほんとに御主人様が大好きなんだな」
置いた手で頭をナデナデする。
それを嫌がる事無く、満面の笑顔で答えるメイド。
「はい! ダイダイダーイスキで−す!」
少し離れた場所。
その光景を見ながら、会話する整備士たち。
「おいおい。またやられてるぜ。ハンスの奴」
「確かこの前は思い切り突き落とされたんだっけ」
「よく生きてるよなあ」
「それにしても気の毒だな。ハンスの奴。アレウス伯爵が相手じゃ、とても勝ち目ないや」
「なんせ未来の公爵さまだろ。たとえ妾でも、玉の輿だもんなあ」
「わかってないな」
「え?」
「アレウス伯爵の実の妹君が娘ほどに年の離れた『曰く付き』なのは知ってるだろ。だから伯爵は年恰好にも相応しいああいうタイプに『理想の妹』を重ねてしまうんだ。別に変な下心の意味じゃない」
「そうか」
「余計に厄介だよなあ。そう考えると」
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JIN 2019年01月01日 (火) 16時43分(33) |
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