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タイトル:コードギアス 追憶のエミリオ  MEMORY−3 イルクーツク V SF

ザ・バイカル基地。


最上階。

貴族専用高級ラウンジ。

窓の外のバイカル湖の絶景を眺めながら会話の二人。


「どうしてアイツをあそこまで好き勝手させてんのよ!?」

せっかくの高級ティーを荒っぽく飲みながら、いかにも憤懣やるかたないというイースリット。


それに対しいかにも優雅にコーヒーカップを回すローランス。

「仕方ないだろ。アイツを推薦してきた従兄貴が『自由にさせろ』っていってんだから。要するにアイツはそういう超天然物らしい」


「あんな軟弱な淫売ガキが戦場で役に立つってんの?」


「ああ。アイツのシミュレーションならびに実地テストには関わったが相当な奴だ。あの慎重屋の従兄貴も太鼓判を押してんだから間違いないだろ」


「そんなに凄いの?」

疑わしげな表情のイースリット。


「ああ。数値レベルだけで言うなら、俺とおまえだけでは対抗出来ん。アレウスも加えてようやく抑えられるくらいかな」


「まさか!?」

思わずカップを取り落としかかる。


「驚くなよ。あくまで数値上だ。そして同じく数値上でアハトに単独で対抗できるのはジーベンだけだ」


「あのコが?」


「あくまで瞬間的な最高値でだがな」」


「信じられないわねえ。だったあのコ、あたしに一度も立合いで勝てた事ないわよ」


「試合では駄目でも、本番で強いタイプもあるだろ。従兄貴によるとジーベンはそういうタイプらしい」


「ふうん。それはともかく」

覗き見るような視線のイースリット。

「今のあんたってとにかく従兄貴、従兄貴よね。ひょっとして、ブラコン?」


それを受けて苦笑するローランス。

「かもな。だが、いま俺たちがこうしていい御身分でノホホンとしてられるのは従兄貴のコネと采配があればこそだ。まあおまえがここに来たのは一年前だから、それ以前の惨状を知らないのも無理ないが」


「そんな酷かったの?」


「ああ。当時の事は誰も口にしたがらないから、おまえは知らないだろうが。あの旧帝国崩壊の二年前からの最初の三ヶ月の間は特に悲惨だった」

遠くを見るような視点。

「なんのかんの言っても旧帝国は最強の後ろ盾だったからな。それが失われた事で誰も彼もが絶望に近い状態だった。ドラッグも蔓延したしな」


「リフレインとか?」


「まあ、それもあったが一番の最悪は『ドミニオン』だろうな」


「『ドミニオン』!? あれが! ここにあったの!?」


「知ってるのか」


「聞いた事は。確か睡眠薬と発情剤を合わせた凄い奴でしょ?」


「まあ飲ませた奴に前後不覚でケダモノのような性衝動を起こさせるって物だな。それでいて使った奴にその記憶は一切残らない。だから自分が使うというより、意中の相手に使わせて自分を襲わせるという方だな」


「ふうん。まさに自暴自棄に相応しいシロモノだわね」


「そういうわけだ。まさに自己破壊に相応しい。それで相手に殺された奴すらいるし」


「その頃、あなたはどうしてたの?」

興味深げな目。


「俺か。俺は単純なもんさ。敵が攻めて来たら思い切り暴れまくって死んでやる。そう思うとなぜか気が軽くなった」


「単純なのねえ」


「それで良かったと思ってるよ」

思い切り残りのコーヒーをあおる。


「…」

それを見ながら何か言いたげなイースリット。


「どうした?」


「もしかして…ツヴァイの母君も?」


「聞いてるのか?」


「まあね。ツヴァイの『父親知らずの妹君』の噂は良く聞くわ。あんた、ツヴァイとも親しいんでしょ?」



「さあね。プライバシーについてはお互いに触れないのが俺たちのルールだ。まあ確かにあの時期にアレウスの御袋もかなり荒れた一人だったのは確かだったがな」

少し目を背けるようなローランス。

「まあアレウスの御袋の場合、それ以前、例の叛乱の時、親しく交流していたシャイング家の未亡人が娘と刺し違えて死んだ事にかなりのショックを受けていたのもあったらしいがね。その辺りから情緒不安定が酷くなったとも聞くが」

JIN 2019年01月01日 (火) 16時39分(32)
 


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