タイトル:コードギアス 追憶のエミリオ MEMORY−2 新グリンダ騎士団 W |
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凍り付くとまではいかないまでも、尋常でないまでの緊張が走る室内。
その中で慎重に言葉を選ぶという感じで、答を返すオルドリン。
「…『証』…ですか? それは、私たちが超合集国連合に背信を犯すとでもいいたいわけですか?」
それに対しいささかも動じる事無く、視線を返す神楽耶。
「はい。正確に言えば『不利益』『有害』とでも言い換えましょうか。そしてそれは貴女方の御意思とは全くの別問題です」
「もう少し説明をいただけませんか?」
「はい。要するに、これまでは長らく事実上無視されてきた北ユーラシア、すなわち旧ユーロ・ブリタニア地域が最近において活性化しつつある事が問題なのです」
対面横のスクリーンが開き、巨大な北ユーラシア地域が映し出される。
「御承知のように、同地域は『ユーロ・ブリタニア事変』すなわち『ミカエル騎士団の叛乱』以降は旧帝国の直轄化に置かれるも、あの悪逆皇帝の即位以後は、戦略上において無価値とみなされてか、事実上の放置状態に置かれてきました」
そこでポツリつぶやくソキア。
(そりゃ、フレイヤなんか出てくりゃ意味ないにゃあ)
「もちろん中華連邦や旧ユーロピアは同地域はブリタニアに不法占拠された地域だとして返還と退去を要求しましたが、彼らはそれを無視し、更に旧帝国時代からの各種インフラ整備を続行している模様です」
そこでまたもつぶやくソキア。
(そりゃ、フレイヤでも使わにゃ無理な話にゃあ)
「内部の情報は取れないわけですか?」
「こちらからでは漠然としか。そちらではどうなんです?」
伺うかのような視線の神楽耶。
それに対しあくまで泰然たるオルドリン。
「我々はあくまで現場の実行部隊です。ブリタニア本国政府もCRCも我々に対する情報提供の義務はありません」
そこで更につぶやくソキア。
(同じブリタニアなのに、とでも言いたいのかにゃあ)
「正直、私たちとしては、旧帝国の支援を失った彼らは次第に本国へと後退あるいは衰退すると予想、敢えて言うならば期待していました」
人口動態を示す色の変化がスクリーンに示される。
「しかし実際の動きは違いました。確かに当初はそれらしい動きもありましたが、それ以降、特に現在のヴェランス大公の登場並びに、一年前のデボンシャー事件の発生後、それまではアラスカからカナダに掛けて展開していた旧帝国主義者たちの多くがベーリング海峡を渡り、北ユーラシアへの移動を続けています」
「それで貴女が恐れているのは?」
「既にお分かりでしょう。北ユーラシアにおける旧帝国の復活、あるいは同様の軍事貴族国家の誕生です」
操作と共に浮かび上がる不鮮明な人物像。
「…ティベリウス・リチャード・ハイランド…」
思わずつぶやくオルドリン。
「はい。噂の新ヴェランス大公。その出自については大公家の傍流出身という以外の事は皆目不明。現時点で分かっている事は先代の意に沿って、フランスを中心とするユーロピア各方面との折衝や裏取引を行っていたというだけです」
「はい。知ってます。先代大公の意を受けてユーロピア首脳に対して自分たちの受け入れを飲ませようと様々に暗躍していたとか」
「そう。例の『方舟事件』が無ければ、あるいは夢では無かったかもというくらいだったそうですね」
「…」
「ただし当時の彼として肝心なのは、先代の意を受けてそこまでの活動を行いながら、彼自身としては先代のような『旧領復帰』についてはむしろ否定的だったらしいという点です」
「と、いいますと?」
「彼にしてみれば『腐り切ったユーロピア本体など手に入れても苦労の多いばかりで役に立たない』との事で、むしろ未開の北ユーラシア自体の開発こそ重要と考えていたそうです。先代大公をはじめ、多くの旧大陸系貴族たちがせいぜい一時的な通過地としか考えていなかった、北ユーラシアにこそ真の未来があると」
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JIN 2018年10月13日 (土) 21時08分(24) |
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