タイトル:コードギアス 追憶のエミリオ intermission 邂逅 |
SF |
旧ユーロ・ブリタニア(現ヴェランス大公家)領サンクト・ぺテルスブルグ。
カエサル大宮殿。
中央の間。
一段高い上に置かれている空位の椅子。
その下に置かれている巨大なテーブルの上に映し出されている、現在の北ユーラシア地図。
様々な光点が移動や停止を繰り返し、その一つが「Irkutsk」に止まる。
「…」
それを最上座から見つめている男。
いかにも青年といった風貌だが、どことなく老成したかのような雰囲気を漂わせている。
その青年に集中する様々な情報や報告。
「大公閣下。ハワイ本部を発進したグランベリーは現在、日本に向かって飛行中。おそらくはフジに寄港と予測されます」
「ティベリウス様。イルクーツクのハルジオン主任から連絡。『ライオネル』『モルゴース』の調整は完了。『アンブロシウス』はメテスシステムの最終調整中。そして『ファタ・モルガーナ』『アグロヴァル』のMTブースト装備はもう少し時間を要するとの事」
「閣下。ウスリー方面のマニゴルト卿より連絡。『ディナダン』の受領を完了との事です」
「ヴェランス大公。ポーランド・リトアニア間の交渉が決裂の模様」
「大公。対ウクライナ境界線近くに外部戦力集中開始の兆候が」
「ティベリウス閣下。モスクワGCのシュタットフェルト卿から報告。サンクト・ペテルスブルク防衛強化のため『九本槍』からサン・ジル卿ならびにヴィヨン卿を派遣だそうです」
その喧騒の中、次第に近づいてくるツカツカという音。
その音に対して顔を上げる青年。
その目に映る一つの姿。
いかにも切れ者といった感じの一人の女性。
その相手に声を掛ける青年。
「おひさしぶりですね。エイゼンシュタイン子爵。『エカテリンブルクの殿下』のご機嫌はいかがで?」
「ええ。お変わりはございませんわ。ハイランド『伯爵』」
その呼び様に、一瞬にして止む喧騒。
鋭い緊張が走る周囲。
無礼者、控えろとばかりの空気が無言で立ち込める。
それを承知とばかりに話を続ける女性。
「貴方の『ヴェランス大公』は皇帝陛下の勅許を頂かぬ私称でしかありません。それに貴方は大公家としても傍系の身。恐れ多くも亡き大帝陛下の最直系であられるテレマコス殿下の名代たる、この私に対してむしろ不敬ではございませんか?」
いささかも動じず、むしろより高圧的な態度。
それに対し、急速に高まっていくその場の反発。
それこそ、いつまで昔の気分でいるんだとばかりの。
その言葉に対し、軽く苦笑を返し、むしろ自分からスタスタと相手に歩み寄る青年。
そして、その手前でヒョイと膝まずいてみせる。
驚く周囲と女性。
それに対し、軽く顔を上げ、なんとも言えない微笑を相手に向ける青年。
「いや。まったくもってそのとおり。だからこそ。それを『本物』にしてみたいとは思いませんか?」
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JIN 2018年10月13日 (土) 21時00分(20) |
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