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タイトル: コードギアス 追憶のエミリオ  MEMORY−1 シベリア超特急 Z SF

「しかしだな。だからといってこちらが連中の帳尻合わせに協力しなくちゃならん義理はあるまい」

残りのコーヒーを一気に飲み干すアレウス。


肩を竦めるローランス。

「まあな。まあ、あっちの連中の一部によれば、これもまた旧帝国の『永久賠償』の一環らしいが」


「で。その取立の尖兵役がこれまた旧帝国出身の連中? どこまで甘ったれてんのよ。あの連中」

思いっ切り紅茶を注ぎ直すイースリット。


「まあ。ともあれだ。北部軍と同様、グリンダ騎士団については紛争前の領域侵入と同時に、不法侵入者として武力排除しろというのが従兄貴からの命令だ。あの妥協屋の従兄貴もここは正念場と分かってるらしい」


「しかし。グリンダ騎士団が北部軍を撤退させたらどうする?」

空のコップの中でスプーンを軽く回すアレウス。


「こちらの領域に入る前ならな。だが従兄貴の命令はあくまで『侵入次第』だ。つまり領域内に入った瞬間に攻撃開始。そして北部軍は完全殲滅。グリンダ騎士団は撃退する」


「撃退? なんで? どうせなら北部軍と一緒に潰せばいいじゃない。一思いに」

納得いかないという感じのイースリット。


それに対し、覗き込むローランス。

「おいおい。まさか一年前のお返しのチャンスとでも言いたいのか。リア?」


スプーンを持ち上げるアレウス。

「ああ。あのデボンシャー公爵の時か。アラスカも巻き込んだ。あの」


頷いて、別方向に念を押すローランス。

「悪いんだがな。リア。ここは北ユーラシアだ。旧帝国本土の連中とは事情が違うのを忘れるな」


「…」

いかにも不服気なイースリット。


「で。出来そうか。アル?」


手を頭の後ろで組むアレウス。

「難しいな。まあ確かに連中を相手にした場合の仮想シミュレーションもいろいろやってみてきているが。連中がこちらの戦力を知らないからには『撃滅』は出来ない話じゃない。だが『撃退』に留めるとなればむしろ難しいな。相手も相当な実戦経験を持っている。下手に手加減すればこちらが『撃滅』される」


「またこれは従兄貴の台詞なんだが。北部軍は殲滅。但しグリンダ騎士団は撃退となれば、外野はどう考える?」


「旧帝国同士の内通あるいは八百長か?」


「まあ。そういうわけだ。いま超合集国連合の中ではブリタニア本国の扱いがまた揉め出してるからな」


覗き込むようなイースリット。

「例の厚かましい『永久賠償』?」


「それだけじゃない。ブリタニア本国の復興と再編が進むにつれ、かつての旧エリアで今度は自主的に再結合を望む動きが出始めている。つまり連合内部でブリタニア本国の力が強くなり過ぎてきているというんだ」


「なるほど。内部からの乗っ取りを恐れてるのか。今度は」

手を組んだままのアレウス。


「そうだ。そのため唯一の実働部隊であるグリンダ騎士団についても、ブリタニア以外では、最近はいささか風当たりが強いようだそうだ」


「ああ。こないだ出来たっていう『クレナイ騎士団』ってのもそれ?」

合点のいった感じのイースリット。


「まあな。要するにブリタニア以外の連中を集めた同格の実働部隊も作らなければ、政治的なバランスが悪いらしい」


「でも。そのエースだって、結局はブリタニアの血を引くハーフなんでしょ。茶番もいい加減にして欲しいわ」


改めて身を乗り出すアレウス。

「で。そちらが出てくる可能性は?」


「今のところの可能性は少ないというのが従兄貴の見立てだ。あれはむしろフジの防衛役みたいだからな。いずれにせよ一緒に出て来なければ問題は無いそうだ。少なくとも戦略的には」


「まあ。そちらは問題ないだろうが…」

怪訝な表情を浮かべるアレウス。


「一年前の事か?」


「ああ。『あの時』と同じに、もしグリンダ騎士団だけで片付かないとなれば、出てくる可能性が高いな。『あれ』が」


ガチャリとカップを叩き付けるイースリット。

「ええ。思い出しただけで煮え繰り返るわ」



やがて視線を一つに集中させる三人。


その視線の先には、相変わらず天井の地図を凝視している四人目。

怒ってるのか。笑ってるのか。泣いているのか。

その表情の意味は誰にも読めない。

JIN 2018年09月29日 (土) 13時20分(18)
 


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