| タイトル:暴君の帰還 |
SF |
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(No.1)
(エリア23 リスボン政庁)
エイゼル「やれやれ。やっと戻ってこれたか」
ギース「地球を半分回ってですからね。皇族軍の中でもこれだけ動かされるのは珍しいでしょう」
エイゼル「それにしても着くなり、隣のマリーベル殿下から挨拶とは驚いたな」
ギース「ええ。今までは最低の付き合いでしたからね。やはりあちらの様子が気になるのでは」
エイゼル「マリーベル殿下が好き放題に振る舞えるのはあくまで皇帝陛下がいてこそだからな。もし皇帝陛下にもしもの事があれば…」
ギース「し。周りに気を付けないと…」
エイゼル「分かってるさ。しかしもし皇帝陛下に何かがあれば、他の皇族や貴族に有力な人脈の無いマリーベル殿下としては、位置的にも近いこちらを頼らざるをえまい」
ギース「いかに大グリンダ騎士団が強力であっても、完全な孤立状態では立ち腐れは目に見えてますからね。最近ではシュナイゼル殿下とも疎遠気味のようですし」
エイゼル「最初の子飼いの旧グリンダ騎士団も持っていかれたというしな」
ギース「あれはルーカス殿下も惜しがってましたね」
エイゼル「ともあれ。ハワイではライル殿下の容疑でシルヴィオ殿下もエルシリア殿下も身動き出来ない。シュナイゼル殿下もカンボジアから動けないとあれば、がら空きの本国をルーカス殿下が掌握というのも今やあり得ない話じゃない」
ギース「まったく。側近の我々でさえ本気に思えなかった事に現実の目が出てくるとは」
エイゼル「ワクワクしてくるな」
ギース「ほんとにです」
(No.2)
「マクスタイン将軍! こちらの書類の裁可をお願いします!」
マクスタイン「そこの机の上にでも置いておけ!」
「イ、イエス! マイロード!」(書類の束をドサっと机の上に置いた)
マクスタイン(〜〜! ええい! 艦の中でも書類! 政庁の中でも書類! このエリア23がそこまで規模が大きくないからこそどうにかなっているが……!)
(No.3)
ルーカス「ええい! オルドリン・ジヴォン、更にはエリシア・マルコーアまで戻ってきたらしいというのに、完全な行き違いとは!」
フィリア「…」
(No.4)
クルークハルト「……クソッ!」(グラスの酒を一息に飲み干し、割れんばかりの勢いで机に置いた)
「っ!」
クルークハルトの勢いに、彼に酒を注いだベルギー出身の少女がビクッとした様子で身を竦めた。
「あ、あの……私何か不手際を……?」
クルークハルト「……いや、すまない。君が気にする必要は無い」
「そ、そうですか……」(尚もビクビクした様子で部屋の掃除をしつつ、クルークハルトの顔色を窺っている)
クルークハルト(ハハ……何をやっているのだろうな私は……結局何も出来ず、ただ埋もれて……いやそれだけならまだいい。どうやっても自分に明るい未来があるとは到底……)
やたらと悲観的になる自身の思考を振り払うべく、彼は再びグラスに酒を注いで一息に飲み干した。
(No.5)
エイゼル「ところでクルークハルトの奴。いつになったらあの小娘に手を出すのかな」
ギース「流石に年が離れ過ぎてるだけに、引け目でもあるのでは」
エイゼル「フン。所詮は庶民出身というところか」
ギース「ですな」
(No.6)
ギース「小耳に挟んだ話ですが、現在ハワイに軟禁中のライル殿下が、蓬莱島に赴いて超合衆国との停戦協定締結の協議を行っているとか」
エイゼル「フン、あらかたシュナイゼル殿下の差し金だろうよ。でなければ連中がハワイから出られるものか」
ギース「どうなりますかね…」
エイゼル「いっその事滅茶苦茶になってくれれば面白いかもなぁ」
ルーカス「ハハッ! さあまだまだこれからだ! 今日も可愛がってやるぞ!」
フィリア「フフッ…殿下ぁ? そこの小娘よりもまずは私を…」
リーリャ「…」(ぐったりしている)
(No.7)
マクスタイン「まさに今は嵐の前の静けさというところか」
クルークハルト「御経験からですか?」
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| Ryu 2024年06月08日 (土) 09時20分(132) |
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