タイトル:コードギアス 追憶のエミリオ MEMORY−1 シベリア超特急 V |
SF |
四人目の着席と共に、一同を見回すローランス。
「さて。揃ったところで始めるか」
それに対して口を挟むイースリット。
「ちょっと。待ってよロル。揃ったって。まだあの『飛び入り』がいないじゃない」
その視線の先には、まだ空いた五番目の席。
「いや。あれは構わん。来れば結構だが、来なくても別にいい。どうやらまだ寝てるようだしな」
あくまで平然たるローランス。
それらを他所に、早速始まっている朝食コース。
最高級のパンが運ばれ、コーヒーや紅茶が注がれていく。
自らパンを千切って口に運びつつ、いかにも不快で不愉快だといった風情のイースリット。
「ふん。どうせ最後までしっかり励んでたのかしらね。それがお仕事だったみたいだし」
それに対し、いささか揶揄がかった苦笑を送るローランス。
「いかにも好かぬといった感じだな。リア」
キッとした目を投げるイースリット。
「決まってるじゃない! 自分の身体と種を売り歩いて生きてきたような、まるで犬か猫みたいな薄汚い淫売ガキよ。好きになれという方が無理でしょ!」
あくまで吐き捨てるといった姿勢。
肩を竦めるローランス。
「しかし。それが気に入ってるという連中も多いというんだからな。それはどう思う?」
「あれは誑かされる連中がおかしいのよ! シルフィード家の夫人の話は聞いてるでしょ。よりによって自分の娘四人全部を先に孕ました子供みたいな年のガキの子を自分も孕むなんて。恥って物がないのかしら。まったく」
いかにも憤懣やる方が無いと言った調子のイースリット。
「子爵は認知してるんだろ。自分の子だって。孫たちの父親の、娘たちの殿方も」
あくまで問題あるまいなローランス。
その態度に高じさせられてか、正面の林檎を取り、思い切りガブリと一口齧るイースリット。
「誑し込まれてるからよ! 男どもも一緒に! そういう奴なのは知ってるでしょ!? アレが!」
「かもな。だが一番の利害関係者である夫君が認めている以上はそれが唯一の事実だ。そしてそれが『俺たちの世界』のルールの一つだ。噂など、いちいち係ってはやっていけんよ」
忘れたかといわんばかりのローランス。
それに対し遂に憤懣を爆発させるイースリット。
「分かってるわよ! でもね! 最低の品ってもんがあるでしょう! 聞いてる、ロル!? あの連中! ベッドに上げたアイツを夫婦ではさ…」
「いずれにしても!!」
別方向からの声に思わずそちらを向く二人。
いかにも聞くに堪えないと言った表情のアレウス。
「…いずれにしても。朝食の場で話すような話題ではないと思うが。どうだ?」
その表情には、思い出したくもない事を思い出させられたとばかりの、深い怒りが込められている。
バツが悪そうに頭を掻くローランス。
「すまん。確かにその通りだな。アル」
それに対し、あくまで不服顔で顔を背けるイースリット。
「ふん」
改めて手元の林檎をガブリと齧る。
そして今度は、先ほどから一言も発しない四人目に目を向ける三人。
そこには、ちょうど来たベーコン入りのスクランブルエッグを黙々と口に運んでいるエミリオ。
まるで先ほどまでの騒ぎが全く聞こえなかったという感じで。
「…」
そのテーブルマナーやフォークとナイフの運び方は完璧で、一部の隙も落ち度も無い。
改めてもう一人の女性に目を向ける男二人。
その視線を受け、残りの林檎を一気に口に頬張るイースリット。
わざわざ大きな音を立ててガリガリやってゴクリと飲み込む。
いかにも。文句あるかとばかりに。
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JIN 2018年09月12日 (水) 13時47分(11) |
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