「おい！　聞いたか！　あの『ロックスフォードの稚児』にまた愛人が出来たらしいぞ！」

「なんだよ。そんなの珍しくもない。それにあいつの場合『また愛人役が増えた』の方だろ」

「まあそれはそうなんだが、今度の相手は分けが違う」

「勿体付けずに早く言え」

「聞いて驚け。あのイースリット・リア・アリューシア伯爵だ！」

「なんだとー！？」



「で、でも。イースリット様ってベル様を凄く嫌ってたんでしょ。それがどうして？」

「良く分からないけど。裸を見られたのが切っ掛けだったとかどうとか」



「これもあくまで噂だが、あの稚児の奴、アリューシア伯爵を自分から思い切り『ひん剥いた』らしい」

「ええ！　まさか！　だってむしろあいつが『ひん剥かれ』専門だろ！？」

「まあな。それにしてもあのアリューシア伯爵をねえ。いくら物凄い美人でも、あの方にそんな事する奴がいるなんて」

「するどころか、考える奴だっていないだろうからな」



「話によると。イースリット様って、ベルを自分の傍において絶対に放さないっていうわよ」

「ええ！？　どうして！？」

「なんでも裸を見られたので、その事を他の女にしゃべられるのが嫌なんだとか」

「そんな！　そんなの独り占めしたい嘘なんじゃない！？」

「まあ、さすがにソアラみたいに今までからの世話役の女たちは例外みたいだけど」



「しかし思えばあいつが愛人役をしている女は山ほどいるが、女騎士ってのは無かったような」

「あいつは上流社会御用達だったからな。その両方を兼ねてるのはそれこそアリューシア伯爵くらいだろうよ」

「それにしてもそうした年の差のある騎士カップルといったら、近くにもいたよな」

「ああ。あれか」

「あっちはどっちが『ひん剥いて』ると思う？」

「そりゃ、どう見ても絶対…」




「おいおい。どうしたんだ。マギー。ずいぶん不機嫌そうにして？」

「ほっといて！！」