タイトル: コードギアス 追憶のエミリオ MEMORY−1 シベリア超特急 U |
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超合集国共同暦3年。
世界全体は悪逆皇帝ルルーシュ暗殺後における最大の変動期を迎えつつあった。
フレイヤを背景に持つ悪逆皇帝によって、一時は政治面での超合集国連合と軍事面での黒の騎士団の二つに強制統合された世界全体であったが、悪逆皇帝の死とフレイヤの破棄は急速に遠心的な崩壊を進めつつあった。
その中で最大の問題に浮上していたのが、実に旧ユーロ・ブリタニア占領地域の扱い。
言うまでもなくその地域はかつて中華連邦とユーロピアの版図であり、悪逆皇帝の死と共に返還要求が高まったのも当然。
しかしその地域にはいまや悪逆皇帝時代にブリタニア旧帝国本土から新たに流入した本国系貴族も多くおり、それぞれ独自の軍備や技術をも抱える彼らを強制的に放逐する事は困難でもあった。
(また本国には旧エリアを追われた名誉ブリタニア人層の大量移入も始まっており、それへの反発も手伝って、一部を除いて本国への帰還を望む貴族はほとんどいなかった。)
また元々この地域はそれぞれの国の時代にはほとんど放置辺境領域に近く、治安状態も最悪。
それがユーロ・ブリタニアの侵攻後における状況改善も手伝い、意外にも現状維持を望む声が原住民の間にも大きかった事も事態を複雑にしていた。
そしてそれら現地の支持の大きさを見た、新ヴェランス大公ティベリウス・リチャード・ハイランドは、単にユーロ・ブリタニアのみならず、旧帝室をはじめとする本国貴族をも含めた新国家体制の発足に向けての準備を本格開始。
更に旧中華連邦地域であるツングースカ地方において、サクラダイトを遥かに凌ぐ新鉱石が発見された事は、中華連邦側における返還要求を加速化させる事になる。
そしてかねてから独自志向が強かった、中華連邦の北部軍管区は遂に中央政府の静止を振り切り、ダマンスキー島における本国貴族の入植地の一つを攻撃。
かくてここに、超合集国全体すら巻き込みかねない、二年ぶりの大戦争の可能性すら生まれつつあった…
雪原の中を超高速で東に向けて疾走する、長大な列車。
かつてユーロ・ブリタニアの四大騎士団専用車両としてブリタニア本国で作られた、高速移動軍事輸送列車「グローズヌイ」。
シベリア幹線における超広軌もあって、KMF輸送も可能の大型でありつつ、居住性も安定しており、ほとんどG1ベース並みと言っても過言ではない。
その居住性の中心と言うべき中央車両。
その中央部における長大な中央室。
長方形のテーブルを囲み、席に着いている三人の男女。
いかにも年は若いが、歴戦の強者といった風格の漂う、最上座の人物。
− 「ナイトオブアイン」ローランス・ジョージ・ヴァルトシュタイン辺境伯中将 −
その右正面に位置し、両腕を組みつつ、何か思索に耽っている感じの知的な青年。
− 「ナイトオブツヴァイ」アレウス・アルフォード・アレキサンダー伯爵中将 −
その反対側において、いささか神経質気味に、その美貌に凄みを加えている女性。
− 「ナイトオブフィアー」イースリット・リア・アリューシア伯爵少将 −
その上には豪華なテーブルクロスが敷かれ、更に上には如何にも高級そうな皿やグラスが置かれている。
その中央には大きな果物入れ。
やがて空いている下二つの席を、いささか不快気に見回す女性。
それを見て軽い苦笑を浮かべる最上座の男性。
プシュッという音と共に開かれる扉。
中に入ってくる一人の少女。
− 「ナイトオブジーベン」エミリオ・バーンスタイン子爵准将 −
一緒に入れない、メイドが残念かつ心配そうにそれを見送る。
閉まるドアと共に行われる挨拶。
「…遅れました…」
それに対し何か声を掛けようとする先着の女性。
それを遮るかのように先に声を発する最上座の男性。
「いや。問題ない。定刻通りだ」
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JIN 2018年09月12日 (水) 13時44分(10) |
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