とある山中の深き森・・・その中の大木に巨大な蛹が付いていた。まるで人間が入っているような大きさの。どくんどくん・・・と心臓の如く動いていた・・・その中のものが成長しているように。
「ん・・・」 ここはどこだろう?真っ暗で狭い・・・でも棺の中ではなさそうだ・・・私の身体は裸になっていて蹲っている様だった。 「何で・・・生きてるの?・・・私・・・」 私は生前は昆虫好きな少女だった。夢は昆虫学者になる事であった。でも・・・サソリの毒にやられ、あっけなく死んでしまった。皮肉なものね・・・好きな昆虫に殺されるなんて・・・ 最後に見た光景はサソリに自分の胸を刺されるところだった。あれは夢ではないはずだ・・・確かに私は死んだはずだ。最後を迎えたはずなのに・・・ 「んん・・・眠・・・」 私は突然睡魔に襲われ眠りについてしまった。どういう状況かわからないのに・・・
どくん!・・・どくん・・・! そして何時間たったのか。私は胸の鼓動で目覚めた。 「ん・・あ・・・胸が・・・バクバクしてくる・・・ッ」 どくん!どくん!どくん!どくん! 鼓動が高くなっていく。私にこの狭い空間から出ろと言っているように! 「あっ・・・ああ・・・ここから出なきゃ・・・んんんん!!」 私は背中から出ようとした。そして・・・ バリバリバリバリ!! 「んあぁっ!」 背中からやっと外部に出ることに成功した・・・私の裸身は中に入っていてわからなかったけど粘液でねちょねちょであった。 「え?これは・・・蛹だ・・・」 私は前方に目をやった。私を閉じ込めていた空間の正体。それは巨大な蛹であった。ちょうど人が入れるほどの大きさの。 「何で私蛹に入っていたの?・・・嫌だ・・・しかも裸で・・・」 私は今頃赤面になって胸を隠した。自分の身体は生前のままだ。綺麗な肌、少し大きく膨らんだ胸、美しいボディラインと脚線美、何もかもが生きていた頃のままだ。 「ここ・・・どこ?」 私は周りを見渡した。ここはどこかの森みたいだ。今朝になったみたいだ。自分が入っていた巨大な蛹は大木に付いていた。 「んん!ああっ!」 突然胸に痛みが走ったと思ったら背中と尻に激痛が走り・・・べきぃ!と言う音とともに背中と尻から何か出た感触がした。私は自分の背中と尻を見た。そして驚いた。 「あん・・・何よ一体・・・って?!・・・羽に・・・尻尾?」 何故か私の背中から蝶の羽と尻尾部分が生えていた。さっきの痛みと音はこの羽と尻尾が生えた際のものだったと確信した。 「まさかこれって蝶化身?私・・・蝶になったのかしら・・?」 蝶化身。それは死んだ人間の魂が蝶になるというもの。私は昆虫に関する伝承もいちよう齧っていた。だから確信した。私は蝶になったのねと。 「皮肉なものね・・・昆虫マニアだったのに好きな昆虫に殺され、そして昆虫に生まれ変わっちゃうなんて・・・」 そのときそよ風が吹いた。全裸状態の私はそれを全身に受けた。気持ち良いなと言う感触に襲われた。 「あぁん・・・風が・・・気持ち良い・・・浮かした後にこんな気持ち良いこと・・・」
続く
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