日の落ち始めた神社の境内で、ザクッ、ザクッと枯れてしまった落ち葉の上を裸足で歩く少女がいた。 腰まである月白の髪に竜胆(リンドウ)色の目、透き通るような白い肌。 10人中10人が振り向くであろう美しい容姿なのは確かだが余りにも異色すぎる。 その少女は一点を見つめたままそのまままっすぐに足を進めていく。 その少女の視線の先には子供達が輪を作って無邪気に遊ぶ姿。 真ん中には鬼になってしまった子がうずくまっている。
『かーごめ かーごーめ
かーごのなーかのとーりーは
いーついーつでやある
よあけのばーんに
つーるとかーめがすーべった
うしろのしょうめんだーあれ』
「えーっと…千夏ちゃんっ」
ザクッ…ザクッ…
「きみたち、もう帰りなさいな」
さっきの少女が少し高めの声でやんわりと言った。 すると子供たちは異色の少女に驚きながらもまだ遊び足りないのか不服そうな顔をしながら少女を見る。
「もうこんなに暗いのよ?あんまり遅くてはあなた達のかあさまやとうさまが心配なさるわ」
そう言われて空を見れば確かに日は殆ど落ちてしまっていて、烏(カラス)がかぁかぁと鳴きながら塒(ネグラ)へと帰っていっている。 流石にこの暗さでは怖かったらしい子供たちが少女に"わかった"と言って1人2人と帰っていく。 しかし1人の少年が途中で立ち止まって子供なりの腹いせだろうか、 "俺、また明日も来れるから白いねえちゃん一緒にあそんでよー!"と叫ぶ。 すると少女は手を振って、
「分かった、また明日一緒に遊びましょう?だから早くお帰りなさいな。」
子供は大きく首を縦に振って、また叫ぶ。
「白いねえちゃん、名前何て言うのー?俺藤次郎っていうんだ!」
少女は藤次郎にほほ笑んで言う。
「私は天い…、伊音(イサネ)というの」
それからまた約束を取り付けてから藤次郎は帰って行った。 伊音はその姿が鳥居を通っていくと、はぁ…と溜め息をついて本殿へと歩き入っていく。 そして本殿の一番奥の座へ座り、"稍景(ショウケイ)"と名を呼ぶように呟けば、一人の青年が霧を纏って現れた。 稍景と呼ばれた青年の姿が完全に現れると霧は遊ぶようさらりと周りを通り消えていった。 濃紺の目に伊音を映し、天鵞絨(ビロウド)色の少し長めの髪を掻きながら稍景は言う。
「まーたお前は本殿の外にでたのか。全く…懲りないなぁ、天一は」
すると伊音…否、天一は不貞腐れた様に頬を膨らましながらその瞳に稍景を映した。
「…だってここにずっと座って居たって何にもならないでしょ?ただ時間が過ぎていくだけよ」
「そうは言ったって天一はここの主だろ?ちゃんとしとかねぇと。人間の上に立ってるって自覚はあんのかよ」
"だいたいなぁー、"と日々耳に蛸が出来るほど聞かされている稍景の説教が始まり、 天一は人知れず重い重い溜め息をついた。
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