ザァァ…… 見渡す限り青い世界 ここはとある大海原 ティル「……なぁおい。マジで行くのか?」 啓助「あ?当たり前だろ。こういうのは徹底的に!それが俺のポリシーだ」 ティル「いや、ポリシーでもポリープでもいいんだけどよ……問題はそこじゃなくて、こんなのに乗って行くのか?マジで」 啓助達が今乗っているのは、戦艦大和を彷彿させる巨大な鋼鉄の船 ……ではなくその陰にあるオンボロの手漕ぎボート 啓助「うっせぇぇぇ!本当はジェケットで行きてぇんだよ!速いし安全だし!でも誰かさんが壊しちまったんだろーが!だ・れ・か・さ・ん・が」 その言葉がティルにグサリと刺さる ティル「うぐっ……まぁ小さい事は気にすんな☆それが男ってもんd」 啓助「充分大きい事だろうがぁぁぁぁぁぁぁ!!」 啓助がティルに掴みかかって揺する ティル「あうあうあう………あ!おい啓助!前!!」 啓助「あ゙ぁ?」 ティルが指差す方向を不機嫌な顔で見る そこには、巨大な風穴が口を開けている 5つの球はそこに吸い込まれるように飛び込んだ それに続いて啓助達も飛び込む ……もっとも啓助達は自ら飛び込んだ訳ではなく、ブラックホールのようになっている風穴に吸い込まれたのだが 啓助「うわあぁぁぁぁぁぁぁ!!」 上下左右も、そもそもこの世なのかそれ以外なのかもわからない空間を漂う
それからしばらく経った 波の音で啓助は目を覚ます そこには見渡す限りの砂浜 どうやらどこかの海岸らしい 横にはティルの姿も見える 啓助「やれやれ、漂流したか……!!?」 起き上がろうと上体を起こした啓助の首元に槍が突き付けられる 「動くな。着いてきてもらおうか」 兵士風の男はそう言うなり啓助達に縄をくくりつけ、馬に繋げて出発する 啓助「いだだだだだ!ちょっ待てちょっ!痛いってこれマジで痛いから!!」 馬に引きずられて転がる啓助
引きずられること数分 馬はある城の前で止まった 「開門!開門ー」 門番と思われる兵士がそう言うと、城の跳ね橋がゆっくり動いて橋がかかる 啓助「ぜーはーぜーはー……ここが目的地か?」 啓助が城に入ろうとする男に聞くが返事をしない 啓助「……ちぇっ冷たいでやんの」 やがて馬が止まると、縄が馬から外され、啓助達は縄にくくられたまま男に連れて行かれる そのまま長い階段を上り、ある部屋に入る そこは広い部屋になっており、その向こうに誰かが椅子に座っているのが見えた 「王、不審者を捕らえました」 啓助「誰が不審者だゴラァァァァァ!!一言も話さずに人を勝手に連れていったお前の方がよっぽど不審者だろうが!!」 王「その者、静かに!」 さっきの男−兵士に吠えかかる啓助を王が諌める 王「……してそこの者、おぬしいったい何者だ?この近辺では見掛けぬ顔だが」 ティル「フッ……通りすがりの仮面ラ(ゴスッ)」 ティルが言い終わる前に啓助が強烈な頭突きをかます 子供の拳くらいある大きなタンコブを浮かべてうなだれるティル 啓助「失礼。俺は三ノ宮啓助。日本という国からやって来た」 兵士「貴様!デタラメを言うと承知せぬぞ!!」 啓助「は?」 何言ってんだこいつ、という顔で兵士を見る 王「ニホン?……はて、そんな国があるという記録は無いが……」 ますますもってわからない 日本が存在しないと言う− そんな国があるのだろうか 日本を全力で否定しているのか、それとも外国もわからないほど田舎な国なのか、はたまたジョークなのか…… あらゆる可能性を考える しかしこの周りにいる者達の表情を見る限り決して嘘を言ってる訳ではなさそうだ そこで啓助の頭にある可能性が浮かんだ 啓助「あのぉ、一つ聞いていいっすか?」 王「なんだ。申してみよ」 啓助「ここは……何て言う国だ?」 周りから嘲笑を浴びせられる覚悟で聞く 当然のように周りから馬鹿にしたような笑い声が聞こえる 王「……ここは、マーメイ島」 周りの笑い声も気にせず、笑わずに王が答える マーメイ島 少なくとも啓助の知っている世界地図にそんな国は無い そう。ここはもはや啓助の知っている世界では無い どこかの異世界の島なのだ
王「………とりあえずお前が謎の人物という事実に変わりは無い。そんな者を野放しにはできん……地下牢へ連れてゆけ」 兵士「はっ!!」 啓助「何!?」 衝撃の事実に驚く啓助へさらに驚くべき事が襲う
ガシャー……ン 兵士「今、お前のことについて王家で吟味中だ。それが終わるまで大人しくしてもらおう」 ギィィィ…… そして重苦しい音を立てて牢のドアが閉まる 啓助「なっ……ちょっと待てよ!いきなりこれは無いだろ!?おい!おーーい!!」 兵士に向かって叫ぶが、さっき城へ入る時と同様に返事は帰ってこなかった
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