それからしばらく二人は談笑した スーは、既に任務のことなど忘れていた ……いや、忘れようとしていた しかしその楽しい時もすぐに終わろうとしていた
***死神界*** その光景を水晶……ではなく地デジ対応大型ワイドスクリーンのモニターで見ている者がいた 「あ・の・ドラ息子が………」 そのモニターを見ていた者 死神大王は怒りに震えていた 「……もうあいつは頼りにならん!キール!キールはいるか!?」 「お呼びで」 スタッ 死神大王が叫ぶと同時にベテランっぽい死神が現れた 「……あの娘を殺せ!」 「かしこまりました!ですがあの娘にはご子息のスー様が……」 「あんな奴わしはもう知らん!なんなら娘と一緒に殺ってもかまわん」 「………かしこまりました」 キールはニヤリと笑うと、鎌を持って飛び立っていった 「…あの〜大王様」 側近が話し掛ける 「なんだ?」 「スカパーのターミネーター2観たいんでそのモニター貸してくれません?」 「お前はここで緊迫感の無いことを言うんじゃねぇぇぇぇぇ!!」 ガッゴッゴスッバキッ 死神大王が側近にマウントポジションで殴り掛かった 「ぐぉっぶへぁ!2011年からアナログ放送は終了しますので今のうちに地デジ対応テレビに切り換えてくださーい!!」
********* 「それでさー」 「へ〜何々?」 と二人が談笑していると 「おい」 「あ〜ちょっと待ってね後で………」 スーが言いかけた所で声のした方……後ろを振り向くと、スーとは違う、見るからに強そうな死神、キールが立っていた 「死神大王様はお怒りだぞ。お前がさっさと終わらせないからよ……やらないなら代わりに俺が」 「やめろ!」 スッ キールが鎌を振り上げた瞬間、スーが後ろからキールの首元に鎌をつきつける 「……なんのつもりだ?」 「その娘に手を出すな!」 「なんだと?………はは〜んさてはお前……」 ニヤニヤしながらスーを見る 「………何?」 「惚れたな?この娘に」 「!! ………んな訳あるか!」 スーは顔を真っ赤にして否定する 「じゃあ殺してみろ!」 「だが断る!」 「…ちっ……面倒臭ぇな」 不機嫌そうな顔で言うとスーの方を振り向き、その手に持った鎌でスーを斬った 斬られてその場で倒れるスー
「スー!」 「さて邪魔はいなくなったな」 スッ……… そう言うと鎌を振り上げ 「あばよ」 そして鎌を振り下ろすその瞬間! ドスッ キールの体をもう一つの鎌の刃が貫いた 「殺させやしないって……言ってるだろ」 その鎌を持っていたのは 斬られたはずのスーだった 「馬鹿な……お前…何故生きて……」 キールはそう言い残して灰のようになってサラサラと風に流されるように消えた 「……護りたいものを護るため……そのためなら何度だって立ち上がるさ」 そう言った直後、スーはガクンと膝を落とした 「スー!大丈夫!?」 「……よかった…無事だね」 スーはホリィを見て安心したような顔をする しかしスーの体は少しずつ消えかけている 「あなた……体が……」 「……どうやら、さっきの傷が深かったみたいだね」 さらに消滅が加速していく もう既に体の3分の2まで消えかけている 「消えちゃ駄目」 ホリィが消えかけているスーの手を握る 「せっかく……せっかく始めて会えた友達なのに………こんなすぐにお別れなんて悲しすぎるよ」 ホリィの目から涙が流れる 「…………ありがとう」 それを聞いてスーは微笑んだ 「………もし、もし僕が生まれ変われるなら……次は君と同じ……人間がいいな」 言い終わると、スーはその手を握り返してそのまま消えた
それから数十年後 ホリィの心臓の病は奇跡的に治り、大人になった そして今日この日、世界にまた新たに一つの命が生まれた ホギャーーー! 「おっとと……元気な泣き声の男の子だな、ホリィ」 「そうね」 笑顔で子供を抱いている女性が答える 「………さて、どうするかな。この子の名前」 「……実はもう決めてるの」 「へ〜。なんて名前だい?」
「………スー」 すこし間を開けて微笑みながらホリィが答えた
〇やさしい死神のはなし〇 †完†
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