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[670] Spirit
コトコ - 2009年01月25日 (日) 00時00分

初めまして、コトコといいます。
内容は、アクション系になると思います。
下手ですけど、どうかよろしくお願いします。

[677] 第一章 暗転の夜
コトコ - 2009年01月26日 (月) 00時59分

ここはー月明かりが照らすとある街。
いつもならこの時間でも人通りは多いが、今日は不気味なほど静かだ。例え不審者が歩いていたとしても、誰も気にすることはないだろう。するとそこに不審者、いや一人の少女が歩いてきた。年齢は十六、七くらいで凛としたその瞳におもわず魅了されそうだ。少女の名はー宮元紗代という。紗代は周りの建物を見渡しながら、この辺りを行ったり来たりしている。どうやら、何かを探しているようだ。
「まったく、ここまで静かだとせっかくの綺麗な月が台無しじゃない」
彼女はこうつぶやきながら、なおも周りを見渡している。
「うーん、今日はいないのかな。でも厳戒態勢だから途中で帰るわけには行かないし。」
と文句を口にしながら、彼女はふと足を止めた。どうやら街の端まで来たみたいだ。ここはどうやら、工場のようだ。
しかし周りに置かれている機材を見ると、ずいぶんと錆び付いている。おそらく、何年も前に閉鎖したのだろう。
「・・・ビンゴ、やっぱりいたんだね。」
そう言うと同時に紗代は、ポケットからナイフを取り出した。
「でも、良かった。もしかしたら警察行きだったかもしれなかったし。」
こんな物騒なことを言いながらも、彼女の視線はずっと工場のシャッターを見ている。すると突然、シャッターが動き出した。
正確には、壊されているようだ。
「ふーん、そうくるんだ。まあいっか。」
シャッターはバァンバァンという激しい音の末、ついに壊されてしまった。中から出てきたのはー人のような形をした異形の生物だった。彼女はナイフを持つ手に力を入れる。
「ずいぶんと手間をかけさせてくれたね。まったくいい加減諦めた方がいいのに、それじゃあ天国にも地獄にもいけないよ。」
この一言が宣戦布告になった。異形の生物は、ものすごいスピードで彼女に襲い掛かろうとする。

だがーその前に彼女は、その生物にナイフを突き入れた。

「グガッ・・・!」
とその生物は苦しみもがきながらも、ついには消えていった。
それが消えた後、二つの不思議な光が彼女の周りを取り囲み、互いに交差しながら空へと消えていった。
「あいつが持っていた魂は二つか・・・。本当、人の魂を解放するのも大変だな。」
「・・・だいぶ素早くなったんだな。でもそんなことばっかり言ってるから、いつまでたっても大変なんだよ。」
と暗闇から突然、少年が出てきた。
「うわっ!?びっくりしたじゃない、真!」
真と呼ばれたその少年は、笑いながらこっちに向かってきた。
「仕方ないよ、紗代一人だと何が起きるかわかんないし。」
「むう、失礼な奴だね本当。」
と紗代は軽くふてくされた。
「まあまあ、そんな怒るなよ。俺だってたった今、自分の任務を終えたばっかりなんだぜ。」
「じゃあ、お互い報告するだけってことか。」
「そうだな・・・何なら俺の飛行艇で戻るか、すぐ近くに止めてあるから。」
「うん、じゃあそうしてもらう。」
そう・・・彼らは国家秘密調査団の一員なのだ。
ありとあらゆる問題を裏の裏で解決するーいわばエリートの集まりだ。この組織の人間は、驚異的な運動能力と圧倒的な戦闘能力を持っていなければならない。ーとまあいろいろあるわけだ。
「さあ、そろそろ出発するぞ。」
と真が声をかける。
「うるさいなあ、それくらい言われなくともわかりますって。」
と紗代は怒りながらも、艇内に乗り込んだ。
そして彼らを乗せた船はー空の彼方へと消えていった。

[681] 第一章 暗転の夜
コトコ - 2009年01月29日 (木) 16時40分

真こと木下真が用意した飛行艇は、わずか数分で調査団本部へとたどり着いた。しかし、本部といってもそんなに立派な建物ではない。一応政府の機密機関なので、表で目立ってはいけないからだ。それに会社名まであって名前は「佐々木建設」となっている。真達の乗っていた飛行艇はゆっくりと地面に降り立った。
「ふぅ・・・結構時間がかかるかと思ってたけど、意外と早く着いたね。確か新型のエンジンを搭載したんだよね?」
「そうだよ、まあ俺が操縦するからってこともあるけど。」
と真は自慢げに言ってきた。
「あ〜れ?そんなに自慢できるほど上手かったっけ?見てると、かなり危なっかしいのにね。」
「・・・うるせぇな、というかこんなところで無駄話してる場合じゃないぞ?」
「そうだね、早く報告しないと。」
と二人は調査団本部の中へと入った。
中のつくりはーやはり正面には会社の受付のようなものがあって、階段も目の前にあった。そのときちょうど、階段から少女が降りてきた。−なんだかものすごく怒った顔をしている。
その少女は紗代たちに気づくと、こちらに向かって歩きながら言った。
「もう!何をしていたんですか、姉さん!」
「えっ?今帰ってきたところなんだけど。」
「・・・それならいいです。姉さんのことだから寄り道でもしてるのかと思っていました。」
この少女はー紗代の妹、奈美である。姉とは違って、まだ可愛らしさが残っている。
「それはそうと・・・何だか団長が話があるって言ってましたよ。」
「わかった、じゃまた後でね。」
紗代たちは、階段を昇って二階の団長室へと向かった。
「・・・失礼します。」
とドアをノックしつつ、中へと入った。


団長室は以外に散らかっていて、部屋の中はなんだか狭く感じられる。そこには団長の佐々木幸弘が、椅子に座って待っていた。
「おお・・・やっと帰ってきたか、随分と手間取っていたな。」
団長は厳しい顔をしながら言った。
「ええ、紗代が手間取っていまして・・・。」
「手間取ってないわよ、ちゃんと片付けてきたんだから。」
と紗代はきっぱりと言い切った。
団長は厳しい顔を少し緩めながら、本棚にあったファイルを取り出す。そしてそのファイルを開いて、「任務達成」と記した。
「それじゃあ任務達成だな。お前たちも最近は人鬼退治ばっかりだな。」
「そうですね・・・。」
人鬼とはー数百年も前から人の魂を奪っていく怪物だ。
もとはというと、国家秘密調査団は人鬼を全滅させるために作られた機密機関なのだが、今はいろいろなことを受け持っている。
しかし今は厳戒態勢がでていて、任務がほとんど人鬼退治になっている。
「ところでな、帰ってきたところ悪いんだが次の任務があるんだ。」
と団長は眉間にしわを寄せてつぶやいた。
「何ですか・・・?」
紗代は少し不安な顔で聞いた。
「実は・・・先ほど入ってきた情報だと明実村に人鬼が大量に発生したそうだ。」

[686] 第一章 暗転の夜
コトコ - 2009年02月01日 (日) 12時00分

(紗代視点でいきます。)

「明実村に人鬼が大量に発生したそうだ。」
団長のこの一言で私は、状況を一瞬で理解できてしまった。それでも念のため聞いてみる。
「あの・・・大量発生ってどのくらいなんですか?」
「少なくとも、二百体以上はいるとさきほどの連絡で聞いた。」
やっぱり・・・と私は思った。こういうときの予想はたいてい当たってしまうものだから恐ろしい。そう・・・人鬼が大量に発生するということは、霊脈が乱れているということだ。そうなると全ての面で悪影響がでてくる。大規模な自然災害が起き、人類は滅亡に向かっていってしまうのだ。こんなことを考えていると突然、真が口を開いた。
「あの・・・明実村ってあの問題の村ですか?」
「まあそうなんだが、一応そこら辺も含めて調べてきてほしい。」
団長のこの言葉に、真は黙ってしまった。
明実村では、一月ほど前に人鬼になりすましたある村民がいたそうなのだが、どうもそれがおかしいそうなのだ。そう、まるで本物の人鬼そのままのようなのだ。
「それじゃあ、二人で他の団員の所へ行ってきてくれ。くれぐれも無理はするなよ。」
突然聞こえた団長の声で、私の意識は引き戻された。
「わかりました、それでは行ってきます。」
そういって私と真は、団長室を後にした。


私たちは、真の飛行艇を使って明実村へと急いだ。
「なんだよ・・・あれ。」
真が何かを発見した。上空からではよく見えないのだがソレは、はっきりと私の目にも見えた。明実村一帯が、黒い霧に包まれているのだ。普通なら、夜の闇に溶け込んでしまいそうな霧なのだが、ソレは闇よりも濃い黒だった。
「仕方ないか、それじゃあ私一人でとりあえず様子を見てくるよ。」
そう言って、後ろのドアを開けようとした。が、真がなんだか心配そうな顔をしている。
「お前・・・一人で大丈夫なのか?」
「心配しすぎ!これくらいのことできないなんて、情けないし。だから、真はここで待ってて。」
最後にこう言って、私は後ろのドアから飛び降りた。


ードスンという鈍い音を立てて私はなんとか着地した。
「しかし・・・なんか空気が違いすぎるな、もしかしたら結界が張られているのかも。」
私は、こういいつつ先に進んでいった。明実村は以前として、霧に包まれている。それに人の気配が全くしない。もしかしたら、この辺はもう襲われた後なのだろうか。私は慎重に歩いていった。
「・・・!」
突然、何かが来たみたいだ。私はポケットからナイフを取り出す。そこには明実村の村民だと思われる人達が、怪しく目を光らせながら、私の方へと向かってきている。しかも数はー相当いるようだ。
「・・・しゃあないな、アレを使うしかないかも。」
私は動揺することもなく、淡々といって爆薬を取り出す。
すると、どこからか声が聞こえてきた。
「へえ、そんなものも使えるんだ。さすが政府の機密機関に属しているだけあるね。」
「!!あんたは、誰?」
「あ〜、僕かい?僕は、ここの人鬼の頭領的な存在さ。まあ、レベル1だけどね。」
「・・・あんたが、ここの村民を人鬼に変えたのか?」
「まあ、いうならばそうだよね。ここの人間を殺るのは意外と簡単だったしね。後、そんなに怒らない方が身のためだよ、君のために人鬼はたくさん用意したんだし。」
「あんたまさか!生身の人間を人鬼に変えたのか!」
「そんなとこ、それじゃあ頑張って。くれぐれもあの人を刺激しないでね。」
いきなり現れた少年はそういい残して、去ってしまった。
置き土産はどうやら・・・コイツらの始末のようだ。
私は武器を、ナイフから双銃へと切り替えた。
「仕方ない・・・か。」
とため息をつきつつ、いよいよバトルが始まった・・・。

[694] 第一章 暗転の夜
コトコ - 2009年02月06日 (金) 02時40分

(紗代視点です)

人鬼たちが、一斉に向かってくる。私は双銃と爆薬を使い分けながら、退治していった。
(でも、どうして生身の人間を人鬼にすることができたんだろう。)
ふと、先ほど突然出てきた少年が言っていたことを思い出す。そう・・・考えれば考えるほど、不思議なのだ。そもそも人鬼は、大昔の精霊が霊脈が乱れたことによって、私たち人間にも見える人鬼へと突然変異したのだ。だから、生身の人間が人鬼になること自体が考えられないのだ。だが・・・あいつはそれを可能にしているようだ。
(どうやら、只者ではなさそうね・・・。)
なんだかいつもとは違う、別の緊張がはしっている。
(久々の大事になりそうな予感。)
どうやら私は、こういう大事が好きなようだ。そのためか・・・なんだか気分が良くなってきたのか、私は少し高揚してきたようだ・・・。
(うん・・・?なんだか人鬼たちの様子がおかしい・・・?)
ほんのささいな予想は見事に的中してしまった。突然、人鬼たちの動き方が変わってきた。なんだが操り人形の劇を見ているようだ。
「・・・ギガー!!」
何体もの人鬼たちが一斉にこの耳障りな叫び声を上げた。
(くっ・・・!また霊脈が乱れたの?)
ただでさえ非常事態なのに、と内心で舌打ちをしつつ、こちらも必死で抑え付けようとする。人鬼たちは、地に足は着いているものの、なんだか、そのまま飛んでいきそうな軽さもあるような気がする。
「・・・・・・」
私は無言のまま、何体かずつを瞬時に斬りつけた。
「ガア・・・!!!」
「遅い。」
その内の何体かは背後から狙おうとするのだけれど、それよりも先に私は、気配に気づくことができる。こんなのは、私が「敵」と認めるほどの人鬼ではないのだ。それなのに・・・。
「一向に数が減らないなんてどういうことだろう?」
そう・・・先ほどの段階から気づいてはいたが、数が減っていないようなのだ。むしろ増えているような気がするのだ。
(面倒だな・・・爆薬を一気に使おうかな・・・。)
そう考えた私は、人鬼の溜まっている方向に向かって片っ端から爆薬を投げ続けた。そしてついに・・・奴らは一体たりとも、いなくなった。
「ふう、なんとか片付いた。これで退治は終わりだね。」
でも確か、さっきまでここは結界が張られているようだったから、それを解除しに行こう、私はそう思った。


そうー背後から忍び寄る、ある影にも気づかずに・・・。


ブシュン。そう、無機質な音が闇に響き渡った。私はそれを、人事だと思っていた。しかし・・・異変にすぐ気がついた。
「不覚ですね、調子に乗っているとこうなるんですよ。」
さきほど消えたと思われた謎の少年が、私のお腹にナイフを突き刺している。あたりに血しぶきがとんでゆく。まるで、自分を他人の目線でみているような気持ちだ・・・。突然の出来事に、思考回路がついていかない。
「ふっぐ・・・!」
呻き声を上げ立っていられなくなった私は思わず、地面に座ってしまった。
「ふふ、どうですか?苦しいですか?」
「・・・・・・」
あまりの苦しさに会話もできない。
「僕が、貴方のことを刺したのは単に人鬼を全滅させた恨みではありませんよ。」
そういって少年は不気味な笑みを浮かべながら、私に近づいてきながらこう言った。
「貴方には今から、御膳様に会ってもらいます。」

[704] 第一章 暗転の夜
コトコ - 2009年02月09日 (月) 01時50分

(通常視点です。)

(御膳・・・?)
聞いたこともない名前だ。紗代が訳がわからないような顔をしていると、少年は笑いながら、
「はは!面白いですね、その顔!まあ、いきなり言われてもわからないですよね。」
こう言う。少年は私から少し遠ざかりながら喋り続けている。
「まあ、僕のこんな攻撃でやられてしまうくらいですからね、貴方なんかに御膳様の説明をするよりは直接会ったほうが早いかと・・・」


ー彼がそういうより早く、彼女は少年を切りつけた。ー


「・・・・・・」
傷一つ付いていないが、少年はあっけにとられている。その隙をついて、彼女はまたナイフで彼のお腹を数回刺した。血しぶきが飛ぶ。が少年は相変わらず無傷だ。だが、苦悶の表情を浮かべていた。
「・・・油断していました、まさかこの数分の間で回復するとは。じゃあ、先ほどのうめき声も・・・演技ですね?」
「そうだよ、だいたいあんな程度で私を傷つけられるとでも思ってたの?」
彼女は、彼の返り血を見ながら満足そうにニヤリと笑った。その光景を見た者はー例え彼女のことをよく知ってる人物が見たとしても恐れを感じてしまうーこの雰囲気はそんな恐怖感を感じさせていた。彼女は、無言のまま少年の脳天を狙ってナイフを刺そうとした。カキン、と攻めに入った紗代のナイフと、すかさず護りに入った少年の長剣が交差する。それに伴い、二人の視線も交差するー。
「ふ〜ん、そんな実力があるのにさっきは人鬼共に頼っていたんだね、まああんたも人鬼なんだろうけど。」
半分、笑いを交えて紗代はそう言った。
「・・・うるさいですね。あれはきまぐれですよ、きまぐれ。」
「それよりも、あんたは何者なの?それとさっきから気になってたんだけど・・・ここの村の人達の魂はどこにやったの?」
彼女はナイフを握り締めながら、先ほどから気になっていた質問をぶつけた。彼は、その質問に答えたくて仕方ないという顔をしている。
「・・・聞きたいですか?僕の正体と僕たちの目的を。」
少年は歪な笑いを含みながら、しゃべり始めた。
「まずは自己紹介ですね、僕の名前はレベル1ー智弘です。」
「レベル1・・・?」
「まあ詳しくは話せませんが、そのうちわかりますよ。で、ここの村民の魂は僕たちの「実験」に使わさせて頂きますよ。」
不気味な笑いを残しながら少年ー智弘の姿は消えていきそうになった。
「待って!じゃあ、さっき言った御膳って誰なの?」
「ふふ、それは貴方の左手にある「痕」が鍵ですよ・・・では、次の機会にでもまたお会いしましょう・・・。」
そういって智弘は消えてしまった。紗代は困惑の表情を浮かべながら、呆然と立ち尽くしている・・・。
「なんで、あいつは知ってるんだろう?私の左手のことをどうして・・・?」
彼女は、ただただそこで立ち尽くしていた。


「痕」−それは呪われてしまった者につけられるものだ。昔々、遠い昔にこの地では大災害が起こった。そのときの死者の呪いがたまに生者に移ってしまうことがあるそうだ。それが「痕」の呪いーこの「呪い」は人間たちに様々な悪影響を及ぼすそうだー。


(紗代視点です。)
あれはー私がこれに気が付いたのは十数年前のある出来事だった。そのときの私はまだ四、五歳のときであり、妹の奈美はまだ二歳のときである。あるとき、私たち姉妹が公園から帰ってくると自分の両親が、家の中で無残に殺されていたのだ。最初、私は現状を理解できなかった。まだ、幼かった奈美は何が起きたのかさっぱりわからないという顔をしている。身寄りの無くなった私たちは仕方なくしばらく施設に預かってもらうことになった。しかし施設では私はしばらく口が聞けなかった。妹は先生方が可愛がってくれたが私のほうはもともと友達付き合いが苦手だったためか、友達が一人もいないーそんな状況が何日も何日も続いていたー。


あるとき、私はこっそり施設を抜け出した。一人になりたかったためだ。あそこはうるさすぎてじっくり考えられないのだ。そう、私はそのとき自分ひとりで生きていこうと思っていたのだ。今にして見れば、そんなことできるはずも無いというのに、幼かった私はー施設から遠ざかるように必死に走り続けた。


ーしかし、私はそこから十歳になるまでの記憶がない・・・。何故だかわからない。ただ、そこだけの記憶がポッと抜けているのだ。思い出そうとしても、消しゴムでもかけられたかのように真っ白な画面になる。そしてまもなくして私はー国家秘密調査団に保護されたそうだ。妹や見知らぬ誰かに囲まれて最初はかなり戸惑った。何だかよくわからないことまで叩き込まれて・・・。でも、もうそれ以外に生きていく当てがないのだ。だから、私は今もこんな生活を送っているー。

とまあ、私の過去を簡潔にいうとこんな感じなのだ。そしてそこで「痕」との関係は全く見えてこない。しかしー私には「痕」をつけられた記憶だけは残っている。具体的には思い出せないが、何故か男三人に囲まれて・・・私は意識を失ったはずだ・・・・
「・・・そろそろ、帰らないとね。」
と、私は無理やり過去のことを考えないようにした。こうでもしないと、歯止めが利かなくなるからだ。
「結界も勝手に消滅してきたし、真を呼んで帰ろうかな。」
そういって私は真を通信機で呼び出そうとした。
「もしもし?真、今そっち行くから迎えに来て。」
「・・・お前、なんか元気ないな。何かあったのか?」
「何も無いよ・・・。」
そういいつつ、私は無理矢理通信機を切った。


第一章  完

[744] 第二章 光と闇
コトコ - 2009年03月04日 (水) 14時32分

    

    ーここは・・・?
白と黒で形成されたその世界の中に、一人の人間がいた。見た目からするに、女性だろう。長くて優美な髪の毛を持ったその人は、物悲しげな目で世界を見渡し問いを投げかける。
    ーここは・・・?
その人はまた、同じ質問を繰り返す。この世界はー不思議だった。白い闇と黒い光で創られていて、色味を一切持たないモノクロの世界。そう例えるのなら、過ぎてしまった過去の写真を見つめているかのよう。まともな感覚を持った人間なら数時間、ここに居るだけで精神をおかしくしてしまうだろう。
「・・・・・・・・・・。」
そんな世界を私は、望遠鏡を通して見つめていた、何時間も何時間も。いや、ここには既に時間の感覚すらないのかもしれない。私はその女性から目を離して、周りを見渡してみる。
「酷く、現実味に欠けた世界だね・・・。」
思わず、私はそう呟いた。呟かずにはいられなかった。ふと、さっきの女性が私に気づいたようだった。その人は必死に、何かを言おうとしている。口の形を見てみると、こう言っているようだ・・・。
    ーた・・・すけ・・て・・・。
「・・・・・・・・・・。」
私は、何故かその人を助けなければならないと思った。心より体が先に動いてしまう。私は、望遠鏡の外から助けようとした。
「ま・・・ってて!」
そういうものの当然、手が届くはずが無い。それでも私は必死に手を差し延べようとする。
    ー・・・・・・・・・・!
彼女は私に気づいたのか、手を差し出そうとしたー。


ーすると突然・・・周囲の空気が丸ごと切り取られるような気がした・・・。


その合図とともに、女性の足元に黒い穴ができた。白と黒の世界でも何故か、穴が黒いことだけはわかった。女性は何が起きたのかわからないまま、おどおどしている。真っ黒の穴は女性の周りを凄いスピードで、渦巻き始める。台風のようにぐるぐる、ぐるぐると。女性もその穴に飲まれている・・・。
    ーはや・・・く・・た・・す・・・け・・・
女性がしゃべり終わる前に、穴は閉じてしまった。彼女やその周りは・・・穴に飲まれたようだ。
「どうして・・・。」
そう、どうしてだろう。私は、背筋に走る悪寒を止められなかった。急に、胃をごっそり持っていかれたような気分にもなる。
「・・・・・・・・・・。」
私はしばらくの間・・・そこから目が離せなかった。
* * * * *


「紗代!準備まだなの?」
「ごめ〜ん!もう少し待っててくれない?」
私はナイフと双銃をもって、急いで自分の部屋を出た。
「ちょ・・・紗代、危ないよ!ちゃんと武器はしまってからにしなさいよ。」
「あ・・・ごめん、かなり焦ってたからね。・・・ていうか、焦らせたのは琴乃でしょ?」
「ははは、そう怒るなって。」
私は顔をムスッとさせながら、琴乃の後についていく。これから私たちは任務なのだ。


「ていうかさ、アンタ大丈夫なの?昨日だって明実村の人鬼退治だったんでしょ?休まなくていいの?」
「ん・・・大丈夫・・・ではないけど・・・。」
そう、大丈夫ではないのだ。本当は今の時間までゆっくり寝ているつもりでいたけど、そうもいかないのがこの国家秘密調査団である。そう・・・昨日の事件の処理をしてここに戻ってくると、団長がなにやら厳しい顔でこちらに向かってきて、こういった。
「明日も忙しいだろうけど・・・実は頼みたいことがあるんだ。」
いやな予感がした。こういう厳しい顔をしているときは、いつも厄介ごとを押し付けられるからだ。
「明日、ここに向かってくれないか?」
ー北条ビル。近頃、自殺の名所として有名な所だ。
「ここを調べて来いと・・・?」
「まあ、そういうことだな。」
こういわれては仕方あるまい。私は、一、二時間寝ていない体を無理やり起こして、東琴乃と一緒にこの任務をうけることになった。ー琴乃は、私の数少ない友人の一人だ。
「でも・・・なんとか頑張んないと、うちのとこ人手が足りないし。」
「確かにね。でも、あんまり無理しないでね?何かあったら、私に言って。」
琴乃はそういっていつも私の心配をする。何だか申し訳ない気がした私は苦笑いしながら、
「了解、それじゃ行こうか。」
そういって調査団の入り口から出た。


      ー北条ビルー
こう書かれた看板を見つつ、ビルの中に入ってゆく。自動ドアは封鎖されている風もなく、いとも簡単に開いた。
「あれ?以外に簡単に開くよ、ここ。」
琴乃がそういってドアを開けた。もちろん、自動では開かないので手で開ける。
中は無人のようだ。どうやらここは大企業が使っていた建物らしいが、数年前に赤字でつぶれたそうだ。
「・・・なんか、やけに空気が澄んでるね。」
琴乃がこう呟いた。無理も無い。
本当にー本当に空気が澄んでいるのだ。まるで、山の中に居るような・・・そんな気分だ。
「なんか、気持ち悪いな・・・。」
「え?大丈夫?やっぱり寝不足?」
「いや、そういうことじゃない気持ち悪さ。」
「どんなのよ・・・。」
と何だかよくわからない会話をしていると、ビルのロビーのようなところに出た。真っ暗でよくわからないが、カウンターがあることだけはわかる。
「で・・・今回は自殺の原因を突き止めればいいのね?」
「そうみたいだよ、でもさすがにこの場所では自殺しないんじゃない?」
「だね、じゃあやっぱ定番の屋上じゃない?」
「そうだよね・・・。」
そういってエレベーターを探しているとふいに何かが転がっているのがわかった。近づいてみてみるとそれは・・・人間の生首だった。
「え・・・?」
私は特に叫びもしないで、こう言った。どうしてこんなところに、こんなものがあるのだろう。
「どうしたの?紗代。」
琴乃がこっちに近づこうと歩みを進めた。
「来ないで・・・!」
琴乃は私の言葉を無視して、隣にやってきた。
「・・・・・・・・・・。」
しばらく沈黙が続き、琴乃はようやく口を開いた。
「あはははははは!あはははははは!」
「どうしたの、琴乃?やっぱりこっち来ないほうが・・・」


こういいかけて私はー何かが自分の頭をかすめた気がした。


「・・・・・・・・・・?」
一瞬、何のことかわからなかった。何かが私の額を流れていく。血・・・だった。琴乃と思われる人物が私の額めがけて、銃を撃ったようだ・・・。
「う・・・そでしょ。」
私は思わず、腰が抜けてしまった。額から血が流れているせいか、だんだんと意識が朦朧としてくる・・・。
「あはは!嘘じゃないよ。それに私はね、本物の琴乃じゃないの。本物はね、今このビルの異次元空間にいるよ。」
偽者と思われる琴乃はクスクス笑いながらそういった。
「私はね、今琴乃の外見や能力をコピーして顕現しているの。どうしてこんなことをしたかというと・・・」
そういって偽者の琴乃はしゃがみこんで、私の首に銃を突きつける。
「貴方の痕を奪いに来たのよ。」
そういって彼女は、銃の引き金を引いた。
バァン、という激しい音が響いたかと思うとー私の意識はプツンと途切れた。




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