[677] 第一章 暗転の夜 |
- コトコ - 2009年01月26日 (月) 00時59分
ここはー月明かりが照らすとある街。 いつもならこの時間でも人通りは多いが、今日は不気味なほど静かだ。例え不審者が歩いていたとしても、誰も気にすることはないだろう。するとそこに不審者、いや一人の少女が歩いてきた。年齢は十六、七くらいで凛としたその瞳におもわず魅了されそうだ。少女の名はー宮元紗代という。紗代は周りの建物を見渡しながら、この辺りを行ったり来たりしている。どうやら、何かを探しているようだ。 「まったく、ここまで静かだとせっかくの綺麗な月が台無しじゃない」 彼女はこうつぶやきながら、なおも周りを見渡している。 「うーん、今日はいないのかな。でも厳戒態勢だから途中で帰るわけには行かないし。」 と文句を口にしながら、彼女はふと足を止めた。どうやら街の端まで来たみたいだ。ここはどうやら、工場のようだ。 しかし周りに置かれている機材を見ると、ずいぶんと錆び付いている。おそらく、何年も前に閉鎖したのだろう。 「・・・ビンゴ、やっぱりいたんだね。」 そう言うと同時に紗代は、ポケットからナイフを取り出した。 「でも、良かった。もしかしたら警察行きだったかもしれなかったし。」 こんな物騒なことを言いながらも、彼女の視線はずっと工場のシャッターを見ている。すると突然、シャッターが動き出した。 正確には、壊されているようだ。 「ふーん、そうくるんだ。まあいっか。」 シャッターはバァンバァンという激しい音の末、ついに壊されてしまった。中から出てきたのはー人のような形をした異形の生物だった。彼女はナイフを持つ手に力を入れる。 「ずいぶんと手間をかけさせてくれたね。まったくいい加減諦めた方がいいのに、それじゃあ天国にも地獄にもいけないよ。」 この一言が宣戦布告になった。異形の生物は、ものすごいスピードで彼女に襲い掛かろうとする。
だがーその前に彼女は、その生物にナイフを突き入れた。
「グガッ・・・!」 とその生物は苦しみもがきながらも、ついには消えていった。 それが消えた後、二つの不思議な光が彼女の周りを取り囲み、互いに交差しながら空へと消えていった。 「あいつが持っていた魂は二つか・・・。本当、人の魂を解放するのも大変だな。」 「・・・だいぶ素早くなったんだな。でもそんなことばっかり言ってるから、いつまでたっても大変なんだよ。」 と暗闇から突然、少年が出てきた。 「うわっ!?びっくりしたじゃない、真!」 真と呼ばれたその少年は、笑いながらこっちに向かってきた。 「仕方ないよ、紗代一人だと何が起きるかわかんないし。」 「むう、失礼な奴だね本当。」 と紗代は軽くふてくされた。 「まあまあ、そんな怒るなよ。俺だってたった今、自分の任務を終えたばっかりなんだぜ。」 「じゃあ、お互い報告するだけってことか。」 「そうだな・・・何なら俺の飛行艇で戻るか、すぐ近くに止めてあるから。」 「うん、じゃあそうしてもらう。」 そう・・・彼らは国家秘密調査団の一員なのだ。 ありとあらゆる問題を裏の裏で解決するーいわばエリートの集まりだ。この組織の人間は、驚異的な運動能力と圧倒的な戦闘能力を持っていなければならない。ーとまあいろいろあるわけだ。 「さあ、そろそろ出発するぞ。」 と真が声をかける。 「うるさいなあ、それくらい言われなくともわかりますって。」 と紗代は怒りながらも、艇内に乗り込んだ。 そして彼らを乗せた船はー空の彼方へと消えていった。
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