[400] 第1章:空へ繋がる歪み |
- 憐月 - 2008年09月03日 (水) 21時43分
ファーレイド城・謁見の間
ルフェルツ「と、言うわけ」
これまでの経緯を女王陛下であるファリニスに話したルフェルツは、まるで女王と親友であるかのような口調をした。
ファリニス「そうね・・・その話を聞いて思い当たる事はあるわ」
しかし、ルフェルツの口調を当たり前のように、神妙な面持ちで顔をあげるファリニス。 クレシアは下唇を噛みながら顔を下げていた。
ファリニス「確か8年前、とある街が襲撃されたのよ」
クレシアは更に顔を下へ向ける。 ルフェルツはそれを横目に問う。
ルフェルツ「あぁ、あったねぇ。そんな事。確か・・・」
記憶を漁り、該当する部分を見つける。
ルフェルツ「・・・【ブルーズィードの惨劇】、か」
クレシアは耳を塞ぎたくなった。 しかし、ルフェルツはそれを許さなかった。
ルフェルツ「クレシア、逃げるな。いつまでも逃げても変わらない」
その言葉にハッとなる。
クレシア(そうだ・・・その通りだ)
【ブルーズィードの惨劇】。 かつて大繁栄した街、ブルーズィードという街があった。 優れた機械技術。 多大な商業。 このファーレイドすらも凌駕すると言われるほど美しく、素晴らしい街だった。 しかし、8年前。 テロリストの襲撃により、街は崩壊した。 街に居た者は残らず皆殺しにされた。 老若男女問わず・・・。 クレシアは、奇跡的に一人だけ生き残った。 そして、復讐を誓い軍に入った。 その過去を知っていたからこそ、ルフェルツは捕虜にしないと言ったのである。
ファリニス「そうね・・・なら」
クレシアを一瞥し、処罰を下す。
ファリニス「クレシア=バルバジール」
クレシアはファリニスを見上げ、処罰を待つ。
ファリニス「あなたを、本日付けで第7聖天使騎士団に配属させます。階級は少尉。良いですね?」 クレシア「!?」
信じられなかった。 何故捕虜であるはずの自分にそのような待遇が受けられるのか。
ルフェルツ「言ったじゃん。捕虜にはしないって」
その通りであった。 ルフェルツは有言実行、嘘はつかない性格である。 たとえ嘘を言ったとしても、すぐに嘘だとばらすのだ。
ルフェルツ「さてっと、処罰も決まったし。あとは・・・」
と、大広間の扉が開き、一人の天使兵が駆け寄ってくる。 人間とは思えない凄まじい速度で・・・。(実際人間ではないが・・・)
ミィリ「ルーフェ様ぁぁぁぁぁぁ!!」 ルフェルツ「グハっ・・・!」
振り向いた直後に飛びつかれたため、喉にクリーンヒットした。
ティア「ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
渡すまいと反対側から、ミィリより強い力で抱くティアリーゼ。 更に抵抗するミィリ。 その勢いで揺さぶられるルフェルツ、心なしか顔が青ざめている。
側近1「ミィリ少尉!今は大事な謁見中で・・・」 ファリニス「いいわ、もう終わったもの」 側近2「で、ですが!」
あくまで忠実な側近にやわらかく断わるファリニス。 ルフェルツを見ると・・・。
ファリニス「・・・泡を吹き始めてる・・・気がしなくもないわね・・・?」
いい加減に止めなければ、死んでしまうのでは。 そう思い、ファリニスは止めようと席を立つ、が。
セレナ「こらぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
開け放たれた扉から一人の魔法少女、セレナディアが怒涛の勢いでルフェルツに飛びつく。 その勢いで地面に後頭部から叩きつけられる。
セレナ「兄様盗っちゃダメー!」
三つ巴。 あぁ、今度は魂が抜けてきてる気がしなくもない。 このままでは本当に死んでしまう。 と、そこに救いの女神が降臨する。
ソフィヤ「こらこら、3人とも。ルーフェが死ぬわよ?」 ルフェルツ「・・・ねえ・・・さ・・・ん。も・・・っと・・・早く来て・・・欲し・・・か・・・った・・・」
三途の川の濁流からクモの糸を掴み、舞い戻ってきたルフェルツは姉に感謝と不満を混ぜたセリフを吐く。 そのセリフに苦笑しながらソフィヤがミィリとセレナとティアの3人を手の形にした神力によってつまむ。 3人は暴れるも、抜け出す事が出来ない。 まるで母猫に見つかった子猫のような状態であった。 その様子を見て、相変わらず気のきく娘だ、と再び思ったファリニス。 その様子を見て、またか、と呆れる側近の2人。 その様子を見て・・・――
クレシア(ふふ、本当に不思議な子達だ・・・)
――思わず笑いが漏れてしまうクレシアがいた。
ファーレイド城・第7聖天使騎士団団長室
ルフェルツ「ま、そういうこと。あんだーすたん?」
団長室にクレシアと2人で訪れたルフェルツは、椅子に座っていた団長に経緯を説明していた。 クレシアは少し呆れ顔をしていた。
???「・・・隊長」
やや幼い顔をしているが、修羅場を潜り抜けた雰囲気をしている少女。 しかし、事実この少女が団長なのである。 その団長に隊長と呼ばれたルフェルツは、待ってましたとばかりにとびっきりの笑みを浮かべて聞く。
ルフェルツ「もう隊長じゃないんだけど・・・何?」
と、ルフェルツは床に伏していた。 何があったのだろう。 疑問に思い、クレシアは聞いた。
クレシア「今、何があったんだい?」 ???「いえ、お気になさらず・・・!」 ルフェルツ「グフッ・・・腕を上げたな・・・」
起き上がったルフェルツの顔面にはグーで殴られた跡があった。 心なしか涙が滲んでいるような・・・。
ルフェルツ「まぁ、光の速さで殴られたんだよ。グーで」 クレシア「い、痛そうだね・・・?」 ルフェルツ「ふ、慣れたさ」
クレシアは何も言えなかった。 言葉が見つからないのだから・・・。 そう、あれだけ痕が残っているのに、鼻血が出ていないのだ。 その疑問を無視するかのように話を進める。
ルフェルツ「で、さ。そういうことだから暫くクレシアの事、お願いできない?クリス」
クリスと呼ばれ、全力で怒りを露にし、訂正する。
???「クレアですっ!クレア=センプティール!!」 ルフェルツ「わかってるよ、わざとだってば」
何故いつもこうなのだろうか。 クレアは不思議でしょうがない。
クレア「で、隊長はどうするつもりで?」
未だに怒りながらルフェルツに問う。 さも当然のように、(ダメ)元隊長は答えた。
ルフェルツ「魔獣の行き先。どっから出てきたか調べて、根源から断たないとね」
真面目な表情をして答えるものだから、クレアは一瞬ドキッとしてしまった。
クレア(クッ。隊長のこの表情には何故かときめいてしまう・・・)
己の不甲斐なさ――意地――を認めつつも、しかしどうしても強がってしまう。 そんな自分が、クレアはイヤだった。
クレア(どうして素直になれないのだろう・・・。)
クレアはひたすらに悩む。
ルフェルツ「クレア?」 クレア「!!??」
深い思考に入っていたため、ルフェルツが自分を呼んでいる事に気がついていなかった。 クレアは過剰なほどに驚き、思わず立ち上がってしまい、更につまづき後ろに倒れる。
ルフェルツ「バカッ!」
人間離れした反応力でクレアの横に追いつき、背中を支える。
クレア(あ・・・) ルフェルツ「いつも落ち着けって言ってるだろ・・・」
思わず顔を紅潮させてしまったクレア。 普段より顔が近いということもあるが、普段より凛々しく見える、ということもあった。
ルフェルツ「・・・クレア」 クレア「あ、はい!?」
急に呼ばれ、思わず叫んでしまう。
ルフェルツ「お前も来いよ。さすがにクレアだけに任せるのは心配だ」 クレア「え、しかし、クレシアさんのことは・・・」 ルフェルツ「俺も一緒に見る。それなら問題ないだろ?」
ふざけた表情をしているが、その口ぶりは完全に真面目モードである。
ルフェルツ「んじゃ、おやすみ。俺は母さんのところに行ってくるよ。明日のこともあるし」
静かにドアを閉め、あとにはクレアとクレシアが残された。
ファーレイド城・女王陛下の部屋
静かに読書に耽るファリニス。 幾分か読み進めたあたりで、カップに入れてあった冷めた紅茶に口をつける。 一口飲み、カップを置く。 そして本を閉じる。
ファリニス「入りなさい?」
ドアが開き、全身黒装束の青年が入ってくる。
ルフェルツ「さすが母さん。誰かわかってる」 ファリニス「どうしたの?こんな時間に」
ドアを閉め、ファリニスのそばへ寄る。 と、紅茶が冷めている事に気づき、ティーポットを掴む。
ルフェルツ「明日・・・もう、今日かな?歪みの先に行ってみようと思うんだけど」
ティーポットを温めつつ、新たな紅茶を作り始める。 ルフェルツは自分のコップに牛乳を注ぐ。
ファリニス「・・・別に構わないけれど・・・誰を連れて行くの?」
ルフェルツは一気に飲み干し、口を拭う。 ティーポットに茶葉を入れる。
ルフェルツ「うーん、お見通しか。そうだね、とりあえずは・・・」
思い当たるメンバーを一通り明かしていく。 その過程で、ファリニスにすら予想ができなかった名前が3つ上がった
ファリニス「本当に連れて行く気なの!?」 ルフェルツ「うん」
先ほど上げたメンバーは、ティアとセレナ、ここまではファリニスにも予想ができていた。 が、ミィリ、クレア、クレシアの3人まで連れて行くとなると、さすがに理由がわからなかった。 ティアとセレナは普段からルフェルツと共に任務に行くことが多い。 だからこそ連れて行くことはわかっていた。 なら、何故他の3人が出てくるのか?
ルフェルツ「ミィリは元々俺の専属メイドだし、クレアは団長。実力は俺が良く知ってる」
少し納得がいかない理由だが、ならば何故クレシアが? ファリニスは少し考えるが、やはり理由が見当たらない。
ルフェルツ「クレシアの強さは、戦った俺が一番良く知ってる。彼女、本当に強いよ」 ファリニス「そんな理由で・・・?」
なるほど、そういうことか。 つまりは義母である自分にあの3人の同行の許可をもらいたくてここまで来たのか。 我が義子でありながら、なかなかどうして。 ちゃっかりしている。
ファリニス「そういうことなら、許可は出すわ。ただし・・・」 ルフェルツ「わかってる。ティアとセレナ、それからミィリの責任は俺が持つよ」 ファリニス「・・・クレシアは?」
ティーポットを掴みながら、待ってました、といわんばかりに笑みを浮かべるルフェルツ。 こういう表情をするときは、特大の屁理屈を述べるに違いない。 長年の義母としての勘が、そう告げていた。
ルフェルツ「クレアに預けたから、クレアが責任持つよ」
・・・なるほど、そういう屁理屈で来たか。 ファリニスは呆れながら、ルフェルツの注ぐ紅茶を見ていた。 こうされたら、もう適わない。 ああ言えば、こう屁理屈が返ってくる。 それが永久ループされると確信したファリニスは、横にある引き出しから書類とペンを取り出す。 必要事項を書き、それを鳩の足に付けさせ、外に飛ばす。
ルフェルツ「優秀な伝書鳩ですことで・・・」 ファリニス「そうねぇ、携帯端末があるこのご時世で、伝書鳩は珍しいわね」
こうすれば明日の朝には許可証、正確には任務書が発行される。 任務書とは、その名のとおり任務を行う際に必要な書類なのだが、それだけではない。 任務を遂行中に生じたトラブルを、全て片付けることのできるパスなのだ。 具体的には、警衛隊――我々の世界での警察――と同等、あるいはそれ以上の権限を持つ事が出来る。 言うなれば、絶対的権力券と言ったところか。 必ずしも発行されなければ任務が行えないわけではないが、あればあったで便利である。
ルフェルツ「はい、紅茶。エルディーので良かった?」
エルディーの紅茶は、この地方でのみ取れる独特の紅茶である。 精神を落ち着かせ、眠気を誘う効果があるので、不眠症の人が良く飲む事で重宝される。 当然ながら、悪用する人物は大量にいるので、それはそれで警衛隊の人達も大変だ。
ファリニス「淹れる前に聞きなさい・・・」 ルフェルツ「ごめんごめん。最近寝てないと思ったんだけど・・・」
どうやら多忙が続いて、眠れない日々が続いてる。 そう読んだルフェルツは、その実読んだどころではなく、見抜いたのだ。 だからこそエルディーを選んだのである。 そのあたりは、ファリニスも認める洞察力である。
ファリニス「そうね。助かるわ。ありがとう」 ルフェルツ「ふふ、どういたしまして」
一般人にはおろか、城にいる側近の者ですら見ることが困難な微笑をする。 その微笑を見れば、その日は一日中幸福が訪れると言われるほどに、ファリニスは美しいのだ。 一方、ルフェルツは普段から笑っているため国民にとってさほど良いウワサがあるわけではない。 かといって悪いウワサがあるわけでもないのだが・・・。 その代わり、城の女性陣には凄まじい人気を誇る。 顔が良いことも確かにあるのだが、人当たりが良いということもある。 更に、そこに絶大な微笑が混じれば・・・。 あとはご察しのとおりかと。 2人でしばし世間話をしたところで、ルフェルツが話を切り上げる。
ルフェルツ「んじゃー、もう寝るわ。お休み」 ファリニス「えぇ、お休み」
静かにドアを開け、閉める。 と、閉める直前に――
ルフェルツ「あ、そうそう。もしかすると、次の行き先さ」
――珍しく発言を躊躇っている。 普段から、さも当然のように言うはずなのだが。
ファリニス「遠いの?」
何気なく聞いてみる。 が、ルフェルツの反応はイマイチである。 何があるのだろう。 珍しく、ファリニスは不安に駆られた。
ルフェルツ「うん・・・。次の行き先・・・」
息を吸い、そして吐く。
ルフェルツ「リベールってとこかも」
ファリニスは驚愕に満ちた。
†登場人物†
名前「ルフェルツ=レンシティブ」(愛称ルーフェ) 性別「男」 年齢「19」(外見年齢) 武器「刀・小刀(二刀流)」(補足すると、武器系全て扱える キャラ設定「お人好しで温厚な性格。身体が細身なので女性と間違われやすい。全体的に黒を基調とした服装で、外套も黒。髪と瞳も黒」 CV.緑川光(の予定。でも空の軌跡で出てるのでこの小説では岸尾だいすけ)
名前「ティアリーゼ=レンシティブ」(愛称ティア) 性別「女」 年齢「16」(外見年齢) 武器「細剣」 キャラ設定「非常に優しい性格だが、兄にベッタリ。要はブラコン。髪と瞳が空に近い蒼色をしている。服装が常にスカート」 CV.野川さくら(どう説明しよう。マシュマロ通信の主人公)
名前「セレナディア=セリアージュ」(愛称セレナ) 性別「女」 年齢「16」(外見年齢) 武器「ワンド」 キャラ設定「どっからどう見ても魔法少女。姿とかが。ティアの双子の妹なんで髪と瞳が同じ」 CV.柚木さん で(TOD2のリアラ)
名前「ソフィヤ=セリアージュ」(愛称ソフィ) 性別「女」 年齢「22」(外見年齢) 武器「魔法剣」 キャラ設定「一応戦える。この小説ではほとんど戦いません。要望があれば戦うかも・・・」 CV.すいません、考えてないです
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