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[313] Blood -地を這うもの-
ググイ=デール - 2007年04月26日 (木) 23時37分

― 注意 ―
この小説は一部グロイ個所がありますので、そういう系統はお断りの方は速やかに他の作品へ移ってください。
なおこの作品はこの作者が唯一真面目に書いた小説です。
決して笑える要素はないので、笑を求める人にはお勧めしませんま、一部の方からはそんなことはないといわれましたが。


ちなみに。漫画BLOODとは一切関係のない作品でございます。

それでは――
"あの世"と"この世"をつなぐひとつの物語
Blood第一章「地を這うもの」どうぞお楽しみあれ。

[314] プロローグ
ググイ=デール - 2007年04月26日 (木) 23時46分

「・・・・血の匂いがする」
明暗のわからぬ冷え切った通路、蛍光灯が途切れ途切れに点滅をする。
「18番、それ以上は進むんじゃない」
「人間たちの血の匂いだ・・・アッチニタクサンニンゲンガ・・・」
「俺らは暴れすぎた、一度戻ろう。」
18番とやらの体が巨大化していたのを、ぽんっと止める
「もう少し暴れさせろよな20番、」

万人と共存を図ろうだなんてはなただしい人類ン万年がやろうとしてできたためしがない
モラルのない人間たち、秩序忘れた動物たち、愛さえあればいいとかほざいてる臆病な平和主義者
身勝手で偽善者で裏切り者でエゴイストで法を犯して人を騙して動物殺して森を焼いて
でもそれが人間でしょう?笑うなら笑えよそれでも人は生きていくんだから
弱者を笑い強者を妬んで弱きを嬲って強気に媚を売って酒に酔ったり暴力に酔ったり愛の大きさで競い合ったり
醜いほどこの上ない、情けないことこの上ない

「でもそれは人類の力の証・・」

人に迷惑かけるのが楽しくて、人にかまってもらえるのが嬉しくて日中無法者が大奮闘
他人の不幸が何より好きで大震災を見ては笑いテロを見ては喜ぶ、きっとそれが人間の本性
ホロコースト・幼児虐殺・バターン・原爆・・・殺して、殺して、殺して、殺しまくって
同じ国同士争って、詰まらんことで張り合っていつまでも変わらない人間達

「情けない。魂よ、清らかに天に昇れ。」
カツン・・コツン・・・
「ウガァアァァッ!!!」
「!!!」
頸動脈から頭蓋骨まで斜めに頭を削ぐ。青い鮮血が飛び散った。
「どうした?」
「まだ生き残ってたみたいだ。」
すっと棒状の何かを伸ばし、その化け物の頭部に突き付ける。
「昇れ。」
ふっと、青い発光体が浮かびだし壁を突きぬけ消えていった。
「帰るぞ18番、」
すっと暗い通路に白いドア状のものができ、中に入っていく20番
「ま、まてよ。」

あの世ってとこはいいところだ、何故かって?だってだれも帰ってこないじゃないか

そんな事は無いのだ死んだ生物は全て天に昇り、第二の人生を歩む。
3回の工程を繰り返し、今までの記憶を魂から完全に取り払う、しかし、その魂の過去第一の生命のときの記録は閻魔大王がすべて記しているのだ。
死んだ者は天国か地獄かの二択に振り分けられるというが、そんなものは全くの嘘なのだ。魂は浄化され第二の人生を貰うのだ。
つまり同じスタートラインに戻るのだ。しかし地獄があるのも事実。しかしここは、この世界での法を犯した者に罰を与える施設であり
刑務所みたいなものだ。

「18番、今日は無茶苦茶し過ぎたんじゃねぇのか?」
「別にいいだろう、悪いのはあいつらなんだぜ?あんなに残してよぉ」
そう言いつつ足をすすめ屋内の広場に出た。
「あ、Y=グレルさん、お疲れ様です」
「あぁ、君たちは?」
「白の20。」 「黒の18。」
「ハッハッハッハ・・・そうか、君があの事件のあれだね」
「・・・・」 
18番!落ち着け!。そう小声で言い放つ。
「Y=グレルさん。。その話は、、!」
「あぁ、すまんな。気を悪くしないでくれよな。」
「昇格したからって。。いい気になるなよ・・・」
「やめろ!18!レベルに差がありすぎる!」
腕をつかみ行動を拒もうとする
「・・・不満が残るか?」
Y=グレルの顔が曇る。
「それがどうした。」
「バッ…バカヤロッ!」
手を振り切り、18番の姿が消える。ため息交じりでY=グレイルが呟く
「問題児の新入りが・・・」
すらっと長い指を出す
「実力があるからルーキーって呼ばれるんだよ。」
ふっと現われニヤッと笑う。
ガキイイィィィン・・!!
刃と刃が交錯し火花が飛び散る。
「ルーキーめ」
Y=グレルは18番の鎌に巻きつき回転を利用し蹴りを入れる。顔面に入った。
「飛び散れ・・・」
バシュッ!右半分の顔の部分がくり抜かれた様に破砕し、飛び散る。
ボトトトッ・・・ 
「残念だったな、俺はもうすぐ名前を手に入れれるんだ完全な。所詮入りたての新人風情が・・・」
破壊された顔が笑う。
「哀れな奴め、そんなハリボテ攻撃して楽しいのか。」
「てめぇっ!いつの間に・・・!」
ザンッ!・・ザザザッン! 18番の漆黒の鎌が喋る間も与えず切り裂く。
「18番!なんてことを!向うは略字に名前のランクだぞ!こんなことしてただで済むと思ってるのか!?」
「・・・幸い、ここは閻魔様の盲点のはず・・・」
「これが完全にばれたら、お前は・・!」
「(閻魔も倒してしまえば・・・)あぁ、分かってるさ」
「・・・閻魔様には誰も敵わない。くれぐれも行動に気をつけろ…18番」
「・・ちっ!わぁかってる!行くぞ。20番」
再び場を後にし歩みだし扉の前で止まる
「あいつは、どうする気だ?」
「さぁな、また肉体を削除され最初に戻る。それだけだろ。」
18番は扉に手を当てる
「それだけだといいがな」
20番も手を当てる。と同時に扉は開いた。
光へと姿を消した。その瞬間だった。

[315] 第二話
ググイ=デール - 2007年05月02日 (水) 21時08分

死を恐れぬもの。反しひたすら死に、敵におびえ狂うもの。
昨日の味方は今日の敵。すべての世界は弱肉強食。最後には何が残るかはわからない。
いま、死後の世界通称「あの世」によって確認されている知的生命他のいる銀河系は
およそ16。たったの16である。宇宙も数個あり合わせてその数である。
地球とやらの生命体の諸君。自信を持ってよろしい。
最も、16の中の数個は文明を異様に持ったり力を増して範囲を広めているため結構な数なのだ。

フッ・・・  生暖かい風が。 トンッ・・・ 額に何かが触れた
「いけないなぁ、、、仲間殺しは。大罪なんだが。」
「あ、、、阿木拿さん。」
あぎな・・・名前があるということは、上魂のクラスか。
「な・・・何をしに・・」
「罰を・・・与えに来たんだ。上の命令でね。」
温和な顔立ちだが隙がなくうっすら殺気を出している。こいつ強い。無反応のうちに戦闘ができる態勢に入っていた。
「罰とは?浄化されるのか?18番は」
「違うな。ある仕事をしてもらう。」
「仕事・・・だと?」
取りあえずすぐそこの机で話すことにした。
内容としては争乱のあとにこの星で突然変異起こり、星の物が全滅しようとしていた。ただそれを止めるとのことだ。
なんてことのない普通の仕事だ。

「それで・・・その星に行けと」
フロアの一角のテーブルで一つの書類を挟んで自分と20番と阿木拿と対面をしている
「そういうことになる。閻魔様はこの件だけで先程の件を流してくださるそうだ。」
「阿木拿さん?」
「どうした?20番」
「この書類によると私は行かなくていいんですか?どうして」
「・・・行きたいか?」
「こいつだけに任せるのは妙に違和感を感じます。」
自分の事を心配してくれているのかどうなのかは分からないが、たしかに疑問が多すぎる。
「20番、君は好きな方を選べばいい。向こうにも数名のこっているはずだ」
「・・・残っている?どういうことだ、あんたは何を知ってる!」
「何を知っていても教える義務はない。」
「力ずくでも言ってもらうしかないな」
今座ってた椅子が後方に飛ぶと同時に阿木拿に向かって鎌を振り下ろす。次の瞬間
「う・・うそだろ・・・」
「18・・番・・・」

たった指一本で防がれた、思いっきり振り下ろしたのに。
「V=グレルとは話が違う。わかるか?」
「V?Vだと?だってあいつはYって名乗ってたし・・・」
自分も確かに納得いかない。どういうことなんだ
「いろいろとあるのさ、どっちにせよ消したんだろぅ?消したやつのことなんか知ってどうにかなるか?」
もうひと振りしようかと思ったが指一本で何の動揺もなく止められるようじゃ自身すらなくなる。
しかしこいつはさらに心を読み切ったのか加えて言葉を放つ
「せっかくキマイラの体をつけてるのに変身してみないのか?それとも無茶だと悟ったか・・・まぁどっちでもいい」
「阿木拿さん、18番が変身できることまでも?」
「あぁ、何となくだ。こいつの目はまだもうひとつ奥の手があるような感じだったからね。」
敵いそうにない。レベルが違いすぎる。そう思った自分は鎌をしまい席に戻る。
「・・・その仕事はいつからだ?」
「あとちょっとかな、その体も疲れただろ。おまけにその足、この世の物の"木"とか言うやつだろ。」
驚いた。幻術で隠してはいたがここまで見抜いたのか。こいつ、今はへんてこな生き物をきているが、
よく見ると妙な威圧感を漂わせてやがる。
「さっさと他の体にするんだな、あとこの世のものは退けてから食うんだな。出発は3の頃だ。またな」
薄緑色の羽を広げ自分のフロアへ戻っていった。

「取りあえずどうするんだ18番。」
取りあえず姿勢を保つために突き刺した物を抜いた。青い血飛沫と肉片が飛び出す。
「戻るぞ。お前、来るのか?」
「相棒だしね。」
「そうか、勝手にしろ。浄魂所でも知らんぞ。」
「・・・それはないな。そんなに回りくどいことするほどここは暇じゃないはずだ。」
「どっちにせよ戻ろう。自分もお前も次の準備をしておかないとな。」

そんな訳で一旦自分らのフロアに戻る。我々は10〜20フロアである。このフロアは一応全員用だが、大抵何らかの指令がある為ほとんどいない。
ここで作戦を立てたり、体を換えたり、食事をする。体を換えるというのは人間でいう服を着るようなもの。
行く先々の環境に合わせた肉体を基本的に10個程くれるものの、どれもこれも使い物にならない。
我々は肉を使い動き使えぬ肉体などは喰らう。もともと死んで肉体は土へ魂は天に昇り浄化され。様々な工程を繰り返し、ここに在り付く。
死んだら地獄だの天国だの言うが、死んだら呑気に過ごせると思うな。もっとも何らかの突然異変や、大量虐殺といった一斉に多くの生命が死んだ場。
留置所としてあるのが天国と地獄である。いわば待合室みたいなものだ。まぁ、大抵のケースではどちらにもそう長居することはない。

最も地獄は天国側より後なのでいる時間が長いのだが。

[317] 第三話
ググイ=デール - 2007年05月10日 (木) 20時05分

時間があるからもう少し話そうか。我々魂は肉体を使い生きている。
まだまだ使える肉体はそれに乗り移り。身荒となった肉体は我々の生命源として食す。
肉体にあった魂はこの世からあの世へ送り。浄化する。しかし、本当は浄化ではなく記憶は全て閻魔様の帳簿へ、
心は、よく知らないがどこかに集められているらしい。つまりそれ以外は削除するがいくつかは集めているのである。
自分はそれを知っている。なのに削除工程にかけられることがなかった。本当に運が良かっただけなのだろうか。
・・・それはまた別の機会にしよう。それと逆なのが肉体と魂をもったあの世に生きるものが悪魔である。
この世から上げた魂をあの世に行く前に刈り取って食すのだ。これを続けられるとこの世に生を受けるものの数が減ることになるのだ。

「18番、準備できたか?」
「あぁ、環境がさっきの星とよく似てるから足を入れ替えただけだ。ほらよ。」
行く場所の環境によって肉体を変えるのも必要なのだ。しかし一度ベースを固めておけば適応が効くようになってくる。
最も、まだしっくりくるのはないが。取り合えず今は幻獣人に入っていて必要な時に幻獣になれるので今のところは気に入っているが
獣人が気に入らないのだ。ちなみに20番は何所だったか首長白人族に入っていた。
「あんまり基本として固める気がないなら早く変えた方がいいんじゃないか?」
その通りなのだ。正式に基本とすると肉体そのものはなかなか変えられないが。基本ともしていない肉体にあまり長居すると、
肉体が魂を乗っ取り始めるのだ、そうなるととても仕事どころではない。が、一部変えたりするとなんと時期は延びるのだ。
「大丈夫だ。足換えたって言ったろ?」
とはいってもこの格好も戦闘向けではあると思うんだが余り良い感じではない。いい加減もっと形を固定したいものだ。

放送が入った。
「黒18番間もなく転送する。白20番はくるか?」
「行く。」
「20番・・・いいのか?」
「あぁ」
「準備はできてるな?200反程離れた場所に飛ばす。」
ふっと光が包み突然現れた扉に吸い込まれるように飛ばされた。
「なんて空気の汚いところだ」
「空気?この臭いは血?風に乗って血の臭いが・・・」
空は雲に覆われ日が差しそうな感じではない。しかし、血の臭いが強烈だ、いったい何があったんだか・・・考えたって仕方無いな。
「行くぞ、20番。」
「あぁ。」
背中から翼をだし、とぐろでも巻いているような感じの空へと飛び立つ
暗いが周りが見えないわけでもなく、自分の周辺くらいはよく見通せる、変な環境だ。
「18番。あれみろよ」
突然止まったかと思うと降下していく。なにかがいるようだ。たくさん、なんだこれ・・・生物?
大地にまき散らされていたのは明らかに何らかの生物の肉片であった。よく見ると、手に足に顔に胴体に・・・
肉片を見てジグソーパズルのように頭の中で組み立てなんとか各部のパーツだと確認できもともとの生物に一致しない。
これは沢山の手足をもった生命体だったのか、はたまた複数いたのかどちらにしても30名近くがいたように思える。
「不思議だ・・・18番、こいつら死んで間もない筈なのに脳の・・・肉体に生気が宿ってない。」
「魂を吸い取ってから殺されたんじゃないのか?」
「だとしたら、ここにいる敵は悪魔の一種に当たる・・・」
悪魔と戦闘して殺されても天に昇ることはない。悪魔を相手に戦うのは流石に御免だ。
「ん?・・・」
「どうした20番?」
「雨?・・・血?」
手で拭ってみて其れが血だということに気がついた。
「空から?どういうことだ?」
ふと上を見たと同時に「べしっ」っと何かが当たった。腕だった。自分はそれを投げ空中で両断する。赤色ではないが景気よく血が出る。
「上だな。」
「行くか。」
背中から翼をだし、鎌を出しておき臨戦状態に入る。
「グ・・・ググググゥゥ・・・ルルルル・・・」
「もう形を変えるのか?」
それまで竜人だった20番がマントのような上着をはずし、手足が6本、鋭く曲った黒い爪に、毛に覆われた3本の尻尾。
透明な羽を広げ眼や鼻は毛でおおわれ、光る眼光が映っていた。鈍い灰色の怪物になった。
ちなみに竜人は尻尾と鱗と牙をもった人だと思うとわかりやすい。
これまでの説明で誤解を招いたかも知れんから追加だ。こういった変身を遂げれるものはあの世の住人全てがそうではない。
さっきの阿木拿なんかはあの形だけである。変身できる方が少ない。理由は変身する奴は細かい作業が不便だったりする。
変身の際に使うエネルギー、そしてその後の消費も多かったりする。唯一いいのは普通時のときに戦闘以外でも自由が利くことだ。

「シカシ、この死体種類がどう考エテも多イ」
「それがどうかしたのか?」
「考エてミロ18番、普通一つの星に住んデル知的生命体の種は大抵ソロッテる。」
「自分らみたいに派遣されたんだろうよ?」
だがこの時すでに自分も20番も嫌な予感はしていた。

[318] 第四話
ググイ=デール - 2007年05月16日 (水) 19時14分

自分らは羽で羽ばたき、漆黒の空へと向かった。
「・・・20番。面白くなってきた気がする。」
「ナンナンダコレハ・・・」
まるでこれ以上進むのを拒むかの如く肉体の破片が血をふきながら急降下してくる。
20番が6本の腕を一気に一点に向かって手を合わせる。 ― 衝撃
肉片は両側に逸れてゆく。 難なくとぐろを巻いた空を抜け開けたところに出た。一気に寒気がした。
「雲ノ上に立てルミたいダな。」
「20番、あそこ、見てみろ」
「ガ?」

地面は黒。空は白。急に反転した気がした。 すこし霧掛っているのか見通しが悪いがそいつはいた。
足もとに色々あるが。そいつは座ってまるで何かを待つようにいた。

「おい。」
突然。後ろから声。緊張が頂点に達し戦闘態勢に入り体を翻しその声の後ろに高速移動する。鎌を構えた
「だれだ。」
「!?・・・」
人数は5名恐らくあの世のものと思える。
「君が、送られてきた黒18番か。あいつは、自主的にきてしまった。白20番か。あってるな?」
「知ってるのか。聞きたいことが山々なんだ」
「V=グレル・・・あY=グレルはどうせ何も伝えてないだろう。何が聞きたい」
「阿木拿モイッテたがなぜYトVだ?」
「状況と敵を教えてくれ。」
「あいつは、ここを脱退した、というより何とか逃切って閻魔様に状況を伝えに行った。閻魔様のもとに行くにはる程度の力が必要だった。」
「"V"の頭じゃ行くことはできないのか?」
だとしたら妙なんだが・・・
「いや、そこにたどり着くまでにある程度力が必要だったから今、前線に戦いに行ってるやつの力を挙げたのだ。それだけだ」
前線だと?
「そういや、君ってあの閻魔帳の事件の児かいぃ?」
木の皮を合わせたような服装である華奢な仮面。いやに粘っこいしゃべり方だな。
「吾輩も聞いたことがある。おぬしもなかなか面白いことをやったんだな」
こいつは全身籠手でできてる。こいつらどこかが変だ、よく見るとどこか見覚えのある数字が各部にある。まさか・・
「18番・・・ドウカシタのか?」
「・・・そのことについては後にしよう・・・状況は?」
影から遠方を眺めてる20番と同じような竜人のやつが一言
「状況は最悪、敵は悪魔獣。そのカオスだ。」
悪魔獣の、カオスだと!?
「やはり悪魔なのか・・・一体何との複合体だ?」
「"CHIKYU"の人間だ。」
あの世の生物とこの世の生物の複合体・・・しかも悪魔獣。悪魔よりも野性的で暴れると歯止めが利かない。
「CHI・・・KYU?」
その瞬間だ。自分らの目の前に鈍い音とともに何かが飛んできた。頭だ。よく見ると目が黒い紫色になり模様を描いている。
「・・・生きているのか?」
「ケッケッケケ・・・もう既にそいつは生きてないよ。今は生きてるけどね・・・ケッケケケ」
「!!??」
なんだこいつは!?のっぺりと漆黒に覆われているようだが所々に刺のような毛が付いている。鼻や口はなく6つ空気穴のようになっている。
耳や尻尾や羽は悪魔獣の角ばった黒模様のである。左手には黒の手袋あはめられている。後ろには十字の形をした黒い武器がある。

悪魔獣と根本的に違うところは・・・見当たらない。
「貴様、ここからは通さんと言ったはず・・・」
さっきの全身籠手のやつが睨みつける。
「通らないよ・・・増えたんだね。ケケッいいよ、いいよ、ケケケッさぁ、次は誰だいぃ?」
何なんだこいつ。この目。なんて冷たい目。悪魔族にもこんな目は見たことがない。
「おい・・・黒の18番といったな・・・戦えるか?」
「わからない・・・こいつがどんな戦いをするのか・・・」
「・・・アタシ行くよ。どっちにしてもここにいるのは・・・」
木の皮を合わせたような服装である華奢な仮面が言いかけるがその続きは見当が付いている。
「重罪人ばかりだろ?そこまでは何となくわかってた。閻魔さまも変な事をする。」
「・・・わかってたのかぃぃ、話ははやいねぇどっちにしても閻魔様に削除されるぅ。最後は暴れて閉めたいよ。」
「つまり・・・狩場ということか」
「なら・・・僕は狩人ねケッケッケ。いいよ〜、いいんだよ〜。君だねぇさっさとやろうよぉ〜」
「・・・向こうで・・・」
勝負は一瞬だった。
悪魔獣の蹴りで胴から下が飛ばされる。上半身だけになった仮面の頭部をそいつは右手で握り左手で魂を吸い取ってから握り潰す。
仮面は勿論、頭はまるでスポンジのように潰れ血と共に繋がりかけた血管や目玉、脆く崩れ去っていく。
「ケケケッじゃぁ、いただきまーす。」
そう言うと魂を顔にある6つの穴から吸い込む。すると悪魔獣の体がまた少し黒くなった。
ー強い。確かにさっきの仮面はそんなに強い感じはしなかった。それでもあんなに一瞬で片付けやがった。
「ケッケッケッケ・・・次は誰かなぁ?あと6名だねさぁ、だれが来る?」
「この勝負は1対1なのか?」
20番!?
「基本はね。」
「そうか、いくら強くても多数で来ると無理なのか。」
「ううん。大丈夫だよ。全員でもいいけど、楽しみがなくなるからね。」
「あんたがリーダーだな?次は僕らが戦うよ。」
お…おいなんてこと言い出すんだ?
「君たちが・・・か、あぁ。好きにするがいい」
「あの事件を起こしたルーキーたちだしな。どっちにしても我々は消される。順番なんぞ関係ない。」
「20番・・・お前・・・」
「暴れたりないんだろう?18番。」
「・・・あぁ。」

[320] 第五話
ググイ=デール - 2007年06月02日 (土) 22時09分

それでもこの悪魔獣。いや、何というかこの悪魔。強いにも程がある。自分の震えを止めて敵を見つめる。

「20番・・・ずっと気になっていたんだが、なんでお前がここまでやってくれるんだ?」
「僕は閻魔様に適正と判断された。18番のパートナーとして。」
「いくら命令でも、閻魔に背く様な真似をしても何故おまえは自分を全力で止めようとしなかった?」
「言ったとおり僕は適正と判断された。迂闊に力をかけると前の5人みたいに消されるしね。」
確かに、閻魔様、天罰、こんな御託を並べ自分の為でなく己の為に自分を止めに来た。
虫唾が走った。自分はそんな奴を一人残らず殺してきた。従うしか出来ない愚かな存在。なぜだ?なぜだ?

「ケーッケケッケもういいか?やるぞ?行くぞ?」
またしても一瞬だった。結構な距離にいるというの。目の前に、そして吹き飛ばされた。
大した衝撃ではなかった。さっきみたいにえぐられたわけでもない。ゆっくりと目をあける。
「・・・!?」
自分のすぐ前にいたのは何とか防御してはいたが傷はあった。
「もたもたシテルンジャネぇ・・・イっつもミタイに早く反応することモ出来ナイのかっ?」
「何故なんだ・・・」

何故こいつは自分を守る?何故たった今自分より早く動けたのだ?何故だ?20番?どうなってるんだ?

「イマは・・・戦闘にシュう中するんだナ。真相は後にワカる・・・」
「あ、あぁ・・・」
ガッ!ガガガキィィィンッ!ズゴババッ!ザッシュッ!
「ヨッ・・・余所ミヲしてんじゃねぇっ!!」
また不意をつかれた。何でだ?自分は強いはずだ。なのに?動けないのか?なんでだ?何でなんだ?畜生・・・
畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生
「ちくしょぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!!」
「!!!!」
ザンッ!ドガッ!ガッシュッ!!
顔面に蹴りを。吹き飛んだ直前に腹部に踵落としを、墜落したところを空気を握り投げつける。悪魔は避け切れなかったらしい。
「うおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉっっ!!!!!!!!!!!!」
既に正気はなかった。気が付くと、大地が抉れまくり何もなかった黒い更地に幾つもの山ができていた。
「・・・・ハァ・・・ハァ・・・」
「ソレデいいんだ黒の18番。」
後ろでまた声がする。
「信じられない、これがあの黒の疾番閻魔帳事件のやつの実力か。」
「とんでもないスピードにパワーだ。吾輩もあそこまで強い奴は初めて見た。」
黒の疾番閻魔帳事件・・・そんな呼び名がついていたのか。あの事件が・・・

自分は黒のグループの最上位に入った。その襲名の際に閻魔様に呼ばれた自分と白の100番。
ここにきて閻魔帳について知り。それから隠密に情報を集めこの襲名の日に向かって綿密な計画を立てていた。
そして、計画は実行に移った。閻魔様の部屋には他にも名前持ちの上魂クラス、生命予備の上魂者。そんなつわものが勢ぞろいだった。
自分は襲名証を貰ったその直後に閻魔様を吹き飛ばしその部屋の地盤ごと切り落とし。手帳のある部屋に行き奪い取った。
自分は何だったのか、消された過去を調べたかった。
しかし、思うようにはいかないのが現実だった。閻魔帳から自分を探す前に捕らえられてしまった。
結局何も分からなかったのに削除工程に運ばれた。肉体を離れる前に作っておいた強力なバリアーに自分の魂ごと入り何とか削除を防いだ。
だがそのことは今も隠し続けていた。また次の為に。
自分は記憶もパワーも残したままそれで最初のクラスに戻された。自分が体力の消費の激しいうえなるべくパワーを抑えていたのは
その力を抑えるためだ。自分は3段階にして抑えている。1段目は平常時2段目は死闘用・・・3段目は本来のパワーを封印しておくものだ。
これは一瞬ほんの一瞬感情が高まった時に自動的にはずれる。最も自分ではずすことも可能だ。その後については何の保証も持てないが。

「・・・あいつは・・・?悪魔獣はどこだ?」
「え?まさか自分で何をしたかもわかってないのか?」
「あぁ、20番見えなかったのか?」
「ほとんどな、多分あの辺の瓦礫に埋もれているはずだ。しかし、まだ生きているはずだ。・・・確証はないが。」

生きていた。誰もが目を疑った。生きている。それなりにダメージはあったらしい。けれども平気な顔して立ち上がった。目しかないのでよくは分からないが。
「ケ・・ケッケ・・ケケッ・・・今の・・・君?痛かったなぁ、効いたよ?かなり効いたよ?痛みをこんなに酷く感じたのは・・・初めてだ・・・」
目つきがさらに悪くなった。
「許さない。」
十字の剣を手にする。同時に邪気、漆黒のオーラをだし大地を震撼さす。疾走。

「!!!」

見える、今度は見える。でも体が動かない。体が追い付かない。奴が疾走する前に感ずいていたのか20番が攻撃を防ぐ。
「こノ星の異常現象の正体は貴様ダナ?星の物はドウなった?」
「モノか・・・この星の者は・・・物は・・・ケケッ・・・ケケケッ」
不敵に笑う。何が可笑しいというのだか・・・そして信じられない言葉を発する。
「みーんな、ボクの中だョ♪勿論魂となってね。」
「吸収したトイウのか?」
「そうだよ、だから僕より後ろには何も残ってないよ。君も僕の後ろに来るよ・・・ほら・・・」
爪と刃の不協和音が耳に響く、20番も刃を振りぬく。重なる金属音。火花。加速する。
「ケッケッケッケッケッ。楽しいな〜殺すのもいいけどこうして戦うのもいいなぁケッケケケッ!」
「グルルルッ!ソイつはいい僕も楽しいから・・・」
戦闘は暫くつづいた。その間に先ほどの残った奴からいろいろと聞いた。

一人目全身籠手でできた直立体古めかしい喋りをする名前持ち上魂 クロシキ
二人目竜人の基本形からして予想はしていた番号の白の97番
三人目全身が白色で構成されている直立体。幾つかの足で体を支えている。X=ミケ
四人目不思議な球体、手足があるそして浮遊している。 上魂 誠(まこと)
ちなみにさっき一瞬で消された仮面は K=クル 

おかしい・・・どいつもこいつも名の知れた、罪人、既に消されたと思ってた。
しかも、こいつら自分より20番より上の階級だ、自分は確かに番号の最上を突破して力を隠しているからこの強さだが。

「グルルルルッ!グッググッグッ!!」

―白の20番お前は一体

[321] 第六話
ググイ=デール - 2007年06月28日 (木) 21時54分

何か分からない事に遭遇した時にいいケースと悪いケースを頭にイメージするはずだ。
それはたとえそうでなくてもいい方には考えない方がいい。
予想と現実は常に裏腹なものだ。

―Poker face

「グッフフフッ・・・」
「ケッケッケッ・・・」

何者なんだ20番。番号持ちでその戦闘力はありえない。

仮説1:あいつこそ、本物のルーキーだ。
仮説2:自分と同じように削除工程を免れた奴なのか
仮説3:閻魔様の手の者

2も3もあって欲しくない、だが番号20の段階で変身型の肉体を使っている時点でどこかおかしいとは思っていた。

時は遡る。
自分は削除工程を免れたその後初期の選択、この世にはいるかあの世に入るか・・・
バリアーの効き目が切れる前にともたつく奴らを駆逐し何とかあの世に戻ってきて。
自分はもう何人の相棒を消してきただろうか、確かに相棒と呼べる程の奴らではなくどいつもこいつも聖者みたいな生ぬるい奴だった。
そして、閻魔様が選んだのがこの20番だった。確か前に20番が話してくれたな・・・
それは、いつものフロアでの話だった。いきなり組まされた20番とかいう奴ともだいぶ馴染んできた時のことだ。

「そういやよ、お前閻魔様に選ばれたんだったよな。」
「あぁ。どうした?」
「いや・・・一体どうやって選ばれたのかが」
「そうか、気になるのか・・・」

一瞬。何かを思い出したような顔をして、少し微笑み

「僕もあんまり分からないんだ。突然閻魔様の指令でお前と組んだってことだ」
「そうか・・・じゃぁ、何も知らないんだな。」
「あまり考えない方がいいぜ。・・・たぶんな。」
そういえば曖昧な答えしか返してくれず、意味深な言葉を残して会話を終わった気がする・・そう、いつも。

今こそ問いたい。本当の答えを聞きたい。そのためには今はあいつが邪魔だ。
ふと顔をあげると戦場はいいほうに進んではいなかった。既にダメージが多そうなのは見るからに20番だ。
20番は攻撃を喰らった寸前に思いっきり足もとの岩盤を突き刺したらしい。悪魔獣にそれがめり込んでいた。

「グッフッフ・・フフッ・・・ちっとは。。コタエたか?化け物
ガ・・ガフッ!・・」
20番もそろそろ限界か、疲れが見えて来始めている。

「・・・んっ!!」
めり込んだ岩盤を取り払った。やはり、ダメージはあったのだろうか、腹部には大きな傷口がある。
だが、次に衝撃の光景を見た。 傷口から自分らもよく見覚えのある、魂が出てきた。
するとみるみるうちに大きく空いた傷口が塞がる。魂は4つ天に召した。

そういえばさっき、自分が吹き飛ばしたときにもあいつが飛び出てくる前に何条もの光が天に行ったのも。
あいつが吸収した魂分だけ回復できるわけか。

「・・・ヘヘヘ・・・コマッタなぁ・・・へへへっ・・」

壁に打ち付けられた状態で、よく見ると4本あった腕も3本に尻尾も無くなり翼も千切れかけてる。
「折角集めた魂をねぇ・・・やってくれるケケケッ。君もそろそろ終わりだねぇ。ケケ・・・グバッ!?」
「!!・・・おめぇ・・」

「20番、聞きたいことがあるんだ。しばらくそこで待ってろ。」

少し笑い、眼を少し閉じ。頷いた。
「あぁ。」
「また、君か・・・さっきかなりの魂を飛ばしてくれたよね・・・」
「お前にも問う。何が目的だ。」
「ケッケッケ・・・目的、僕にはCHIKYUの人間のこの手、頭脳。そして、CHIKYUの人間の代名詞ともいえる・・・」

「・・・?」

「"浴する心"・・・全てを手に入れたい野心、そういう支配したい人間の心が僕にはあるんだ。」
「支配・・・聞くがCHIKYUの人間はみなそういう心を持っているのか?」
「僕だけに。あった。」
「どういうことだ?」
「この星の者の異常について気になるでしょ・・・ケケッ。僕たちは悪魔の魂、CHIKYUの人間の部分、融合されて生まれた。」
「他にもいるのか。お前以外に。」
「いたよ。たくさん。みんな違ってた。体をCHIKYUの人間に極力近づけた奴も、その人間の心の全てを持ったもの・・・」
「全員殺したのか。」
「うん。みんな、僕の中さ。ケッケッケ・・・」

楽しそうに答えた。とても面白かったといわんばかりに・・・

「・・・お前には、心が無さすぎだ。」
「人のこと言えるのかなぁ。君だって、消すのは好きでしょ?」
「あぁ・・・お前を消したい。うずうずしてる。」

2段階目に変身をかける。黄褐色の毛は伸び、腕は膨らみ、元の大きさにゆっくり戻る。これはスピードとパワーを作るため。
尻尾はなくなり、はねが鋭利にさらに延びる。まずは様子見だ。
20番と同様、声帯が縮小されるので喋ることに関しては厳しくなるのだ。
「ケッケッケ・・・君も変身するのか・・・面白いねぇ」
「イツマデタノシメルカネェ?」
「・・・ところであのくたばりかけの奴を消してからでいいかい?すぐだから」

そう言うと20番に向かって行く、20番はいきなりで反応しきれない。
跳躍、漆黒の鎌を振落す。同時にあの十字の剣で受けられる。直後、顔面めがけ蹴りを入れるが片手で弾かれる。
その弾かれた反動でもう片方の足を使い回し蹴りをする。今度は体を反転させ回避。浮いたところを見て鎌に力をかける。
バランスが崩れた所を、鎌の遠心力を使った両足の蹴りつけで地面に叩きつける。

「テヲダスナ」

「・・・じゃぁ君から先に消すよ。」
仰向けのまま、地を蹴り地面と水平に飛行、まるで紙のようにひらりと起き上がり回転、着地。
「ホンキデコイ。クズ。」
「じゃぁ・・・少しだけね、楽しみたいからケッケッケ」

邪気が強ばった。今までの比ではない。 思考は中断された。かなり離れて居た筈なのに一瞬で腹部に蹴りを入れられた。
「クッ・・!!」

来る。

「ウオオォォォオォォォオオオン・・・・!!」
ザンッ ザザザザザザッ!!
鎌の斬撃が空に残り飛来、地を削りながら悪魔獣を狙う。
「ケヤッ!!」
十字の剣から黒い邪気が飛び出て弾き飛ばす。その隙を見逃しはしなかった。
既に悪魔獣の上を取った自分は無音で漆黒の鎌を振り下ろす。

[324] 第七話
ググイ=デール - 2007年07月25日 (水) 17時26分

   心。
 生命体の魂の気質。 
心は精神を通い肉体を操る。
だが種類は雑多だ。形式ばったものではない。 
    ゆえにきまりなどない。
心が無い物は精神が働かない事や肉体が持たなくなる訳でもない。心を殺すことは他愛も無い事でもある。

     心を―なくす?


記憶・・・

鎌は当たり前の様に素通りした。突如目の前に現れたのは黒い布で覆われた右足。翻り何とかかわす。
「グウッ!」
掠った!。肉体が抉られていく。猛襲は止まなかった。受けて避けて、反撃の余地はなかった。
「ウガァァァァァッ!!!オグルァァァァッ!!」
無意識に体が動く。

「ケッケッケ・・・さっきまでの威勢はどこにいったのかな?」

強いっ・・・瞬く間に弾き飛ばされた。
追い打ちをかけに来るのかと思いきや、奴の進路は違った。20番―!
「ガフッ・・マ・・マテェェッ!!!!!」

ザンッシュ!!!
十字架の剣が20番の腹から肩に縫うように切り上げる。
20番は後ろの壁ごと倒し、刃の貫通を避ける
「ウグッ!」
傷は深かった。その上あいつは止める事が無かった。
ザンッ!
「ガフッ!」

ザシュッ!
「グゥッ!」

ヒン・・・ズダン!
「オゲッ!!」
腹の右側を抉り取られ、足を一本切断される。内蔵物や肉片が血と共に零れ落ちる。

もはや逃げるほど体力は無かった。血の噴き出して止まらない腹を手で支えながら、
あいつは奇妙なことを言いやがった。・・・謎が

「ナゼ、すぐにタマシ・・・いを・・・とらナい?」
「貴様、その魂は一体なんだ?僕が見て来た魂とは根本的に違う。弱らせないと貴様の魂が手に入らないからね。」

どういうことだ?・・・確か悪魔には魂の場所を見極める事が出来るとか、何しろ悪魔は古来より魂を狩って来た種族だ。
その為の技術はやはり悪魔の合成生物であっても変わらないのだな。しかし・・・白の20番、やはり例外だったか・・・
「気付イテいたか・・・だガコの肉体ハ仮の物だこの肉体を弱らセても魂は弱らない・・・知らなカッタみたいだな。」
「・・・!!ケケッ、そうか。じゃぁ・・・普通に消してそこからもらうことにするか」
「・・・!!テメぇ、空中で魂を分割すルコともデキるのか!?」
すっと頭に黒い手袋をした右手をあてる。


「この頭脳は脳波を飛ばす事は出来ないがどんな残虐な事でも思いつく。この右手は岩盤を打ち砕く事も出来ないし環境の適応が非常に悪い。
だが、手を汚さずして大量に殺す技術がある。・・・この右足は、分からない。脆いし、軽い。ここだけはハズレ引いたみたいだヨ。」


「・・・他にもお前のような奴が居るのか。」
くいっと向うの方をさした。よく見えないが何か残骸のような物があった。
「居たよ。失敗共だったけど・・・」
「・・・?」
「僕は右手足と頭脳が人間との合成。でもパターンは沢山、微妙な奴はあっという間に使い捨て。」

「まさか・・・・まさか・・」

「さっき言ったよね。"僕より後ろには何も残ってないよ。君も僕の後ろに来るよ"ってね。」
「全滅サセたのか・・・!!」
「最後の・・・」
何かを思い出していた。
「一人まで」
「おい、貴様、ひとつ聞きたい!最後に残ったのはどんなやつだったんだ?」
喋りにくいのでもとにもどる。だがこれにはもう一つ別の理由があるが・・・
「そいつには"ナカマ"と呼ぶやつがいて、そいつを消した瞬間・・・でも、消したけどね。何でだろう、一番弱かった人間の心を持った奴がなぁ・・・」
「心・・・?」

「さて、そろそろ取り込ませて貰うよ。」
「・・・!!」
誰がそんな横暴許すか・・・
2段階と3段階の中間までに調整した力を出し蹴り込む!
「ケキャッ!?」
不意打ちは上手くいった。吹っ飛んだ所を見て20番に駆け寄る。
「な・・・なニヲシてる!ハやく次の攻撃をシロッ!はやく力を解放しろ!」
とりあえず20番の本体を残りの奴の所に預けておくことにした。少しは安全だろうからな。
くたばりかけの20番が言葉を発す。

「何を躊躇シテる。この期に及んで閻魔大王様が怖イノか?・・・解放しろ」
他の奴も口々に物申してきた。
「そうだ。お主に何かしらの力があるなら使ってくれ。」
「ここで消えるのかは分からないがどうせなら助かりたい」
「此処ハ我々ニ任セロ」
「・・・てめぇら・・・」

―殺気

「ケッ・・・ケケッ。」
「何故20番にこだわる。」
「お前は、強い。その上度重なる不意打ちで力の根源魂を天に幾つか奪われた。」
「それで20番を取り込むのか!」
すっと視線を遠くにもっていった・・・まさか!
「でもあの残った奴らでも足したら勝てるかな。・・・」

籠手のクロシキ、白の97番、白色直立体X=ミケ、球体 誠 全員が身を引いた。

何かに気付いたらしい。悪魔獣は誠のもとに飛来する。
「しまった!誠!!」
のっぺりとした白い表面に切れ込みが現われそして開かれたのは
「あれは"眼"!」
誠。千眼力と呼ばれる中でもっとも強力な力をえて、あいつのあの眼からの視力を受けるとそれだけで魂を抜かれるという。
たしか、あの世でも一度騒がれた事があった。
「ケケッ!その眼もらうよぉっ!」
「させぬ!」

ドンッ!

悪魔獣の両目に光が貫通したようだった。
「ケブッ!?」
ゆっくりと開いたその眼はとぐろを巻いた。少しして中から魂がでてき、悪魔獣はいちど地に倒れた。
死んではない。 ゆっくりまた立ち上がる。あいつは吸収した魂の数だけ蘇れるのだ。
「ケッケッケ・・・その眼。思ったとおりだ。」

やはりそうだ、あいつあの眼を奪う気だ!あんな能力が追加されたら勝てる兆しも無くなる!

「ォォォォオオオオオオオッ!!」
「ケキャッ!!」
ガキィィンッ!!
受け止められた!、不意打ちだったのに・・・否、まだだっ!

ガ!
ドガガガガ!!

踵を返し裏で狙ったが弾かれた。その回転を使って回し蹴りを打つ、返されても返されても・・・
「マダマダァァァッ!」
ガガガガガガガガガッ!

「鬱陶しいっ!」
奴の蹴りが腹に食い込んで身を抉り取った。

[326] 第八話
ググイ=デール - 2007年08月24日 (金) 21時34分

これまでなのか・・・こんなもんだったのか
そんなことは誰も知らないし知ろうともしないのか。

現実は見たくない。本当は眼を逸らしていたい。

夢の中で生きたい。

叶えるものが夢だというなら。
幻想に溺れてもいい。
こんな現実は・・・

こんな現実は自分の空想した未来とは違うんだ。
自分は、もっと強いと思っていた。是までの命令でも難なくこなせたし
名前持ちの奴らにも劣らない筈だ。
なのに、


「ドゥシて・・・」

体が最初のに戻っていく
「今の君はつまらなさすぎる。邪魔だ。」
ゆっくりかわし、足蹴にされた。
「どうして傷一つ付けられねぇっ!!!」
奴は視線の先を誠に戻した。
「さてと・・・」
「・・・!!!」

「逃げるのだ!誠!お前の技ではどうにもならん!」
「でも・・・」

キッと眼を開きドンッいう鈍い音がまた奴の目を貫いた。
「まだ・・・」
誠の眼の色が変わった。実際に変わったのである。
さっきまでは白と黒の螺旋状だったのが、
翡翠色の複数の斑点の白い眼に変わった。

ドンッ! ドドンッ! ドウッ!
次々に眼から放たれた何かが奴の体を空に散らす。決して赤くはない錆びついたような鈍い青い血飛沫を上げた。

「もういい!逃げるのだ誠!」
全身籠手の上魂 クロシキが何か構えている。
「ハァ・・・ハァ・・・何を・・する気だ?」
「少しの間あいつを閉じ込めてみる!貴様はその間に X=ミケ に治癒して貰え!」
「・・・どういうことだ?何故自分を?」
「白の20番でもよかったが、貴様らがここに来る前にやつは力を使いすぎた、一人が限界だ!」
「自分はまだ動ける!20番を治せ!」

その時だ背後から微かな声が聞こえた。
「ハァ・・・ハァ・・まだ動けるのなら僕も同じ事だ」
「20番・・・・」
「いいか、ハァ・・奴に勝てるのは・ハァ・・・お前だけだ。」
「さっさと片付けろ。」

そうだ、全力で一気に片付ければ良い話だ。
「X=ミケ!頼む!」
「わかった!」

「ケケケッ・・・ケッ・・」
まただ。また、魂が・・・今度は数十個、出て行って回復していく。
「・・・!」
誠はまだ避難していなかった。その時だ
「ケケケッ・・・逃がすものか」
復活し、とんでもないスピードで誠に向かって行く。

次の瞬間。
くわっ!っと地面が開いて大きな口のような籠手が・・・
とはいっても、あれを籠手と推測するのは難しかった。
あまりに巨大だったからだ。
地面から出てきたそれは奴を挟んで、猛烈な地響きと共に地面に引きずり込んだ。
「・・・やったのか?」
「逃げるんだ。誠!・・・黒の18番。回復は出来たか?」
「もう少しだ・・・!?」

ズダッ!!

地中から突如突出してきたのは奴のあの黒い十字架の剣が自分に目掛けて迫って来た、
「あの野郎・・・っ・・・!?」
この状態じゃ動けないっ!!
その時だ。X=ミケが自分の体を突き飛ばし黒い刃を自らの身を投じ防いだ。
「・・・っ!?おいっ!」

ブシャッ・・・ベシャッ
「あぁ〜あ・・・駄目だな・・・やっぱり・・・今度は・・・もうちょっと・・・」
「・・・?」
ポタリ・・・ポタン・・・
その白く円柱のような顔に表情は無かったが、とても悲しそうな感じだった。
「もうちょっと・・・誰かのために・・・がふっ!・・・」
ブシャッ。
貫かれた所からは血が何のためらいもなく流れていく。
「誰かの・・・為に・・・真面目に生きてもよかったなぁ・・・」
ピチャン。

その血の最後の一滴がまるで涙のように儚く。程無く澄んでいた。

X=ミケの体から力が抜けた。いや、魂が剣を伝って抜けていった。
「おのれぇっ・・・おのれぇぇぇっ!!!」
「やっぱり・・・みんなここで消えるのかなぁ・・・」
竜人のタイプの白の98番が膝を付く

「・・・?」
冷気?なんだこれ・・・
後ろには変形も何もしていないというのに、邪気が眼にみえるかのようだった。
「黒の18番・・・お前はどれだけ・・」
クロシキは愕然とした。
「強い・・・しかも邪悪だ。」
誠もその眼を閉じ身震いまでしていた
ただ一人驚かない者がいた

「やっとか、・・・行け黒の18番、僕らの希望よ」


「あぁ。もう、いいや。お前にはうんざりだ。」

―残りは5名

「・・・急がないと駄目みたいだね。」
もう随分離れている誠を見て、一気に加速する。
「だから・・・そうはさせないと・・・」
自分もかなりのスピードを出して距離を縮めた。
「取り合えずしつこいよ。」
反転し奴の右手から出された魂が体に巻きついた。
「ぐっ!?なんだこれっ!」

「キィィヤッ!!」
バグッ!!
途轍もなく思い蹴りが入った。さっきのように鋭くはなく、その代り衝撃が倍になっていた。
ザザザッ!
「ちっ!」
「黒の18番大丈夫か!?」
「問題ない。だがあいつ・・・」

遂に誠に追いついた。

誠は死期を悟ったのか今までにみたことのないような恐ろしい眼を開いた。
眼の中に鋭い眼が四つ十字型に本体の眼の上に並んでいる。

「四死眼・・・魂を召す昇魂眼、肉体を射る死定眼よりも強力な眼だ・・・」
「白の96番知っているのか?」
「あぁ、あの眼には他ほどの殺傷能力はないが。その代り・・・」
「その代り?」
「肉体の自由を断つ"身眼" 魂の操作を絶つ"魂眼" 激痛を与えづつける"拷眼" 空を隔つ"壁眼"」
「あの後ろの眼は?」
「全ての目に通じていると聞いた。」

奴は動かなかった、否、動けなかった。誠の開いた"身眼"によってだ。
「ギ・・・グゥキキッ・・・」
もう動きそうな所を見て"壁眼"さらに"拷眼"を開いた。
「グゥゥゥッ!グギャァァァッ!!アアァァァァッ!!」

魂が出てきた。"魂眼"を開いた。魂は静止した。
「グウウウッ!!ウキヤァァァァッ!」

死には至らないのだろうが奴の関節の至る所から血が噴き出していく。
その血は黒色とも灰色とも似付かない色で隔たれた空間に溜まっていく。
更に腕は変に捻られて肉片が中から零れるように出てき、
まるで焼けたような跡からは臓器かと思われるような物が突出したかと思うと
無残にも引き伸ばされ筋の一本一本が音を立てて千切れていく。
すると次の瞬間だ。血も肉片も繊維も不規則に体に戻っていく。

見るだけで吐き気がする。

[330] 第九話
ググイ=デール - 2007年09月26日 (水) 22時16分

どんなときも。勝つという信念を持ち続ける奴に
ただ勝とうとする奴が、勝てる筈もない。

死にたくない。生きて何かを為し遂げるまでは絶対に死なない。

折角この世に居るんだから、何かしないと。
自分はここにいるんだ。自分の通った道には傷を印し。
今居るところでは、叫んでみせる。

ここにいる。ここで生きているぞ。
この声が届かなくても、

ここに居たと言う話を聞いて欲しい。
僕はちゃんと生きてる。それを知らせなきゃ。


場所は変わる
「ギゥ・・・グゥゥ・・・シ・・・死んでたまるか・・・」
周りにはそいつと同じような風貌をした奴が地を埋め尽くす程になっている。
おまけに血の匂いがあたりに充満していた。
「!?」
風じゃない声が・・・声がする。
「ケケケケ・・・おめぇは生きてたのか・・・」
「あぁ。あんたも生きて・・・」

顔と胴体と右足以外が無くなっていた。
「おらぁ、魂は抜き取られて無いからな・・・」
「・・・」
「おめぇは、大丈夫なのか?」
「全身傷だらけで足が無くなった。」
「あいつは・・・?」
「あっちのほうに未だいる。」
「止めなきゃ・・・」
「あぁ。」
「俺の体と魂を喰え。」
「でも・・・」
「いいんだ。俺はおまえの"仲間"だ。」
「あぁ。大事な"仲間"だ、だからこそ・・・」
「どっちにしても駄目だ。はやくあいつを止めるんだ。」
「でも・・・」
「何を躊躇してるんだ!!現にお前はこの中で生き残っている!」
「・・・!!」
「さぁ、いけ。お前は地獄でも天国でもない、そこに居るじゃないか。現実に残ってる。」
「そう・・・するよ・・・」
「警鐘をならせ。"仲間"よ」


隔たれた空中は血でそまりその形があらわになった。
その四隅から黒い闇のような何かが一滴、また一滴

「漏れているのか?」
雫は細長く伸びて空の箱と繋がった。
「???」
奴は溶けるように黒くなりその雫を伝って。地に降りた。全身からは夥しい量の魂が噴き出した。

「キ・・・ギィヤヤヤヤヤヤッ!?アァァァァッ!!」
「誠は!?」
「逃げた筈だっ!」
「あいつ、隔たれた壁から出て来やがった・・・」
まだ形を取り戻してはいなかったが間違いなく出て来た。
「それもそうだ。誠が遠くへ行ったんだ力だって弱まるに決まっている。」
足下からじわじわと戻っていく禍々しいグチャグチャと音を立てながら。

「・・・クロシキ、白の97番。聞いてくれ」
「な、なんだ?」
「白の97番、誠を守れ。クロシキは、20番・・・いや自分の相棒を頼む。」
「・・・黒の18番・・・」
「逃げるんだ・・・頼む。全力で逃げてくれ」
「・・・」
「20番を消さないでくれ・・・」

クロシキには18番の眼に涙があるようにみえた。


ヂクヂクッ・・・グヂヂヂッ・・・グチャッ・・・

「急げっ!!!」

ビクッ!!
「・・・・!」
「・・・・わ、わかった。」

ズズズズィィッ!!・・・ビチャッ・・・

「ケッケッケ・・・他の奴らは・・・逃げたのかぁ・・・ケッケッケ・・・」
「貴様もさっきので魂を減らしているのはわかってる・・」
「・・・」
「ここで、貴様を消し去ってやる。」
「無理に決まってるさ」
「・・・あの世には閻魔大王様といってな。あいつは神の最高職にいる。自分らの監視役みたいなもんだ」
「・・・?」
「自分もあいつらも眼をつけられた。おそらく処刑対象で。」
「ケッケッケおもしろいね・・・僕が君を殺す役割か?」
「ちがう、"お前も眼を付けられてんのさ"。」

チャキッ・・・
重厚な黒刃の鎌を構える。
「運命には逆らえん」
ザッ・・・
漆黒の十字架を構える
「くだらん!」
「諦めるんだな」
ダンッ! 
地が抉れるほどの跳躍をし奴の右側に向かって鎌を振る。
ジャリッ、キィィン
奴は外れたと思い追撃しにきた。が、そのまま横転し頭頂目掛けて振り下ろす。
手で受け止められ、押し返された。
「・・・やはり、もう魂は使えないようだな。」
「手に傷を負っただけで使うほど・・・」
「ないんだな?そいつはいい。」
ガッ! ガッ!ガガッ!ジャキン!ッキン!キィィン!
「おおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」
ガキイィイィィン・・・
「・・・黒炎十字が」
「お前もそうなるのさ・・・そして自分もな」
残響を残して振動していた刃が突然砕けた。

キィィィィィッ・・・カラン・・・
「ケッケッケ・・・おもしろい」
「最後に聞きたい、なぜお前は戦う?」
「簡単だよ。支配の心に従ってただ・・・殺したいだけ・・・」
「自分もそうだった・・・戦うことに、相手を殺す事に、一つの死に。なんとも無く向かってた。」
「ケッケッケ・・・」
「ただ、今は違う。今は、相棒のため、仲間の為に貴様を・・・消す。」

ドウンッ!

そう音が聞こえそうだった。風は起きたが地を蹴るその足は軽く、無音であった。
ドッ!ドッッ!バキィッ!!
腹に2発、屈んだ所を踵落しで追撃する。
「キヤッ!」
ドスッ!ザシュッ!!
顔面に蹴り、追って爪でその身を抉り取った。
「ギィッ!」
ザンッ!ザンッ!ズシュッ!
加え、折り返し何度もその爪で抉った。
抉って、抉って、抉って、抉って、抉って、抉って、抉って、抉った。

すでに18番の両腕は奴の赤くも黒くも無い色の血が夥しいまでに付着していた。
「脆いんだな・・・その腕。」
「ケケッ・・・脆いが、けして無駄ではない。」

ガチャリ・・・

「なんだ?それは?」
筒のような物がこちらに向いていた。重厚そうな鉄の筒だ。
「創造・・・人間の創造・・・」
「・・・?」
ゆっくりと引き金が下げられた。


ズドドッドッ!!ドドッ!!!ドドパパパパパンッ!!!


「・・・・!!???」
「無限の可能性を秘めた、人間の手と、脳。創造された"へいき"は、生命の新しい文明のページを築く・・・」
「・・・ガフッ・・・何なんだそれは・・・・」
「創造の・・・産物だよ。」
ドカカカカガガガガガッ!!!
「・・・・ガハッ・・・」
なんだこれは、何なんだ?体にこんなに無数に穴が空いてやがる・・・血が・・・とまらねぇや。
「触れることなく。消すことができ・・・!?」


ドウンッ!!
見覚えのある、攻撃だった。

[333] 第十話
ググイ=デール - 2007年11月03日 (土) 23時33分

引き金を引いたものは誰を撃ったか覚えてない
撃たれたものは誰に打たれたか分からない。

ボタンを押すと、知らないところで人が死ぬ。

ある日一つのボタンを押した男がいた。
そのボタンによって放たれた兵器は
3万という数をたたき出した。


男は、その3万の数を少ないといってまたボタンを押した。


ある男は人を一人殺した。命令だった。

その一人の家族や身内はとても悲しんだ。男はその一人の罪の為に
自らの命を絶った。

数万と言う数の死は統計上のものでしかない。
その中に数十万を超える哀しみがあるというのに。


哀しみに単位はなかった。


そいつはそこに立っていた。
「なんの・・・音だ?」
闇の向こうを見つめていた。
「あいつは・・・まだこの"研究所"にいるのか?」

『ズドドッドッ!!ドドッ!!!ドドパパパパパンッ!!!』
遠鳴りがした。
「・・・あいつだ・・・」
そいつは震えていた。
「・・・"人間のへいき"を・・・」
手には拳が堅く握られていた。
「・・・"しんぽの勲章"を・・・」
その眼は・・・悪魔のようだった。
ひとつの屍骸から何かを取り出した。

「・・・217・・・そこまでだ・・・」

手にしたのは6つ程の黒く長い筒を備えた重厚なものだった。
カラン。
「博士、"人間のへいき"・・・借りますね。」
腰にそいつを備えまたその死骸をあさる。
「この"しんぽの勲章"も・・・もらいますよ。」
その小さな個体を頭に埋め込んだ。
「217・・・今行くぞ。」



「なんで・・・戻って来た!?」
「戻って来たんじゃ無いんだ。ここは・・・」愕然としていた。
遅れて白の97番が血相変えて戻って来た
「大変だ!黒の18番!ここは・・・」
「ハァ・・・ハァ・・・?」
「ケケッ・・・戻って来たか・・・物好きだね。」
「ここは・・・出られない。出口がない。」
「な・・・!?」嘘だろ?
「あいつ等は"ベルリンの壁"に隠れてるが・・・どうしても戻るって誠が・・・!」
「"ベルリンの壁"・・・?」
悪魔獣も知らない様な顔をしている。何だそれは?
「壁・・・封鎖・・・出口が・・・ない・・・」
何かを思い出していた。
「誠、逃げろよ・・・」
「死にかけで偉そうにいってんじゃねぇよ。18番。」
「あいつは想像以上にやばいぞ!」
チャッ・・・

「!!!!」
まてっ・・・

ドドウンッ!!
ドンッ!!  キィィンッ!
誠はまた眼力で防いだ。

「な・・・なんだあれは!?」白の97番は硬直していた。
誠は知っていた。あれは"銃"。人間が作り出した殺人兵器だ。
「なぜ、ここにある・・・。」
「知ってるのか・・・知らなくても不思議だろうが知っていたらなお不思議かな・・・」
「人間の文明の星はここらにはない筈だ・・・!!」何かに気付いたらしい。眼を大きく見開いていた。
「分かった?」
「人間の手に・・・人間の脳・・・そんなに大量にどうやって手に入れたかと思ったが・・・」
「そう、創造者は・・・」
「人間。」
「こんな辺境の星に・・・人間が・・・どうやって・・・」
「知らないよ。"悪魔の父"は僕が殺したから。」
「・・・ちっ・・・それと貴様、ここを開けろ、どうやって封鎖したんだ。」
睨む眼は普通の眼だったがそれ以上に殺気をまとっている
「しらないよ・・・?"ベルリンの壁"って言ってたけど僕は知らないよ?」
「じゃぁ、、あの封鎖は誰が・・・」
「関係ないじゃない。どっちにしても好都合だよ、君たちが逃げれないからね。ケッケッケ・・・」
目つきが。また、あの地に飢えたような目つきに変貌した。
「ぐっ・・・いかせるかぁっ!!」
狙いは誠だ。近くに落ちてた奴の黒い十字の剣を拾い上げ振りかぶって落した。
「ギィッ!!」
ザシュッ!!
奴の左手を切断した。正真正銘悪魔の手だ。
「貴様、どこまでも抵抗する気か・・・」
チャッ・・・
「とどめだ。」
しまったー

ドウンッ!!

「――!!・・・・?」
当たってない?
「ケッケッケッケ・・・馬鹿だねぇ、」
「あ・・・」
ドサッ。と音をたて球状のあいつは地に堕ちた。
「誠っ!!!・・・貴様!!」
「ケッケッケ、油断してるからさ。どっちも。」
眼の左下のところをあれに抉りとられたようだ。
「大丈夫か!?」
「あぁ・・っ・・問題ない・・すまんな。油断したっ・・・!!18番!」
チャッ・・・
「ケケッ」
「――――!!?」

ドウンッ!!
ドンッ!!
刹那。鈍く、衝撃が体をおそった。
さっき受けたあれの衝撃ではない。

「掠っただけか・・・」
「ガフッ・・・」
あれの直撃はなんとか免れたようだ。しかし、衝撃の後のせいか頭がふらつく。
「すまん!黒の18番!大丈夫か!?」
どうやら、白の97番の衝撃波で吹き飛ばして回避させたようだ。
「威力は下げたんだが・・・」
「バカヤロッ・・・まぁ・・いい・・その範囲の広い・・・攻撃じゃ直接あのへんな物を狙えといっても無理か・・・」
チャッ・・・
「ばいばい。」
「くっ!!!」

カチン。

「・・・・?」
情けなく響いた音の直後誠が叫んだ。
「弾切れだ!はやく!!攻撃しろっ!」
「あ・・・」
返事はいい。攻撃が遅くなる。
「らぁぁぁぁっ!!」
貫かれた右の腹を押さえながら左足で蹴りを打ち込む。
「―ギッ!!」
とっさに手にしていたそれで奴は蹴りを防いだ。
「ぁぁぁぁぁああっ!!」

バキィッ!!

ザッ――
ザザザァッ―――。

銃の鉄の筒の部分を曲げ、そのまま攻撃を与え、奴は吹きとんだ。

「ハァッ・・・ハァ・・それでもう、その筒。ハァ・・・つかえまい。」

[334] 第十一話
ググイ=デール - 2008年03月01日 (土) 00時22分

歌を歌おう。
終わらない歌を歌おう。
途切れない歌を届けよう。

「ん〜〜ん〜ん〜♪」
なんとなく頭にメロディが流れていく。
これも"人間の脳"のお陰なのだろうか・・・
壁はなんとも無いようだ。まだ奴はいる。
「鳴り響く〜鐘に〜♪」
不意に浮かび上がった歌詞をメロディに乗せて歌う。

ザッ・・・ザッ・・・
砂埃はすぐに消えていく。

「んん〜んん〜ん〜〜♪」
ゆっくり歩を進めていく。足下の死骸を踏まないようにだったが
そのままゆっくり進みたかった。

ザッ・・・ザッ・・・

「そのまま〜とりと戯る・・・ん?」

平地だった筈の地盤が抉れ、盛り上がり奇妙な形に隆起してる。
砂埃を交えて吹く風がそこでの惨状を伝えるかのように・・・
あと少し、この闇を進めば

「217・・・仲間に、博士に・・・」
その異様なまでに闇を巻いたような眼はより鋭くなった。
「まだ・・・誰かを殺す気か・・・っ!」


「・・・・」
「へっ・・・へへへ」
カラン・・・
乾いた金属音とともに中から何かを落とす。
「・・・」
「あとひとつか・・・」
その落とした物と類似したものを何所からか取り出した。
「どうする気だ?そんな曲がってもそれは使えるのか。」
カチャン。ジャキンッ
折れた筒にまたはめ込む。

「誠・・・」
物凄い小声で聞いた。
「なんだ?」
「あれはああなっても使えるものなのか?」
「多分使えない。」
「わかった。」

ダンッ!

地を蹴り再び刃が欠けた鎌を手にし突っ込んでいく
「おおおおおぉぉぉぉぉっ!!」
「ギィッ」
さっと折れ曲がった銃を出した。が、そんなものは軽く叩き切ることが出来た。
「甘いわ。その程度で防げるとでも?」
「ありがとう。」
「え・・・」
チャッ・・・


ドドウンッ!!
弾ける音が耳に響き弾が来る。

「ぐぅぅっ!」
急所は外れた。ダメージは少ない。
「キィィ・・・」
撃った奴のほうが腕に負担を負っているようだ。
「しめた!」
しかし、怯んでいたのは自分だった。体が一瞬動かなかった。
怯んでいなかったのは奴だった。ただ溜めていただけだった。
折れた十字剣を手に完全に油断していた。誠に・・・

「ま・・・誠ぉぉぉ!!!」

一瞬だった。最悪の事態になるまでそうまで時間を要しなかった。
跳躍した奴はその銃の先を曲げて誠の前で暴発させた。
それを目眩ましに、折れた剣を思いっきり薙ぎ払ったがそんなにとどかず足を切る程度となった。
それで十分だった。
誠の目に目掛けて手を・・・

グジュッ・・・
生の魚を千切ったような水っぽい音がした。

引き抜いた手には目が、血も血管もまだかすかな鼓動を持っているかのように小刻みに動いている。
「ケッケッケッケッ・・・やっと手にいれたぞぉ・・・」
そうつぶやくとその目玉を握り潰した。血や液体が空中に飛散した。それらは奴の体に吸収。されてしまった。
赤い魂を抜きとったら、誠の肉体は微動もしなくなり、情けない程に・・・

ドサッ・・・バシャッ・・・バシャサッ・・・

「ま・・・」
叫びたかった。しかし、そんな余裕は無いのだ。防いで来た最悪の事態なのだ。
傷は全治し誠の眼を手にいれた奴の姿が。
退路は謎の壁で閉された。
銃という武器で肉体も限界を迎えている。
事態は、あり得ない位悪い方に向かっている。

・・・なんで?
なんで戦わなきゃ駄目なんだ?
逃げろよ。
正義?悪?そんなものお前は気にしていたのか?
逃げろよ。
今更格好つけてなんになるんだ?お前はヒーローじゃない。
逃げろよ。
殺されることが目的だから?責任感じてるのか?
逃げろよ。
尻尾巻いて逃げろよ。
はやく、逃げて生き延びたらいいだろ?
逃げろよ。

頭の中を次々によぎってくる。確かにそうだ。逃げたらいい。

"見殺しにするのか?相棒を。"
やめろ。
"そんなものだったのか。それでルーキーか。"
やめるんだ。
"20番を消さないでくれ・・・"
やめてくれ

「や・・・やめて・・・くれよ・・・」
「ケーッケッケッケ、完了だ。」
そういうと奴の右目が何かに押し出され、神経も何も通ってない眼が血を潤滑油に滑りおちてくる。
そのうしろに、誠のあの眼がゆっくりと現れた。
「さぁ、始めよう。」
「もう・・・やめろ・・・」
「止めたきゃ止めてみな」
無理だ。もう限界だ。

"バカヤロウお前がやらなきゃ駄目だろうが。"

誠の声だ、意識の何処かから聞こえる。
"いいか、奴の右目の色が変わる前におおきく眼を開く、その瞬間眼を反らせ。"

魂も肉体も消えた筈が、あいつの声は聞こえた。
でも信じよう。今まで信じた仲間もいなかった、でも、今は信じられるのだ。不思議なことだ。
信じたいし、守りたい、それに生きたい。生き延びたい。
そして、誰も消させたくない。
だから、悲しまないで。怒るんだ。
悲しみを、痛みを、すべて怒りの力にかえる。

「のぞむところだぁぁぁァァァァァァっっ!!!!!!!」

それから、何が起こったのか。
体中から血は流れだし、平坦な大地は抉れ窪み削れている。
奴は―?
奴はどこだ。

ドウンッ!

「グゥア゛ァッッ!!」
バチィンッ!!
無意識に体が動いた、薄い光をまとった腕が奴の攻撃をはじいたのだ。
よくみると腕はボロボロだ。
「そこか・・・」
粉塵で眩まされた奴の影がいやに鮮明に見えた。
「ん〜♪ん〜ん〜〜♪」
奴か?
「ん〜♪・・・煙たいな・・・まだここにいたのか・・・」
誰だ?影はまさしく奴だ。
「・・・誰だ?」
「・・・おまえ・・・」
姿は奴だ。傷もない。だが何かが違う。優しい眼をしている。
「お前は・・・だれだ。」
「お前こそ・・・誰だ?」

「ハァ・・・ハァ・・・あいつは?生きて居たのか・・・まだ・・・」
粉塵の遠方に奴はいた。
「ケ・・・ケケッ・・・丁度いい。時間が稼げそうだ。」
そして遠方の方を眺め
「壁・・・か・・・」
そして軽く呟いた。
「あの先に・・・地球が・・・」

[337] 第十一話
ググイ=デール - 2008年04月03日 (木) 02時26分

自由が・・・僕の自由が、この壁を超えた向こうに。
自由が。もう邪魔させない。もう制御されない。
もう従わない。いいなりにならない。自分の好きな様に生きれる。
足の向くまま本能のままに動ける。
もうすぐそこに・・・すぐ・・・そこに・・・
そう思うと笑いが止まらなかった。

「お前は・・・だれだ。」
「おれは・・・あの世から送られてきた・・・黒の18番だ・・・」
「僕は・・・製造No.198・・・No.217を・・・仕止めにきた・・・」
「な・・・ナンバー217?・・・」
するとNo.198はあたりを見渡す。何かを探しているようだ。
「奴は・・・?立ち去ったあとか?」
「覚えてないんだ・・・」
「あれほど激しい戦闘をしてたのにか?」
「あぁ・・・」
違う、こんなところでのんびり話していていい訳がない。
「追わなきゃ・・・」
「え?」
そうだ・・・奴は何故消えた?新しい魂を得る為?だったら何所へ?ここに残っているのは・・・
「20番・・・96番、クロシキ・・・!!」
「な・・・なんだ!?」
「奴は・・・奴はあいつ等を仕止に・・・!!」
「あいつら!?・・・」
そういうとNo.198は自分の肩を掴んで壁にむかおうとするのを抑えた。
「なにしてんだ!!、はやく!・・・はやく奴を追わないと・・・!!」
「誰かは知らないが、奴の目的は・・・」
「壁の近くにいるあいつらを・・・!!」
すっと・・・手が解けた。
「壁・・・?」
そうすると、秒を数える間もなく真っ直ぐ向いて。
「行く途中で話そう・・・奴を壁に近づけない方がいいんだ・・・」
「え・・・?」
「行くぞ。」
ぐっと背中を押された。急ごう。

その頃壁近辺では・・・
傷を負った奴は。壁の見えるとこまで迫っていた。
あとちょっとで超えられるのだ。
「なんで・・・何でお前が、ここにいるんだ?」
「なんで・・・だって?・・・」
眼は、俺らよりも少し遠かった。それに眼はあの禍々しい眼が左だけに。右は、人間・・・の・・・
「いや、まさかな・・・」
誠なわけないよな・・・でも、こいつがここにいるのなら・・・黒の18番も誠も?
逃げた方がいいのか・・・白の20番には隠れて貰ったが、どうするんだ・・・
「貴様。」
「・・・なんだ・・・」
「この壁。超えたのか?」
「・・・壁?」
「この向こうに行ったのか?」
そういえば・・・けども、この壁。超えられるのか?
「こんなに高い壁を超えれる訳がないだろ。」
「この壁はそんなに高い壁じゃない・・・。それだと・・・登ってはみたのか」
「あぁ・・・終わりもみえなかったぞ?」
「お前たちは、どうやってここに来た?」
「あの世からの扉で・・・」
「そうか。」
そう、僅かに間をとると奴は右目の力を込めた。やはり、あれは誠のものだ。
ドウンッ
壁に穴が空いた。かなり大きかったが向うは全くみえなかった。
徐に語りだした。
「思いだしたんだ。ここは空間で区切られていたということを・・・」
つけ加えて語り始めた。
「そしてさらに思いだした。この壁の向こうには。地球があると。」
「そんな筈はない!」
ここの星は。文明もなにもない星だ。人間が住める環境でもなかったはずだ。
「僕や、貴様らには関係無いだろうが、ここには酸素がある。」
「だからなんだ。」
「人間が過ごせるんだよ。ここは。ひとつの空間だ。」
「空間だと・・・」
「思いだしたんだよ。ふとね。なんでだろうか。」
「僕らの間の噂でだ、この先に地球がある・・・」
「ない!この先に何があるかは知らぬが、少なくともこの近辺には人が住めるような星はない!」
「見てもないのに?」
「我らあの世は生命体のあるほとんどの星を確認している。俺はそれを見た。」

クロシキは見た。
閻魔大王の机の中の資料を。
クロシキは自分の記憶から自分の生前の星を調べようとした。
見つける前に閻魔大王にみつかり、抵抗はしたものの捕まった。
消されるかとおもったが、ある時編隊に入れられそれからここに送られた。
送られる前の現在地の資料をみたがあの時見た中の星はなかった。

「超えてもないのに?見てもないのに?」
「・・・」
こいつを外に出せば消えずに済むはずだ・・・でも
「通せよ」
もう任務なんていいよな。
「邪魔をするな」
もともと俺は反逆者だ。
奴は歩き出した。
「なにもするな。なにもしない。」
「お・・・お前は魂が欲しいんじゃないのか!?」
「くれるのか?」
「や・・・やらねぇけど・・・戦わないのか?」
「戦いたいのか?」
なんというか、すっきりしない。このままこいつを通していいのだろうか。
指令所にはこいつを放つと後々混乱を招く。とか書かれていた。
この任務がうまくいけば免罪ともかかれていた。

逃げることも可能だ。
逃げることも・・・
吾輩・・・が・・・?
にげるのか?
かつては閻魔大王もおそれぬほどの意気があったこの吾輩が・・・?
「逃げるものか・・・」
「・・・?」
もう既に壁の前まで来ている悪魔獣は二の足を踏んだ。
「何も・・・するな。」

「・・・こ・・・ことわ・・・」
「断る。」
パァンッ!!
誰かと声が重なった。俯いていたせいで気付かなかった。18番に・・・奴!?
確かに奴は前にいて、何かで腕を貫かれている。
あれは・・・誰だ?
「クロシキ・・・白の20番は?」
「ど・・・どこかに隠れている筈だ・・・お主、そやつは一体・・・?」
黒の18番はなにかを探していた。
「クロシキ。あっちのほうに97番と20番がいる筈だ。避難させておいてくれ。あとこいつは・・・」
「ボクはヤツだよ。」
「・・・?」
「同じ奴だ。」
パァンッ!パンッ!
また何かで奴を攻撃した。
「クロシキ。こいつは味方だ。ともかくあいつ等を守れ。お前も・・・消えるな。」
「ま・・・待て!わ・・・吾輩も戦う!」
「いや・・・お前はいい・・・もう、誰も眼の前から消したくない。」
「・・・勝手に援護するぞ・・・」
「・・・」
じっと見つめてきた。
「勝手にしろ・・・でもな、少しでも危険を感じたら、プライドなんかよりも先に逃げろ・・・いいな?」
「あぁ・・・。」
「やるぞ。最後の・・・抵抗だ。」

[338] 第十二話
ググイ=デール - 2008年05月03日 (土) 16時42分

求められた死を恐れ
鳴り響く鐘に平和を刻んだ
広場に散った悲しみは
そのまま鳥と戯る
空まで昇る幾つもの願いは
果たされ満たされ消えてゆく


その場所に散った数えきれない
悲しさを残して


やらねばならぬ運命にあり
避けては通れぬ道を選んだ
戦場に散った残骸は
そのまま土に還りゆく
虚しさしかないその場所は
ただあるだけで語ってく


その場所で悲劇があったことを
姿、残さず



「これで・・・最後にしよう・・・?」
「何も・・・するな・・・」
「ここで、お前を逃がすと・・・お前の犠牲になった奴らの魂が・・・浮かばれねぇだろ」
「ケッケッケッケ・・・何を馬鹿なことを・・・あの世の物はその程度のこともしらないのか?」
「お前から抜け出した魂は確かに昇った。幾つか迷ってはいるが・・・な」
「なら・・・何の為に?」

「悲しみも、苦しみも、虚しさも・・・見える訳じゃないし、本当にあるかどうかも分からない」
「・・・変な事を言う様になったな。貴様」
「悪いが、俺はその感情を・・・切り捨てることは出来ない」
「・・・」

「もう、ここに来た目的なんかどうでもいい。ただ、このままだと消えていった奴らに・・・」
ほんのすこし目の辺りが熱くなってきた。
「申し訳が・・・ないだろ?」
「・・・こちらこそ、悪いけど急ぐよ?」
「・・・2対1だが・・・いいか?」
「手っ取り早い。いいよ」


隣のやつと殆ど同じ外見の悪魔獣は奴に向かっ小さく厳しい声で言い放った。
「壁は・・・越えたのか?」
「いまからだ・・・」
「越せないだろ?それ・・・」
「あぁ・・・」
静寂。風の音も次第に消えていった
「生き残りは・・・貴様だけか?」
「・・・生き残りはお前だけか?」
「いたけど・・・僕の中に・・・」
「それで・・・紡いだのか」
「217・・・"人間のへいき"は何所だ?」
「そこの・・・あの世の使いに壊されたさ。弾もない。」
「何故、そこまでして"研究所"を抜け出して向こう側へ行こうとする」
「聞いたことあるか?あの日くらいに流れた噂だ・・・」
「壁の向こうを見たやつか?」
「そうだ・・・この壁の向こうに・・・地球をみたと」
「貴様は・・・その噂を、ただ確かめたかったんだろ?だからあんなふざけた事を・・・」


この広い研究所の中央にある収容施設が、死骸で埋め尽くされる前の事だ。
No.217は噂を確かめに、自由運動時間に博士のもとを訪ねた。
部屋から眺められる景色では各々が格闘をしたりなどをして運動をしていた。
「博士・・・今、僕等のあいだで流れてる噂をご存じで?」
「あぁ・・・あれか・・・なぁNo.217。この世には知らなくて良いことと悪いことがある。わかるか?」
「えぇ・・・なんとなくですが」
「特にここにいるやつの中でもお前は少々強い。」
「・・・壁の向こうには・・・本当に地球が!?」
「あったらなんだ・・・関係の無い話だ・・・お前らには・・・」
「問題がないなら・・・何故明かさないのですか!」
「向こうに人間などいない!・・・地球などないのだ!・・・」
「博士・・・僕らは戦争というものの為に創られた・・・兵器なんですよね?いい加減戦わせてくださいよ・・・準備はもういいんじゃないです?」
「217・・・・もうこの話題には触れるな」
「答えてください!」
「退室しろ・・・」
両サイドにいる同じ姿の使役用の奴を使ってドアの外に送った。
バタン・・・
「・・・地球では、とうに戦争など終わってしまったというのに・・・」
机に落ちるように座り込む。
「どこかで・・・終わりにせねばならんのだろうな・・・我が祖国も敗退したらしいしな・・・」
窓の外から遥か遠くで壁を越えようとしている数人連中を眺めた。
「もはやこいつ等は・・・危険物でしかない、地球に行かせるわけにも、このまままかり通すわけにもいかまい」
机の中からひとつの紙の束を出した。
「最終的にはここをまるごと爆破すれば・・・」
問題はあいつらの強力さだ。人間を超えた肉体。精神力。核爆弾よりも厄介だ。
ガタンッ―――
扉が蹴破られた。
「aE・・217・・・貴様・・・聞いていたのか?」
「だったら・・・僕らがここにいる・・・生きている理由はなんなんだ!?」
「ま、、まて、戦うためがお前たちの理由ではない筈だ・・・」
「他の奴らは記憶にないらしいが・・・なんとなく記憶の片隅に僕のしらない博士の記憶があった・・・」
「・・・・記憶・・・?」
「お前たちに、力と血を授ける。さらに・・・いい餌場を授けよう。欲しい奴はついてこい・・・」
「記憶は・・・消したはずだ・・・」
「残ってたんだよ・・・しばらく何かは分からなかったが、つい最近それが何か気付いたよ」
しばらく、その空間に言葉は流れなかった。
「・・・理由をくれ・・・」
「・・・」
博士は動けなかった。彼からは怒りではなく哀しみを感じたからだ。

「僕らは理由を失った・・・あなたも・・・理由を失った・・・」
「・・・・」
「解放しろ、壁を開けてくれ・・・あとは僕ら自身で探すよ・・・」
「これは私の責任だ、お前たちも、ここも・・・私が責任を取る・・・ここから出すわけにはいかん」
「他の奴らはそれで通じるだろうが・・・僕はもう決めた」
「決めただと・・・一体何を?」
「貴方には・・・世話になった・・・」

くるりと体を返し僕は広場に出た。


「・・・217、僕は博士のあの命令を今も引き継ぐ気はないし、いまさら恨みも消えてきた」
「貴様は止めないということか?」
「逆だよ・・・」
「逆?」
「そこまでして・・・僕らに見させないようにした世界・・・向こう側・・・理由はいらない、危険なんだ」
「怖気づいたか?」


広場に出たら、今まで自由にしていたあいつ等は微動たりともせず僕を見ていた。
「・・・なぁ。皆で壁の向こうに・・・」
「命令だ。奴を仕留めろ!!」
「ちっ!!」
あいつ等は命令に忠実だった。
目的に飢えていた。
各々が理由を求めてた。
だからこそ、未だ見ぬ壁の向こうに理由を見つけたかった。

それでも、殺すのはなんとも気持ちがよかった。
いままで仲良く話してきた奴も
嫌いだった奴も
そっくりだったけど、皆よく知っていた。
皆、疑うことなく攻撃をしてきた。


僕はそれにちゃんと応えた。

[339] 第十三話
ググイ=デール - 2008年05月19日 (月) 22時18分

人々は生きる為に戦った

ただ理由が欲しかった

生きたいと願って戦った

本当に戦わなければならなかったのだろうか・・・
どちらかが必ず死ぬのに
生きる為に殺し合うのは
なにか間違ってないか?


それでも血で濡れたその手は
暖かく、自分に生きている確信をもたらす
感情を確かめる


生きたい

ちゃんと生きたい
無意味な命でないことを確かめたい



「あの先には僕らの理由がある・・・そうおもわないか?」
奴は破顔した。
「自分は・・・お前をここから出さないような指令を受けた。危険だからと」
ザァァァ・・・。風は吹かないがなにかの音が遠くから聞こえた。
「意見の一致はないか・・・」
「そのようだ・・・」

「残念だ・・・」
「何がだ?」

ザァァァ・・・

「さぁな・・・」
シュル・・・ギュッ・・・ギュッ・・・
こいつは白い布を両腕と両足に結びつけた。
「見訳はつく?」
「・・・あぁ」

始まりと最後。
咆哮を挙げる。
ザンッ!と地を抉り突撃していく。
「おおおおぉぉぉぉぉっ!!!」
「キィィィィァァァァァッ!!」
ドンッ・・・ガッ・・・ドムッ・・・
余力少ない状態の殴り合いの音は鈍く、どこを殴っても血がちっていった。
「黒の18番・・・僕を卑怯と呼ぶかもしれないけど」
ズッ・・・バキィ・・・
ジャララ・・・カチン・・・。ゆっくりとその筒を奴に向ける。
「・・・217・・・貴様はまだ残してるんだろ?」
ダゥンッ!!
「キッィッ!?」
「"銃"・・・やつも持ってたのか・・・」

ガッ・・・バキッ!・・・
スキをみた黒の18番は顔面を打ち上げ被弾した腹部に蹴りを打ち込んだ。

奴は立ち上がった。
魂を使って回復することなく。
「ハァ・・・ハァ・・・」
「痛いか・・・?痛いだろ・・・?」
「ハァ・・・ケッケッケ・・・ハァ・・・!!!」

ドンッ!!
「ぐふっ!!」
誠の眼を忘れていた。
油断していたせいでかわすことができなかった。
「ちぃっ!!」
ダウンッ!!ダダゥンッ!

「!!!」
ドンッ!!
奴は自分を吹き飛ばした後、あいつの銃を目的に攻撃をした。
「貴様っ!!」
傍にあった大きめの岩を思いきり投げつけた
「!!」
ドンッ!
「・・・217ぁ!」
ヒュン・・・バキィッ!!
岩の方に気をとられていた奴の頭部をその筒で殴打した。
そして、あいつは何の躊躇もなく引き金を引いた。
ダンッ

「・・・とどめだ」

遠巻きに風が吹いていた。
ガシャン・・・
「黒の18番・・・これで・・・」
ガッ。と、あいつの足を奴は掴んだ。
「No.21・・・」
ドゥン・・・・
鈍い音が響きあいつは倒れた
少しして目から魂がでてきた。
「グアァァァァ・・・ッ・・・」

あいつの魂は奴に取り込まれた。
「ケッケッケッケ・・・」
「ちぃ・・・!」
カチン・・・

「黒の18番、なんか手こずってるな。なんでこいつが二人もいやがんだ?」

ダウンッ!!
「ギィッ!!」
「白・・・20番・・・」
「ほんの少し自己再生できた・・・よくここまで抑えたな」
「キ・・・貴様ぁ・・・」
「これが・・・"銃"・・・」
ダウンッ!!・・・ッザァァ・・・
「馬鹿野郎・・・逃げてろって・・・」
「さっさとたたんじまおうぜ」

「ギィ・・・」
「・・・あれ・・・貴様、目が変わったな・・・その右目・・・」
「・・・・!!逃げろ20番!!」
「・・・え?」

ドゥン!・・・・

ほんの数刻、やつの方が早かった。
「グゥッ・・・!」
ザァァ・・・
「20番!大丈夫か!?」
「あぁ・・・いっつ・・・大丈夫だ・・・あれなんだ・・・?」
「誠の"眼"だ」
「それで・・・か・・・」
「ケッケッケッケ・・・・逃げてりゃ助かったものを・・・」
クィッと右目の色が変わるのが見えた。
「20番!」
「分かってる」
―――すぐに白の20番の視界は、闇。
「ケッケッケ・・バカだねぇ・・・眼をとじれば防げても。動きが見えないんじゃ・・・」
ヒン・・・・・
「・・・・?」
「うらぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
バキィィン・・・
「18番!!」
眼をとじた20番の方に気を散らせておいて18番は背後をとったのだ。
そして、殴打に使ったものは銃だった。
チャッ・・・

「もう・・・さよならだ」
「片目・・・もらったよ」
昇魂眼がしっかりと開いていた・・・しまった。
ドンッ―――
一線の光が半空きの左目を貫通した。
「うぐぅっ・・・」
右目をこじ開け、力を振り絞って引き金を引いた。
ドウン!・・・

苦しい―。まずい、魂が――
ガシャン・・・
足下に転がり込んで来たのはボロボロの自分の置き忘れてきた鎌だった。
誰だ・・・?
なんとか開く右目には黒く小高い影が見えた。
クロシキか。
「十分か・・・!武器がないと・・・魂を・・・・持っていけぬであろぅ・・・!」
急いで来たためか息切れしている。
「・・・!?20番・・・隠れてろといったのに!!」
どうやら20番が場を繋いでいるようだ。

苦しむ18番にクロシキは気付いた。
「・・・・どうした?・・・その眼・・・」
「ウガァァァァッ・・・・アァァァァ・・・」
爪先からじわじわ冷たくなっていく、逆に顔からが熱い・・・
「ガァァァ・・・ウウウゥゥ・・・」

この眼を・・・この眼を・・・・
一刻も早くこの眼を除去する―――!!
ガッ・・・。この肉体もどうせもう使い物になりそうにないからな・・・。

ドズッ・・・・。鈍い音が静かに鳴った。
「ぐっ!!!!」
「18番!!?」


ポチャン・・・


ズリ・・・ズズ・・・ガシャン・・・

ポチャン・・・

「ハァ・・・ハァ・・・」
「お・・・おぃ・・・18番・・・」
潰れた自分の眼は、血の色でもなく、眼の色でもなく、石の様に物々しく、さらにはしぶとく波紋を描いていた。
「お主・・・何をやっておるのだ・・・?」
「ハァ・・・危うく魂をぬかれるとこだった・・・」
「・・・誠の眼か・・・」
傍に落ちている血で染まった黒金のボロボロの鎌を拾い上げる。
「感謝する・・・手で引張り出すより楽だった・・・」

そういうと黒の18番は軽く微笑んでまた歩き出した。
「・・・・・・18番」
「なんだ?」
ブ――・・・ン・・・・
籠手だらけの体の一部が崩れ大きな穴が現れていた。その前には青白い光の弾が浮かんでいた。
「もってけ・・・お主は回復力の早い体ではなかろう・・・」
「そういえば、お前はその力をつかって閻魔の机を制圧したんだったよな」
「但し・・・分けてあるせいで少ないがな」
「・・・十分だ」

[340] 第14話
ググイ=デール - 2008年06月11日 (水) 22時06分

「20番・・・代われ・・・」


そう言ったものの20番はもう立っているのがやっとではないかと思われるほどやられていた。
それほどの窮地であってもこいつは道を譲らなかったというのだ。
「ケッケッケ・・・眼を抉りとって防いだか・・・でも両方の眼は抉れないでしょ?」
「両・・・方・・・?両方って・・・?」

20番の方をみると、同時に倒れ込んだ。
「20・・・!」
呻き声を上げる20番、眼はとぐろを巻いたような模様が両方にしっかりと映っていた。
「貴様・・・!!」
「ううぅあぁぁ・・・・」

止むを・・・得ない。


ザン・・・・

がたついた鎌を一気に振るい20番の映らぬ眼に水平にその切っ先をあてた。
傷んだ刃はその眼を奇麗に削ぎおとせるだけの深い傷を作り、
折り返し、もういちど目に刃を入れる。今度は眼を上手く神経から切り離せるよう

素早く。慎重に。抉りとる。

矛盾してはいるが、考える時間はなくなった。
一旦眼からの致命傷は避けたが、どのみちこの出血量では肉体が音を上げる。
おまけに目が見えない状態では非常に不利だ。
さぁ・・・・どうする?

「しつこい・・・・」

「しつこい・・・しつこい・・・・・・・しつこいぞぉぉぉっ!!!」
「・・・御互い様だ」
互いに跳躍。
奴は弾の切れた銃を手にしていた。
ガンッ・・・キィィン・・・。
擦れ合うその一振り一振りが腕の神経に響く。
キィン・・・カァン・・・カンッ・・・ガキィン・・・。
もう超越した速度も強靭な力もでない。なんとか刃を振り上げなんとか攻撃をうけとめる。

「ハァ・・・ハァッ・・・貴様、眼は使わないのかっ・・・・!」
「ケッケ・・・ッケ・・・・・・・」
返答はなく、間をあけてきた。
「・・・・・ッ!!」
ドゥン

「動きが・・・鈍ってんぞっっ!!」
ガッ・・・
眼を向けた先では左手で掴み逃がさぬようにして右手元の鋭利な岩石で背後からそれを頭部に突き刺した。
「ガ・・・・・・アガ・・ッ・・・」
奴とほとんど同じ図体のあいつは、魂を余分にもっていたのか生きていた。

あいつは後ろ側からやつの誠の眼を貫いたのだ。
「・・・くたばれ・・・!!」
離した右手で思い切り殴りとばした。
血飛沫とともに吹き飛ばされ、奴は地に伏した。
なんとか起き上がる。が、黒の18番は悲しみにも似たような表情で奴の前に立っていた。
嘆息し、引き笑いをする奴を目の前に、立ち塞がっていた。
「・・・・?」
何故か動けない奴を前に黒の18番はゆっくりと喋りだした。聞き取れない様な、消えてしまいそうな声で。


「・・・ごめんな」



ガッ・・・。

ぐしっ・・・。

掴み上げた奴の腹部に黒の18番は腕を貫通させた。
黒く。
黒く。
黒く。
溢れる血。
冷たく、重たく。
悲しく、空しい。


終焉を迎える。

「・・・やはり魂を使い切ったか?」
「・・・だめ・・・やだ・・・」
奴は小声で繰り返す。
「・・・こんなとこで・・・・・・嫌だ・・・」
黒の18番は微動だにしない。
その表情を固めたまま黒の18番は腕を引き抜いた。
前後から噴き出す血。
よくわからないツギハギの臓器。
一気に崩れ落ちる。

「う・・・うぅ・・・生きるんだ・・・壁の向こうに・・・いく・・・しぬ・・・かよ・・・」

手足をもがかせて地を這う。
高く越えられない壁へと這う。
あるかどうか分からない理由をみる為に。
今を生きる事に、明日を生きる為に。
その理由を失わぬ様に。


―全ての生物は生まれながらにして役割を持つ。
 目的を持つ。
 何ひとつ、無駄なものなどない。
 運命という台本は全ての秩序となる。
 其々の命はひとつの文であり単語である。
 全ての物はその全ての存在に理由を持つ。 ―

僕は・・・一瞬でしかないのか?
在るべき場所から外され隔離されて、僕は理由を失った。
きっとそうなんだ。
だからあの壁の向こうにある理由を・・・

「嘘だ・・・嘘だ・・・・うぅ・・・」
「貴様はもう死ぬんだよ」
「あとひとつ・・・あとひとつあれば・・・」

その瞬間は分からなかったが。確実に奴は何かを見つけていたのだろう。
方向をすこしずらし、さらに急に急ぎだした。
その時はただ、命の最後を感じ急いだのだろうと思っていた。
けれども奴はひとつの手段を見つけた。
奴は、抉りとられた眼を見つけた。

押し込み、最後の力を振り絞り振り返り光線を放った。


ドゥン・・・と弱く、けれども重たい音が響き渡る。

「・・・・え?・・・・」
不発だった。当然と当然言えばだ。あんなのが当たるわけがなかった。
当たるわけなんかなかった。
不意に。背後から何かが倒れる音がした。
「・・・・20・・・・番?」
不幸にも、20番に直撃していた。

「ケッ・・・ケッケ・・・」
奴の誠の眼は使ったと同時に弾け飛んだ。
それでも瀕死の状態の20番に当たったことには奴も驚いていた。
当然、即死だった。
奴は手を引いて魂を手繰り寄せた。
「ちっくしょ・・・・・・」

その後の言葉は無かった。
奴のもとに向かっていた魂は急に動きを止めた。


奴は、死んだ。

[355] 第15話
ググイ=デール - 2008年07月30日 (水) 22時42分

誰か――
返事してくれ・・・・

誰か・・・誰か居ないのか?


なぁ?・・・・なぁ!?・・・・・

「なんだよ・・・誰もいないのかよ・・・・」
でこぼこで真っ黒の大地に白かった空はいつの間にか真っ黒の空に。

広がる血の匂い
青白い魂がほんのり明るい空間をより明るく照らす。
手を伸ばしても触れない、掴めない。

「20番・・・・?20番・・・・!!・・・・おい・・・おぃ!!」
透けるように手を透過する。悔しい事に"黒"の番号を持つこの体は魂を掴めない。
「畜生・・・畜生・・・・畜生・・・・・・!!」
何度も何度も、黒の18番はさわろうとした。
「戻ってきてくれ、戻ってきてくれ・・・。畜生、何でだ・・・!?何で掴めないんだよ・・・!!何で触れないんだ!?」
触れないということは百も承知。それでもどうしても声に出てくる。

叫びを一つも聞き入れず、残酷な事にゆっくりと、魂は黒い空へと向かおうとする。
「駄目だ・・・!駄目だ・・・・っ!!行くな・・・行くなよ・・・・!!」


ぅ・・・・・
うあぁ・・・・あぅ・・・っ!
うあああぁぁぁぁっ・・・・・!!
あうっ・・・あうっ・・・・あうぁっ・・・あああっあああっ・・・・!!

叫び。嗚咽を漏らす。
倒れ込んでしまって動かない体が
何もできない自分が
悔やみ切れなくて
なぜか申し訳なくて
誰かに謝りたくて
できない自分が恨めしくって
眼の前にあるのに遠くて
掴めないその手が
悲しくて
弱くて
辛くて


どんどんどんどんこみ上げる何かに
ただ、声を上げ
ただ、叫ぶしかできなくて
すぐに声も途切れ途切れになって
それでも叫んで
喉の奥の何かが壊れてしまいそうで


地面に手を打ちつけて
地面を這って
見上げたまま


ただ、喚くしかできなくて

視界がぼやけ
自分の叫びが遠くなった気がした


不意に――
冷たい。頬を水が伝う。
涙だ・・・
知ってる。これは涙だ。辛いとき、悲しいとき、人間が流すやつだ。
・・・何で知っている?



「・・・・番・・・・18番・・・!」
叫ぶ声、ぼやけた視界に唯一映っていた青白い光はさっきよりも手前にあった。

「生きてる・・・?」
体を急に起こされる。ぼやけた視界に映ったのは竜人の顔。白の96番だ。
「・・・・クロシキ!まだ大丈夫だ!」
「よし。・・・・お主動けるか?」
そう言われ足に力をいれ自力で立つ。
肩で眼を擦るが血で濡れてあまり意味がない。
ふら付く体をなんとか自力で支える。
大分視界が鮮明になる。
映るのは、竜人の白の96番。籠手のような物で身を繕ったクロシキ。そしてNo.198
クロシキの手には20番の魂が掴まれていて、No.198は20番を肩に担いでいて、96番は3つほど魂を持っていた。
「・・・96番・・・それは?」
「最初の3名のだ。天に返すよ。こいつらが最後なんだ」
そういうと1つずつ宙へと浮かべる。
ゆっくり真っ直ぐ。それらは空に消えていった。

「クロシキ・・・・その魂はもう肉体に戻らないのか?」
「・・・・普通は戻らぬ。だが、この魂・・・多分これは閻魔様の魂の浄化がかかってないのだ」
「・・・・どういうことだ?」
「つまりだ・・・閻魔の使いの魂と同じ。天と地を蹂躙してるやつだ」
「・・・・・・」
「つまり・・・白の20番は、白の番号持ちの使いではなく・・・恐らく、お前の監視役として閻魔様に送られたというわけなんだ」
「・・・・・・・そうか・・・・道理で・・・・」

道理で自分のことを理解している。
道理で20の最初の番号もちであれほど強いわけだ。
道理で・・・・な・・・・。


「黒の18番。恐らく閻魔様に言えば記憶はそのままで・・・・戻るはずだ」
「・・・・・・」
何も言えない。嬉しいような、悲しいような。
「・・・・じゃぁ、この肉体は要らないのか?」
20番を担いだままのNo.198が尋ねる。
何かを思いついた白の96番は徐に地面を掘り出した。
「・・・・何やってるんだ?」

そうこうしている間に大きめな穴が出来た。96番はNo,198から20番の肉体を渡してもらい。
その穴に置き、上から土を被せた。
「・・・・・"墓"っていうらしい。とむらいの意味を持つんだとさ」
「・・・・・そうか・・・・」
しばらくして、振り返り、壁に向かう。
「で、どうやってここから出るんだ?扉は?」
「俺らが使った扉は殆ど使い物にならなかった」
白の96番はすこし斜め下を見て肩をおとした。

扉はこの世とあの世を繋ぐ連絡用の通路。
景色に同化させたりして壊れたり、壊されたりするのを防ぐため隠すことができる。

「・・・あいつに壊されたのか?」
「その分もあったが流石にあれほど激しかったんだ。壊れもするか・・・」
あ、そうだ。黒の18番は思いだした。自分が使った扉があるはずだと。
「・・・あの仮面の奴の死体はどこだった?」
「むこうの方だ。まだ残ってるはずだ」
「よし・・・戻るぞ、あっちには自分らがつかった扉がある」
ザリッ・・・ザリッ・・・。体をひこずりながら歩を進めはじめるとすぐに96番が腕に肩をまわす。

そして歩を進めつつ白の96番は囁いた。
「・・・・・・おつかれ」

[359] 16話
ググイ=デール - 2008年08月12日 (火) 22時46分

その地点は、まだ血の踪も大きく歪んだ大地も肉片もそのままで残っていた。
散っていった夢の踪。
失ってから気付いた大切なモノ。
悔やんでも悔やみきれない、実態のないモノ。
記憶が紡ぐ、夢の記憶。
生々しい臭いが前の記憶を近付ける。
感情を忘れかけた自分が感情を思いだした。
怒りしか知らなかった自分が悲しみを知った。

涙の冷たさいつの間にか忘れてたのか。
それとも忘れさせられたのか。

埋もれた感情
沈んだ記憶
蹂躙する叫び声
脳裏に焼き付いている誰かの顔
叫ぶ顔


あいつも・・・・あいつも一緒だった。

生きる理由を・・・埋もれた記憶を・・・見つける為に。
求めるまま彷徨い
闇をあてなくもがいて
同じ理由をもって、同じ様に生きたかっただけなのに
生きたいと願って殺し合う
生きる為に殺し合う

憎しみは、悲しみに

悲しみは、苦しみに


「・・・・ここだ。ここから入って来た」
「こんなところに穴があったとは・・・・」

歩きついたその穴は大きな石板で塞がれていたのがあからさまに分かるくらいに、傍には石板があった。
穴は暗く、すぐ下へ続いていた。
きたときほど高くは感じないまま下に降りる。
そして・・・この肉片の散らばる地についた。

「なんだ・・・・ここは・・・?」
No.198は眼を見開いた。しゃがみ込んで腕と思われるものを拾い上げる。
「人間の・・・?・・・でもそうでもない・・・・」

ボタッ・・・。とすぐ傍で落下音が聞こえた。
「首?・・・」
落下物を確認しクロシキは上を見上げる。
「空から・・・・?」
「・・・・・・なぁ・・・・ここからあの壁の裏に回りこめるんじゃないか・・・?」

そう言うとNo.198は落下してきた方向へ向かう。
後を追ってクロシキ、白の96番も向かう。要するに自分も空へだ。
真っ黒な空は今度は簡単に通過できた。

「なんだここは・・・・?」
黒い雲を抜けた先は、目のやり様の無い光景だった。
「同じところ?」
白の96番は呟く。


大地は、全て死体で埋まっていた。
死体かどうかは分からないが、間違いなく生きてはいまい。
死体のほとんどは多分人間。
「・・・・・・・」
正面には、何所までも続きそうな壁。
ここには町があったのか、建物らしき土台がある。
全て壊れ、死体に混ざっていた。

壁の反対側を見ると直ぐ近くに小さな廃屋が見える。
「・・・・なんだよ。ここが地球なのか?」
No.198は眼に悔しさを宿したように、目の焦点を外していた。


「・・・"ここはどいつ、さんげきのかたわれ。"」

徐にクロシキが何かを読み上げる。
「クロシキ・・・なんだそれは・・・?」
「この廃屋に書かれているんだ。続いてる」
滲み埃った石板を擦りながら続きを読み上げた。


"ここはどいつ、さんげきのかたわれ
われわれはさいきょうの
せいぶつへいきをつくるため
ここにとどまる

せんそうがおわった
まけた
けんきゅうはとちゅうだ
われわれはつづける

でくちがわからない
かえれない
それでもここで
われわれはけんきゅうをつづける

あくまというせいめいたいと
にんげんのきめらにせいこうした
しっぱいさくはかべのにしへ
よくせいとはんだんができる
わたしはまだけんきゅうをつづける

ばいようにせいこう
しっぱいさくはあばれるので
にしへおくることにした

にしもひがしもかべをこえようとしている
こえられるのもじかんのもんだいだ

しゅうしゅうがつかなくなった
わたしがころされた
わたしは・・・      "


「・・・・そこからないのか?」
「最期の"わたしは"はかなり急いで書かれている・・・」
クロシキは赤黒く滲んだ石板を指でなぞりながら確かめる。

「"わたし"が殺され"わたし"はここでは生きている・・・・・・急いで逃げた・・・?」
「・・・恐らくその"わたし"は博士のことだろうな」
白の96番の呟きに応えるNo.198。
「博士は二人・・・?」
「違う、コピーだ。博士は僕らの糧になる生物などを造り上げてた。多分博士は自分もつくったんだと思う」

傍にある人間の首を拾い上げる。
よくみれば落ちている顔には幾つか同じ顔のがあった。
「人間のコピーの失敗作・・・?突然変異・・・・・・まさか・・・・・・!?」
18番が何かに気付いた瞬間。

「ウガァアァァッ!!!」
声。


廃屋の裏から響いてきた。
「そうだったのか・・・・!?」
廃屋のうらへとふつきながら歩を進める。
「どういうことなんだ18番!?」
「そう・・・だったのか・・・・?」

廃屋の入口は不気味に中へと誘うようだった。

「ここから声が・・・・?」
96番は18番の歩に合わせ中へと進む。
あとを追うクロシキとNo.198。


カンカン・・・、鉄の階段は静かに音を響かす。
「なんだここは・・・・」
「多分隠し通路でしょう」
No.198はクロシキの問を返す。
明暗のわからぬ冷え切った通路、蛍光灯が途切れ途切れに点滅をする。

足もとに横たわる肉片。
滴る生温かい血。

匂う。




血の・・・匂いがする。

仄かに、途切れ途切れに通路を照らす。
通路の奥の奥から白い見覚えのある強い光が現れ

間もなく消えた。


だが闇は始まらず。再び光が現れる。
「・・・・・どういうことだ?なんでこっちにも扉が?」
驚いていたのは黒の18番だけではなかった。
「・・・・お主が使った扉は確かに下にあった・・・この扉はなんだ・・・?」

紛れもなくこの世とあの世を繋ぐ唯一の扉だ。
「それよりさっきの光も扉のものだろ・・・?一体誰がいたっていうんだ?」
白の96番は体を振るわす。
「あれは自分らだ・・・・・間違いない。ここに来る前の自分らだ」
在り得ない事ではない。
あの世の時間とこの世の時間は次元も時空まったく別物になる。
だが、あまりにも不自然で、妙に奥がある。

「・・・尚更分からない・・・・・」
牙の奥を噛み締める。
口には血の味が広がっていた上に、
締めると顎が悲鳴を上げる。
「閻魔・・・何を考えてるんだ・・・?」
片足に力を込め歩を進める。白の96番もそれに連れて進もうとする。

「・・・まつのだ、黒の18番」
「・・・なぜだ・・・?」
「不自然過ぎる。もしなにかあったらどうする気だ?」

「クロシキ・・・」
血で滲んで顔の半分を失い欠けていた18番のその顔はどこか笑っているようにも感じた。


「もうこれ以上何もありゃしないさ」
それはあまりに簡素で、はっきりした感情だった。


ザリ・・・ザリ・・・ッ。振り向いた顔を正面に戻し、体を棒にしてひこずりながらに扉に入っていった。


                     Blood -地を這うもの-  −完−



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