[355] 第15話 |
- ググイ=デール - 2008年07月30日 (水) 22時42分
誰か―― 返事してくれ・・・・
誰か・・・誰か居ないのか?
なぁ?・・・・なぁ!?・・・・・
「なんだよ・・・誰もいないのかよ・・・・」 でこぼこで真っ黒の大地に白かった空はいつの間にか真っ黒の空に。
広がる血の匂い 青白い魂がほんのり明るい空間をより明るく照らす。 手を伸ばしても触れない、掴めない。
「20番・・・・?20番・・・・!!・・・・おい・・・おぃ!!」 透けるように手を透過する。悔しい事に"黒"の番号を持つこの体は魂を掴めない。 「畜生・・・畜生・・・・畜生・・・・・・!!」 何度も何度も、黒の18番はさわろうとした。 「戻ってきてくれ、戻ってきてくれ・・・。畜生、何でだ・・・!?何で掴めないんだよ・・・!!何で触れないんだ!?」 触れないということは百も承知。それでもどうしても声に出てくる。
叫びを一つも聞き入れず、残酷な事にゆっくりと、魂は黒い空へと向かおうとする。 「駄目だ・・・!駄目だ・・・・っ!!行くな・・・行くなよ・・・・!!」
ぅ・・・・・ うあぁ・・・・あぅ・・・っ! うあああぁぁぁぁっ・・・・・!! あうっ・・・あうっ・・・・あうぁっ・・・あああっあああっ・・・・!!
叫び。嗚咽を漏らす。 倒れ込んでしまって動かない体が 何もできない自分が 悔やみ切れなくて なぜか申し訳なくて 誰かに謝りたくて できない自分が恨めしくって 眼の前にあるのに遠くて 掴めないその手が 悲しくて 弱くて 辛くて
どんどんどんどんこみ上げる何かに ただ、声を上げ ただ、叫ぶしかできなくて すぐに声も途切れ途切れになって それでも叫んで 喉の奥の何かが壊れてしまいそうで
地面に手を打ちつけて 地面を這って 見上げたまま
ただ、喚くしかできなくて
視界がぼやけ 自分の叫びが遠くなった気がした
不意に―― 冷たい。頬を水が伝う。 涙だ・・・ 知ってる。これは涙だ。辛いとき、悲しいとき、人間が流すやつだ。 ・・・何で知っている?
「・・・・番・・・・18番・・・!」 叫ぶ声、ぼやけた視界に唯一映っていた青白い光はさっきよりも手前にあった。
「生きてる・・・?」 体を急に起こされる。ぼやけた視界に映ったのは竜人の顔。白の96番だ。 「・・・・クロシキ!まだ大丈夫だ!」 「よし。・・・・お主動けるか?」 そう言われ足に力をいれ自力で立つ。 肩で眼を擦るが血で濡れてあまり意味がない。 ふら付く体をなんとか自力で支える。 大分視界が鮮明になる。 映るのは、竜人の白の96番。籠手のような物で身を繕ったクロシキ。そしてNo.198 クロシキの手には20番の魂が掴まれていて、No.198は20番を肩に担いでいて、96番は3つほど魂を持っていた。 「・・・96番・・・それは?」 「最初の3名のだ。天に返すよ。こいつらが最後なんだ」 そういうと1つずつ宙へと浮かべる。 ゆっくり真っ直ぐ。それらは空に消えていった。
「クロシキ・・・・その魂はもう肉体に戻らないのか?」 「・・・・普通は戻らぬ。だが、この魂・・・多分これは閻魔様の魂の浄化がかかってないのだ」 「・・・・どういうことだ?」 「つまりだ・・・閻魔の使いの魂と同じ。天と地を蹂躙してるやつだ」 「・・・・・・」 「つまり・・・白の20番は、白の番号持ちの使いではなく・・・恐らく、お前の監視役として閻魔様に送られたというわけなんだ」 「・・・・・・・そうか・・・・道理で・・・・」
道理で自分のことを理解している。 道理で20の最初の番号もちであれほど強いわけだ。 道理で・・・・な・・・・。
「黒の18番。恐らく閻魔様に言えば記憶はそのままで・・・・戻るはずだ」 「・・・・・・」 何も言えない。嬉しいような、悲しいような。 「・・・・じゃぁ、この肉体は要らないのか?」 20番を担いだままのNo.198が尋ねる。 何かを思いついた白の96番は徐に地面を掘り出した。 「・・・・何やってるんだ?」
そうこうしている間に大きめな穴が出来た。96番はNo,198から20番の肉体を渡してもらい。 その穴に置き、上から土を被せた。 「・・・・・"墓"っていうらしい。とむらいの意味を持つんだとさ」 「・・・・・そうか・・・・」 しばらくして、振り返り、壁に向かう。 「で、どうやってここから出るんだ?扉は?」 「俺らが使った扉は殆ど使い物にならなかった」 白の96番はすこし斜め下を見て肩をおとした。
扉はこの世とあの世を繋ぐ連絡用の通路。 景色に同化させたりして壊れたり、壊されたりするのを防ぐため隠すことができる。
「・・・あいつに壊されたのか?」 「その分もあったが流石にあれほど激しかったんだ。壊れもするか・・・」 あ、そうだ。黒の18番は思いだした。自分が使った扉があるはずだと。 「・・・あの仮面の奴の死体はどこだった?」 「むこうの方だ。まだ残ってるはずだ」 「よし・・・戻るぞ、あっちには自分らがつかった扉がある」 ザリッ・・・ザリッ・・・。体をひこずりながら歩を進めはじめるとすぐに96番が腕に肩をまわす。
そして歩を進めつつ白の96番は囁いた。 「・・・・・・おつかれ」
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